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8,雷の神殿とリーシャ姫。

否定と肯定。

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ルークさんとカムイさんが抜けた後、私達は雷の神殿へ向かった。
神殿へは2日程度でついた。
闇の神殿、火の神殿と変わらない見た目の神殿だ。
そして、この神殿の目の前が海で桟橋もあるため船を止めてミカを残した皆で神殿に向かった。

「マスター、内部に誰か…居ます。」

「くんくん…この臭いは…リーシャ姫の臭い。」

苺と杏が言った。
リーシャがまだ中にいる。
今なら間に合うかもっ!

そう思っていたら神殿から2人出てきた。
仮面の男とリーシャだ。

「リーシャを返して貰うよ。」

私が言った。

「うーん、僕も子供を相手にしたくはないなぁ。」

相手はそう言ってリーシャを抱き寄せる。
逃げるきなの?

「させない。スリプーガ。」

「効かないと言ったはずだよ?否定する。」

そう言うとスリプーガは打ち消されてしまった。
どうすれば…全てを打ち消すなんて…
勝てるのかな?

「だったら、これでどう?」

そう言って詩乃は腰の槍を相手に投げた。
それを相手はバックステップで躱した。
否定しない…って事は物理攻撃はあたるのか。
なら…
私は短剣を抜くと拳銃に変形させて撃った。

「否定する。」

しかし、私の撃った魔弾は打ち消された。
そっか、魔弾も魔法だから…

「…大いなる白き龍よ、我が魔力を糧としその魂、我に宿せ!龍化!!」

詩乃がそう言うと詩乃の背中から白い翼と尻尾が生えた。
そっか、龍化すればステータスも上がる。

「ほう、面白い。しかし、無駄だ。否定する。」

仮面の男がそう言うと詩乃の龍化がとけた。
そんなっ…
龍化も無理なの?
それじゃあ…

「そうはさせません。肯定致します。」

と、どこからか女性の声がした。
それと共に詩乃の背中に白い翼と尻尾が生えた。
龍化が戻った?

「お前は…」

仮面で顔が見えない物の驚いているのがよく分かる。
ここに居るはずのない人物なのだろう。

「お久しぶりですわね、クロード。あなたの技『否定』は私の技『肯定』で打ち消せます。璃乃さん、詩乃さん、お二人の好きなように戦って大丈夫です。私が、肯定します。
心配はいりません、私は味方です。
私の名前はアリア・ユーナルク。
そこの仮面の男、クロード・ユーナルクの姉です。」

アリアさんが私達にそう言った。
私は頷くと本を取り出して息を大きく吸い込むと仮面の男を睨んだ。

「星々の輝き、地に降り注ぐ。それすなわち、世界の破滅。
星々は世界を壊し、この星を壊す。
我、星々を操りし星魔術師。
星よ、我が命に従いて降り注ぎ、彼の地を壊せ。
星魔法秘奥義【ホシフルヨルニ】」

私がそう唱えるとメテオの数倍以上はあろうか、直径5メートル以上の星がいくつも敵の真上に現れた。

「いいのか?リーシャも巻き沿いで。」

「狙ったのはリーシャよ。あなたには勝てない。なら、リーシャが死ねばクリスタルを暴走させられなくなる。
リーシャ、ごめんね。
世界を護るため、仕方ないことだから。
リーシャ、どうか宿でまた会いましょう。」

私がリーシャにそう言った。

「そっか、そう…だね。私が死ねば問題は無い。
璃乃ちゃんに殺されるなら…別に構わないよ。
璃乃ちゃん、龍の魂が宿る場所で。」

そう言うと同時に隕石は二人に降り注ぐ。

「くっ…否定する!」

「肯定致します。」

仮面の男が否定したが半数がアリアさんの肯定で防がれた。
残された半数はリーシャに降り注いだ。

((詩乃、龍魂界に行くよ。リーシャもそこに居るはず。))

((ん。わかった。))

念話で詩乃に言った。
ヴァンパイアは念話が可能だ。
こういうときに役立つんだよね。

「うっ…体に力…が……」

私はそう言ってその場に倒れた。
もちろん、わざとだし体に力が入らないわけでもない。
しかし、龍魂界に行けるのは龍魔眼を持つ魂だけでその間体はもぬけの殻となる。
いきなり倒れたら変だが今なら可能だ。
あれだけの魔法を唱えた後なら魔力切れだと思わせることが出来るだろう。

