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28.堕天使海賊ダークエンジェル
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無人島にスカーレットたちを送り届けた翌日。
僕たちは、予定通りに出港して次の目的地を目指していた。
次に目指すのは、王都に通じる港町ツノセイユだ。ここに銀製品を届ければけっこうな儲けになると思う。
ちょうど海流にも乗れたので、オフィーリアとゴーレムたちのメンテナンスをしていると、マーチルが姿を見せた。
「ねーセンチョー! 大変だよ!」
「どうしたんだい?」
「おウマ様が、厄介な船を見つけたって言ってる!」
「え……!?」
間もなく僕は甲板に上がると、ミホノシュヴァルツ号が険しい顔をしていた。
「どうした?」
『エッケハルト、また厄介な船を発見した』
「まさか、赤ひげ海賊団か?」
『いいや。堕天使だ』
ダークエンジェル。3大海賊の一角か。
元々は熱心なミリズス教徒だったらしいが、その強硬すぎるやり方によって本部のミリズス会と対立することになり、今ではすっかりと海賊化している。
島や漁村を襲撃するのは当たり前で、捕らえた船員や村人に改宗を迫り、拒否すると海に投げ落とすという。
改宗しても安心はできず、経典を読み違えたりすれば虐待を受けるのは日常茶飯事で、掟を破った者には容赦のない制裁を下すことでも有名だ。
ちなみに、自分たちのことはエンジェルと呼んでいるそうだが、有翼人がほとんどいないことにコンプレックスを持っているとも……
「教会の超過激派か……それは面倒だな。関わり合いにならないのが一番だな」
『それがいい』
僕たちは、すぐにヤーシッチやオフィーリアに進路変更してもらうように伝え、なるべく堕天使たちの視界に入らないように移動することにした。
しかし、この堕天使たち。
僕たちが迂回しようとしても、なぜかホーミングしながら追ってきたのである。
何かの偶然かと思いながら、僕たちは更に進路を変更して避けようとしているが、1時間もすればズレを修正するように向かってくる。
僕はエッケザックスの宝玉を見て、それをリアルタイムに感じていた。
「なあ、明らかに奴さん……こっちの動きがわかってないか?」
『明らかに……そうだな』
シュヴァルツ号も渡り鳥から情報を聞くと、確信した様子で頷く。
『向こうも何らかの方法で、こちらの動きを探っているようだな』
冒険者の時代からの話だが、探索能力戦や索敵戦では相手との腹の探り合いになることがほとんどだ。
僕が宝玉を使った広範囲探知。シュヴァルツ号が鳥を用いた偵察探知をしているように、敵もまた独自の方法で情報を得ている可能性が高い。
さて……そうなると、どんな方法だろう。
鳥を扱う類なら、シュヴァルツ号とバッティングするため、彼が何らかの反応を示すと思われる。
そうなると、海中から何かを送り込んでいるのだろうか。
潮の流れをエッケザックスの宝玉で確認してみると、そのセンもなさそうだ。第一、どんなに速く泳ぐ魚がいたとしても、情報伝達が早すぎる気がする。
或いは僕のように、宝玉か何かを出して千里眼のように見抜く力だろうか。
少し考えてから、僕はシュヴァルツ号を見た。
「もしも、僕のように宝玉や水晶玉のようなモノで、相手の動きを探る類の能力だったら……どう対処すべきだろう?」
『もしそうなら……厄介だな。ただ、敵の反応速度が微妙に遅いことが気になるが……』
確かにミホノシュヴァルツ号の言う通り、敵の船の動きはリアルタイムでこちらの動向を掴んでいるとはいいがたい。
何というか、僕たちの少し前の位置を見ながら、その影を追っているように思える動きだ。
「なんだろうこれ……僕たちの影でも追っているかのような……」
当然のことだが、船の影が海の残ったまま……なんてことは起こりえない。
そうなると、音か何かでも感知しているのだろうか。それこそ船が水をかき分けて進んでいくような音が、1時間後くらいに伝わるようなアビリティとか……。
「音……というセンは?」
『なるほど。距離がまだまだ離れているから、聞き分けるのに時間がかかっているという考えか』
もし、そうだとしたら、なるべく早く距離を広げないといけない。敵との距離が近ければ近いほど、向こうの追尾能力が上がるからだ。
オフィーリアにゴーレムたちの稼働をお願いしよう。そう思って立ち上がろうとしたとき、船の進行方向から飛んできた渡り鳥が、思わぬ情報をもたらした。
『……なに!?』
