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第2章 五歳の誕生日

プレゼント

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そんなやりとりの後、みんなからプレゼントを貰った。

シルヴァとノエルは最近人気の絵本をくれた。

「勇者アランフィアードの物語だぜ!」

シルヴァが目を輝かせて言う。そういえば、シルヴァは勇者に憧れて、冒険者になりたいとか言ってたんだっけ。

「勇者アランフィアードは先の戦争を終わらせた英雄ですからね、憧れるのもわかります」

ノエルも頷いた。
なぜかアレンさんが微妙な顔をしていた。

「どうしたの?」
「い、いいえ何も」
「アレンさんも勇者が好きなんですか?」

シルヴァが聞いた。シルヴァ敬語使えたんだね…。

「……ええ、昔は」

アレンさんは苦笑して答えた。なんか、深く聞かないほうがいいのかな。

「ふたりとも、ありがとう。読んでみるね」




それから、母に守護のネックレスというものを貰った。これも魔道具だ。

「今年はもう貰ってるよ?」
「これから領地を出歩く時に必要になるものだからいいのよ。いざという時あなたの身を守ってくれるから、肌身離さずつけておきなさい」
「うん、わかった」
「使い方は、ネックレスを強く握って『発動』と唱えるだけよ。まあ、それでもとっさの時には使いづらいずらいけどね…」
「ううん、大丈夫。練習しておく」
「そうしてちょうだい。魔石の色が灰色になったら交換するから教えてね」
「うん」

グレイは、勉強道具一式とマジックバッグというものをくれた。

「マジックバッグも魔道具です。中に入れたものは異次元空間に保存されるので、袋の大きさ以上のものが入り、さらに重さもありません。昔私がダンジョンで手に入れた下級のものですので、そう沢山は入りませんが…」
「すごい!ありがとう。中に入れたものは劣化する?」
「ええ、勿論。劣化しないものは国宝級の扱いになってしまいますね」
「国宝…」
「普通のマジックバッグでも、金貨数十枚しますよ」
「きんか…すうじゅうまい…」

日本円にして大体数十万円…。

「や、やっぱ返したほうが…」
「もう差し上げたものですから」

グレイは受け取ってくれなくて、結局僕のものになってしまった。

「使用者を登録しておけば、登録者のみしか使えない代物になります」
「なら、僕たち三人にしておこう」
「いいのですか?」
「うん」

便利っていうのもあるけど、せめてみんなで使ったほうがなんとなく気持ちが楽になるから…。


アドラス料理長は、今まで集めてきたスパイスを分けてくれた。

「うわぁ!ありがとう!!!」
「今までで一番喜んでるだろ…」
「そんなことないよ!」

どれもちゃんと嬉しいよ!でもこのスパイスがあれば、あの料理の研究ができるからね。いつか絶対作るぞ!!

「次は私ですね」

マリアがくれたのは、街着用の洋服、それからポケットの沢山ついたローブだった。

「丈夫に作りましたから、これで多少無茶されても服が破けることもありませんわ」
「ありがとう!」

冒険者みたいでちょっとかっこいい。シルヴァとノエルにも、僕と色違いのローブを渡していた。なんか、チームっぽいな。

「では最後に私が」

アレンさんが取り出したのは、虹色の鉱石だった。

「なにこれ?」
「ミスリル鉱石です」
「えっ」
「アレン、流石にそれは…」

別名、魔法銀とも呼ばれるそれは、かなり貴重な鉱石だ。マジックバッグなんか比べ物にならない、本当に一流の冒険者が武器に使用するくらい。特徴は、僕が作る料理についているような『効果』がつけられるところだ。だから、ミスリルで作られた特別な効果を持つ剣などは、魔剣と呼ばれたりする。

「いずれ、レオ様には必要になるはずです」
「ううん、僕そんなすごいもの使えないよ」
「いいえ、」

アレンさんは強い声で言い切った。

「持っていてください。必ずあなたの役に立ちます」
「………」

アレンさんは、いったい僕になんの期待をしているのだろう。でも、その表情は期待というよりは、どこか追い詰められたような悲壮な決意が滲んでいる気がした。どうしてそんな顔をするの?

「レオ、貰っておきなさい」
「母さま…」

母は、あえて明るい声で言った。

「貴族が贈り物を断ってはいけないわ。それはものすごく失礼なことになってしまうのよ」
「そうなの?」
「ええ、そうよ」

なんとなく、納得いかなかったけど。しぶしぶ頷いた。

「うん、ありがとう」

もしかしたら、母も何か知ってるのかな。

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