「神託【魂譲】。」

詩乃が言った。
神託【魂譲】は味方に魔力を受け渡す魔法だ。
これで魔力をココア達に渡した。

「ココア、この魔力があればリーシャを生き返らせる事も出来るかも。
試してみて。私は魔力切れ。」

そう言って詩乃も倒れた。

☆★☆★☆★☆★☆★

ここは…目を開けるとそこは真っ白い、何も無い場所。
私の隣には白いオーラを宿した青い宝玉が浮かんでいた。
これが詩乃だ。
この世界は龍の魂が来る世界で龍同士での会話や力の貸し借りが可能な場所だ。
龍は希少な生物なので人間に見つからないようここで情報交換をして人間のいないところに住む。

龍の力を与えられた龍魔眼持ちも龍と同じ力を持つためここに来れる。

「璃乃ちゃん、詩乃ちゃん、久し振り…かな?」

そこに黄色いオーラを宿した緑色の宝玉が来た。
リーシャだ。

「リーシャ、簡潔に話すね。仮面の男には物理攻撃なら通る。だからリーシャが後ろから殺して。静かに龍化すれば気付かれる前にやれるはず。」

「わかった。やってみる。」

「じゃあ、一旦お別れ…かな?」

私達はそう言って体に戻った。

☆★☆★☆★☆★☆★

「んん…」

目を覚ますと元の体に戻っていた。
ココア達が心配そうに見つめる。

「こう見えても魔力回復するの早いから。」

私がそう言って起き上がると仮面の男はリーシャを抱えていた。

と、その時リーシャの背中に緑色の翼と尻尾が生え、次の瞬間尻尾の先で仮面の男の脇腹を突き刺した。
男が驚いて手を離すとその隙にリーシャが飛んで私達の元に戻ってきた。

「くっ…死んでなかった…のか?…それに…龍化…だと…まさかリーシャも…龍魔眼持ち…とは…」

「こう見えても私達従姉妹だから。同じ血が入ってるんだもん、龍化使えてもおかしくないよ。
それに、龍化使える人間はあの程度じゃ死なないよ。」

私がそう言いながらリーシャを促して船に戻る。
それに続いて詩乃達も船に乗り込んだ。

「雷の神殿は後で解放すれば良いよ。とりあえず今は逃げよう。」

私はそう言って龍化すると低空飛行でリーシャと共に艦橋へ向かった。

「ミカっ!急速潜行!目的地は光の神殿!」

私がそう言うとミカは急いで船を起動した。

「コンゴウ起動っ!CPUオンライン、システムオールグリーン、コンゴウ抜錨。
全エネルギーをエンジンに回して。
その他全てを予備電源に切り替え。
両舷前進微速ヨーソロー。」

ミカがそう言うと船がゆっくりと動き出した。

「一気に速度上げるから何かにつかまっててね!
両舷最大戦速、ピッチ角下げ70!
急速潜行!」

そう言うと船が水面から70度の角度で水中に潜った。
かなり斜めになっているはずなのに全然平気だ。
この船の魔法コーティングのお陰だろう。

「リーシャ、お帰り。」

「うん、ただいま。」

そう言って私とリーシャが抱きあった。
そこに詩乃もくっつく。

「リーシャ、油断は禁物。相手は強い、どこまでも追ってくるかも。」

「そうですね。クロードはどこまでも、追いますよ。」

そう言ったのはアリアさんだった。
えっ!アリアさん乗ってたの?

「ふふっ、私が乗ったのに気付かなかったでしょう。
それもそのはず。
私はずっと乗っていましたから。
先ほどのアリアは私の作り出した偽物です。
ここに来たのはクロードを殺すため。
しかし、今は無理と判断しました。
ですがクロードはリーシャさんを狙う。
なら、リーシャさんについていればクロードにも会えるし私の力でリーシャさんも守れます。
私も旅に加えて下さいな。」

アリアさんが言った。
もちろん、大歓迎だ。
あれだけ強い人が味方につくなら言う事はない。

「もちろんです。これからよろしくお願いします。」

私が言うとアリアさんは頷いて少し休ませて下さいと、艦橋を出た。
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