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16.エリンの能力に感動する僕たち
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間もなく、大海原に出た僕たちだったが、エリンの凄さに圧倒された。
なんと彼女。汲んだ海水から真水だけを取り出すアビリティを持っていたのである。
長年船乗りをしていたニッパーやヤーシッチは当然として、本当にここ数日で船乗りになった僕やマーチルさえ、これが凄い特殊能力だと理解できる。
「こ、この特殊能力……凄すぎるね!」
そう言うとエリンは嬉しそうに頬を赤らめていた。
「そこまで言われると……照れます」
当然のことながら海水は飲み水には適さないので、船が海上に出る際は飲み水が必要になる。
しかし飲み水も、放置しておくと腐ってしまうため、長期間航海する場合はビールを大量に積んで、それを飲み水代わりにすることになるのだ。
しかし、エリンがいれば、いつでも海水から飲み水を分離できるから、ビールで酔っ払うことなく水分を確保できるし、ビールをそのまま商品として使うことさえできる。
「あの……空いた酒樽は……ありますか?」
エリンに言われてカラの酒樽を持ってくると、彼女は分解した水で樽をきれいに洗ってから、再びバケツで海水を掬い取ってロープで引き揚げてから、海水から真水の調達をはじめた。
「…………」
「…………」
彼女は、その行動を何回か繰り返すと、やがて酒樽を真水でいっぱいにしてフタをした。
「次の空いた酒樽は?」
「もう持ってきているよ?」
エリンの水調達は、ビール樽を7つほど真水で満たすと限界を迎えたようだ。いくらアビリティがあるとはいえMPを使うようである。
「……ちょっとMPを……使い切ってしまった……ようです。横に……なってきます」
「あ、ああ……ゆっくり休んで」
ヤーシッチは、ビール樽を眺めながら言った。
「1つあたり30リットル入るから……210リットルか」
マーチルやリーゼも頷く。
「凄いよね……私たちって1人当たり3リットルくらいあれば十分だから、8人で飲んでも……8日くらいは持つんだよね……」
「料理などにも使うから、1日に樽1個分と考えても……凄い!」
その直後に、エリンはひょこっと顔だけを出した。
「そうでした……水……また、足りなくなったら……補充します……」
「あ、ああ!」
そういうことなら、まずは大量に水を飲むミホノシュヴァルツ号の出番だろう。
バケツまず軽く水で洗ってから中の水を捨てると、彼はもったいない……と言いたそうな顔をしていた。
その後に水をたっぷりと入れると、彼もまた嬉しそうに笑いながらこちらを見る。
『船旅の最中に水のがぶ飲みか……贅沢にも程があるな』
「ああ、やっぱり東の人魚と仲良くしておいてよかったよ」
『ありがたく頂戴しよう』
シュヴァルツ号の機嫌が良さそうなので、僕は質問をしてみることにした。
「なあ、シュヴァルツ?」
『どうした?』
「真水を出す能力って……どれくらいレアなんだ?」
その質問をすると、シュヴァルツ号は視線を上げて考え込んでいる。
『我々ユニコーンでも、そうだな……7頭に2頭くらいか。人間の詳しい比率はわからんが……お前のいた冒険者街を思い出す限り……魔導師系のギルドでも同じくらいの比率か』
どうやらヒールほどレアではないが、有用な能力なので、すぐにどこかの団体に登用されてしまう類の能力のようだ。
確かに、日照りとか起こった時に、役立つ能力だもんな。
『とにかく、素晴らしい能力だ……ありがたく頼らせて貰おう!』
「そうだな!」
普段から水を節約するクセがあっても、融通が利くとわかると甘えが出てくるものだ。
飲み水にするのは当然として、料理だけでなく、身体を軽く拭く際にも真水を使うようになり、更には掃除にも使っていた。
だから、翌日の同じ時間帯になると、樽が3つほど空樽になっており、僕たちは4つ目に手を伸ばそうとしていた。
「空いた樽には……また水を……補充します」
「すまないね。よろしく頼むよ!」
さすがに、水を汲み上げる作業までエリンにやらせてしまうのは申し訳ないので、僕、ヤーシッチ、オフィーリア、マーチルなどでサポートしながら、給水作業を行った。
「昨日より、作業が早くなったのでは?」
ヤーシッチが言うと、エリンも嬉しそうに笑っている。
「捗ってるか~?」
作業がだいぶ進んだときに、ニッパーがやってきたので、マーチルは不機嫌そうに言った。
「ずいぶん遅かった……ん?」
彼女が表情を戻した理由は、ニッパーが新しい樽を抱えていたからだろう。
なんだか、とても軽そうだ。
「それ、もしかして……廃材から作ったの!?」
そう質問すると、ニッパーはニッと笑った。
「その通り! これでまた1つ貯水用の樽が増えたワケだ!」
新しい樽にも水を補給しようとしたとき、見張りをしていたシュヴァルツ号は、目を細めた。
『あそこに妙な船があるな』
「おウマさま、ノロマな船なら相手にしない方がいいぞ。海賊がわざと難破船を装っていることもある」
ニッパーはそう言ったが、シュヴァルツ号は眉間にシワも寄せた。
『それたけではない。渡り鳥たちも……あの船は水不足と言っている』
その話を聞いて、ニッパーもヒゲを弄りながら考え込んでいる。
「なるほど。それは逆に……ビジネスチャンスかもな……」
【樽の大きさや種類】
現実世界では様々な規格の樽があり、更にどんな木材を材料にするかでも中の液体に影響を与えることもあるが、このツーノッパの世界では、主にオーク材が使われている。
また、樽の大きさはツーノッパ2代目国王によって数種類に統一されているため、物語には30リットル樽の出番がとても多い。
