こがねむしのはーちゃん

維和 左京

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こがねむしのあーちゃん

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 なつのおわりに、こがねむしのおかあさんが2つのたまごをうみました。
「いつかきっとむかえにくるからね。それまでがんばるんだよ」
 おかあさんはそういいのこすと、たまごをつちのなかにうめ、おそらへととびたちました。

 あきになって、たまごがかえりました。
 さきにかえったたまごは、あーちゃんといういもむしになりました。
 それから3かほどしてかえったたまごは、はーちゃんといういもむしになりました。

 あーちゃんたちは、きのねっこがだいこうぶつ。
 まいにちむしゃむしゃたべました。
 ふたりはいつもいっしょ。
 ねっこをたべて、つちのなかであそんで、いっぱいねむりました。
 そのうちに、にひきはおおきないもむしになりました。
 らいねんのはるになると、おとなのこがねむしになってとびたつのです。
 それまでにはおかあさんがむかえにくると、ふたりはしんじていました。

 ふゆになりました。
 そとはとてもさむくて、あーちゃんたちのおかあさんは、たちまちしんでしまいました。
 そうとはしらないふたりは、じっとおかあさんがくるのをまちつづけました。
「きょうもおかあさんはこなかったね」
「あしたはきっとくるよ」
 ねっこをたべてから、ふたりはねむりにつきました。
 つちのなかはおそらよりあたたかいので、ふたりはぐっすりねむることができました。

 そんなあるひのこと。
「はーちゃん、ほら、ねっこだよ」
 あーちゃんがねっこをもってきましたが、はーちゃんはたべようとしません。
「どうしたの?」とあーちゃんがきくと、
「さっきみみずさんにきいたの。おかあさんはもうしんじゃってるって」
「ええっ」
「こがねむしのおとなは、ふゆをこせないんだって」
「そんなのうそだ!」
 あーちゃんはおおごえをだしました。
「きっとおかあさんはくるよ。そんなうそをしんじちゃだめだよ」
「うん」
 はーちゃんはうなずくと、ようやくねっこをたべはじめました。

 そんなあるひ、はーちゃんはかぜをひきました。
 あーちゃんは、はっぱのふとんをもってきたり、おいしいねっこをもってきたりして、いっしょうけんめいかんびょうしました。
 でも、はーちゃんのぐあいはよくなりません。
 やがてはーちゃんは、どんどんやせていきました。
「おねえちゃん、はーちゃんがしんだら、おそらのうえでおかあさんにあえるかな?」
 はーちゃんはいきもたえだえにいいます。
「はーちゃん、しっかりして。おそらにおかあさんはいないよ。きっともうすぐおかあさんはむかえにくるから。だからしんじゃだめだよ」
「うん。でもはーちゃん、もうねむいの」
 はーちゃんはそういうと、ゆっくりめをとじました。
 あーちゃんは、そのめがひらくのをずっとまっていましたが、ついにそのめはにどとひらきませんでした。
「はーちゃん、いやだよ。しんじゃいやだよ。あたしをひとりにしないで」
 あーちゃんがないても、はーちゃんはもうこたえませんでした。

 あーちゃんはひとりぼっちになってしまいました。
 さむいなか、つちのなかでじっとしていました。
 あーちゃんは、まだおかあさんがくるのをまっていました。
 おかあさんがうそをつくはずない。むかえにくるといったんだから、きっとくるんだ。
 あーちゃんはつちのふかいところにもぐって、じっとまっていました。

 やがて、はるになりました。
 あーちゃんはおとなになり、おそらにとびたちました。
 おかあさんは、ついにむかえにきませんでした。でも、いまのあーちゃんには、べつのつちでそだったともだちがいっぱいいるので、もうさびしくありません。
 つちのなかにはなかったたべものも、いっぱいたべました。

 しばらくしてなつになり、そのなつももうおわろうとしていました。
 あーちゃんはたまごをうみました。
 あーちゃんは、ふゆになれば、じぶんがしんでしまうことをしっていました。
 じぶんがうんだたまごをさすりながら、たまごからかえったこどもがひとりきりだと、さびしくてしんでしまうかもしれないとおもいました。
 それで、あーちゃんはたまごにはなしかけました。
「いつかきっとむかえにくるからね。それまでがんばるんだよ」
 あーちゃんはそういいのこすと、たまごをつちのなかにうめ、おそらへととびたちました。

 おわり
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