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17.洋上の取引
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そのまま船に近づいてみると、目の前の船から船員が出てきた。
彼は大声で話しかけてくる。
「すまないー! 聞きたいことがあるんだが……ビールを余分に持っていないかー!?」
情報の通りか……と思いながら、僕も返答した。
「ビールの持ち合わせは少ないがー、水なら8樽……約240リットル分あるー!」
その言葉を聞いた相手方の船からは、何人もの船員が出てきた。その格好から商船の類のようだ。
彼らは、少し話し合ってからこちらに問いかけてきた。
「その水は、いつ頃ー 調達したものだー?」
「ついさっきだー、こちらにはー、海水からー、真水を取り出すー、能力者がいるー!」
その言葉を聞いた商船のクルーは、再びざわついたあと、少し話し合いをしてから、再び声をかけてきた。
「取引したい! そちらの欲しいモノは!?」
「金品か、盾や鎧ー……又は、樽の材料になる木材はー?」
「ならば、銀を出そう! 水30リットルにつき、大銀貨3枚でどうだ!?」
エリンを見ると、彼女は頷いた。
「わかった! 積荷を受け渡したい。そちらは銀貨とカラ樽を用意してくれ!」
間もなく船を横付けすると、僕らは水の入った樽を相手型の船に運び込み、実際に中を確かめてもらう。
「……これはありがたい。新鮮な水だな」
商船のクルーたちは有り難そうに頷くと、空っぽの酒樽と大銀貨3枚を、こちらに渡してくれた。
僕たちも頷くと、次々と水の入った樽を船に運び込んでいく。
8つ運び終えると、彼らは約束通り残り21枚の大銀貨と7つの空っぽの樽を支払った。これで後は、樽の中をきれいに洗うだけで水を入れるための樽として流用できる。
「ありがとう。これだけ新鮮な水があれば……もう少しのあいだは食いつなげるよ」
「水が無くなるのは死活問題ですからね。僕たちも用心しないと……」
「ところで君たちはこの後、どこに向かうんだい?」
「ハンマーブルグです。どうしても手に入れたいモノがありまして」
そう伝えると、彼らは「逆方向か……」と残念そうに言った。
「我々はツーノッパ王国のツノセイユだから……ここでお別れだな」
「そうでしたか……では、幸運を!」
「幸運を!」
そう挨拶を交わすと、僕たちはそれぞれの目的地を目指すことにした。
この大海原をたった1隻で旅するよりも、お供がいた方がいいのは彼らも同じということなのだろう。
「また水が無くなったので、新しく補充しますね」
そう言うと、マーメイドのエリンは桶を水面に落とすと、ゆっくり引き上げて海水から水を取り出す作業を行った。彼女の凄いところは、すでに90リットル分の水を確保しておきながら、まだまだこの作業を続けられることだろう。
けっきょくエリンは、樽4つ分。
おおよそ120リットルの水を樽の中に満タンに入れると、大きく伸びをしていた。
「これだけあれば、1日くらいは大丈夫ですよね?」
「ああ、少し節約すれば明日いっぱいは持つよ!」
そう言ってエリンを安心させようと思った。
なんだか、彼女は少しばかり無理をしているように思えるからだ。僕も冒険者として新しいパーティーに入ったばかりの頃は、新しい環境に慣れることになかなか苦労した覚えがある。
この船が出港したばかりの頃は、全員が同じような立場だったから、心理的な負担も大きくはなかっただろうけど、エリンの立場から見れば、全てのクルーが先輩に見えるだろうから、苦労も多いと思う。
そんな僕の胸中がわかったのか、オフィーリアもにっこりと笑って言った。
「疲れたと思いますので、少し休憩しましょう。ちょうどリーゼさんが昼食を作って下さったので……」
