蛇好き令嬢、魔界に嫁ぐ

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いきなりの婚約破棄

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「ジモデンズ伯爵令嬢ミーシャ!伯爵令嬢とは思えない気持ち悪い趣味を隠して、このファンタンクス国で天才と称され、将来宰相として望まれているドグラス公爵家の嫡男グランシスとの婚約をしようとは、最低な行いだ!見るのも気持ち悪い!その趣味をやめても!婚約破棄させてもらう!」

いきなり、国の記念式典パーティで大声を張り上げたのは、ジモデンズ伯爵令嬢のミーシャの婚約者のドグラス公爵家の嫡男グランシスである。

彼の周りには、フシダラな色気のある婦人や身分をわかっていない平民の娘達のハーレムが出来ている。

つまり、浮気現場を婚約者に見られたので、先に婚約破棄をして…慰謝料を払うのを防ぐことにしたのだろう。



でも、なんでしょうばれたのかしら?

私の趣味を…?


私の趣味は、蛇を愛でること。
本来ならば、その美しさを、人々に伝え歩きたいほどだが…家人に止められている。
私の部屋も自由に使えず…ペット1匹すら買わせてもらえない。
蛇の愛を何処にも求められずにさまようばかりだ。
こっそり、私の財布に庭で拾った蛇革が入っているくらいで、没収されないように…誰にも見られないように…お守りとして大事にしている。

それも、これも、家人たちの努力あってのものだ。
私の蛇狂いの片鱗を感じて、両親が私の身の回りを取り繕った。
それまで、こっそりと飼っていたペット達は、婚約者探しが始まる5歳の時には、既に処分された。
可愛い蛇達を殺されるのは嫌だったので、それ以来、蛇のペットは飼っていない。
動物図鑑でぐらいしか、蛇を愛でることが出来ない日々。
それでも、自分の趣味の異様さを家人達の努力で理解させられた私は、我慢を強いられてきた。


「隠していたようだが!蛇柄を好むその傾向を…婚約者の俺が、気がつかないと思ったか?!」

ばれたいましたか…家人達の努力は、無駄になってしまいましたね。

物を並べられて欲しいものを聞かれたら、蛇柄に目がいってしまうのは…許して欲しい。
欲しがってはいませんよ?
ただ、目がいってしまうのは止められませんが…


「調べたところ、5歳の時まで、蛇に囲まれた生活をしていたらしいな!気持ち悪い!そんなに蛇好きなら…俺との婚約破棄を受け入れて!魔界に嫁げばいい!蛇の様な鱗を持つ龍人や、蛇の身体を持つナーガ族がいる魔界がお似合いだ!」

なるほど、確かにそうだ。

ファンタンク国の歴史において、魔界に難のある娘を生贄のごとく嫁に出すのは、伝統的な行事の一つとされている。
100年以上も前に、当時の国王と魔王が取り決めた婚姻なのだ。
平和の証として、毎年、双方の国の令嬢を交換して、貴族として迎い入れることにしたのだ。
互いの血胤が、国の政治の中に自然と組み込まれる様にするためのものだが…本音は、互いの血胤が政治に組み込まれるのは回避したいために…難のある娘を嫁に出し、その後のことは、その国に任せる。
大概は、貴族の嫁に来た魔族は、血胤を産むこともなく、辛くあたられて自殺する。
魔界に行った難のある令嬢も、いい噂は聞かない。…問題を起こして、処刑されたとか…子を産んだが、産後が悪くて母子ともに死んだとか…
ともかく、この婚姻が成功した試しは…ほぼないのが…現状だ。


「…ならば、私の代わりにクライシス様は…淫魔を嫁に貰ってはどうですかね?」

私は、鼻で笑い飛ばして、国のパーティを汚した謝罪を偉い方々に述べて周り、婚約破棄を受け入れた。
元々、婚約者の浮気は有名で、私もそろそろ婚約破棄を申し込むつもりでした。
慰謝料をもらえなくてもいいと思うまで、婚約者には愛想が尽きている。
見るのも気持ち悪いのは、こっちの台詞だ。

ただし、父の目線が痛い。
伯爵の父は自分より身分の高い公爵家との繋がりが如何しても欲しかった。
浮気者として有名な難のある嫁ぎ先でも、他の良縁を断ってまで、身分のいい縁談にすがりついた。
16を数えた私が、5歳の頃から10年間も、花嫁修業させられたのは…その所為だ。
早い花嫁修業のお陰で、蛇狂いも、バレることは無かったのだが…国の式典でこんなに騒がれてしまっては、仕方がない。
父にとって私はもう、道具としては使えないだろう。
でも、逆に良かったかもしれない。
私が魔界に嫁ぐのは…決定かもしれない。出来れば、ナーガ族に嫁ぎたいな。
魔界に私が嫁げば、今年の生贄を出した家には、かなりの保証が国から出る。
私を育ててきた費用は、賄えるだけの保証は出るだろう。
きっと、美人で少しお馬鹿な妹が、王族の婚約者として名前も上がっているので、資金としてちょうど良いだろう。
王族との婚姻は、お金がかかる。
金稼ぎには自信のあるうちの父も、王族との婚姻資金調達に苦戦していた。
父もさすがに今回のことで私に見切りをつけて、妹に力を入れることだろう。
だから、そんなに睨まないでください。
何が不満ですか?
難のある娘を、家から出したことで、世間体を気にされているのですか?
それとも、慰謝料を奪えなかったことを悔やんでいるのでしょうか?
後継は、優秀な弟がいますしね。
私が魔界に嫁ぐのは…必然ですよね?
父が怒る理由がまだあったかしら?

私は、これからを考えながら、式典パーティを後にする。
父は、一緒には来てはくれませんでした。

私の蛇狂いも…酷く嫌っていた父です。
私がなんとなく父にとって気にくわないのは、わかっていました。
妹や弟とも違う接し方に、不満もありました。
父は、私にだけ…厳しいのです。
身の回りを厳しくしたのは…愛情の裏返しだと思った時もあります。
変な縁談を持ってきた時も、文句を言わずに従いましたが…父の愛情は、私には向けられていないことは…気がついていましたよ?
私の母は、私を産んで他界していたので、どんな方だか知りませんが…元々、伯爵の身分は、私の母親の身分で、父は婿に来ただけの男でした。
今の母親は、私にとっては義母になります。
良い方で、父の愛情は、義母に向けられています。
私の本当の母親には、愛情は無かったのでしょう。
私は、家の中では疎まれる存在でした。
でも、家族の仲は良い方ですよ?
父だけが、私に対する対応が変なだけです。
弟は、伯爵家の血筋にはならないですが…伯爵家の後を継ぐことに文句を言う親族はいません。
ただし、血筋だけ言えば、私だけが伯爵家の正統な後継者なので、父よりも立場は上なのです。
それが、気にくわないのでしょうか?

家に戻ると、部屋に閉じ込められました。

監禁しなくても、魔界に嫁ぐのは…文句を言わずに従いますよ?
ナーガ族に嫁げなくても、魔界にいれば、いつかは会えることでしょう?
魔界に嫁げば、蛇狂いも今よりは咎められることはないでしょう?

魔界に嫁ぐのは…望むところです!

荷物を纏めて、魔界に行く用意をする。
ナーガ族に嫁ぎたいな。
蛇との意思疎通ができるなんて、幸せなことでしょう?
側であの美しさを愛でることができるなんて、嬉しい限りです!

嬉しい想像ばかりが、私の心をしめる。

私は、魔界に嫁げるのですよね?

こんなに期待をさせて…今更、人間の男なんて、嫌ですよ?

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