28 / 53
23.ドワーフ3人衆と共に人魚島へ
しおりを挟む
失業した職人ドワーフに声をかけてみたら、3人のドワーフが仲間になった。
ドライバ、ペンチ、ドリールの3人は、心地よさそうに大海原を見ている。
「人魚の島か……ぜひ、リーダーの顔を拝みたいもんだ!」
「金色の鱗を持つマーメイドだろ。さぞ美しいだろうなぁ」
「いくら妻子がいないからって、わざわざ海にまで繰り出すんだから、俺たちもスケベだよな」
「好奇心と言えよ、人聞きの悪い……」
彼らは元々エメストギルドに所属していた職人たちだが、かなり待遇が悪かったと見え、すんなりと誘いに応じてくれた。
やはり、商会やギルドのイメージも付いて回るホースレースの場で不正をするようなリーダーなのだから、普段から横柄な態度を取っていたのだろう。
僕たちは4日かけて人魚の島へとやってくると、イブリンのいる東海岸へと到着した。
「お久しぶりですイブリンさん」
再会を果たすと、僕たちはすぐに彼女たちにチェインメイルを見せた。
その鎖状の鎧を見て、イブリンたちはすぐに表情を変えている。やはり普段から死と隣り合わせの戦いをしているため、この鎧がどれだけ役立つかすぐに理解したようだ。
「これ……敵が鎧の下に着こんでいる鎧ですよね!」
「ええ、これ単体でもそれなりの防御力はありますし、鎧などを着こむ際にも必要になります」
「微調整は、俺たちが引き受けるぜ!」
「職人まで連れてきてくれたのですか!?」
「ええ、防具だけ渡しても、調整したり破損した時に対処できませんからね」
そんな話をしていると、部下の人魚がやってきた。
「イブリン団長!」
「おお、どうだった?」
「無事に、捕虜交換も終わりました。それからこれも……」
部下の人魚が差し出したのは、何とサンゴだった。
この東側ではあまり取れないようだが、この島でも南側では取れるというのだから驚いてしまう。恐らく、敵対勢力は、南側の人魚たちと交渉してこれらのサンゴを入手したのだろう。
「約束通りサンゴも持って来たのですね」
「ええ、やはり敵リーダーの妹を捕虜にできたのは大きいですね」
イブリンはサンゴが大量に入った袋を、そのまま僕に手渡してくれた。
「チェインメイルをありがとうございます。これを旅の足しにしてください」
「あ、ありがとうございます!」
ずっしりと重いサンゴの山を見ると、ヤーシッチやニッパーはゴクリと喉を動かした。
「この宝物……北国のポーライナ地域に持って行くと、高値で買い取ってくれるんじゃないか?」
「ワシもそう思う。あそこは……ウォッカという美味い酒があってだな!」
その話を聞いていたドワーフ3人衆はよだれを垂らしながら、酒についてニッパーと話していたが、僕は苦笑いしながらイブリンを見た。
「これもありがたく使わせて頂きます」
「他にも取引可能なモノがあれば、仰ってください」
僕らはウイスキーやビールを出すと、彼女たちも真珠を出してくれた。
今回は、それほど多くは仕入れられなかったが、ウイスキーは場所を取らない割にたくさんの真珠と交換できるので、なかなかに旨味がある。
「今日は1晩、ここでゆっくりと休ませて頂いて……それから出発しようと思います」
「わかりました。ごゆっくりお過ごしください」
滞在のあいだ、ミホノシュヴァルツ号は渡り鳥を使って周囲の情勢を監視していたが、特に敵が襲ってくることもなく翌朝を迎えることができた。
「では、行ってきます。ドワーフ3人衆も彼女たちの武具のメンテをお願いします」
「わかってる、しっかりやっとくぜ!」
ドワーフたちは昨日の夜のあいだに、マーメイドの恋人を作っており、すっかりと島の住人となっていた。この手の速さは……羨ましくもあり真似をしてはいけない気もする。
『では、もうひと稼ぎしてくる!』
「いってらっしゃい」
イブリンたちにこう言ってもらえるのだから、すっかり人魚の東海岸は僕たちの母港だ。
僕らは、難所の浅瀬を抜けると、そのまま東に向けて進んでいく。今のシーズンは風も出ていないので、北国へ向かうなら、ゴーレムオール漕ぎの力を借りなければならない。
エリンは海流を見ながら言った。
「海の流れが……ない……というのが……不便ですね」
「ああ、だけど考えようによっては、ライバルの商船や海賊もいないってことだよ」
その言葉を聞いて、オフィーリアは微笑んだ。
「ビジネスチャンスですね。予備のゴーレムも何台か用意していますから、多少のトラブルがあっても対応できます」
目的地は、ポーライナ地域で最も活気のある港町ダダダンスクだ。
この港町は、北国の玄関口と言われる場所で、ここよりも北部にある港町は雪で閉ざされてしまうことも多いそうだ。
「つまり、南方の豊かな海でしか取れないサンゴは、お値打ちモノになるって訳だ!」
ニッパーはそういうとニヤッと笑った。
さては、ウォッカという酒を仕入れようとしているな。まあ……人魚たちが喜ぶだろうし、その選択はアリだけどね。
