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ガンスーン、落ちぶれるも一念奮起する

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 俺様はガンスーン。元Aランク冒険者パーティーのリーダーだ。
 元とつけたのは、クソなパーティーメンバーに囲まれてしまい裏切られただけでなく、不幸にもパワハラギルド長に目を付けられて、ギルドを追い出されたからに他ならない。

 そもそもの話、ケチが付きはじめたのはソフィアとか言う阿婆擦れシスターのせいだ。あのクソ女が俺様のパーティーを脱退しなければ、ここまで面倒な話にならなかったんだ。あのヤロー……覚えてやがれ!

 エルフ女も獣人小娘も、俺様がいなければ何も出来ないくせに、少し選んだチームメイトが気に入らないからって出て行くんだから、本当に薄情で使えない女どもだ。
 何でこの素晴らしい俺様が、あのノーアビリティの無能エッケハルトのように職探しをしなければならないんだ。

 とにかく俺様は、パワハラギルド長にクビにされたから、さっさと次のギルドを探さなきゃならねー。
 まあ、しょうもないゴミメンバーばかりのパーティーをAランクにまで引き上げた俺様なら、どこのギルドでも喉から手が出るほど欲しがるだろう。
 まずは、最大手から行ってみるか。


 しかし俺は、5分ほどで最大手冒険者ギルドを後にすることにした。
 パワハラリーダーなんて必要ないだと!? くそ……さてはあのクソギルド長め、俺様が入れないように根回しでもしやがったな。忌々しい奴め。
 だけど、俺様もカリスマ性を甘く見るんじゃねえぞ。本当はどのギルドだってガンスーン様のような有能な人間が欲しいに決まっているんだ。次行くぜ!


 俺は、2番手や3番手のギルドに加入の話を持って行ったが、どこもお前なんざ要らんと追い返しやがる。くそ……どこまで用意周到に根回ししやがったんだ、あのギルド長め!
 なら中堅でもホワイトと言われてるギルド。ここならどうだ!?

 …………
 …………
 ダメ……だと!?
 いったい、あのギルド長はどこまで暇なんだ。この素晴らしい俺様の本来の力なら、三顧の礼で迎え入れられないとおかしい。これはどう考えてもどす黒い陰謀が渦巻いてる気がするぜ。


 こ、こうなったら、背に腹は代えられない。本来なら眼中にすら入らない中堅ギルドに声をかけてやるか。さすがにここなら。

 …………
 …………
 …………
 な、なな……七連敗……しかも、どこも門前払い!
 どうして、こんなにいかれたことになってやがるんだ。さ、さては阿婆擦れソフィアのせいだな。アイツが教会にあることないこと吹き込んだから、ボンクラ司祭あたりが圧力をかけて、俺様が冒険者ギルドに就職できないようにしているんだ。何てヤローどもだ、あの生臭神官ども……。

 だけど、くそ……証拠もねえからどうしようもねえ。
 そもそも俺様は、あの教会と言う場所が死ぬほど嫌いだし、ソフィアがどこにいるかもわからねえ。
 これからどうすればいいんだ。


 途方に暮れながら木に寄りかかっていると、ずっと無言で後を付いてきた新ヒーラーが、何かをじっと眺めてやがった。コイツ……仲間に入れる前から一言も喋らないから不気味だけど、何を見ているんだ?

 これは、手配書か。
 どうやら無言ヒーラー女は海賊の手配書を眺めていた。首賞金が大金貨20枚か。さすがに赤ひげ海賊団の幹部ともなれば、かなりの悪事を働いていると見える。だって山賊に比べて首にかけられた賞金の額が違うもんな。悪名高い奴になると、本当に1桁違う。

 ん、待てよ……海賊か。
 俺様は今まで冒険者ギルドに飼いならされて、ワガママな顧客やパーティーメンバーの板挟みになってきたが、海賊になれば、俺様がリーダーになれるし、俺様が法律。

 海賊稼業なら、顧客の顔色なんて窺う必要もないし、生意気な手下なんて海にでも叩き込んでやればいい。
 よく考えると……冒険者なんてチンケな商売よりも、こっちの方がよっぽどいいし、むしろこのガンスーン様の天職にすら思える。


 そうと決まれば、善は急げだ!
 俺様はまず手下となる奴らを集めることにした。冒険者という家業は、ならず者や犯罪者のような連中と付き合いを持つことも多いんだ。
 むしろこういうヤツらと付き合いのなかった、エッケハルトのようなグズは一生うだつが上がらないと言ってもいい。

 まずはそうだな。犯罪者連中から声をかけてみるとするか。これからが楽しみだぜ。
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