エッケハルトのザマァ海賊団 〜金と仲間を求めてゆっくり成り上がる〜

スィグトーネ

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26.ヴァイキングの噂

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 大量の銀製品とウォッカの入った樽を積み込むと、僕たちは北の玄関港を後にした。
 これだけ買い込んでも、まだ手元には大金貨17枚ほどが残っているのだから、いかに安く仕入れられたかがわかる。

 乗組員の様子を見ると、全員が銀のアクセサリーを身に着けており、とても機嫌がよさそうだ。
「今度は、あの銀製品を売るのか?」
 ニッパーが聞いてきたので、僕はもちろんと思いながら頷いた。
「ああ、高く売れる場所と言えば……やっぱり王都の近くの港町かな?」

 そう質問すると、ニッパーは「ツノセイユか……」と言いながら考え込んだ。
「確かに、そこが無難だろう。あそこは小金持ちがたくさんいる。今のシーズンなら海流の関係で銀製品もすくないだろうからな」
「冒険者でも、BランクのリーダーやAランクのメンバーになると、銀のアクセサリーを付けていたり、恋人にプレゼントしたりしていたからね」


 そんな話をしていたら、ミホノシュヴァルツ号がやってきた。
『エッケハルト、ちょっと気になる情報があった』
「どうした?」
『この海域よりやや北に、ヴァイキングと思しき連中を見たと渡り鳥たちが言っている』
「なんだって!?」

 ヴァイキングは、前にも触れた悪名高い3大海賊の1勢力だ。
 赤ひげ海賊団や、堕天使海賊団ダークエンジェルさえ、ヴァイキングには警戒すると言われている。

 その特徴は、何といってもその機動力にあるそうだ。
 ヴァイキングは機動力のあるヴァイキング船を自在に操り、まるでサメやシャチのように商船に襲い掛かるという。

 ちなみに、自分たちのことを最強だと思っているので、自分たちを怖がるようだ。


 話を聞いていたヤーシッチも、険しい顔をしながら言った。
「ヴァイキングか……特に13の鉾が操る船団だったら厄介だぞ」
『幸い向こうはまだ、こちらの存在に気付いてはいないようだ……どうする?』

 僕は少し視線を上げて考えた。
「…………」
「念のため迂回しよう。君たちがいるのなら、そう易々と負ける気はしないけど……連中も何をしてくるかわからないからね」

 その話を聞いていたニッパーも頷いた。
「それが賢明だろな。危ないモノには近づかないのが一番だ」


 報告の後もミホノシュヴァルツ号は、問題の船の情報収集を続けてくれた。
 どうやらヴァイキング船は、北北西35キロメートルの地点を航行しているようだ。能力の高い探索系能力者でだいたい15~20キロメートル先まで索敵できるので、ここまで近づかれたら向こうの索敵範囲にも入る危険性があるということになる。
「お前は本当に凄いな……35キロメートルならもう索敵範囲なんだろう?」
『鳥との相性にもよるがな。相性抜群の渡り鳥なら、70キロメートル離れていても呼び寄せることができる』


 そして、この広い索敵範囲は、僕たちにビジネスチャンスを与えてもくれる。
 ヴァイキング船をやり過ごした翌日。今度は通りすがりの民間船の姿を見かけたのだが、この船……積んでいる酒が心許なくなっているようだ。
『どうやら、お困りの船があるようだぞ』
「なるほど……それとなく近くを通ってみようか」

 さりげなくそばを通りかかっているフリをすると、その船は旗を振って僕たちにコンタクトを取ってきた。
 やり取りは以前と似ているので、詳しい内容は割愛するが、相手は水満タンの樽1つに、大銀貨2枚の価格を提示してきた。

 以前に比べると安いので、少しだけ渋ってみると、相手側は2枚半につり上げたので応じることにした。
 こうして樽10個。300リットル分の水と、空っぽの樽10と大銀貨25枚を交換すると、僕たちはそれぞれの航路に戻っていく。

「本当に、ただの水が……お金になるなんて……凄いですね……」
 エリンが言うと、マーチルやリーゼも頷いた。
「そうだよね。海の上って本当に不思議……」
「でも、わかりますよ。水が無ければ人は生きていけませんから」

 そんな話をしていたら、ミホノシュヴァルツ号は言った。
『エリン、喉が渇いたから早く水を調達してくれ』
「わ、わかりました……直ちに!」


【ミホノシュヴァルツ号(体重535キログラム)が飲む水の量】
 夏場と冬場で差はあるものの、平均して27リットル(エッケハルトやヤーシッチは1日に2リットル)。
 特に夏場だと、1日で水入りの樽1個分を消費している。

 ちなみにシュヴァルツ号は牡馬なので、飲む量の増減は限定的だが、もしこれが牝馬で授乳時だったら水を飲む量も1.5倍くらいに増えるようだ。

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