ドライバ、ペンチ、ドリールの3人は、心地よさそうに大海原を見ている。
「人魚の島か……ぜひ、リーダーの顔を拝みたいもんだ!」
「金色の鱗を持つマーメイドだろ。さぞ美しいだろうなぁ」
「いくら妻子がいないからって、わざわざ海にまで繰り出すんだから、俺たちもスケベだよな」
「好奇心と言えよ、人聞きの悪い……」
彼らは元々エメストギルドに所属していた職人たちだが、かなり待遇が悪かったと見え、すんなりと誘いに応じてくれた。
やはり、商会やギルドのイメージも付いて回るホースレースの場で不正をするようなリーダーなのだから、普段から横柄な態度を取っていたのだろう。
僕たちは4日かけて人魚の島へとやってくると、イブリンのいる東海岸へと到着した。
「お久しぶりですイブリンさん」
再会を果たすと、僕たちはすぐに彼女たちにチェインメイルを見せた。
その鎖状の鎧を見て、イブリンたちはすぐに表情を変えている。やはり普段から死と隣り合わせの戦いをしているため、この鎧がどれだけ役立つかすぐに理解したようだ。
「これ……敵が鎧の下に着こんでいる鎧ですよね!」
「ええ、これ単体でもそれなりの防御力はありますし、鎧などを着こむ際にも必要になります」
「微調整は、俺たちが引き受けるぜ!」
「職人まで連れてきてくれたのですか!?」
「ええ、防具だけ渡しても、調整したり破損した時に対処できませんからね」
そんな話をしていると、部下の人魚がやってきた。
「イブリン団長!」
「おお、どうだった?」
「無事に、捕虜交換も終わりました。それからこれも……」
部下の人魚が差し出したのは、何とサンゴだった。
この東側ではあまり取れないようだが、この島でも南側では取れるというのだから驚いてしまう。恐らく、敵対勢力は、南側の人魚たちと交渉してこれらのサンゴを入手したのだろう。
「約束通りサンゴも持って来たのですね」
「ええ、やはり敵リーダーの妹を捕虜にできたのは大きいですね」
イブリンはサンゴが大量に入った袋を、そのまま僕に手渡してくれた。
「チェインメイルをありがとうございます。これを旅の足しにしてください」
「あ、ありがとうございます!」
ずっしりと重いサンゴの山を見ると、ヤーシッチやニッパーはゴクリと喉を動かした。
「この宝物……北国のポーライナ地域に持って行くと、高値で買い取ってくれるんじゃないか?」
「ワシもそう思う。あそこは……ウォッカという美味い酒があってだな!」
その話を聞いていたドワーフ3人衆はよだれを垂らしながら、酒についてニッパーと話していたが、僕は苦笑いしながらイブリンを見た。
「これもありがたく使わせて頂きます」
「他にも取引可能なモノがあれば、仰ってください」
僕らはウイスキーやビールを出すと、彼女たちも真珠を出してくれた。
今回は、それほど多くは仕入れられなかったが、ウイスキーは場所を取らない割にたくさんの真珠と交換できるので、なかなかに旨味がある。
「今日は1晩、ここでゆっくりと休ませて頂いて……それから出発しようと思います」
「わかりました。ごゆっくりお過ごしください」
滞在のあいだ、ミホノシュヴァルツ号は渡り鳥を使って周囲の情勢を監視していたが、特に敵が襲ってくることもなく翌朝を迎えることができた。
「では、行ってきます。ドワーフ3人衆も彼女たちの武具のメンテをお願いします」
「わかってる、しっかりやっとくぜ!」
ドワーフたちは昨日の夜のあいだに、マーメイドの恋人を作っており、すっかりと島の住人となっていた。この手の速さは……羨ましくもあり真似をしてはいけない気もする。
『では、もうひと稼ぎしてくる!』
「いってらっしゃい」
イブリンたちにこう言ってもらえるのだから、すっかり人魚の東海岸は僕たちの母港だ。
僕らは、難所の浅瀬を抜けると、そのまま東に向けて進んでいく。今のシーズンは風も出ていないので、北国へ向かうなら、ゴーレムオール漕ぎの力を借りなければならない。
エリンは海流を見ながら言った。
「海の流れが……ない……というのが……不便ですね」
「ああ、だけど考えようによっては、ライバルの商船や海賊もいないってことだよ」
その言葉を聞いて、オフィーリアは微笑んだ。
「ビジネスチャンスですね。予備のゴーレムも何台か用意していますから、多少のトラブルがあっても対応できます」
目的地は、ポーライナ地域で最も活気のある港町ダダダンスクだ。
この港町は、北国の玄関口と言われる場所で、ここよりも北部にある港町は雪で閉ざされてしまうことも多いそうだ。
「つまり、南方の豊かな海でしか取れないサンゴは、お値打ちモノになるって訳だ!」
ニッパーはそういうとニヤッと笑った。
さては、ウォッカという酒を仕入れようとしているな。まあ……人魚たちが喜ぶだろうし、その選択はアリだけどね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる