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0→1.エッケハルトという青年
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夢の中で、僕はギルドの中にいる。
目の前には昼間に、僕をクビにしたパーティーリーダーのガンスーンの姿があった。コイツは昼間に言ってきたことをもう一度言ってきた。
「おい、女男……テメーはクビだ!」
女男とは、僕ことエッケハルトのことだ。
ガンスーンの言う通り、僕はアジア人の血を色濃く受け継いでいるらしく、黒髪で低い鼻を持ち、筋肉の付き方も女性とそれほど大差はない。
クビと言ったガンスーンは、訂正するように言った。
「あ、クビは人聞きは悪いな。お詫びして訂正する。契約満了……これにて終了だ!」
ガンスーンはそういうと、大金貨1枚を机に叩きつけるように置いた。
「ほら、契約書に従って謝礼は支払ったぜ……バイバイだぜ無能君!」
その言葉を聞いた、パーティーメンバーのソフィアは嫌な顔をしながら十字を切っていたが、エルフの弓使いラナと、獣人族の戦士ディーラは嬉々として笑っていた。
「これでやっと、無能君とおさらばできるんだね……長かった~」
「ガンスーン。次はきちんとアビリティを持った人を連れてきてちょうだい」
「そもそも、もっと早くリストラできなかったの~?」
ディーラの言葉を聞いたガンスーンは、歪んだ笑みを浮かべながら言う。
「いやいや、正当な理由なく契約を破棄するとSランク昇進への道にケチが付くんだよ。コイツも自分が無能だってわかっているみたいだから、問題行動だけは起こさなかったしな」
そこまで言うと、ガンスーンは見下してきた。
「何ぼさっとしてるんださっさと……ああ、金貨1枚じゃ足りないってか、しょうがねえなぁ」
そう言うとコイツは、更に銀貨や銅貨などを乱雑に掴み取って僕の前に置いた。
「ガンスーン、やっさしー!」
「この期に及んで物乞いしてるみたい……惨めなモノね」
「ほれ、これなら文句ねえだろ……とっとと消えろ無能乞食、目障りなんだよ!」
「……今まで世話になった」
お金を掴み取ると、僕はガンスーンチームを去ることにした。屈辱的な最後だったが、このお金がないと生活もできない。胃がキリキリとするけど……僕はガンスーンの部屋を後にした。
「ああ、言っとくけど……お前が無能なのは冒険者街では有名な話だ。就職活動しても無駄だと思うぜ」
――――――――
――――
――
―
そのドアを開いたとき……夢から醒め、僕は真っ暗闇の樹海の中にいた。
そうだった。僕は……もう冒険者ですらなくなったんだった。
ガンスーンが最後に言った通り、僕は同じギルド員はもちろん、ギルド外の冒険者にも戦士の空きはないか聞いて回ったが、一様に答えはノーだった。
特殊能力が何もない人間では、相当いいニュースがない限りチームに入れては貰えないらしい。
せめて起死回生を狙って、ユニコーンと1対1の勝負に勝てれば望みはあったが、敗れた今となってはもう終わっている。
一角獣ミホノシュヴァルツ号は、僕を眺めていた。どうやら心配してくれているようだ。
『大丈夫か? だいぶうなされていたようだが……』
「クビになった時のことを思い出してしまったよ。少しすれば落ち着く」
『…………』
彼は目を細めると、冒険者街のある方角を見つめていた。何か思うところがあるのだろうか。
『努力よりもセンスか……大して苦労もしていない人間が上に立つとロクなことがないな』
「それを僕が覆せればよかったんだがな……」
『…………』
そういえば、ガンスーンのパーティーに居た時から、僕はここで修行をしてきたが、その様子を見守ってくれていたのは、このミホノシュヴァルツ号だけだった。
『実はな。今まではお前の心に水を差すと思っていたから言わなかったのだが……』
「なんだ?」
聞き返すと、ミホノシュヴァルツ号は優しく微笑んだ。
『エッケハルトよ……実は君はアビリティを持っている』
その言葉に、僕は呆然としてしまった。
15歳の誕生日に、孤児院の院長に鑑定してもらったのだが、確かに能力がないという判定を受けたはずだ。
「そ、そんなことがわかるのか!?」
『まあ、鑑定できなかったのは仕方あるまい……そもそも君には、吾らが探し求めているオーブの破片が刺さっている。これが本来の君の力を妨害しているのだろう』
シュヴァルツ号の言葉には、凄く説得力があった。
「いったい僕には、どんな能力が……?」
『それを、これから確かめてみたい』
【エッケハルトを見下すガンスーン】
エッケハルトを雇用期間終了と共にパーティーから追い出した男。
率いているガンスーンチームは、地方ギルドでは珍しいAランク認定されているパーティーである。
パーティー編成は、ガンスーン(戦士)、エッケハルト(戦士)、ディーラ(軽戦士)、ソフィア(支援術師)、ラナ(魔法弓士)という編成だ。