直径は45センチメートル。高さは35センチメートルなので、腰に気を付ければ1人で持ち運べることができる。
なんと彼女。汲んだ海水から真水だけを取り出すアビリティを持っていたのである。
長年船乗りをしていたニッパーやヤーシッチは当然として、本当にここ数日で船乗りになった僕やマーチルさえ、これが凄い特殊能力だと理解できる。
「こ、この特殊能力……凄すぎるね!」
そう言うとエリンは嬉しそうに頬を赤らめていた。
「そこまで言われると……照れます」
当然のことながら海水は飲み水には適さないので、船が海上に出る際は飲み水が必要になる。
しかし飲み水も、放置しておくと腐ってしまうため、長期間航海する場合はビールを大量に積んで、それを飲み水代わりにすることになるのだ。
しかし、エリンがいれば、いつでも海水から飲み水を分離できるから、ビールで酔っ払うことなく水分を確保できるし、ビールをそのまま商品として使うことさえできる。
「あの……空いた酒樽は……ありますか?」
エリンに言われてカラの酒樽を持ってくると、彼女は分解した水で樽をきれいに洗ってから、再びバケツで海水を掬い取ってロープで引き揚げてから、海水から真水の調達をはじめた。
「…………」
「…………」
彼女は、その行動を何回か繰り返すと、やがて酒樽を真水でいっぱいにしてフタをした。
「次の空いた酒樽は?」
「もう持ってきているよ?」
エリンの水調達は、ビール樽を7つほど真水で満たすと限界を迎えたようだ。いくらアビリティがあるとはいえMPを使うようである。
「……ちょっとMPを……使い切ってしまった……ようです。横に……なってきます」
「あ、ああ……ゆっくり休んで」
ヤーシッチは、ビール樽を眺めながら言った。
「1つあたり30リットル入るから……210リットルか」
マーチルやリーゼも頷く。
「凄いよね……私たちって1人当たり3リットルくらいあれば十分だから、8人で飲んでも……8日くらいは持つんだよね……」
「料理などにも使うから、1日に樽1個分と考えても……凄い!」
その直後に、エリンはひょこっと顔だけを出した。
「そうでした……水……また、足りなくなったら……補充します……」
「あ、ああ!」
そういうことなら、まずは大量に水を飲むミホノシュヴァルツ号の出番だろう。
バケツまず軽く水で洗ってから中の水を捨てると、彼はもったいない……と言いたそうな顔をしていた。
その後に水をたっぷりと入れると、彼もまた嬉しそうに笑いながらこちらを見る。
『船旅の最中に水のがぶ飲みか……贅沢にも程があるな』
「ああ、やっぱり東の人魚と仲良くしておいてよかったよ」
『ありがたく頂戴しよう』
シュヴァルツ号の機嫌が良さそうなので、僕は質問をしてみることにした。
「なあ、シュヴァルツ?」
『どうした?』
「真水を出す能力って……どれくらいレアなんだ?」
その質問をすると、シュヴァルツ号は視線を上げて考え込んでいる。
『我々ユニコーンでも、そうだな……7頭に2頭くらいか。人間の詳しい比率はわからんが……お前のいた冒険者街を思い出す限り……魔導師系のギルドでも同じくらいの比率か』
どうやらヒールほどレアではないが、有用な能力なので、すぐにどこかの団体に登用されてしまう類の能力のようだ。
確かに、日照りとか起こった時に、役立つ能力だもんな。
『とにかく、素晴らしい能力だ……ありがたく頼らせて貰おう!』
「そうだな!」
普段から水を節約するクセがあっても、融通が利くとわかると甘えが出てくるものだ。
飲み水にするのは当然として、料理だけでなく、身体を軽く拭く際にも真水を使うようになり、更には掃除にも使っていた。
だから、翌日の同じ時間帯になると、樽が3つほど空樽になっており、僕たちは4つ目に手を伸ばそうとしていた。
「空いた樽には……また水を……補充します」
「すまないね。よろしく頼むよ!」
さすがに、水を汲み上げる作業までエリンにやらせてしまうのは申し訳ないので、僕、ヤーシッチ、オフィーリア、マーチルなどでサポートしながら、給水作業を行った。
「昨日より、作業が早くなったのでは?」
ヤーシッチが言うと、エリンも嬉しそうに笑っている。
「捗ってるか~?」
作業がだいぶ進んだときに、ニッパーがやってきたので、マーチルは不機嫌そうに言った。
「ずいぶん遅かった……ん?」
彼女が表情を戻した理由は、ニッパーが新しい樽を抱えていたからだろう。
なんだか、とても軽そうだ。
「それ、もしかして……廃材から作ったの!?」
そう質問すると、ニッパーはニッと笑った。
「その通り! これでまた1つ貯水用の樽が増えたワケだ!」
新しい樽にも水を補給しようとしたとき、見張りをしていたシュヴァルツ号は、目を細めた。
『あそこに妙な船があるな』
「おウマさま、ノロマな船なら相手にしない方がいいぞ。海賊がわざと難破船を装っていることもある」
ニッパーはそう言ったが、シュヴァルツ号は眉間にシワも寄せた。
『それたけではない。渡り鳥たちも……あの船は水不足と言っている』
その話を聞いて、ニッパーもヒゲを弄りながら考え込んでいる。
「なるほど。それは逆に……ビジネスチャンスかもな……」
【樽の大きさや種類】
現実世界では様々な規格の樽があり、更にどんな木材を材料にするかでも中の液体に影響を与えることもあるが、このツーノッパの世界では、主にオーク材が使われている。
また、樽の大きさはツーノッパ2代目国王によって数種類に統一されているため、物語には30リットル樽の出番がとても多い。
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