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13話 奴隷たちの話

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俺の名前は、オズワルド。家名はない。
エルフ族でも、身分が低い。
だが…努力でのし上がり、ハイエルフではないかと騒がれた時もある。

ある日、エルフ族の王族に目を付けられて、誘いを断ると…人生が転落していった。
表舞台では活躍できなかったので、裏で名を広めようと頑張った。

探し物から、盗みもした。
強姦染みた事はしなかったが…殺しの依頼は受けていた。
年齢関係なく、女子供も殺した。

闇での名が上がると、兵士や騎士などではなく、賞金首を生業とする冒険者に狙われた。

戦って死ねばよかった。

奴隷になって、傷を癒すと直ぐに買い手が現れた。

異世界の人間だった。

黒い髪を、少し茶色に染めている。
黒の瞳は、疑うことを知らない目だ。
若く幼そうだが、大人にも見える。
不思議な魔法を使い、この国から出たいと言った。
誰も居ない田舎に移り、マッタリと暮らす手伝いをして欲しいらしい。

俺は、正直…面倒な女に買われたと、思った。
この女に買われるのなら、エルフの王族に、自分を売ればよかったと思った。

笑顔で会話をしていたら、他の奴隷に通訳を頼まれた。

殺し屋に……普通すぎる対応をしてくる。

「……?奴隷契約をしているから、怖くないよ」

純粋な目で俺を見てくる。
やめてくれ……俺に何をしろと言うのだ。
俺の良心を思い出させるその目に……イライラさせられる。

本当に訳分からない女だった。
食事を主人自ら作って、奴隷に殆ど食べさせて、自分の分は少しだけだ。
食べ物が同じで、食べるところも同じ。寝るところも、同じ場所なのだ。
俺の過去を教えても、対応は変わらない。
むしろ、一緒の馬に跨り、他の奴隷より距離が近い。

魔物が出てくると、自分も戦い、俺らの出番も少ない。
護衛役を探していたのではないのか?

旅をしながら、珍しい食材を採取したりするから、全く進まない。
ストレージを覚えたので、荷物がかさばらないから、次の町では、行商人のように、物を売って稼ぎを出してもいいだろう。
何も知らない彼女に、俺は、事細かく教える。

「……行商人か、お金も少ないし、エルフくんの言う通りに、ある程度稼ぎながら移動しようか」

エルフくんって…………しょうがないか、この主人も自己紹介忘れているようだし……。

俺は、この女に興味が湧いてきているのだろうか。
どうやって生きようか?考えている途中だが…目標を見つけられそうな気がした。



**********


僕の名前は、ウナ。
獣人族の中では、優秀とされる銀狼の一族である。

銀狼は数が少なくて、雄は雌を見つける前に死ぬ確率も多い。
15で生まれ育った里を出て、僕は番探しに出かけた。
5年間探して、旅をする内に、冒険者として有名になっていった。

ある日、S級ランクの試験に合格すると、獣人国の王宮に呼びでされた。

姫様の護衛に成らないか?と言われて、「番探しをしている」ことを伝えて断った。
そこから、僕の人生を邪魔するように、王族に色々な依頼を受けさせられた。
番探しも出来なくなるほどの、指名依頼の多さに嫌気がさして、冒険者を辞める事にした。
フリーになった途端に、大勢の兵士に囲まれた。
攻撃をされたので、逃げながら、最低限の応戦をしたら、兵士に死人が出たらしい。
結局、それが原因で捕まり、奴隷にされた。

奴隷にされてから、いい事はなかった。
一度王族に買われて、いいようにこき使われたが……つまらないと言われて、売られた。
そんなことを繰り返されて、五度目の檻の中で、番の匂いを嗅いだ。
黒い眼の可愛い女性だった。
僕を買って欲しくて、いっぱいアピールをした。
彼女は、言葉もわからないのに…僕を買ってくれた。

嬉しくて、気がつかなかったが、他にも、彼女は奴隷を買ったようだ。

エルフは、彼女の言葉を通訳してくれた。……良い奴なのかな?
魔族のハーフは、僕よりも強そうだ。……初めて自分よりも強い者を見た。
尻尾を巻いて逃げ出したくなったが、番を手放したくはない。

頑張って、番を手に入れたいと思う。



******************



魔族。
それは、誇り高き民族だ。
しかし、人とのハーフは、忌み嫌われる。
半端者と言われながらも、精一杯生きていたが、……5歳で親に捨てられた。

1人で生きてきた。

不運にも、誰も見つからずに、秘境と言われるところで、隠れ住んでいた。
自然と一体となり、学んだ。
ある日、魔導師に拾われて、魔法を教わった。
その日から勉強を始めた。
夢中で本を読んでいた時、気を失うと……研究室に運ばれていて、師匠である魔導師に……実験に使われた。

善意はこの世界に存在しない。
そう、理解すると…人の命など、容易くもぎ取れた。

魔導師は、有名な人間だったらしくて、俺は、国の騎士達に囲まれて、囚われて奴隷にされた。
もう、どうでもよかった。
無気力で、何も考えずにただ、生きていたが…もう疲れた。

疲れたのだ。

死に場所を求めていた。

主人に買われたが……働く気がない。
適当に、命令を無視して、死のうと思った。

「……ごめんね。今、出来上がるから」

?

食事を用意している?

??


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