「ちょうどお腹が減っていたので、嬉しいです」
「私も行く~」
オフィーリアだけでなくマーチルも一緒なので、ここは女の子たちに任せよう。
「ミホノシュヴァルツ号~ 鳥たちは何か気になることを言っているかい?」
『そうだな……気になることと言えば……』
こちらが頷くと、シュヴァルツ号はゆっくりと言う。
『ドワーフたちの港町でホースレースが開催されるかもしれない。という話くらいか……』
「ホースレース? それって、お金持ちが自慢のウマと一緒に賞金を持ち寄ってレースをするってやつか?」
そう質問すると、シュヴァルツ号は頷いた。
『まあ、吾らにはあまり関わりないことだろうがな』
【この世界の貨幣価値】
物価やその年の収穫高によって変動したりするが、平均的にはこんな感じである。
旧銅貨1枚 約10円
銅貨1枚 約100円
小銀貨1枚 約1000円
大銀貨1枚 約1万円
小金貨1枚 約10万円
大金貨1枚 約100万円
プラチナ貨1枚 約1000万円
一般的な小作農民の年収が、大金貨1~2枚。
一般的な兵士の年収が、大金貨3~7枚。
一般的な騎士の年収が、大金貨20~40枚。
ツーノッパ国王の年収が、大金貨5万~8万枚。
農耕馬の値段は、大金貨1~3枚。
良馬・軍馬の値段は、大金貨5~20枚。
ユニコーンの値段は、プラチナ貨2~50枚。
ペガサスの値段は、プラチナ貨5~20枚。
ビールは30リットルで、大銀貨1~1.5枚。
ウイスキーは30リットルで、大銀貨6~8枚。
プラチナ貨は、先代国王が海外向けの取引に設けた通貨で、国内では船やペガサスやユニコーンと言った、高級なモノを買うときくらいしか使わない。
大金貨は、騎士などの身分の者に支払うための通貨。一般の人がお目にかかることはあまりない。
小金貨は、一般人が扱う実質的な最高貨幣。税金なども基本的にこれで支払う。
庶民が基本的に持ち歩いているのは、銀貨と銅貨が中心で、給料の支払いでも月給や日給制なら銀貨で支給する団体が多い。
彼は大声で話しかけてくる。
「すまないー! 聞きたいことがあるんだが……ビールを余分に持っていないかー!?」
情報の通りか……と思いながら、僕も返答した。
「ビールの持ち合わせは少ないがー、水なら8樽……約240リットル分あるー!」
その言葉を聞いた相手方の船からは、何人もの船員が出てきた。その格好から商船の類のようだ。
彼らは、少し話し合ってからこちらに問いかけてきた。
「その水は、いつ頃ー 調達したものだー?」
「ついさっきだー、こちらにはー、海水からー、真水を取り出すー、能力者がいるー!」
その言葉を聞いた商船のクルーは、再びざわついたあと、少し話し合いをしてから、再び声をかけてきた。
「取引したい! そちらの欲しいモノは!?」
「金品か、盾や鎧ー……又は、樽の材料になる木材はー?」
「ならば、銀を出そう! 水30リットルにつき、大銀貨3枚でどうだ!?」
エリンを見ると、彼女は頷いた。
「わかった! 積荷を受け渡したい。そちらは銀貨とカラ樽を用意してくれ!」
間もなく船を横付けすると、僕らは水の入った樽を相手型の船に運び込み、実際に中を確かめてもらう。
「……これはありがたい。新鮮な水だな」
商船のクルーたちは有り難そうに頷くと、空っぽの酒樽と大銀貨3枚を、こちらに渡してくれた。
僕たちも頷くと、次々と水の入った樽を船に運び込んでいく。
8つ運び終えると、彼らは約束通り残り21枚の大銀貨と7つの空っぽの樽を支払った。これで後は、樽の中をきれいに洗うだけで水を入れるための樽として流用できる。
「ありがとう。これだけ新鮮な水があれば……もう少しのあいだは食いつなげるよ」
「水が無くなるのは死活問題ですからね。僕たちも用心しないと……」
「ところで君たちはこの後、どこに向かうんだい?」
