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まず最初に頭に浮かんだのは仔猫だった。
だが、初心者が挑むには難関だということは明白で、上達の目標に据えることにした。
針道具を持って戻ってきた亜希は、今日は基礎だけと言って自らも針を持った。
手本のような等間隔の縫い目を披露する彼女を真似て、幸菜も久しぶりに糸を通していく。
「筋が宜しゅうございますね、覚えがおありで?」
「昔、本当にちょっとだけ」
刺繍をしたことはないが学校の授業でも簡単な作品を作ったことはあったから、縫い方や糸の始末だとかは難なくこなせる。
初めて母に習った頃は一目縫うたび指をさしてしまっていたが、今はもうそんなことはない。
懐かしい思い出を振り返りながらも縫う手は止めなかった。
「この調子なら、すぐにでも目標に辿り着けそうですね」
「本当ですか? 亜希さんがそう言ってくれるなら自信が持てそうです」
噛みしめるように相好を崩すと、亜希の手がそっと前髪を攫うように触れた。
ぱちくりと瞬いたのも束の間、すぐさま我に返った彼女は弾かれるように手を引いて幸菜の前に頭を下げる。
「申し訳ございませんっ! 不躾なことを……!」
「えっ? えっ? 待って待って! 顔を上げてください!!」
畳から引き剥がすように彼女の体を押し上げるが、なおも彼女はへばりつこうとする。何故こんなことになるのかわからない幸菜は泣きたくなった。
「そんな……土下座までするようなこと、してないじゃないですか」
「いいえ、わたくしのようなものが気安く触れるなど、本来ならあってはならないことです」
「なら、お願いします。謝らないでください。……誰かに頭を撫でてもらったのは久しぶりで、嬉しかったんです」
「ですが……」
なかなか頷いてくれない亜希に、「お願いです」と三度重ねる。
たじろぐ彼女にもう一押しだと見込んだところで、外から第三者の声がかかった。
「お寛ぎのところ申し訳ございません……。その、遼展様が……」
恐る恐ると近づいてきた女中は、朝にもあった彼女だ。確か、名前は美津といったか。
細い方が憐れにも震えている。面差しには戸惑いと焦りが満ちていた。
「どうかしたんですか?」
「その、茶会を開くから幸菜様を、と。殿にお伺いしたのですが、何も仰られず……」
どうしましょう、と消え入りそうな声で尋ねる美津に、幸菜と亜希も顔を見合わせた。
「殿様は、本当に何も?」
「はい……」
念を押しての確認も、やはり変わらない。
本当に彼の人の考えることはよくわからない。
「どうなさるのです?」
「どうもなにも」
選択肢なんてあって無いようなものだ。
幸菜は倒れこむようにして天井を仰いだ。
だが、初心者が挑むには難関だということは明白で、上達の目標に据えることにした。
針道具を持って戻ってきた亜希は、今日は基礎だけと言って自らも針を持った。
手本のような等間隔の縫い目を披露する彼女を真似て、幸菜も久しぶりに糸を通していく。
「筋が宜しゅうございますね、覚えがおありで?」
「昔、本当にちょっとだけ」
刺繍をしたことはないが学校の授業でも簡単な作品を作ったことはあったから、縫い方や糸の始末だとかは難なくこなせる。
初めて母に習った頃は一目縫うたび指をさしてしまっていたが、今はもうそんなことはない。
懐かしい思い出を振り返りながらも縫う手は止めなかった。
「この調子なら、すぐにでも目標に辿り着けそうですね」
「本当ですか? 亜希さんがそう言ってくれるなら自信が持てそうです」
噛みしめるように相好を崩すと、亜希の手がそっと前髪を攫うように触れた。
ぱちくりと瞬いたのも束の間、すぐさま我に返った彼女は弾かれるように手を引いて幸菜の前に頭を下げる。
「申し訳ございませんっ! 不躾なことを……!」
「えっ? えっ? 待って待って! 顔を上げてください!!」
畳から引き剥がすように彼女の体を押し上げるが、なおも彼女はへばりつこうとする。何故こんなことになるのかわからない幸菜は泣きたくなった。
「そんな……土下座までするようなこと、してないじゃないですか」
「いいえ、わたくしのようなものが気安く触れるなど、本来ならあってはならないことです」
「なら、お願いします。謝らないでください。……誰かに頭を撫でてもらったのは久しぶりで、嬉しかったんです」
「ですが……」
なかなか頷いてくれない亜希に、「お願いです」と三度重ねる。
たじろぐ彼女にもう一押しだと見込んだところで、外から第三者の声がかかった。
「お寛ぎのところ申し訳ございません……。その、遼展様が……」
恐る恐ると近づいてきた女中は、朝にもあった彼女だ。確か、名前は美津といったか。
細い方が憐れにも震えている。面差しには戸惑いと焦りが満ちていた。
「どうかしたんですか?」
「その、茶会を開くから幸菜様を、と。殿にお伺いしたのですが、何も仰られず……」
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「殿様は、本当に何も?」
「はい……」
念を押しての確認も、やはり変わらない。
本当に彼の人の考えることはよくわからない。
「どうなさるのです?」
「どうもなにも」
選択肢なんてあって無いようなものだ。
幸菜は倒れこむようにして天井を仰いだ。
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