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37.リットウシグレ号の父親登場
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ゆっくりと目を開けると、目の前にはシグレ号が分身していた。
ああ、まだ、意識が完全にもどっていないのか。
あれほど、お守りや札を使ったのだから、こうなってしまうのも仕方ない。
そう考えていると、声が聞こえてきた。
「どうだい、父さん?」
「心配はない。これは聖なる気に当たりすぎただけだ。2・3日も休んでいれば、元気になるだろう」
シグレ号の父さんという言葉に驚くと、その姿がはっきりと見えてくる。
シグレ号の隣にいたのは、鹿毛の一角獣だ。顔立ちはシグレ号にそっくりで、纏っている霊力からも、親子であることは明らかだ。
その一角獣は言った。
「念のため、その吸血鬼がいたという部屋に案内してくれ。浄化しておこう」
「頼もしいけど、気をつけてね。分身が物陰に潜んでいるかもしれない!」
シグレ号がいうと、父一角獣は少し気に入らなそうに答えた。
「お前は私を誰だと思っているんだ?」
「ジャストウェイブ……」
「わかっているのならいい」
ジャストウェイブ号は、グレードワンと言われる地域最強クラスの悪魔を撃退した実績のある一角獣だ。
彼はメリザンドの部屋へと入ると、まるで吸血鬼がいたという痕跡そのものを消すかのように、角を光らせながら丁寧に邪気を払って行ったそうだ。
実際に、何匹かコウモリ型のトークンが残っていて、逃げようとしていたが無駄だ。
ジャストウェイブクラスの一角獣になると、少し掠めただけでも羽がちぎれて蒸発し、目が合っただけでも下級悪魔なら跡形もなく消し飛ぶ。
そして翌日には、森へと帰っていったので、僕はお礼も言えないまま彼と別れてしまったことになった。
「……お礼くらい言いたかったな」
そう呟いたが、息子のリットウシグレ号が代わりに言った。
「これからも小生のことをよろしくって言ってたよ。それに、自分も異世界転移者の馬主が欲しかったって」
リットウシグレ号の話だと、ジャストウェイブ号には、まだまだこなさなければいけない仕事も多いようだ。
「そうか……冒険者を続けていれば、また会える日が来るかな?」
「それはもちろんだよ。小生も一角獣として経験を積んで、お父さんに恐れられる同業者にならないとね!」
その言葉を聞いて僕もその通りだと感じていた。リットウシグレ号ならできるだろうし、まだまだ若いんだ。僕のように躓かないで、真っ直ぐに伸びて欲しいと思う。
メリィもちょうど、麦粥を持ってきてくれた。
「よかった。すっかり顔色も良くなりましたね!」
「いつまでも寝てもいられないからね。せっかく問題が1つ片付いたんだ。これからはクレバスに入るような依頼も来るだろうし……早く筋トレをしてガチャを引かないとね」
「小生も努力しないとね。ところで……?」
「なんだ?」
「女神の石って……どういう効果なのかな、あれ?」
ああ、例の大大吉のアイテムか。
あれは確か、死んでしまった仲間を1日以内なら蘇らせるアイテムだ。まあ、バカ正直に言うのもアレだから、ちょっと茶化すかな。
「あれは保険だからな。なるべく使わないに越したことはない」
「曖昧な言い方だな~ 小生が食べちゃうぞ~」
「やらしー言葉に聞こえるからヤメレ」
そう言いながら僕たちが笑いあっていた頃、別の場所では険しい表情をしていた者がいた。
この吸血鬼は最近、魔王の仲間入りを果たしていた。
鬼は壊れた土人形を睨むと、気に入らなそうにつぶやいていく。
「まさか……俺様の呪いを打ち破った奴がいるとはな……」
その土人形を掴むと、吸血鬼は少し考えこんだ。
「誰だったか、この呪いをかけた奴は……くそ、こんなことになるのなら、きちんと日付と種族を記しておくべきだった!」
少し間が空いたが、鬼はまだ考えている。
「順番的には……有翼人かエルフと言った高等種族か。思い出せない……なんて言っている場合じゃないぞ。これは病気のようなモノなのだから、免疫を作られたら厄介だ」
鬼が力を込めると、その土人形はバラバラに崩れ去った。
