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27.無人島への入植
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洋上取引を行った翌日。僕たちはイブリンたちのいる人魚島の東海岸にいた。
すでに彼女たちには手紙を送っていたので、すぐに答えを聞くことができたのである。
「手紙の件……皆で話し合いましたが、我々としても先遣隊を送ってみたいと思います」
やはり、イブリンたちも無人島に興味を持ったようだ。
依然として、島の情勢はこう着状態ではあるものの、イブリンたちの方が勢力が小さいため、劣勢であることに変わりはない。
そこに、新天地の話が来たのだから、彼女たちとしても『保険』が欲しくなるのは当然だろう。
「わかりました。調査隊の人数は何人くらい?」
「妹のスカーレットをリーダーとして、25名ほどを考えています」
スカーレットと言う女性は、イブリンの妹でエリンの姉に当たる人物だ。
イブリンから見れば自分の分身と言える次女をリーダーにする辺り、かなり無人島に強い関心を持っていることがわかる。
スカーレットもまた、僕に挨拶した。
「お久しぶりです、エッケハルト船長。改めてスカーレットと言います」
「よろしくお願いします。ちなみに島を偵察してみたところ……浅瀬がかなり多いので、真珠の養殖にも適している場所もあるのではないかと思います」
「もちろん、それも視野に入れています」
彼女は生け簀の一部を指さすと、そこにはすでにアコヤガイが集められている。アコヤガイというのは真珠を作ることに適したカイだ。
「あれを塩水で浸した樽に入れて運びたいのですが……」
「そういうことなら、輸送も手伝いますよ」
「何から何までありがとうございます!」
彼女たちは感謝してくれたが、僕たち海賊団から見ても彼女たちに入植してもらうことには意味がある。
もしこの東海岸が陥落してしまっても次の母港と言える場所を確保できるし、真珠の養殖地さえあれば、僕らにとって大きな助けになる。
「じゃあ、早速作業をはじめましょうか!」
「はい!」
こうして思った以上にスムーズに話が進んだので、僕たちは貝の入った樽はもちろん、他にも食料や家を作る建材なども海賊船に運び込んだ。
「ではお姉さま……行って参ります!」
スカーレットやエリンが手を振ると、イブリンも手を上品に振って見送ってくれた。
ちなみに僕は積み荷を減らしたいと言いつつ、しっかりとウイスキーの半数以上を真珠と交換させてもらっている。
船の中には先遣隊25名が乗っているため、すっかり大所帯になっていた。
「このまま東に進んでいき、2日後には到着する予定です」
「なるほど……この辺りは海底も深いので、我ら人魚族では泳ぎ続けることは難しいですね」
スカーレットの話を聞くと、いくら人魚族でも眠ったまま泳ぐことはできないらしく、休憩できる浅瀬がなければ、長距離を移動することは難しいようである。
「その点、船と言うのはありがたい。これなら必要なモノも一気に運ぶことができる」
「まあ、慣れないうちは船酔いすることもありますけどね」
まあ、わかってはいたことだが……人魚の中にも船酔いに弱い人はいるらしく、何人かが船のへりを掴んだまま嘔吐していた。
あと2日の辛抱なので、ぜひ我慢して欲しい。
航海は順調に進み、2日後には目的地である無人島に到着した。
僕たちは休み間もなく、建材やアコヤガイの入った樽を出し、人魚たちも砂浜の様子をチェックしたり、家の建設場所を選んだりしている。
ちなみに、この先遣隊にはドワーフ3人衆の1人ドリールも来ており、彼は建材を下ろす作業をしていた。
「どうです、この島は?」
そうスカーレットに聞いたら、彼女は満足そうに微笑んだ。
「静かで穏やかな島です。この島をエッケハルト島と名付けることにします」
「え……何で僕の名前?」
そう聞き返すと、近くにいたミホノシュヴァルツ号やオフィーリアも頷いている。
『適任だな。最初に踏み込んだのはお前だしな』
「そうですね。それに宝剣が眠る島と言う感じで……何だかロマンチックです」
「ええ~ そうかなぁ……? みんなはどう思う?」
近くにいた人魚たちに聞くと、口々に「異議なし!」と言われてしまった。そんなにニヤニヤしながら言わなくてもいいじゃないか。
更にウイスキー樽をいくつか出すと、ドワーフのドリールは言った。
「この島の開拓は俺たちでやっておくから……船長たちは交易をして珍しいモンや仲間を集めて来るといい」
「わかりました。今日はもう遅いので、明日の朝に出発しようと思います」
彼らは手際よく、小屋や倉庫などを組み立ててくれたので、この日はちょっとした宴を開くことができた。
