ああ、愛しの我がBOSSよ!

Brama

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いずこへ、私の愛しのBOSSよ

ひどく私を狂わせた赤

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昔はこんなにアグレッシブではなかった。

しかし控えめとも違う、なんて言うか、集合写真の真ん中の列の端から2番目にいるような、、、、、そう、よくいる印象がない普通の子。

これが変わったのが高校生のとき。私は文化祭を作る側に回った。いろいろあって、書記が書記だけに収まらなくなって、人を動かしまくっていた。もちろん、それ以上に自分を動かしたけどね。毎日毎日、頭を抱えて、パソコンと書類のにらめっこ。

いろんな人と積極的に行動した。もちろん、ありえねーよ、って事をする奴もいれば、こいつといれば頑張れるって仲間も見つけられて、最終的にはうまくいった。私の3年間は、そうして終わった。

そう、うまくいってしまったのだ。よかったと思う。でも、何かが欠けていた。いや、欠けたのは私の方だった。何かが違う。成功した。楽しかった。お礼を言われた。新しいことも成功した。失敗もないわけでは無かったが、明らかにあれは成功だった。




なら、何が足りないんだろう。





悩みに悩んだ。それこそ、受験勉強といって携帯の履歴を「喪失」とか「無」で埋め尽くすくらいには。後からこれは、黒歴史ってほどではないけど、人に知られていたら黒だなって思う程度にはやばいやつだったと思う。

話を戻そう。

相変わらず悩みは解決しなかった。まあまあ成績は最初から取れていたから、なあなあで女子大への合格が決まった。高校も女子校だったし、楽しそう、なんて思うくらいで。

そんな受験も終わった3月に仲の良い叔父が、私が昔から行きたがっていたイタリアへ1週間の旅行へ連れて行ってくれた。










叔父は南イタリアの美しいと有名なアマルフィ海岸へ私を連れてきた。ローマやミラノとかは自分でも行きやすいから、今回はこっちな、と。我が叔父ながらイケオジだ。


着いた私が見たものは、楽園だった。ここが本当に人が住むところだろうかと。そして、否と。人さえもこの街の人々は美しく、命を感じさせるような活き活きとした人達だったのだ。この人達だから、ここに住めるのか、はたまたこの美しい街が人をそうさせるのか。


私はすぐにこの街の虜になった。まるで羽が生えたように、まるで太陽が私の味方をしてくれたように、わたしは石畳を走り回り、太陽の光を浴びて踊って、海の潮風を深く味わい、この街の人々の魅力に歓喜した。充実、なんて言葉では表しきれない時間だった。



そんな時こそ、過ぎるのは早い。


明日、日本に帰らなくてはならないというとき、私は夕焼けを見に山の中腹へ行った。そこは少し張り出した、憩いの場といったような所だったが、あたりには誰もいなかった。


茜色。太陽が海の中へ溺れる前に、強く命を感じさせるそんな色が、底まで透き通ったコバルトブルーと石灰色の家々を艶やかに染めていく。年月を感じさせる石の低い塀さえも、この幻想的な世界をより一層匂わせた。




ひどく、美しい光景だった。




私には、それ以上にこの楽園を表せる言葉が思いつかなかった。




心に空いたあの穴が閉じていくようにさえ感じた。



それでも完全ではなかった。むしろこの生命いのちたちは、私のほんのわずかに残ったその穴へ深く、重く、そしてあざ笑うかのように囁いてきたような気がした。


生きているかと。


お前は自由かと。


泣きそうになった。優しそうで、温かなこの世界は、同時に私のことなんてどうでもいいのだと。わたしは見ることもできない、知らない何かをひたすら探して、そうして大人になるのだと。きっといつか、この景色せかいをまたみても、あり大抵な感動しかせず、いつしかここにいる私を大人の私は捨てるのだと。




ひどく、惨めだった。




石の塀に置いた私の手は、何かにすがるようだった。



























     "フィフォネ"















ふと、低いアルトが私の意識を攫っていった。




青年がいた。 艶やかな黒髪と大ぶりのピアスを風になびかせ、右手を黒いズボンのポケットに隠していた。なんの変哲もない白いシャツが、夕陽色に染まっていた。



彼は夕焼けを見つめていた。どこか、焦がれているような、何かを、切望しているような。



それ以上に、憤っているような。彫りの深いその顔は恐らく私と同じか少し上くらいのはずなのに、ひどく大人びて見えた。いつもなら怖くて目をそらすだろうに、私はただ、彼を見つめた。いや、逸らせなかった。



私は彼に囚われた。彼以外のことを考えることは、まるで神への冒涜であるかのように。



彼の瞳は真っ赤だった。彼のくろと、彼が睨む茜が、この世のどこを探してもない、濃く深い赤を彼の瞳に宿らせた。





彼は背を向けた。



私は焦った。

手を彼のほうへ伸ばした。

声が出せなかった。

私の手は、見えない何かに阻まれた。



彼はそのまま、待たせていた車に乗って消えた。




私はちっぽけで、
彼の視界には入らなかった。
ひどく、ひどくーーーーーーーーーー。
























あの後のことを私はあまり覚えていない、気が付けば夜を迎えていた。明日には帰る。この街を去る。それはよかった。だが、彼のことだけが忘れられなかった。もう二度と会えないのではないかと、あの場所に、命を忘れてきた気分だった。


申し訳程度にあるバルコニーへ出ると海は真っ暗で、糸のような月が、か細く光をおとしていた。






あまりにも静かな私に、叔父が心配そうに尋ねてきた。私は何でもないと答えた。その後、一つだけ質問をした。





ふぃふぉねって、叔父さんわかる?





ふぃふぉね   ああ、それは恐らく





Fifoneー臆病者ーって意味かな。






ーーーまるで殴られたようだった。





なぜ彼はそういったのだろうか。何に対して言ったのだろうか。彼はあそこから何を思ったのだろうか。





きっと、私に対して言ったのではない。そんなことはわかっている。




でも、許してほしい、これはめぐみなのだと。恩恵なのだと。




彼が何を”臆病者”としたのかはわからない。だがしかし、私はたしかに、あの場所に、あの瞬間にいた愚かでちっぽけな”臆病者”なのだ。



ふと、私の前にもう一度あの夕焼けが広がった。そして、あの横顔が、あの瞳が、あの赤が、こちらを見た気がした。そしてまた、あの背中を見た。大きく、風を切り、したたかで、見るもの全てが追いたくなるあの背中が。強者の背中だ。孤高の、まさに神のような人で、神にさえ抗うそんな人だった。



なぜ私は、こうも彼に夢中なのだろう。なぜこうも彼に跪きたいのだろう。なぜこうも、彼に一言、よくやったといわれたいのだろ。



なぜ、私の魂は、彼の後をついていきたいと叫ぶのだろう。




いや、理由はない。私は彼の傍にいたいのだ。恋とは違う。彼を支え、彼の進む道を見たいのだ。欲しているのだ。あの瞳に映ることを。渇望している。あの人に私を捧げることを。私はあの人の生きる姿を見たい。




私は彼に仕えたい。



やっと埋まった。



やっと見つけた。




私はいつか、あの人の隣に立って、あの人の、そう、右腕のようになる。




やっと埋まった。



いや、私は私になったのだ。




私は、この宿命のために生まれたのだ。



























これは、そんな私が、人生のすべてを捧げるBOSSを探し、その方のおそばに控えるに相応しい人間になる。そんな頭がいかれた、馬鹿な女の人生の物語。










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