上 下
35 / 42
第3章 ハーヴェスト

職人街の子どもたち①

しおりを挟む


さて、約束の午後になり、僕らは再び宿屋の前までやって来た。昨日はあの後大変で、案の定叱られた挙句、アレンさんの特別メニューにより、屋敷の周りを10周走った。僕たち全員、明日はもっと慎重に行動しようと話し合いました。反省しました、本当に。

やがて、アリアがやって来た。

「お待たせ!さぁ、行くわよ!」
「行くってどこに?」
「私の友達はお店やってるうちの子とか、職人の子供が多いのよ。だいたいそういう子達は家の手伝いをしてたり、兄弟の面倒を見たりでそのあたりから動けないのよね。だからだいたい私が向こうに行くの」
「そうなんだ、じゃあその方がいいね」
「呼んでこい、とか言わないのね。ま、あんた達はそういうタイプの貴族じゃないか。さ、行きましょ!」

やっぱ、貴族ってそういうイメージなんだね。普段のグレンヴィル家を思うと、とてもそんな風には思えないけど…やっぱり王都とか行くとそういう人が多いのかな?





やって来た職人街と呼ばれる場所は、なんていうか、うるさかった。鍛治を打つ音や、誰かの怒鳴り声、そのうるさい音に負けないように、さらに人々も大声で喋っている。なんとなく、前世のゲーセンを彷彿とさせる。

「こっちよ!!!」

待ちの人にも負けず劣らずの大声でアリアも叫ぶ。返事をしたが、たぶん聞こえてないな。アリアに置いてかれないように、僕らも急いだ。

職人街のさらに奥側、そっちは職人街で働く人たちの家が多く立ち並んでいる区域だ。そこには恰幅のいい女性達が井戸端会議をしていたり、子供達が遊んでいたりして、職人街よりは静かだった。僕の家の周りよりは当然賑やかだ。
僕たちがここに到着すると、遊んでいた子供のうち一人が近寄って来た。

「アリア」
「あっトール。連れて来たわよ」

アリアに声を掛けた男の子は、浅黒い肌の色をしていて、その茶色の髪は刈り上げられていた。見た目はシルヴァ以上にやんちゃそうなのに、その雰囲気が大人のようにしっかりしている。トールの背後には、まだ小さい子や同い年くらいの子がこっそりとこちらを伺っていた。うーん、警戒されてるな…。

「あんた達が、俺らに用があるって奴らか」

トールが僕らを一人一人観察するようにじっとみる。何故だが緊張してしまった僕は背筋をピンと伸ばした。だが、トールの目は僕を通り抜けて、ある人の前でピタリと止まった。

「お前、シルヴァか」
「よう、久しぶりだな」

シルヴァの知り合いだったんだ…。なんか、みんな街に友達いるんだな~…。僕だけぼっちか。あ、シルヴァとノエルがいる…うーん、兄弟みたいなものだから、友達ではないか。むしろ従者だ。

「ずいぶんここに来なかったからな」
「あー…。まあな、俺にもやることができた」
「そうか」

なんか、クールだなあ。これほんとに子供の会話なの?

「で、話ってなんだ」
「それは、こいつから話す」

シルヴァが僕の背中を軽く押した。このことは元から話し合い済みだ。発案者なんだからちゃんと僕が話す。

「こんにちは、えっと、トールくん。僕は、レオ。レオ・グレンヴィルです」

僕がグレンヴィルと名乗ると、彼の目が大きく見開かれた。おお、クールだけど驚いた顔もするのか。

「領主様の息子が何の用だ」
「…実は、今度のハーヴェストで、子どもだけのパーティーをするんだ。今、参加者を募ってるんだけど、よかったらどうかと思って」
「俺たちは、貴族様が参加するようなパーティーになんか出れないぞ」
「そんな堅苦しいものにするつもりはないよ。ただちょっと遊んだり、料理やお菓子を食べたり…」


しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...