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10,雷の神殿、再び。

リーン。

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※注意※
この話には百合要素が含まれます。
それでもよろしい方はお読み下さい。




私達は光の神殿からすぐ脇を通る川、アリー川を通ってリーンの街についた。
この川はリーンのすぐ後ろにそびえる山リーン山から流れる川でミルウェイ、アルーシャを通り海へと抜ける。
この川のお陰でコンゴウをリーンまで持って来れた。

「じゃあ、いつも通り私は船で待ってるね。」

ミカが笑顔でそう言って手を振る。

「璃乃ちゃん、私達はちょっと買い物してきても良いかな?」

ココアがハルの手を握って言った。
ハルは少し嫌そうだ。

「うん。大丈夫だよ。私達もお城に行ってリーシャの服を取ってきたらすぐ戻る予定だし。」

「まぁ、予定は未定だけど…なんせリーシャの実家な訳だし…」

まぁ、そうだよね。
リーシャの両親からすれば攫われた娘が帰ってきたのだ。
ゆっくりと話したいこともあるだろう。
そう言う私達は両親と殆ど話さずに来ちゃったけど…

「そうですね。私も少し父様と母様にお会いしたいです。
けど…
お父様達にお会いして、お話をしたら旅立つのが嫌になってしまいそうです。
お父様達にお会いしたいですが…
どうすれば…」

リーシャが悲しそうに言った。
リーシャは私達だけの時は普通に話すけど家ではちゃんとしたお姫様らしい言葉づかいだ。

「なんか、変な感じ。」

ハルが言った。
そっか、ハルは攫われる前にあってないもんね。
普通に話してるのしか見たこと無いからこっちは凄く珍しい感じかな。

「あはは、まさにお姫様って感じだよね。」

「ふふっ、家ではいつもこうですよ?」

リーシャがそう言ってスカートの裾を掴んでお辞儀した。
お姫様のやるあれだ。
うん、やっぱり様になってるなぁ。

「じゃあ、私達はそろそろ行くね。」

そう言って私達は船から降りるとそのまま城へ向かった。

☆★☆★☆★☆★☆★

「姫様っ良くお戻りで!」

「教皇様、心配しておりました。」

「姫様、お怪我はありませんか?」

「教皇様…」

「姫様…」

城に向かうまでの道でたくさんの人達がそう言ってリーシャの心配をしていた。
リーシャは大丈夫ですと笑顔で手を振りながら城に向かった。

☆★☆★☆★☆★☆★

「おおっ、姫様。良くお戻りで。」

「まぁ、姫様。お召し物も御汚れになって。すぐに新しいお召し物をご用意致しますわ。」

「姫様、まずはご入浴を。璃乃様、詩乃様も是非。」

城に行くと何人もの執事やメイドが出迎えてもてなされた。
私達はお言葉に甘えてお風呂を借りることになった。

「ふふっ、3人でお風呂なんて久し振りだね。」

「だね~何年ぶりだろ?」

リーシャの問いかけに私が答えた。
本当はこれが初めてだけど…
皆記憶が改編されてるから私もこの城に来たことがある。

「杏、苺、お風呂だよ。」

そう言うと2人も頷いて服を脱いだ。
2人とも奴隷だったとは思えないほど健康的な体つきで胸は私達とちがって膨らみはないが腰は括れている。
胸の所には奴隷紋の後がうっすらと残っており日焼けしたみたいになっている。毎日ブラッシングを怠らなかったからか髪に耳と尻尾も凄くふさふさで毛づやが良い。

「2人とも狐尾族でしょ?やっぱり狐尾族は体つきも綺麗だよね~魔法系統が高い分狼牙族と違って筋肉質じゃないし。」

そう言ってリーシャが2人の頭を撫でた。
2人は嬉しそうに尻尾を振っている。
少し撫でるとリーシャは服を脱いだ。

私たちより胸は大きくココアはAとBの間と言っていたがBあるかも知れない。
腰は括れておりスラッとしている。
そして右太股には白い翼にピンクのハートマークが描かれていた。
あれって…

「2人はどこにあるの?紋章。」

リーシャがそう言って私達の体を眺める。
なんか、眺められながら服脱ぐのは恥ずかしいな。

「どこだろね~」

私はそう言いながら服を脱いだ。
華奢な体つきで少し膨らんだ胸に括れた腰、左脇腹には黄色い王冠を被った赤い狼の横顔が描かれている。
詩乃も服を脱ぐと体つきは私と殆ど変わらない。
違うのは私より少し胸が膨らんでいる程度。
私とは逆、右脇腹に黄色い王冠の下に青い表紙の本のマークが描かれていた。
これが私達の紋章だ。
この紋章と言うのは貴族の家の娘にのみつけられるもので『パーソナルマーク』と呼ばれている。
そのマークが描かれた物はその人の所持品だと言う証にもなるのだ。