エッケハルトのことを能無しとバカにしていたが、秘密の修業の際にユニコーンと会っていたことに気付かなかったり、本当はアビリティを持っていることに見抜けないところを見ると、人を見る目はないようである。
目の前には昼間に、僕をクビにしたパーティーリーダーのガンスーンの姿があった。コイツは昼間に言ってきたことをもう一度言ってきた。
「おい、女男……テメーはクビだ!」
女男とは、僕ことエッケハルトのことだ。
ガンスーンの言う通り、僕はアジア人の血を色濃く受け継いでいるらしく、黒髪で低い鼻を持ち、筋肉の付き方も女性とそれほど大差はない。
クビと言ったガンスーンは、訂正するように言った。
「あ、クビは人聞きは悪いな。お詫びして訂正する。契約満了……これにて終了だ!」
ガンスーンはそういうと、大金貨1枚を机に叩きつけるように置いた。
「ほら、契約書に従って謝礼は支払ったぜ……バイバイだぜ無能君!」
その言葉を聞いた、パーティーメンバーのソフィアは嫌な顔をしながら十字を切っていたが、エルフの弓使いラナと、獣人族の戦士ディーラは嬉々として笑っていた。
「これでやっと、無能君とおさらばできるんだね……長かった~」
「ガンスーン。次はきちんとアビリティを持った人を連れてきてちょうだい」
「そもそも、もっと早くリストラできなかったの~?」
ディーラの言葉を聞いたガンスーンは、歪んだ笑みを浮かべながら言う。
「いやいや、正当な理由なく契約を破棄するとSランク昇進への道にケチが付くんだよ。コイツも自分が無能だってわかっているみたいだから、問題行動だけは起こさなかったしな」
そこまで言うと、ガンスーンは見下してきた。
「何ぼさっとしてるんださっさと……ああ、金貨1枚じゃ足りないってか、しょうがねえなぁ」
そう言うとコイツは、更に銀貨や銅貨などを乱雑に掴み取って僕の前に置いた。
「ガンスーン、やっさしー!」
「この期に及んで物乞いしてるみたい……惨めなモノね」
「ほれ、これなら文句ねえだろ……とっとと消えろ無能乞食、目障りなんだよ!」
「……今まで世話になった」
お金を掴み取ると、僕はガンスーンチームを去ることにした。屈辱的な最後だったが、このお金がないと生活もできない。胃がキリキリとするけど……僕はガンスーンの部屋を後にした。
「ああ、言っとくけど……お前が無能なのは冒険者街では有名な話だ。就職活動しても無駄だと思うぜ」
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そのドアを開いたとき……夢から醒め、僕は真っ暗闇の樹海の中にいた。
そうだった。僕は……もう冒険者ですらなくなったんだった。
ガンスーンが最後に言った通り、僕は同じギルド員はもちろん、ギルド外の冒険者にも戦士の空きはないか聞いて回ったが、一様に答えはノーだった。
特殊能力が何もない人間では、相当いいニュースがない限りチームに入れては貰えないらしい。
せめて起死回生を狙って、ユニコーンと1対1の勝負に勝てれば望みはあったが、敗れた今となってはもう終わっている。
一角獣ミホノシュヴァルツ号は、僕を眺めていた。どうやら心配してくれているようだ。
『大丈夫か? だいぶうなされていたようだが……』
「クビになった時のことを思い出してしまったよ。少しすれば落ち着く」
『…………』
彼は目を細めると、冒険者街のある方角を見つめていた。何か思うところがあるのだろうか。
『努力よりもセンスか……大して苦労もしていない人間が上に立つとロクなことがないな』
「それを僕が覆せればよかったんだがな……」
『…………』
そういえば、ガンスーンのパーティーに居た時から、僕はここで修行をしてきたが、その様子を見守ってくれていたのは、このミホノシュヴァルツ号だけだった。
『実はな。今まではお前の心に水を差すと思っていたから言わなかったのだが……』
「なんだ?」
聞き返すと、ミホノシュヴァルツ号は優しく微笑んだ。
『エッケハルトよ……実は君はアビリティを持っている』
その言葉に、僕は呆然としてしまった。
15歳の誕生日に、孤児院の院長に鑑定してもらったのだが、確かに能力がないという判定を受けたはずだ。
「そ、そんなことがわかるのか!?」
『まあ、鑑定できなかったのは仕方あるまい……そもそも君には、吾らが探し求めているオーブの破片が刺さっている。これが本来の君の力を妨害しているのだろう』
シュヴァルツ号の言葉には、凄く説得力があった。
「いったい僕には、どんな能力が……?」
『それを、これから確かめてみたい』
【エッケハルトを見下すガンスーン】
エッケハルトを雇用期間終了と共にパーティーから追い出した男。
率いているガンスーンチームは、地方ギルドでは珍しいAランク認定されているパーティーである。
パーティー編成は、ガンスーン(戦士)、エッケハルト(戦士)、ディーラ(軽戦士)、ソフィア(支援術師)、ラナ(魔法弓士)という編成だ。
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