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15.報酬を新たに貰うエッケハルトたち
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戦いから30分後。
僕たちは、3人の海賊の捕虜と、6人の人魚の捕虜を連れてイブリンの元へと戻った。
「エッケハルト殿は3人の敵を、ヤーシッチ殿は7人の敵を打ち倒してくださいました」
「それからオフィーリア殿は、即興で土でできたゴーレムを作って、味方を援護してくださいました」
それらの報告を受けたイブリンは、満足そうに微笑むと言う。
「貴方がたの活躍のおかげで、土地を守ることができました。それに……」
彼女は、捕虜として連れて来たマーメイドに目をやる。
「この者は、敵当主の娘の1人です。交渉次第ではかなり有利な条件を引き出せると思います」
「そうでしたか。何やら敵に指図をしていたので……もしやと思っていましたが……」
ヤーシッチはどうやら、戦いながら敵部隊の動きをよく見ていたようだ。
もしかしたら、巧みに取り巻きから倒していき、撤退する時には敵将が孤立するように策を練っていたのかもしれない。
感心していると、イブリンは僕に話しかけてきた。
「さて、何か欲しいモノはありますか? まずはエッケハルト殿から伺いましょう」
真珠などの財宝はもう受け取っているからな。
少し考えてみると、まだ重要なモノがあることに気が付いた。
「では、我が海賊団と同盟を結んでもらう……というのは?」
その言葉を聞いて、イブリンは驚いた様子で瞳をぱっちりと開けていたが、やがて頷く。
「なるほど……貴方がたと協力関係を強化するというのも良い考えですね。いいでしょう……では、エリン」
イブリンに言われると、僕と同じくらいの年頃と思われるマーメイドがやってきた。
「何でしょうかお姉さま?」
「彼らについて行って見聞を広めて来なさい」
そう言われると、エリンと呼ばれたマーメイドは微笑みながら胸に手を当てて敬礼している。
「私の願いを……聞き入れて下さったこと、感謝いたします!」
どうやらこのエリンという少女は、前々から外の世界に行って見聞を広めたいと思っていたようだ。
イブリンは他にも真珠や琥珀などを謝礼としてくれたが、エリンの護衛を付けることまではしなかった。僕が思っている以上に戦況は厳しく、人員に余裕もないと見える。
こうして、人魚たちのお宝を手に入れた僕たちは、島で一泊することにした。
彼女たちは僕たちを仲間として受け入れてくれたらしく、ちょっとした宴も開いてくれたが、やはりこの場面でも鎧などの防具が出てこなかったので、装備品の弱さはかなり致命的と思われる。
ミホノシュヴァルツ号は、けが人をユニコーンホーンで治療すると長であるイブリンに言った。
『確かにマーフォークの皮膚は、普通の人間よりも丈夫ではあるが、肌着1枚というのはいただけない』
「もちろん承知しています。ですが、我々では防具を自製することも買いそろえることもできないのです」
『なるほど……そうなると、妹君のエリンが頼りというワケか』
エリンを見ると、彼女は真珠の入った箱を握りしめていた。
今の島の状況を考えると、東の部族の未来は……僕たちが握っていると考えても言い過ぎではないように思える。
そんなことを考えていると、マーチルがこちらを見た。
「ねえ、エッケハルト」
「なんだい?」
「そう考えると、次は武器を安値で売ってくれる場所がいいかな?」
僕が「そうだね」と頷くと、ドワーフの船大工ニッパーは頷いて言う。
「となると、我らがドワーフの職人町ハンマーブルグがお勧めだ」
ハンマーブルグの噂は僕も聞いている。あそこには様々な武器や防具と一緒に、ビールやウイスキーなど、質の良い武器や酒……それに食べ物なんかもあるという。
「賛成だね。みんなはどう思う?」
マーチルやヤーシッチはすぐに頷き、シュヴァルツ号は少し考えてからオーフェリアの反応を気にしたようだが、彼女も頷いたため、シュヴァルツ号も頷いた。
『いいと思うぞ』
「あそこには魚料理はもちろん、様々な肉料理やポテト料理もあると聞きますからね。今から楽しみです」
さすが料理当番のリーゼ。食材の確保も大事だもんな。
「ではイブリンさん、早速明日にハンマーブルグを目指します」
「旅の無事を祈っています」
こうして翌日。僕たちは、ドワーフの武器職人の町【ハンマーブルグ】を目指して移動を開始した。
もちろん出港の際には、無数の浅瀬が行く手を阻むのだが、僕の【エッケコンパス】とエリンの道案内で、前ほど時間をかけることなく大海原に出ることができる。
さて、今度はどんな人々と会えるのだろう……?