「こうなったら、草の根を分けてでも探し出すしかなさそうだな。必ず……」
その目が赤黒く光った。
「息の根を止めてやる!」
ああ、まだ、意識が完全にもどっていないのか。
あれほど、お守りや札を使ったのだから、こうなってしまうのも仕方ない。
そう考えていると、声が聞こえてきた。
「どうだい、父さん?」
「心配はない。これは聖なる気に当たりすぎただけだ。2・3日も休んでいれば、元気になるだろう」
シグレ号の父さんという言葉に驚くと、その姿がはっきりと見えてくる。
シグレ号の隣にいたのは、鹿毛の一角獣だ。顔立ちはシグレ号にそっくりで、纏っている霊力からも、親子であることは明らかだ。
その一角獣は言った。
「念のため、その吸血鬼がいたという部屋に案内してくれ。浄化しておこう」
「頼もしいけど、気をつけてね。分身が物陰に潜んでいるかもしれない!」
シグレ号がいうと、父一角獣は少し気に入らなそうに答えた。
「お前は私を誰だと思っているんだ?」
「ジャストウェイブ……」
「わかっているのならいい」
ジャストウェイブ号は、グレードワンと言われる地域最強クラスの悪魔を撃退した実績のある一角獣だ。
彼はメリザンドの部屋へと入ると、まるで吸血鬼がいたという痕跡そのものを消すかのように、角を光らせながら丁寧に邪気を払って行ったそうだ。
実際に、何匹かコウモリ型のトークンが残っていて、逃げようとしていたが無駄だ。
ジャストウェイブクラスの一角獣になると、少し掠めただけでも羽がちぎれて蒸発し、目が合っただけでも下級悪魔なら跡形もなく消し飛ぶ。
そして翌日には、森へと帰っていったので、僕はお礼も言えないまま彼と別れてしまったことになった。
「……お礼くらい言いたかったな」
そう呟いたが、息子のリットウシグレ号が代わりに言った。
「これからも小生のことをよろしくって言ってたよ。それに、自分も異世界転移者の馬主が欲しかったって」
リットウシグレ号の話だと、ジャストウェイブ号には、まだまだこなさなければいけない仕事も多いようだ。
「そうか……冒険者を続けていれば、また会える日が来るかな?」
「それはもちろんだよ。小生も一角獣として経験を積んで、お父さんに恐れられる同業者にならないとね!」
その言葉を聞いて僕もその通りだと感じていた。リットウシグレ号ならできるだろうし、まだまだ若いんだ。僕のように躓かないで、真っ直ぐに伸びて欲しいと思う。
メリィもちょうど、麦粥を持ってきてくれた。
「よかった。すっかり顔色も良くなりましたね!」
「いつまでも寝てもいられないからね。せっかく問題が1つ片付いたんだ。これからはクレバスに入るような依頼も来るだろうし……早く筋トレをしてガチャを引かないとね」
「小生も努力しないとね。ところで……?」
「なんだ?」
「女神の石って……どういう効果なのかな、あれ?」
ああ、例の大大吉のアイテムか。
あれは確か、死んでしまった仲間を1日以内なら蘇らせるアイテムだ。まあ、バカ正直に言うのもアレだから、ちょっと茶化すかな。
「あれは保険だからな。なるべく使わないに越したことはない」
「曖昧な言い方だな~ 小生が食べちゃうぞ~」
「やらしー言葉に聞こえるからヤメレ」
そう言いながら僕たちが笑いあっていた頃、別の場所では険しい表情をしていた者がいた。
この吸血鬼は最近、魔王の仲間入りを果たしていた。
鬼は壊れた土人形を睨むと、気に入らなそうにつぶやいていく。
「まさか……俺様の呪いを打ち破った奴がいるとはな……」
その土人形を掴むと、吸血鬼は少し考えこんだ。
「誰だったか、この呪いをかけた奴は……くそ、こんなことになるのなら、きちんと日付と種族を記しておくべきだった!」
少し間が空いたが、鬼はまだ考えている。
「順番的には……有翼人かエルフと言った高等種族か。思い出せない……なんて言っている場合じゃないぞ。これは病気のようなモノなのだから、免疫を作られたら厄介だ」
鬼が力を込めると、その土人形はバラバラに崩れ去った。
「こうなったら、草の根を分けてでも探し出すしかなさそうだな。必ず……」
その目が赤黒く光った。
「息の根を止めてやる!」
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