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22.ギャフンと言わされる成金
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ミホノシュヴァルツ号がゴールポストを横切ると、ドワーフを中心とした観客たちは一斉に声援を上げた。
どうやら、成金たちの嫌がらせ行為に腹を立てていた観客も多く、最後に僕たちに向かって鞭を振ってきた乗り手に対しては、ブーイングをかけていたのである。
そして、相手の乗り手がウマから振り落とされたときには、大歓声に変わり、僕たちが1着ゴールを決めたときには、日ごろの不満を晴らすように、八百長をしていた商会を名指しで非難していた。
さてVIPルームに視線を向けてみると、エメスト職員ギルドのギルド長は、他のVIP関係者から詰め寄られ、激しい抗議を受けていた。
さすがに、乗り手が他人のウマや乗り手を攻撃したのは問題だったらしく、更に乗り手が投げ落とされたあと、ウマが蛇行走りをして後方のウマたちの進路妨害をしたのだから、非難を受けるのは当たり前だろう。
予定通りに表彰式は執り行われ、僕たちは賞金も受け取ることはできたが、他のVIP席にいたお金持ちたちは、エメストギルド長を睨んでおり、これは当分のあいだは荒れそうな感じがする。
まあ、僕たちにとってはどうでもいい話なので、海賊船に戻ってからシュヴァルツ号からヒールをかけてもらうことにした。
すると、彼は賞金を眺めながら言う。
『1着は大金貨20枚。2着は8枚。3着は5枚。4着は3枚。5着は2枚か』
大金貨20枚か。この船を海賊から奪い取った時も凄かったが、前の僕では一生かかっても手に入らなかった金貨をたったの1日で稼いでしまうのだから凄いものだ。
何だか、金銭感覚が狂ってしまいそうで……怖い。
『さすがに、ゴール直前で鞭を振り上げて来るとは思わなかったがな……今回は本当に助かった』
そう言われると、僕は照れながら答えた。
「僕って乗ってただけだったじゃん。だから、なにか1つでも役に立てればと思ってさ」
『これで、あとは寝ていれば治るだろう。痛みが残ったりしたら言ってくれ』
「ありがとう!」
「腕は……もう大丈夫ですか?」
後ろを振り向くと、オフィーリアやハルフリーダが、心配そうな顔でこちらを眺めている。
「ああ、治療のおかげでね……賞金も無事に手に入ったし、無事に終わって良かったよ」
彼女たちは笑っていたが、マーチルはどこかすっきりしない顔をしていた。
「まあ、そうなんだけど……なんかハルフリーダはやられ損って感じだったよね。ウマも盗まれたままなんでしょう?」
「あれは……ウマを移動させる仕事だったので、私の持ち物ではないの」
「そ、そうなの!?」
その話を聞いていたミホノシュヴァルツ号は、いつも通りの穏やかな口調で言う。
『そのことなのだが、手は打っておいた』
「……え?」
ちょうどその頃、エメスト職人ギルドには、兵士たちが何人も入ってきて、隊長が領主の令状を広げていた。
「エメスト職人ギルドに告ぐ、脱税及び、人さらい、窃盗などの容疑で中をくまなく改めさせてもらおう!」
「そ、そんな……急に……!」
「よし、作業に移れ!」
「ははっ!」
「書類! 押さえました!」
「こちらもです!」
「よし、その品々はすぐに本部に持ち帰れ。特に二重帳簿を見逃すなよ!」
「はい!」
どうやら、この職人ギルドは、旅人などに配達や輸送の仕事の斡旋をするフリをして、盗賊にその品物を盗ませてから、契約によって強引に奴隷化させるなどの行為を繰り返し行っていたようである。
また、ホースレースの際にも、係員に賄賂を贈って妨害行為をさせていたり、レースに参加した乗り手を脅迫する行為も行っていたことが発覚した。
間もなく兵士たちは、エメストギルド長をはじめとする、幹部や関係者などを逮捕、連行すると、兵士の1人が上機嫌に言う。
「誰かはわかりませんが、タレコミがあったおかげで助かりましたね」
「ああ、こいつらはなかなか尻尾を出さなかったから、証拠を固めるのも大変だった」
「仮にも商会だから勘付かれると厄介ですし、役人に賄賂でも渡されれば面倒ですもんね」
「まあ、こういう商会に恨みを持っている人間も多いだろうからな。利用できるモノは何でも利用させてもらうさ」
翌朝、僕たちが大金貨10枚で、不足分のチェインメイルやウイスキーを買いに来たときには、中心街にあったエメストギルドはすっかり閉鎖されていた。
さすがに規模の大きな商会でも、領主から睨まれると業務を続けることは難しいようである。