「ハンマーブルグです。どうしても手に入れたいモノがありまして」
そう伝えると、彼らは「逆方向か……」と残念そうに言った。
「我々はツーノッパ王国のツノセイユだから……ここでお別れだな」
「そうでしたか……では、幸運を!」
「幸運を!」
そう挨拶を交わすと、僕たちはそれぞれの目的地を目指すことにした。
この大海原をたった1隻で旅するよりも、お供がいた方がいいのは彼らも同じということなのだろう。
「また水が無くなったので、新しく補充しますね」
そう言うと、マーメイドのエリンは桶を水面に落とすと、ゆっくり引き上げて海水から水を取り出す作業を行った。彼女の凄いところは、すでに90リットル分の水を確保しておきながら、まだまだこの作業を続けられることだろう。
けっきょくエリンは、樽4つ分。
おおよそ120リットルの水を樽の中に満タンに入れると、大きく伸びをしていた。
「これだけあれば、1日くらいは大丈夫ですよね?」
「ああ、少し節約すれば明日いっぱいは持つよ!」
そう言ってエリンを安心させようと思った。
なんだか、彼女は少しばかり無理をしているように思えるからだ。僕も冒険者として新しいパーティーに入ったばかりの頃は、新しい環境に慣れることになかなか苦労した覚えがある。
この船が出港したばかりの頃は、全員が同じような立場だったから、心理的な負担も大きくはなかっただろうけど、エリンの立場から見れば、全てのクルーが先輩に見えるだろうから、苦労も多いと思う。
そんな僕の胸中がわかったのか、オフィーリアもにっこりと笑って言った。
「疲れたと思いますので、少し休憩しましょう。ちょうどリーゼさんが昼食を作って下さったので……」
「ちょうどお腹が減っていたので、嬉しいです」
「私も行く~」
オフィーリアだけでなくマーチルも一緒なので、ここは女の子たちに任せよう。
「ミホノシュヴァルツ号~ 鳥たちは何か気になることを言っているかい?」
『そうだな……気になることと言えば……』
こちらが頷くと、シュヴァルツ号はゆっくりと言う。
『ドワーフたちの港町でホースレースが開催されるかもしれない。という話くらいか……』
「ホースレース? それって、お金持ちが自慢のウマと一緒に賞金を持ち寄ってレースをするってやつか?」
そう質問すると、シュヴァルツ号は頷いた。
『まあ、吾らにはあまり関わりないことだろうがな』
【この世界の貨幣価値】
物価やその年の収穫高によって変動したりするが、平均的にはこんな感じである。
旧銅貨1枚 約10円
銅貨1枚 約100円
小銀貨1枚 約1000円
大銀貨1枚 約1万円
小金貨1枚 約10万円
大金貨1枚 約100万円
プラチナ貨1枚 約1000万円
一般的な小作農民の年収が、大金貨1~2枚。
一般的な兵士の年収が、大金貨3~7枚。
一般的な騎士の年収が、大金貨20~40枚。
ツーノッパ国王の年収が、大金貨5万~8万枚。
農耕馬の値段は、大金貨1~3枚。
良馬・軍馬の値段は、大金貨5~20枚。
ユニコーンの値段は、プラチナ貨2~50枚。
ペガサスの値段は、プラチナ貨5~20枚。
ビールは30リットルで、大銀貨1~1.5枚。
ウイスキーは30リットルで、大銀貨6~8枚。
プラチナ貨は、先代国王が海外向けの取引に設けた通貨で、国内では船やペガサスやユニコーンと言った、高級なモノを買うときくらいしか使わない。
大金貨は、騎士などの身分の者に支払うための通貨。一般の人がお目にかかることはあまりない。
小金貨は、一般人が扱う実質的な最高貨幣。税金なども基本的にこれで支払う。
庶民が基本的に持ち歩いているのは、銀貨と銅貨が中心で、給料の支払いでも月給や日給制なら銀貨で支給する団体が多い。
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