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6,フィーアルド大陸へ。

帝国の港町、シードン。

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馬車に乗って20時間ほど経っただろうか。
今は潮の香りがする草原を進んでいる。
この草原は山のようになっているが山と言うほど起伏は無い。

そしてこの草原のてっぺんに来たとき、進行方向には海と、街が見えた。
街は大きくは無いが沢山の船が泊まっているのがここからでも見える。
ここからなら後30分程度でつくだろう。


30分後、シードンの街に就くとそこにはジンさんが居た。
ジンさんはこちらに手を振ると駆け寄ってきて馬車に飛び乗った。

「待ってたよ。この馬車のまま船に向かおうか。船は目の前のあの大きな船だ。」

そう言って前を見ると回りの船の倍近くはある大きな魔導船が停泊していた。
見ると旗が掲げられており、そこには帝国旗と皇国旗が掲げられていた。

「この船の名前は魔導船コンゴウ。ダイヤモンド鉱石の和名らしくてね。ダイヤモンドの様に砕けることの無い強さをという意味を込めてこの名前になったそうだよ。」

ジンさんはそう船の紹介をすると船の脇で馬車を止めるように言った。

「さてと、紹介するね。この子は魔導船コンゴウの操作者コントローラー海香ミカちゃんだよ。」

そう言ってミカと呼ばれた女の子の肩を持って私達の前に出した。
その子は茶髪ショートカットの女の子で黒いセーラー服に赤いミニプリーツスカートをはいており、靴は茶色のローファーだ。
魔導船コンゴウのカラーと同じでコンゴウも下半分位が赤で上は黒で塗られている船だ。

「えと、わ、私、魔導戦艦コンゴウの操作者のミカって言います…えと、戦闘は苦手だけど船の操縦なら任せて下さい!」

そう言ってミカちゃんがお辞儀をした。

「彼女は船とマギ・リンクして1人であの船を動かせるんだ。
この船ならどんな荒波でも超えていけるよ。」

「えと、この船は戦艦と潜水艦の両用艦で海上では砲門を出して戦艦として、海中では砲門を格納して潜水艦として行動可能です。
戦艦時は主砲として40センチ魔導三連砲4門、副砲として25センチ魔導二連砲4門、それと10センチ魔導機銃6門、魚雷発射管10門。潜水艦時は魚雷発射管10門、水中射出用ランチャー4、そしてどちらも共用として艦首に超高圧魔導収束砲が格納されています。
艦載機は水陸両用で爆撃機6、ステルス機6、偵察機4、魔導機4、銃撃機10機の30機格納されています。」

ミカが船の説明をしてくれた。
かなり高性能な船だなぁ。
因みに船の基本エネルギーは魔法の為空気中のエーテルマナを吸収する事でほぼ無限にエネルギーを得る事が出来る。
だから食料等の物資が切れない限りは航行が可能なのだ。

「それでは、皆さん、魔導戦艦コンゴウにご乗艦下さい!」

ミカがそう言ってコンゴウの方へ手を向けるとコンゴウから水色のホログラムで出来た階段が現れた。階段はデッキへと通じておりこの船にはホログラムの階段以外の乗艦口が無いようだ。

私達は階段を駆け上がろうとしたがジンさんが動かない。

「残念だけど僕は行けないよ。これでも1番隊の隊長だからね。国を離れるわけには行かないんだ。だからここからはルーク、君に任せるよ。君の隊は一時的に1番隊に入る事になった。異論は無いね?」

