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24.エッケハルト、無人島を発見
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人魚の東海岸を出て2日。
僕たちは何事もなく船旅を続けていたが、渡り鳥を話をしていたミホノシュヴァルツ号はこちらを見た。
『……なあ、エッケハルト』
「どうしたんだい?」
『この近くの海域に無人島があるそうなのだ。寄って行かないか?』
無人島という話を聞いて興味を引かれた。なぜかと聞かれたら、そういう場所には変わった魚が集まったりしているからである。
「……それは気になるね。沖合まで行ってみるかい?」
『ああ、さすがにここに吾の探し物はないだろうが……念のため探してみたい』
おおよそ3時間ほどで、その島は見えてきた。
僕が考えていたよりも島は大きく、渡り鳥の話によれば12平方キロメートルほどあり、周囲にも小さな島はもちろん、浅瀬などもあるという。
「どうだ? 上陸できそうか?」
ニッパーが聞いてきたので、僕はエッケザックスの宝玉を出すと、丸盾状にして海の底を調べてみた。
すると……上陸可能なルートがわかってくる。
「可能そうだね……試しに上陸してみよう!」
前に行ったように、僕たちは船を慎重に操りながら浅瀬を縫うように進んでいく。
どうやらこの島は東西南北の全てを浅瀬で覆われているが、海が深い場所もあり、停泊に向いた海岸もあるようだ。
その場所に船を停泊させてから錨を下ろすと、ヤーシッチはホッと息を吐いていた。
「着いたぞ。早速上陸するのか?」
「いや、その前に……ミホノシュヴァルツ号とハルフリーダ。島に危険な生き物はいないか上空から偵察してくれ」
『わかった』
「行ってきます!」
シュヴァルツ号はウインドユニコーンなので空を飛べるし、ハルフリーダも有翼人なので、2人いるなら偵察してもらうこともできる訳だ。
彼らは船から飛び立つと、無人島の上空をぐるりと1周してから戻ってきた。
「……これと言って危険な生き物はいませんでした」
『それどころか、渡り鳥の言った通り本当に人間がいないな。原住民くらいはいるのではないかと思っていた』
「ちなみに、浅瀬がなく入って来れそうな海域は?」
シュヴァルツ号はちらりとハルフリーダを見ると、彼女は首を横に振ったので、すぐに答えたようだ。
『お前の盾に映っていた通りだ。本当に人を寄せ付けない島だな』
エリンも船の上から海岸の様子を見て言う。
「なんだか、島全体が……私たちの住む東海岸に近い感じですね」
「ちょっと上陸してみないか?」
そう提案すると、マーチルはすぐに頷きオフィーリアもノリノリのようだ。ヤーシッチも頷く。
「このエリンも連れて行ってください。部族が戦争で負けた時のために……保険が欲しいです」
「じゃあ5人で行こう。シュヴァルツ……留守は任せたよ」
『ああ、ゆっくりさせてもらう。あと……島の中心部は丘陵地帯になっているが、面白いモノがあったぞ』
間もなく船から降りて僕たちは島の探検をしたが、砂浜を抜けるとその先はすぐに森という感じだ。
その植物の充実ぶりを見たオフィーリアは、ニコニコと笑っている。
「素晴らしいです! これほど豊かな無人島に出逢えるなんて……船旅をしていて良かったと思います!」
最近はツーノッパでも森林伐採は進んでいるからな。こういう人の手が付いていない島を見ると、彼女の中に流れているエルフの血も騒ぐのだろう。
「では……皆さん、手を繋いでください」
「こうかい?」
何気なくオフィーリアと手をつなぐと、何だか子供の頃を思い出す。
一体彼女は何をするつもりなのだろう。
「では、参りましょう!」
彼女がそう言いながら森に近づいていくと……なんと、森の樹木が生き物のように退いて、森の中に道ができ始めた。こ、これが……ハイエルフの技というモノなのか!
噂には聞いていたが、これは凄い。
前にいたガンスーンチームにもエルフはいたけど、彼女もハーフエルフだったので森の中で現在地がわかる程度の力だった。
オフィーリアは森の中にも関わらず、まるで整備された道でも歩くかのように森の中を進んでいく。
恐らく、森の木々をかき分けながら進めば、100メートル進むのだって一苦労するのだろう。だけど、オフィーリアがいれば、2分もあれば余裕で通過できる。
僕たちは15分ほど歩いていくと、崖が姿を見せ……その先はリンゴの木がたくさん生えていることに気が付いた。
熟れて落ちたリンゴの実が、がけ下に溜まってお酒のような良い香りを漂わせている。
人魚のエリンも、これを見たらにっこりと笑った。
「こういうところも、東海岸とよく似ていますね……というか、生えている植物も似ています」
「もう少し調査してみようか……」
この日の調査で分かったことは、エリンの言う通り人魚の東海岸とよく似ているという結論だった。
間もなく僕たちは、ミホノシュヴァルツ号と親しい鳥に手紙を届けてもらうことを頼み、イブリンにこの島の話をしてみることにした。
彼女がどんな反応をするかはわからないが、知っておいて損はないだろう。
【見つけた無人島の大きさ】
最大長5.5キロメートル、最大幅3.2キロメートルの無人島。
島内の最大標高は、おおよそ110メートルで、島の中には小さいが川や湖もある。
エッケハルトの調査通り、丘陵地帯にはリンゴの木が群生しているため、渡り鳥にとっては休憩所のような場所になっている。
船乗りの中には、この島の存在に気が付いた者もいたのだが、実は人間で初上陸をしたのはエッケハルトがはじめてだった。