「どうした?」
『……どうやら、進路方向から海賊船。それも……赤ひげ海賊団の船が現れたそうだ』
僕たちは、予定通りに出港して次の目的地を目指していた。
次に目指すのは、王都に通じる港町ツノセイユだ。ここに銀製品を届ければけっこうな儲けになると思う。
ちょうど海流にも乗れたので、オフィーリアとゴーレムたちのメンテナンスをしていると、マーチルが姿を見せた。
「ねーセンチョー! 大変だよ!」
「どうしたんだい?」
「おウマ様が、厄介な船を見つけたって言ってる!」
「え……!?」
間もなく僕は甲板に上がると、ミホノシュヴァルツ号が険しい顔をしていた。
「どうした?」
『エッケハルト、また厄介な船を発見した』
「まさか、赤ひげ海賊団か?」
『いいや。堕天使だ』
ダークエンジェル。3大海賊の一角か。
元々は熱心なミリズス教徒だったらしいが、その強硬すぎるやり方によって本部のミリズス会と対立することになり、今ではすっかりと海賊化している。
島や漁村を襲撃するのは当たり前で、捕らえた船員や村人に改宗を迫り、拒否すると海に投げ落とすという。
改宗しても安心はできず、経典を読み違えたりすれば虐待を受けるのは日常茶飯事で、掟を破った者には容赦のない制裁を下すことでも有名だ。
ちなみに、自分たちのことはエンジェルと呼んでいるそうだが、有翼人がほとんどいないことにコンプレックスを持っているとも……
「教会の超過激派か……それは面倒だな。関わり合いにならないのが一番だな」
『それがいい』
僕たちは、すぐにヤーシッチやオフィーリアに進路変更してもらうように伝え、なるべく堕天使たちの視界に入らないように移動することにした。
しかし、この堕天使たち。
僕たちが迂回しようとしても、なぜかホーミングしながら追ってきたのである。
何かの偶然かと思いながら、僕たちは更に進路を変更して避けようとしているが、1時間もすればズレを修正するように向かってくる。
僕はエッケザックスの宝玉を見て、それをリアルタイムに感じていた。
「なあ、明らかに奴さん……こっちの動きがわかってないか?」
『明らかに……そうだな』
シュヴァルツ号も渡り鳥から情報を聞くと、確信した様子で頷く。
『向こうも何らかの方法で、こちらの動きを探っているようだな』
冒険者の時代からの話だが、探索能力戦や索敵戦では相手との腹の探り合いになることがほとんどだ。
僕が宝玉を使った広範囲探知。シュヴァルツ号が鳥を用いた偵察探知をしているように、敵もまた独自の方法で情報を得ている可能性が高い。
さて……そうなると、どんな方法だろう。
鳥を扱う類なら、シュヴァルツ号とバッティングするため、彼が何らかの反応を示すと思われる。
そうなると、海中から何かを送り込んでいるのだろうか。
潮の流れをエッケザックスの宝玉で確認してみると、そのセンもなさそうだ。第一、どんなに速く泳ぐ魚がいたとしても、情報伝達が早すぎる気がする。
或いは僕のように、宝玉か何かを出して千里眼のように見抜く力だろうか。
少し考えてから、僕はシュヴァルツ号を見た。
「もしも、僕のように宝玉や水晶玉のようなモノで、相手の動きを探る類の能力だったら……どう対処すべきだろう?」
『もしそうなら……厄介だな。ただ、敵の反応速度が微妙に遅いことが気になるが……』
確かにミホノシュヴァルツ号の言う通り、敵の船の動きはリアルタイムでこちらの動向を掴んでいるとはいいがたい。
何というか、僕たちの少し前の位置を見ながら、その影を追っているように思える動きだ。
「なんだろうこれ……僕たちの影でも追っているかのような……」
当然のことだが、船の影が海の残ったまま……なんてことは起こりえない。
そうなると、音か何かでも感知しているのだろうか。それこそ船が水をかき分けて進んでいくような音が、1時間後くらいに伝わるようなアビリティとか……。
「音……というセンは?」
『なるほど。距離がまだまだ離れているから、聞き分けるのに時間がかかっているという考えか』
もし、そうだとしたら、なるべく早く距離を広げないといけない。敵との距離が近ければ近いほど、向こうの追尾能力が上がるからだ。
オフィーリアにゴーレムたちの稼働をお願いしよう。そう思って立ち上がろうとしたとき、船の進行方向から飛んできた渡り鳥が、思わぬ情報をもたらした。
『……なに!?』
「どうした?」
『……どうやら、進路方向から海賊船。それも……赤ひげ海賊団の船が現れたそうだ』
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