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看取
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「幸菜様っ、幸菜様っ! どちらへ行かれるのですかっ?」
息を切らしつつの問いかけに、幸菜は足を止めず顔だけを後ろに向ける。
「庭の探索、って言いませんでしたっけ?」
はてと小首を傾げる彼女は幼げで可愛らしいが、亜希が聞きたいのはそういうことではない。
美津が茶会を知らせにやってきたのに、打掛を脱ぎ出したかと思えば一言、「聞かなかったってことにしておいてください」とだけ言い置いて庭へ躍り出た理由を知りたいのだ。
「あれでは、あんまりでございますっ。遼展様のご気性を、幸菜様もお察しでしょう?」
「そりゃあ……。でも、私が行く意味なんて無いと思いますよ?」
朝餉の時は、確認さえできなかったと言うから赴いた。遼展の顔を立てるために。
けれど、確認されても彰久は何も言わなかったというなら、幸菜が足を運ぶ義理はない。
「あ、やっぱりあった」
そう呟いて足を止めた幸菜の肩を、放すものかと亜希はしっかり掴んだ。
呼吸のたびに肩が上下する亜希と違って、彼女はけろりとしている。その差を生み出しているのが歳の差なのか育ちの違いなのかはわからないが、悔しく思えた。
中庭の外れだろうここは程よく開けていた。頭上には草木が生い茂り日差しを和らげている。木漏れ日が明るく照らすちょうどそこには、狙ったかのように腰掛けになりそうな置き石があった。
座ったら? と勧める幸菜に一度は固辞しかけたが、体は正直だった。主人を立たせたままで、と罪悪感には気づかないふりをした。
この中庭にこんな場所があることを自分でさえ知らなかったのに、どうして来て日の浅い彼女が知っているのか不思議でならない。
「んー! 風が気持ちいいー!」
ぐっと腕を伸ばして背伸びする彼女は本当に気持ちが良さそうだ。肘まで袖が落ちるのを嗜めるより先にそう思った。
「……城での暮らしは、窮屈ですか?」
気がつけばそう尋ねてしまっていた。
すぐに失言だと取り消そうとしたが、それより先に幸菜が苦笑した。
「まあ、違うとは言えませんよね。人の目がありすぎるし、今回みたいなこともあるから、気が抜けない」
「そう、ですよね……」
返答などわかっていたはずなのに、改めて直面すると胸に刺さる。本来なら、彼女はこうあるはずだったのだと思い知らされる。
こうして唐突に散策を始めたのも、人目を避けたかったからだろうか。
聞くのはさすがに不躾がすぎて、出かかったものを飲み込んだ。
「幸菜様は、本当に植物がお好きでございますね」
「そうですね。実家もそれなりに植物があった方だと思ってましたけど、村に入ったら全然違って。大自然! って思いました」
へらりと笑う彼女の言葉に、実家?と亜希は首を傾げた。
てっきり村で生まれ育ったと思い込んでいたが、どこかから移り住んだということか。
「ご実家でも、植物を愛でておいでで?」
「うーん……あの頃はそうでもなかったです。庭にも部屋にも、あるのが当たり前だったので」
「部屋にも?」
ますますわからなくなる亜希を他所に、幸菜は懐かしそうに笑っていた。
息を切らしつつの問いかけに、幸菜は足を止めず顔だけを後ろに向ける。
「庭の探索、って言いませんでしたっけ?」
はてと小首を傾げる彼女は幼げで可愛らしいが、亜希が聞きたいのはそういうことではない。
美津が茶会を知らせにやってきたのに、打掛を脱ぎ出したかと思えば一言、「聞かなかったってことにしておいてください」とだけ言い置いて庭へ躍り出た理由を知りたいのだ。
「あれでは、あんまりでございますっ。遼展様のご気性を、幸菜様もお察しでしょう?」
「そりゃあ……。でも、私が行く意味なんて無いと思いますよ?」
朝餉の時は、確認さえできなかったと言うから赴いた。遼展の顔を立てるために。
けれど、確認されても彰久は何も言わなかったというなら、幸菜が足を運ぶ義理はない。
「あ、やっぱりあった」
そう呟いて足を止めた幸菜の肩を、放すものかと亜希はしっかり掴んだ。
呼吸のたびに肩が上下する亜希と違って、彼女はけろりとしている。その差を生み出しているのが歳の差なのか育ちの違いなのかはわからないが、悔しく思えた。
中庭の外れだろうここは程よく開けていた。頭上には草木が生い茂り日差しを和らげている。木漏れ日が明るく照らすちょうどそこには、狙ったかのように腰掛けになりそうな置き石があった。
座ったら? と勧める幸菜に一度は固辞しかけたが、体は正直だった。主人を立たせたままで、と罪悪感には気づかないふりをした。
この中庭にこんな場所があることを自分でさえ知らなかったのに、どうして来て日の浅い彼女が知っているのか不思議でならない。
「んー! 風が気持ちいいー!」
ぐっと腕を伸ばして背伸びする彼女は本当に気持ちが良さそうだ。肘まで袖が落ちるのを嗜めるより先にそう思った。
「……城での暮らしは、窮屈ですか?」
気がつけばそう尋ねてしまっていた。
すぐに失言だと取り消そうとしたが、それより先に幸菜が苦笑した。
「まあ、違うとは言えませんよね。人の目がありすぎるし、今回みたいなこともあるから、気が抜けない」
「そう、ですよね……」
返答などわかっていたはずなのに、改めて直面すると胸に刺さる。本来なら、彼女はこうあるはずだったのだと思い知らされる。
こうして唐突に散策を始めたのも、人目を避けたかったからだろうか。
聞くのはさすがに不躾がすぎて、出かかったものを飲み込んだ。
「幸菜様は、本当に植物がお好きでございますね」
「そうですね。実家もそれなりに植物があった方だと思ってましたけど、村に入ったら全然違って。大自然! って思いました」
へらりと笑う彼女の言葉に、実家?と亜希は首を傾げた。
てっきり村で生まれ育ったと思い込んでいたが、どこかから移り住んだということか。
「ご実家でも、植物を愛でておいでで?」
「うーん……あの頃はそうでもなかったです。庭にも部屋にも、あるのが当たり前だったので」
「部屋にも?」
ますますわからなくなる亜希を他所に、幸菜は懐かしそうに笑っていた。
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