「あぁ、ジン。悪いがウチの奴等のこと頼んだぜ。ちと血の気が多い奴だが戦闘ではかなり戦力になるだろうよ。」

ルークさんが頷いていった。

「うん、ありがたく使わせて貰うよ。」

ジンさんはそう言ってそれじゃあと手を振ってその場を去った。
私達はジンさんに手を振ってから船に乗り込んだ。

「さて、皆さんは艦橋へどうぞ。」

そう言ってミカが案内をした。
船の中は白を基調とした壁で床は緑の床だ。

その船内を進むと艦橋についた。
艦橋の中だけが黒を基調とした壁に木の甲板、壁には赤いラインが引かれており室内は薄暗く、最小限のライトしか点灯していなかった。

「ここがこの船の艦橋です。ここからこの船の全ての操作を行えます。」

そう言ってミカが指を鳴らすと船が起動して周りの機器が光り出した。

「戦艦コンゴウ、機動を確認。これより出港の準備に入ります。」

そう言うと機器が様々な音を出した。
どうやら機器が各自でチェックを行っているようだ。

「全システムオールグリーン。戦艦コンゴウ、抜錨します。」

そう言うと艦橋の壁にはホログラムモニタが現れそこには鎖を巻き上げる機械の様子が映し出された。

「コンゴウの抜錨を確認。メインコックピット展開。コックピットシールド展開。コックピットカバー開門。」

そう言うと周りの壁全てにモニタが現れそのモニタにはこの船の周囲…艦橋の周囲の様子が映し出された。

「コックピット異状なし。両舷前進微速ヨーソロー。戦艦コンゴウ、出港します。」

そう言うとコンゴウがゆっくりと動き始めた。

「皆さん、港を出たらすぐに最大速度まで上げます。その際少しだけ揺れるので注意して下さい。」

こちらを振り向いてからそう言うとまた前を向いてモニタを見据えた。

私達は艦橋を見渡してみると驚いたことに操舵輪が無い。
どうやらミカの指示で動く為舵輪が必要ないようだ。

「港管理区域からの脱出を確認。これより速度上昇します。両舷前進第四最大戦速ヨーソロー。」

そう言うと船の速度が目に見えて上がった。
かなりの速度が出ているようだ。

「えと、これからなんですが潜行して進むのとこのまま海上を進むのどちらがいいですか?」

ミカがこちらに振り向いて聞いてきた。

「んー違いがよく分からない…」

私が言うとミカははっとした様子で話し始めた。

「えと、海上の方が速いですが敵からの補足率も上がります。海中なら遅いかわりに補足率は下がります。」

「うーん、どうしたものか…」

「この場合、急ぎではあるけど火の神殿でも戦闘の可能性が高い。体力温存のためにも海中の方が良いと思うよ。それに距離的にも大きな差は出ないと思うし。」

カムイさんが海図を見て言った。

「なら、海中を進みますか。」

「了解です。少し揺れます。気をつけて下さい。戦艦コンゴウ、全砲門格納。これより潜水態勢に入る。」

そう言うと艦橋から見えていた砲門が格納された。

「潜水態勢、よろし。戦艦コンゴウ、急速潜行。」

そう言うと船が速度を落とさず海中へと潜っていった。

「目標深度200ふたまるまる120ひとふたまる……160ひとろくまる……200…目標深度到達。これより深度を維持して航行します。」

そう言うといままで斜めに進んでいた船が真っ直ぐに戻った。

「水中なのでソナーを強めにしますね。相手は海獣や海龍、魔導船なのでソナーは積んでないはずです。」

そう言ってミカが指を鳴らすとSF映画とかで見るソナー音が聞こえた。

「周囲に敵影無し。このまま行けば後3時間程度でフィーアルド大陸の海域に入ります。そこから更に2時間で目的地の火の神殿に一番近いリーバス浜に到着です。そこからはこの船は海底に沈めておいて艦載機で向かいます。艦載機と言ってもこの船が停泊できない場所への移動用の小型船ですけど…一応魔導船なので速度は中々ですよ。」

ミカが海図をモニタに表示してそれを指さしながら説明した。
目的地までは海中も海上も障害物は無く見通しが良い。
まぁ、逆に言えば敵からも見つかりやすいのだが…

性能的にはこの船の性能はかなりの物らしく、周囲にこの船に勝てるだけの戦力を持つ国は無いらしい。
そんな船を貰うなんてなんか悪いなぁ…
まぁ、半分は皇国の物らしいけど…

そんな船と船の操縦者が新たな仲間に加わり目指すは火の神殿。
リーシャ、待っててね。
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