「脇腹だと見せづらくない?」

「ん~、基本ティーシャツ捲るだけで見えるから大丈夫かな。」

「確かにその方がスカートめくるよりは行儀良いかなぁ…」

リーシャが言った。
確かに、リーシャはスカートめくらないと見えないもんね。
なんて話ながらお風呂場に入る。
今までみたことのないような広いお風呂場だ。
マーライオン的なやつはないけどお風呂場に滝がある。
さすがはお城だなぁ。

「苺、杏、髪と尻尾洗ってあげるね。」

「ありがとうございます。マスターが洗うの、好きです。」

「私もっ!凄く気持ちいいっ!」

苺と杏がそう言って床に女の子座りで座ると尻尾を降って耳もパタパタ動かした。
私達も2人と一緒に居て2人の感情表現も分かるようになってきた。
あれは喜んでいる証だ。

いつも通り私は苺の髪と尻尾を洗ってあげた。
隣では詩乃が杏の髪と尻尾を洗っている。

「水流すから耳畳んで~」

私がそう言うと耳をおって水が入らないようにした。
狐尾族は狐の耳を持つから顔の側面には耳がない。
なんかそれが変な感じだ。

「マスター?」

私が苺の髪を流した後ぼーっと考えていたら苺が上を向いて私の方を見ていた。

「ん、なんでもないよ。ほら、体洗っちゃいな。」

「はいっ!」

そう言ってストレージから赤いタオルを取り出すと苺に渡した。
柔らかいフワフワ鳥の羽毛で作ったタオルで女の子の柔肌を傷つけずに洗うことが出来る貴族お気に入りの一品だ。

「あ、それフワフワ鳥のタオル?」

リーシャが気付いて聞いてきた。

「うん。そうだよ。このタオルなら肌傷つけないし。」

「フワフワで触り心地も良いから私もお気に入り。」

リーシャがそう言って黄緑色のタオルを取り出した。
やっぱり貴族以上よ人に人気なんだなぁ。
物凄い高級品だし。

「ほんと、これないと体洗えないよね~」

「だね~」

私達が話していると詩乃が私達に近寄ってきた。

「ん?どうしたの?」

「ん。体洗い終わった。」

詩乃早いなぁ。
ついさっきまで杏の髪洗ってた気がするけど…

「早いね。」

「ん。まぁ。」

あ、これは眠いからか。
お風呂で寝るとマズいから早くお風呂出たいんだな。
私は苺に貸したのとは別のタオルをストレージから出すと体を洗った。

「うーん…久しぶりにゆっくりお風呂入ったなぁ…」

「だね~いままではコンゴウのシャワーだけだったもんね。」

シャワーだけだと立ちっぱだしあんまり休めない。
私達は湯船に浸かると私と詩乃が同時にリーシャに近づいた。

「リーシャ~いつの間にこんなになったの~」

私がそう言ってリーシャの右胸に触れた。

「ひうっ!ちょ、ちょっと璃乃~驚かさないで。普通に成長期だし大っきくなるよ~」

「おー、それは詩乃達に対する嫌み?」

そう言って詩乃が左胸を掴んだ。

「ちょ、痛い!痛いって!ごめん、ごめんだから!」

リーシャが逃げるように体をねじらす。

「いや~この胸は調査する必要があるよ~」

「ん。調査。大丈夫、触るだけ。」

「ちょっ!んっ…やめっ…んあっ…」

私と詩乃が胸を弄るとリーシャは身をよじりながら色っぽい声を出した。

「おー、敏感。」

「だね~やっこいねぇ~」

「んう…んっ…璃乃…詩乃…だめっ…んっ…だって!」

リーシャが喘ぎながら言った。

「悪いのはこの胸かっ!」

「おー、けしからん。」

そう言って私達が揉むとリーシャが静かになって息荒く下を向いた。

「え~いっ!」

そう言って私がリーシャを押し倒した。
バシャーンと音を立てて私とリーシャの体が水に沈む。
しかし、そんな深くなく下に居るリーシャすら半身浴にしかならない。
寝た状態で半身浴だからかなり水深が浅い。
まぁ、入ってすぐの段差だししかたないけど。

「ふっ、ふっ、ふっ、姫を捕らえた。」

私がリーシャの両手を掴んでそう言った。

「も、もう…まだ何かやるの?」

リーシャがそう言って腕をじたばたさせる。
しかし、同い年だからか力はほぼ互角でリーシャは抜け出せない。

「んー、どうしよっかな~良いアイテムあるしそれでも使おうかなぁ?」

私がそう言って黒い首枷に鎖のついた物をストレージから取り出した。

「ちょっ!それって隷属の首枷じゃん!なんでそんな物っ…」

リーシャが物凄く驚いた顔で言った。
まぁ、それもそうか。
これは隷属の首枷。
どんな相手でも隷属してしまうと言うものでこれをつけられるとつけた本人しか外せずその人の指示には絶対に従うという物だ。
どんなに意志が強くても体が勝手に主人の指示に従ってしまう。