ほとんどは、この浅瀬の多さを嫌がって上陸を諦めたのだろう。
僕たちは何事もなく船旅を続けていたが、渡り鳥を話をしていたミホノシュヴァルツ号はこちらを見た。
『……なあ、エッケハルト』
「どうしたんだい?」
『この近くの海域に無人島があるそうなのだ。寄って行かないか?』
無人島という話を聞いて興味を引かれた。なぜかと聞かれたら、そういう場所には変わった魚が集まったりしているからである。
「……それは気になるね。沖合まで行ってみるかい?」
『ああ、さすがにここに吾の探し物はないだろうが……念のため探してみたい』
おおよそ3時間ほどで、その島は見えてきた。
僕が考えていたよりも島は大きく、渡り鳥の話によれば12平方キロメートルほどあり、周囲にも小さな島はもちろん、浅瀬などもあるという。
「どうだ? 上陸できそうか?」
ニッパーが聞いてきたので、僕はエッケザックスの宝玉を出すと、丸盾状にして海の底を調べてみた。
すると……上陸可能なルートがわかってくる。
「可能そうだね……試しに上陸してみよう!」
前に行ったように、僕たちは船を慎重に操りながら浅瀬を縫うように進んでいく。
どうやらこの島は東西南北の全てを浅瀬で覆われているが、海が深い場所もあり、停泊に向いた海岸もあるようだ。
その場所に船を停泊させてから錨を下ろすと、ヤーシッチはホッと息を吐いていた。
「着いたぞ。早速上陸するのか?」
「いや、その前に……ミホノシュヴァルツ号とハルフリーダ。島に危険な生き物はいないか上空から偵察してくれ」
『わかった』
「行ってきます!」
シュヴァルツ号はウインドユニコーンなので空を飛べるし、ハルフリーダも有翼人なので、2人いるなら偵察してもらうこともできる訳だ。
彼らは船から飛び立つと、無人島の上空をぐるりと1周してから戻ってきた。
「……これと言って危険な生き物はいませんでした」
『それどころか、渡り鳥の言った通り本当に人間がいないな。原住民くらいはいるのではないかと思っていた』
「ちなみに、浅瀬がなく入って来れそうな海域は?」
シュヴァルツ号はちらりとハルフリーダを見ると、彼女は首を横に振ったので、すぐに答えたようだ。
『お前の盾に映っていた通りだ。本当に人を寄せ付けない島だな』
エリンも船の上から海岸の様子を見て言う。
「なんだか、島全体が……私たちの住む東海岸に近い感じですね」
「ちょっと上陸してみないか?」
そう提案すると、マーチルはすぐに頷きオフィーリアもノリノリのようだ。ヤーシッチも頷く。
「このエリンも連れて行ってください。部族が戦争で負けた時のために……保険が欲しいです」
「じゃあ5人で行こう。シュヴァルツ……留守は任せたよ」
『ああ、ゆっくりさせてもらう。あと……島の中心部は丘陵地帯になっているが、面白いモノがあったぞ』
間もなく船から降りて僕たちは島の探検をしたが、砂浜を抜けるとその先はすぐに森という感じだ。
その植物の充実ぶりを見たオフィーリアは、ニコニコと笑っている。
「素晴らしいです! これほど豊かな無人島に出逢えるなんて……船旅をしていて良かったと思います!」
最近はツーノッパでも森林伐採は進んでいるからな。こういう人の手が付いていない島を見ると、彼女の中に流れているエルフの血も騒ぐのだろう。
「では……皆さん、手を繋いでください」
「こうかい?」
何気なくオフィーリアと手をつなぐと、何だか子供の頃を思い出す。
一体彼女は何をするつもりなのだろう。
「では、参りましょう!」
彼女がそう言いながら森に近づいていくと……なんと、森の樹木が生き物のように退いて、森の中に道ができ始めた。こ、これが……ハイエルフの技というモノなのか!
噂には聞いていたが、これは凄い。
前にいたガンスーンチームにもエルフはいたけど、彼女もハーフエルフだったので森の中で現在地がわかる程度の力だった。
オフィーリアは森の中にも関わらず、まるで整備された道でも歩くかのように森の中を進んでいく。
恐らく、森の木々をかき分けながら進めば、100メートル進むのだって一苦労するのだろう。だけど、オフィーリアがいれば、2分もあれば余裕で通過できる。
僕たちは15分ほど歩いていくと、崖が姿を見せ……その先はリンゴの木がたくさん生えていることに気が付いた。
熟れて落ちたリンゴの実が、がけ下に溜まってお酒のような良い香りを漂わせている。
人魚のエリンも、これを見たらにっこりと笑った。
「こういうところも、東海岸とよく似ていますね……というか、生えている植物も似ています」
「もう少し調査してみようか……」
この日の調査で分かったことは、エリンの言う通り人魚の東海岸とよく似ているという結論だった。
間もなく僕たちは、ミホノシュヴァルツ号と親しい鳥に手紙を届けてもらうことを頼み、イブリンにこの島の話をしてみることにした。
彼女がどんな反応をするかはわからないが、知っておいて損はないだろう。
【見つけた無人島の大きさ】
最大長5.5キロメートル、最大幅3.2キロメートルの無人島。
島内の最大標高は、おおよそ110メートルで、島の中には小さいが川や湖もある。
エッケハルトの調査通り、丘陵地帯にはリンゴの木が群生しているため、渡り鳥にとっては休憩所のような場所になっている。
船乗りの中には、この島の存在に気が付いた者もいたのだが、実は人間で初上陸をしたのはエッケハルトがはじめてだった。
ほとんどは、この浅瀬の多さを嫌がって上陸を諦めたのだろう。
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