エッケハルトのザマァ海賊団 〜金と仲間を求めてゆっくり成り上がる〜

スィグトーネ

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11.人魚の島

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 海賊船を強奪して3日目の朝。
 僕はハンモックの中でぐっすりと眠っていた。初日は船酔いに悩まされる時もあったが、さすがにこれだけ長くいれば慣れてくるものだ。

 足音が近づいてくると、目を開けるよりも前に僕を呼ぶ声がした。
「ハルト、島が見えたよ!」

 声をかけてきたのは、やはりマーチルだった。
 僕は眠い目を擦りながら起きると、早く白と言わんばかりに手を引っ張ってくる。
「おいおい、そんなに引っ張ると千切れちゃうよ」
「呑気なこと言ってる場合じゃないよ。はやく例の羅針盤を出して! でないと、どこに浅瀬があるのかわからないでしょ!」


 浅瀬というキーワードを聞いて、僕の頭はシャキッとした。確かに仲間の中に、海底の様子を探れるヤツはいない。

 当たり前の話だが、船は僕ら海賊にとって、家であり足であり大事な命綱だ。
 もし、浅瀬に乗り上げでもしてしまえば、修復できるかわからないし、転覆でもすれば待っているのは死だろう。

 
 僕はすぐにハンモックから降りると、急ぎ足で甲板を目指した。外はまだ日の出前だったが、一角獣ミホノシュヴァルツ号や、黒人の戦士ヤーシッチ、ドワーフの船大工ニッパーもいる。
「遅かったなハルト」
「シュヴァルツ号の探し物もあるかな?」
『そう簡単には見つからんだろうが、それとなく渡り鳥に調査させよう』

 ニッパーだけでなく、ヤーシッチもまだ遠くにある島を眺めながら言う。
「例のコンパス……出せるだろうか?」
「ちょっと待ってて……」


 精神を集中すると、僕の手元には宝珠コンパスだけが出てきた。それを大きくするような念じると、円盾状に変化していく。
「出たね……水中の様子に、海流の動き!」

 そう伝えると、全員が覗き込んで来る。というか、いつの間にオフィーリアとリーゼまで来たのだろう。
 もしかして、一番寝坊していたのが……僕だったのか?

 僕がそんなことを考えている間に、メンバーは話を進めていく。
「とりあえず、近場に危険なポイントはなさそうだね」
『問題は、島に近づいた時だな。渡り鳥たちが言っていたように、浅瀬があちこちに点在している』

 シュヴァルツ号が言うと、ヤーシッチも頷いた。
「やはり、浅瀬の少ない島の南側から向かうべきだろうか?」
『いや、それはお勧めできない。島の南部は排他的な部族が暮らしているようだ』

 シュヴァルツ号の隣には、何羽もの渡り鳥たちが止まっており、ときどきさえずっている。
 僕の耳には小鳥の声にしか聞こえないが、シュヴァルツ号にとっては違うようだ。彼はしばらくのあいだ、小鳥たちに耳を向けていたが、こちらを見た。
 どうやら状況整理ができたらしい。
『この島には3大勢力があるようだ。南海岸を根城にしている部族。これは先ほども言った通り排他的だ』
「他の2部族は?」
『2つ目は、島の中央部と北側と西側を支配する部族。これは赤ひげと呼ばれる海賊団と結託して、島の内外を荒らしまわっているようだ』


 何だか、ヤバそうな部族しかいないように感じるが、残りの1つはどういう勢力なのだろう。
「残る1つは?」
『島の東側を支配している部族。これは一番穏やかな部族らしいが……周囲が浅瀬だらけで、そもそも行くのが難しいようだ』

 その話を聞いて、周りにいた仲間たちはお互いを見合う。
「つまり、どこの部族と仲良くしようとしても……リスクがあるってことだよね?」

 マーチルが言うと、ヤーシッチやニッパーも頷いた。
「そうだな。そう考えると……島への接触自体を避けるという選択もありだ。個人的には行ってみたいが……」
「ワシそうしたいが、命は1つだけ……嫌だという意見が多いなら尊重する」

 そういう話を聞くと、マーチル、リーゼ、オフィーリアの3人娘はお互いを見た。
「浅瀬が多いってことは……お魚もいっぱい採れそうだよね?」
「ええ、それに、他の商人や海賊が避けるからこそ、お宝の宝庫って考え方も……」
「つまり、ハイリスクハイリターンということですね」


 そして全員の視線が僕へと向いた。やはり便利なアビリティを持っているから、最後の判断は僕に委ねたくなるのだろう。
 僕は改めて、丸盾と化した宝珠を眺めてみた。

 コンパスの針は青色になって、人魚の入り江と思われる目的地を指し示しているが、その間には大小様々な浅瀬が僕たちを待ち受けている。
 だけど、その航路は迷路のように複雑だけど……道はある!

「お宝が手に入るかもしれないのなら……行くのが海賊だよね?」
 そう全員に問いかけると、彼らは笑みを浮かべながら頷いた。


【人魚の島(東側の海岸の一部)】
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