【マーメイドのエリン「何でしょうかお姉さま?」】
新たに仲間になった人魚族の女の子。
ボソボソと話す癖があり、少し内気な一面がある。
また、争いごとなどを嫌うため、怒鳴り声などを聞いてしまうと、誰かの後ろに隠れてしまいがち。
しかし、いったんバトルモードになると戦闘スイッチが入るのか、得意の水系魔法で応戦し、人魚の特権である防御力の高さも持ち合わせているため、なかなかに厄介な魔法使いになる。
得意技はウォーターシールドやウォータークッション。ウォーターシールドは文字通り水の防壁を作り出し、ウォータークッションは、自分か味方が壁に叩きつけられそうなときに発動して、衝撃を和らげる。
僕たちは、3人の海賊の捕虜と、6人の人魚の捕虜を連れてイブリンの元へと戻った。
「エッケハルト殿は3人の敵を、ヤーシッチ殿は7人の敵を打ち倒してくださいました」
「それからオフィーリア殿は、即興で土でできたゴーレムを作って、味方を援護してくださいました」
それらの報告を受けたイブリンは、満足そうに微笑むと言う。
「貴方がたの活躍のおかげで、土地を守ることができました。それに……」
彼女は、捕虜として連れて来たマーメイドに目をやる。
「この者は、敵当主の娘の1人です。交渉次第ではかなり有利な条件を引き出せると思います」
「そうでしたか。何やら敵に指図をしていたので……もしやと思っていましたが……」
ヤーシッチはどうやら、戦いながら敵部隊の動きをよく見ていたようだ。
もしかしたら、巧みに取り巻きから倒していき、撤退する時には敵将が孤立するように策を練っていたのかもしれない。
感心していると、イブリンは僕に話しかけてきた。
「さて、何か欲しいモノはありますか? まずはエッケハルト殿から伺いましょう」
真珠などの財宝はもう受け取っているからな。
少し考えてみると、まだ重要なモノがあることに気が付いた。
「では、我が海賊団と同盟を結んでもらう……というのは?」
その言葉を聞いて、イブリンは驚いた様子で瞳をぱっちりと開けていたが、やがて頷く。
「なるほど……貴方がたと協力関係を強化するというのも良い考えですね。いいでしょう……では、エリン」
イブリンに言われると、僕と同じくらいの年頃と思われるマーメイドがやってきた。
「何でしょうかお姉さま?」
「彼らについて行って見聞を広めて来なさい」
そう言われると、エリンと呼ばれたマーメイドは微笑みながら胸に手を当てて敬礼している。
「私の願いを……聞き入れて下さったこと、感謝いたします!」
どうやらこのエリンという少女は、前々から外の世界に行って見聞を広めたいと思っていたようだ。
イブリンは他にも真珠や琥珀などを謝礼としてくれたが、エリンの護衛を付けることまではしなかった。僕が思っている以上に戦況は厳しく、人員に余裕もないと見える。
こうして、人魚たちのお宝を手に入れた僕たちは、島で一泊することにした。
彼女たちは僕たちを仲間として受け入れてくれたらしく、ちょっとした宴も開いてくれたが、やはりこの場面でも鎧などの防具が出てこなかったので、装備品の弱さはかなり致命的と思われる。
ミホノシュヴァルツ号は、けが人をユニコーンホーンで治療すると長であるイブリンに言った。
『確かにマーフォークの皮膚は、普通の人間よりも丈夫ではあるが、肌着1枚というのはいただけない』
「もちろん承知しています。ですが、我々では防具を自製することも買いそろえることもできないのです」
『なるほど……そうなると、妹君のエリンが頼りというワケか』
エリンを見ると、彼女は真珠の入った箱を握りしめていた。
今の島の状況を考えると、東の部族の未来は……僕たちが握っていると考えても言い過ぎではないように思える。
そんなことを考えていると、マーチルがこちらを見た。
「ねえ、エッケハルト」
「なんだい?」
「そう考えると、次は武器を安値で売ってくれる場所がいいかな?」
僕が「そうだね」と頷くと、ドワーフの船大工ニッパーは頷いて言う。
「となると、我らがドワーフの職人町ハンマーブルグがお勧めだ」
ハンマーブルグの噂は僕も聞いている。あそこには様々な武器や防具と一緒に、ビールやウイスキーなど、質の良い武器や酒……それに食べ物なんかもあるという。
「賛成だね。みんなはどう思う?」
マーチルやヤーシッチはすぐに頷き、シュヴァルツ号は少し考えてからオーフェリアの反応を気にしたようだが、彼女も頷いたため、シュヴァルツ号も頷いた。
『いいと思うぞ』
「あそこには魚料理はもちろん、様々な肉料理やポテト料理もあると聞きますからね。今から楽しみです」
さすが料理当番のリーゼ。食材の確保も大事だもんな。
「ではイブリンさん、早速明日にハンマーブルグを目指します」
「旅の無事を祈っています」
こうして翌日。僕たちは、ドワーフの武器職人の町【ハンマーブルグ】を目指して移動を開始した。
もちろん出港の際には、無数の浅瀬が行く手を阻むのだが、僕の【エッケコンパス】とエリンの道案内で、前ほど時間をかけることなく大海原に出ることができる。
さて、今度はどんな人々と会えるのだろう……?
【マーメイドのエリン「何でしょうかお姉さま?」】
新たに仲間になった人魚族の女の子。
ボソボソと話す癖があり、少し内気な一面がある。
また、争いごとなどを嫌うため、怒鳴り声などを聞いてしまうと、誰かの後ろに隠れてしまいがち。
しかし、いったんバトルモードになると戦闘スイッチが入るのか、得意の水系魔法で応戦し、人魚の特権である防御力の高さも持ち合わせているため、なかなかに厄介な魔法使いになる。
得意技はウォーターシールドやウォータークッション。ウォーターシールドは文字通り水の防壁を作り出し、ウォータークッションは、自分か味方が壁に叩きつけられそうなときに発動して、衝撃を和らげる。
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