エッケハルトのザマァ海賊団 〜金と仲間を求めてゆっくり成り上がる〜

スィグトーネ

文字の大きさ
35 / 53

29.堕天使を、赤ひげ団に擦り付けろ!

しおりを挟む
 僕も隣で話を聞いていたオフィーリアも、渡り鳥の報告を聞いて唖然としていた。
 前方には赤ひげ団が待ち構え、後方からは堕天使一行がストーキングしてきている。僕たちは10人もいない海賊団なのだから、どっちとぶつかり合っても死活問題だと言うのに、このままでは挟み撃ちにされてしまう。

 だけど、この状況を僕はチャンス到来と感じていた。
 なぜなら僕たちには、人間よりも力強いゴーレムたちが付いているのである。
「……オフィーリア」
「はい」
 僕は少し離れた位置から話を聞いていたヤーシッチを見た。
「それからヤーシッチ」
「あ、ああ……なんだ?」
「今から僕の言う通りに船を動かしてくれ」


 オフィーリアとヤーシッチは、浅瀬だらけの海域でも手足のように船を操れる達人たちだ。彼女たちは当たり前のように僕の指示通りに船を動かしてくれた。
 具体的に何を指示したのかと言えば、まずは中途半端な迂回をしてもらった。

 僕はペースを下げながら堕天使海賊団との距離を縮めつつ、更に赤ひげ団の視界に入ることで、両者のターゲットになるように努めた。
 オフィーリアたちのコントロール能力なら、これくらいのことは容易くやってくれるので、堕天使海賊たちは獲物である僕たちに食いつくように距離を詰め、更に赤ひげ海賊団もカモである僕たちに食いつくように距離を縮めてくる。

「よし、ペースを一気に上げて!」
「はい!」
 オフィーリアは指示通り、ゴーレムたちに加速させると、一気に僕と他の2隻との間に距離が空いた。
 そうすると……堕天使海賊と赤ひげ海賊団はお互いが横並びとなり、先に堕天使海賊団が赤ひげ海賊団に攻撃を仕掛けた。

 距離が離れているため、何を言い合っているのかはわからないが「犯罪者どもめ!」だろうか。赤ひげ海賊団にも言い分があるらしく「うるせー堕天使!」と叫んでいるように感じる。


 僕たちは、一定の距離を取ったところで船を制止し、その戦いを見物していた。
 間もなく赤ひげ海賊団から、幾つものロープが投げられると、堕天使側からもロープが投げられ、お互いに相手の船の上に乗りこんでの乱戦が始まった。

 敵vs敵のやり取りを見てマーチルは喜んでいたが、冷静なヤーシッチは質問してきた。
「我々はどうするんだ?」
「洋上でこんなことをする犯罪者を放ってはおけないでしょ?」


 僕はエッケザックスの宝玉で、ミホノシュヴァルツ号は鳥を用いて、海賊たちの動向をチェックすることにした。堕天使も赤ひげ海賊も意地になっているらしく、船員の数が半分以下になっていても戦いを止めない。
 どちらも死者や負傷者であふれかえり、実質的に戦闘不能になったところで、僕はオフィーリアに指示を出した。
「連中を攻撃して船を制圧する……接近を!」
「はい!」
「みんなも、上陸準備を!」

 そう指示を出すと、ニッパーは頷いてからこちらを見た。
「で、どっちの船を襲うんだ?」
「勝つ方を狙いたいから、堕天使側だね!」



 堕天使側も赤ひげ側も、戦いに夢中になっているらしく、僕たちが接近していることに気付かなかったようだ。
 堕天使側が叫び声を上げたとき、僕たちの船は間近にまで近づいており、ヤーシッチ、ニッパー、マーチルはロープを投げて堕天使の船に乗り込み、僕もミホノシュヴァルツ号の背に乗って上空から飛び乗った。

 最初に堕天使の船に乗り込んだのは僕だ。
 着地と同時に、敵船員の1人を踏みつけて着地すると、間髪を入れずに2人目を剣で薙ぎ払い、敵の船員が近づいてくると、ミホノシュヴァルツ号が敵船員を纏めて2人ほど踏みつけながら着地。
 2人で乱闘しているうちに、ニッパー、マーチルが堕天使の船に上陸してくる。

 マーチルたちが、次々と船内へと入って制圧を進めると、僕とシュヴァルツ号は赤ひげ海賊団の船へと上陸を果たし、僕はそのまま船内へと突入した。
 その直後に、ヤーシッチも赤ひげ海賊団の船内へと入ると、すでに赤ひげ側も壊滅していたらしく、先に入り込んでいた堕天使たちと戦いになった。

 とはいっても相手も3人くらいしかいなかったので、僕たちは問題なく堕天使たちを倒し、2隻の船の船の制圧に成功した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...