暴君は野良猫を激しく愛す

藤良 螢

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さざなみ

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 浮かばれない気分での食事は、味気ないように感じられた。作業のように箸を動かしていたから、自分が何を食べたのかすら記憶にない。
 その後も湯殿だ何だと幾つかの過程を経たが、座敷の方が気になってひどく落ち着かなかった。

(なに、これ。ありえない。これじゃあ私が殿様を待ってるみたい……)

 梢の音、床の軋みひとつにも浮き足立って、そんな自分が理解できない。
 胸の内のほとんどを占めるのは、彼のことだ。彼にされた仕打ちを忘れるなどできるはずがない。

「どうにも物憂げだな。何を考えている?」

 甘やかな響きとは正反対の力強い腕に引き寄せられる。好きなのか、またも膝の上に乗せられて、ゆらゆらと彼ごとゆりかごのように揺れる。
 素直に答えるのはしゃくで口も開かず顔を背けたが、彼の機嫌が悪くなることはなかった。
 彼のことは怖くて仕方がないけれど、こういう時間は存外嫌いではない。人肌の温もりは久しく疎遠になっていたし、声が心地好いのだ。
 するりと指先が首筋を辿る。ひくりと喉を痙攣させると、上出来だと彼が喉奥で笑った。

「逃げなかった褒美をやらねばなぁ」

 たっぷりと情欲の溢れ出る耽美な響きが耳元で囁かれる。唇が耳朶を掠めて思わず息が詰まった。
 逃げてはいけない。先ほどの教訓がいきて、なんとか拒むことはしないでいる。けれど怖れや焦りは偽ることができなくて、触れられるたびに身を捩った。

「っきょ、は……お酒、いいんですか?」
「いらん。これ以上邪魔されては敵わんからな」

 首筋に唇を寄せられたまま舐められて、ぞくりと全身が粟立った。
 袷から差し込まれた大きな手の平が添えられて、意地悪にも頂を指で弾く。痛みに声を上げると、今度はくうるりと回すように弄られて腰が跳ねた。

「あ……っ、ぅあ……」

 絶妙な力加減で弄ばれて、だんだんと吐く息に熱がこもりだす。体が高ぶって、ほんのりと肌が赤らんだ。
 身を捩って避けようにも追いかけてくるそれに、体の奥が疼いた。
 見計らったように、反対側からもうひとつ入ってきた。思わせぶりに脇腹を這ったそれ、やがて寄り道もせず目的地に辿り着く。

「具合は悪くないようだな」

 湿り気を帯びたそこを指の腹でなぞり、彰久が満悦な笑みを浮かべた。
 あっけない、堪え性のない自分の体は彼が煽る通り従順にその熱を高めて、幸菜をより強い羞恥の崖に突き落とす。
 素肌を撫でられているだけなのに限界が近づいてきていた。
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