「これ?苺と杏は元奴隷だよ?これは苺と杏の装備品。ウインドカッターで外したんだけどストレージに入れたら修復されてた。」

「え?ウインドカッターで?どうやって?これ、いかなる魔法でも弾くはずだよ?」

リーシャが物凄く驚いた顔で言った。

「だって私SS級魔導士だよ?流石にこの首枷もSS級魔導士の魔法には対応してなかったみたい。」

私がそう言うと物凄くと驚きつつも呆れていた。

「さてと、リーシャ姫。しばらくの間隷属しててね。そうだな…コンゴウに戻るまでの間…かな。
その間は何も話さないこと。良い?」

「嫌って言ってもするんでしょ?」

「勿論。」

リーシャが嫌そうにそう言った。
私が手を離すとリーシャは起き上がって顔を上に向けて首枷がつけやすいようにしてくれた。
私は首枷をリーシャの首につけた。

「ううっ…首が違和感。」

リーシャがそう言って首枷を弄る。
すると首枷と鎖のつなぎ目がチャラチャラと鳴った。

「試しに使ってみようか。リーシャ、私に抱き着いて。」

私がそう言うと眼から光が消え、一色になった。

「はい。」

そう言ってリーシャが私に抱き着く。
柔らかい胸が私に触れる。

「どう?隷属の気分は。」

「言い分けないでしょ。でも、変な命令でなくて良かったかな。」

「変な命令はするつもりないよ。元に戻って。」

私がそう言うとリーシャが抱き着くのを辞めた。

「さてと、ご両親に会いに行こうか。」

「はぁ、父様と母様に会うのに首枷とか…はぁ…」

リーシャが嫌そうに言った。
私達はお風呂から出ると脱衣所に行った。
脱衣所にはメイドが数人来ていた。

「まぁ!姫様…その首枷…隷属の首枷ではありませんか!どうして…」

メイドの一人が言った。
まぁ、貴族としてはこんな物つけられたら屈辱だろう。

「リーシャを攫った男につけられた。隷属の首枷の効果は知ってるでしょ?どうしてもとれなくて…」

「そうでしたか…姫様、お気を落とさないで下さい。」

メイド達が肩を落として言った。
自分の主人が隷属の首枷をつけて帰ってきたのだ。
そりゃ悲しいよね。

「私は仮面の男を追います。
これを外さない限り教皇としてリリア教の皆様を導くことなど出来ません。」

リーシャがメイド達に着付けをして貰いながら言った。
今度は旅に出ることも踏まえてドレスではなくコートにして貰っていた。
首まで隠れる黄緑色のコートでこれなら首枷も隠れる。
コートの中には白いティーシャツを着ており下は黄緑色のミニフレアスカートにオーバーニーソックスで靴は茶色いブーツだ。
まぁ、旅に出るのだからラフな恰好の方が良いよね。

「ありがとうございます。父様と母様は?」

「はい、王室におります。」

そう言ってメイドが扉を開けた。
メイドに連れられて王室に向かうとそこには見たことはないはずなのに見覚えのある顔…リーシャの両親だ。
リーシャと似て小顔な両親でどちらも童顔だ。

「リーシャ、良く戻ったわ。」

「璃乃ちゃん、詩乃ちゃん、リーシャを助けてくれてありがとうね。」

二人が立ち上がって言った。

「いえ、ですが…」

私がそう言ってリーシャのコートの首元を捲る。
すると隷属の首枷が顔を出す。
リーシャの白い肌に似合わない黒い首枷はとてもよく目立つ物だ。

「こ、これは…」

「隷属の首枷です。仮面の男につけられました。私達はリーシャを連れて仮面の男を追うつもりです。お許し頂けますか?」

「勿論です。リーシャを…娘を救って下さい。」

母親が私の元に駆け寄って言った。

「勿論です。私達も従妹が奴隷だなんて嫌です。絶対にこの首枷を外して帰ってきます。」

「あぁ、頼む。頼むことしか出来ず本当に申し訳ないが…心の底からお願いする。リーシャの首枷を外してやってくれ。」

父親がそう言って頭を下げた。

「リーシャ、行くよ。」

私がそう言うとリーシャは首元を隠した。

「お父様、お母様、行って参ります。」

リーシャはそれだけ話すと私達の肩に手を置いてそのまま王室を出た。

「リーシャ…」

「…父様と母様とお話はしたいです。しかし、してしまったら…
きっと、旅を続けたくなくなります。
お父様達と過ごしたくなってしまいます。
ですから…これでいいんです。
璃乃、詩乃…ありがとうございます。」

そう言って城を後にする。
目指すは雷の神殿。
急いで向かわないとね。
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