「ねえ、ニッパー?」
「なんだ?」
「これって、職にあぶれたドワーフを雇うチャンスだよね?」
「……そうだな、少しばかり勧誘してみるか」
どうやら、成金たちの嫌がらせ行為に腹を立てていた観客も多く、最後に僕たちに向かって鞭を振ってきた乗り手に対しては、ブーイングをかけていたのである。
そして、相手の乗り手がウマから振り落とされたときには、大歓声に変わり、僕たちが1着ゴールを決めたときには、日ごろの不満を晴らすように、八百長をしていた商会を名指しで非難していた。
さてVIPルームに視線を向けてみると、エメスト職員ギルドのギルド長は、他のVIP関係者から詰め寄られ、激しい抗議を受けていた。
さすがに、乗り手が他人のウマや乗り手を攻撃したのは問題だったらしく、更に乗り手が投げ落とされたあと、ウマが蛇行走りをして後方のウマたちの進路妨害をしたのだから、非難を受けるのは当たり前だろう。
予定通りに表彰式は執り行われ、僕たちは賞金も受け取ることはできたが、他のVIP席にいたお金持ちたちは、エメストギルド長を睨んでおり、これは当分のあいだは荒れそうな感じがする。
まあ、僕たちにとってはどうでもいい話なので、海賊船に戻ってからシュヴァルツ号からヒールをかけてもらうことにした。
すると、彼は賞金を眺めながら言う。
『1着は大金貨20枚。2着は8枚。3着は5枚。4着は3枚。5着は2枚か』
大金貨20枚か。この船を海賊から奪い取った時も凄かったが、前の僕では一生かかっても手に入らなかった金貨をたったの1日で稼いでしまうのだから凄いものだ。
何だか、金銭感覚が狂ってしまいそうで……怖い。
『さすがに、ゴール直前で鞭を振り上げて来るとは思わなかったがな……今回は本当に助かった』
そう言われると、僕は照れながら答えた。
「僕って乗ってただけだったじゃん。だから、なにか1つでも役に立てればと思ってさ」
『これで、あとは寝ていれば治るだろう。痛みが残ったりしたら言ってくれ』
「ありがとう!」
「腕は……もう大丈夫ですか?」
後ろを振り向くと、オフィーリアやハルフリーダが、心配そうな顔でこちらを眺めている。
「ああ、治療のおかげでね……賞金も無事に手に入ったし、無事に終わって良かったよ」
彼女たちは笑っていたが、マーチルはどこかすっきりしない顔をしていた。
「まあ、そうなんだけど……なんかハルフリーダはやられ損って感じだったよね。ウマも盗まれたままなんでしょう?」
「あれは……ウマを移動させる仕事だったので、私の持ち物ではないの」
「そ、そうなの!?」
その話を聞いていたミホノシュヴァルツ号は、いつも通りの穏やかな口調で言う。
『そのことなのだが、手は打っておいた』
「……え?」
ちょうどその頃、エメスト職人ギルドには、兵士たちが何人も入ってきて、隊長が領主の令状を広げていた。
「エメスト職人ギルドに告ぐ、脱税及び、人さらい、窃盗などの容疑で中をくまなく改めさせてもらおう!」
「そ、そんな……急に……!」
「よし、作業に移れ!」
「ははっ!」
「書類! 押さえました!」
「こちらもです!」
「よし、その品々はすぐに本部に持ち帰れ。特に二重帳簿を見逃すなよ!」
「はい!」
どうやら、この職人ギルドは、旅人などに配達や輸送の仕事の斡旋をするフリをして、盗賊にその品物を盗ませてから、契約によって強引に奴隷化させるなどの行為を繰り返し行っていたようである。
また、ホースレースの際にも、係員に賄賂を贈って妨害行為をさせていたり、レースに参加した乗り手を脅迫する行為も行っていたことが発覚した。
間もなく兵士たちは、エメストギルド長をはじめとする、幹部や関係者などを逮捕、連行すると、兵士の1人が上機嫌に言う。
「誰かはわかりませんが、タレコミがあったおかげで助かりましたね」
「ああ、こいつらはなかなか尻尾を出さなかったから、証拠を固めるのも大変だった」
「仮にも商会だから勘付かれると厄介ですし、役人に賄賂でも渡されれば面倒ですもんね」
「まあ、こういう商会に恨みを持っている人間も多いだろうからな。利用できるモノは何でも利用させてもらうさ」
翌朝、僕たちが大金貨10枚で、不足分のチェインメイルやウイスキーを買いに来たときには、中心街にあったエメストギルドはすっかり閉鎖されていた。
さすがに規模の大きな商会でも、領主から睨まれると業務を続けることは難しいようである。
「ねえ、ニッパー?」
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