食料や水の積み下ろしも終わったので、無理をせずに開拓を進めてくれればと思う。
【人魚族の戦士スカーレット】
すでに彼女たちには手紙を送っていたので、すぐに答えを聞くことができたのである。
「手紙の件……皆で話し合いましたが、我々としても先遣隊を送ってみたいと思います」
やはり、イブリンたちも無人島に興味を持ったようだ。
依然として、島の情勢はこう着状態ではあるものの、イブリンたちの方が勢力が小さいため、劣勢であることに変わりはない。
そこに、新天地の話が来たのだから、彼女たちとしても『保険』が欲しくなるのは当然だろう。
「わかりました。調査隊の人数は何人くらい?」
「妹のスカーレットをリーダーとして、25名ほどを考えています」
スカーレットと言う女性は、イブリンの妹でエリンの姉に当たる人物だ。
イブリンから見れば自分の分身と言える次女をリーダーにする辺り、かなり無人島に強い関心を持っていることがわかる。
スカーレットもまた、僕に挨拶した。
「お久しぶりです、エッケハルト船長。改めてスカーレットと言います」
「よろしくお願いします。ちなみに島を偵察してみたところ……浅瀬がかなり多いので、真珠の養殖にも適している場所もあるのではないかと思います」
「もちろん、それも視野に入れています」
彼女は生け簀の一部を指さすと、そこにはすでにアコヤガイが集められている。アコヤガイというのは真珠を作ることに適したカイだ。
「あれを塩水で浸した樽に入れて運びたいのですが……」
「そういうことなら、輸送も手伝いますよ」
「何から何までありがとうございます!」
彼女たちは感謝してくれたが、僕たち海賊団から見ても彼女たちに入植してもらうことには意味がある。
もしこの東海岸が陥落してしまっても次の母港と言える場所を確保できるし、真珠の養殖地さえあれば、僕らにとって大きな助けになる。
「じゃあ、早速作業をはじめましょうか!」
「はい!」
こうして思った以上にスムーズに話が進んだので、僕たちは貝の入った樽はもちろん、他にも食料や家を作る建材なども海賊船に運び込んだ。
「ではお姉さま……行って参ります!」
スカーレットやエリンが手を振ると、イブリンも手を上品に振って見送ってくれた。
ちなみに僕は積み荷を減らしたいと言いつつ、しっかりとウイスキーの半数以上を真珠と交換させてもらっている。
船の中には先遣隊25名が乗っているため、すっかり大所帯になっていた。
「このまま東に進んでいき、2日後には到着する予定です」
「なるほど……この辺りは海底も深いので、我ら人魚族では泳ぎ続けることは難しいですね」
スカーレットの話を聞くと、いくら人魚族でも眠ったまま泳ぐことはできないらしく、休憩できる浅瀬がなければ、長距離を移動することは難しいようである。
「その点、船と言うのはありがたい。これなら必要なモノも一気に運ぶことができる」
「まあ、慣れないうちは船酔いすることもありますけどね」
まあ、わかってはいたことだが……人魚の中にも船酔いに弱い人はいるらしく、何人かが船のへりを掴んだまま嘔吐していた。
あと2日の辛抱なので、ぜひ我慢して欲しい。
航海は順調に進み、2日後には目的地である無人島に到着した。
僕たちは休み間もなく、建材やアコヤガイの入った樽を出し、人魚たちも砂浜の様子をチェックしたり、家の建設場所を選んだりしている。
ちなみに、この先遣隊にはドワーフ3人衆の1人ドリールも来ており、彼は建材を下ろす作業をしていた。
「どうです、この島は?」
そうスカーレットに聞いたら、彼女は満足そうに微笑んだ。
「静かで穏やかな島です。この島をエッケハルト島と名付けることにします」
「え……何で僕の名前?」
そう聞き返すと、近くにいたミホノシュヴァルツ号やオフィーリアも頷いている。
『適任だな。最初に踏み込んだのはお前だしな』
「そうですね。それに宝剣が眠る島と言う感じで……何だかロマンチックです」
「ええ~ そうかなぁ……? みんなはどう思う?」
近くにいた人魚たちに聞くと、口々に「異議なし!」と言われてしまった。そんなにニヤニヤしながら言わなくてもいいじゃないか。
更にウイスキー樽をいくつか出すと、ドワーフのドリールは言った。
「この島の開拓は俺たちでやっておくから……船長たちは交易をして珍しいモンや仲間を集めて来るといい」
「わかりました。今日はもう遅いので、明日の朝に出発しようと思います」
彼らは手際よく、小屋や倉庫などを組み立ててくれたので、この日はちょっとした宴を開くことができた。
食料や水の積み下ろしも終わったので、無理をせずに開拓を進めてくれればと思う。
【人魚族の戦士スカーレット】
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