37 / 53
ガンスーン、海賊デビューへの1歩目
しおりを挟む
俺の名はコーモノ。
ちょっと前まで、Bランク冒険者チームの軽戦士をしていたモンだ。
その時のリーダーがパーティーの稼ぎを独り占めしているから、ちょいと拝借しようとしたら、それがバレちまってな。今ではこうやって追いはぎをしながら細々と生活しているというワケだ。
さて、今日も誰かの身ぐるみを這いでやろうと思っていたら、見覚えのあるやつが歩いてるじゃねえか。
「ガンスーン! お前……こんなところで何してるんだ?」
「おお、筋肉バカのコーモノじゃねえか!」
「ご挨拶だな!」
ガンスーンは今でこそAランク冒険者パーティーのリーダーだが、少し前までは俺の飲み友達だったんだ。コイツは確か、ハーレムパーティーを率いていたはずだけどな。
「おい、取り巻き連中はどうした?」
「あ? あいつらか、使えない連中だから全員クビにした」
強がっているが、コイツが追い出されたのは明白だ。
まあ、そういう協調性のないところも俺と気が合うんだけどな。
「なるほど。じゃあアレか。新パーティーを作るための人集めと言ったところか?」
「まあそんなところだが、少しだけ違うな」
「違うって、じゃあ何してんだ?」
「俺は冒険者なんてチンケな仕事はやめて、海賊になることにしたんだ」
昔はナンバーワンの冒険者になるってほざいてたが、コイツは飽きるのも速いんだよな。
まあ、海賊の方が確かに……コイツには似合っているかもしれん。
「ほう……じゃあ、アレか。赤ひげとか堕天使みたいな大海賊を目指すってやつか?」
そう聞くと、ガンスーンは不敵に笑ってやがった。
「その通りだ。で、いま……クルーを集めてるんだが、お前も一枚かまねえか?」
俺様も海賊か。悪い話じゃねえと思った。
なにせ最近は追いはぎをし過ぎて冒険者がうろつくようになったんだ。今はまだ身を隠してごまかしているけど、ベテランのCランクパーティーか、Bランク辺りに来られたらヤバそうだ。
「ほほう……じゃあ、何人か手下がいるからそいつらも連れて来よう。元船乗りのヤツもいるからな」
元船乗りという言葉を聞いて、ガンスーンは表情を変えた。
さすがのガンスーンから見ても海というモノは別世界だ。そういう畑違いの仕事をするとなれば、経験のあるやつを斡旋できる人間は重用される。
ガンスーンは笑いながら言った。
「テメエを誘った甲斐があったぜ。ちょっと案内しろよ」
「こっちだ」
俺はガンスーンを隠れ家へと案内した。
ちなみに手下は4人。弱い者虐めしかしないクズに、チビのコソ泥に、女襲い専門のバカに、船長をぶっ飛ばした暴力船乗り。俺が言うのも何だが、どいつもこいつもさっさとくたばった方がいいゴミばかりだ。
さすがのガンスーンも苦笑いしていた。
「なんつーか……すげー奴らだな」
「だろ?」
俺は小声でささやいた。
「こんな連中だから、死んだところで良心は痛まねえ」
「……お前がそれを言うか?」
洒落を言い合ったところで、俺はこいつらに言った。
「お前ら、よく聞け!」
そう言うと、こいつらはだるそうにこちらを見てくる。
「はぁ? なんスかボス?」
「このまま、このチンケな隠れ家に居てもじり貧だ。だから俺たちはこれから海賊になることにする!」
海賊という言葉を聞いた手下どもは、一斉に表情を変えた。
「マジすか?」
「なんかよくわかんねーけど、おもしろそう!」
「海にも女っていますかね?」
「乗客はいるかもしれねーが、それよりも人魚の方に興味があるねぇ」
人魚と言うパワーワードを出すと、スケベを中心に手下どもは大喜びした。
海沿いの酒場とかに行くと、美しい女の姿をしたマーメイドの絵とかが飾られているからな。俺様もああいうのが人魚なら、一度はお目にかかってみたいもんだ。
「おお、いいじゃんいいじゃん……とっ捕まえて嫁にしてえ!」
「いや、金になるモンは売っちまえよ。世の中金だ!」
「旨いモンも食いたいよな。世界を股にかける海賊だろ~」
そこまで様子を見ていたガンスーンは言った。
「海賊になりたいんなら、俺様に続け。俺は元Aランク冒険者パーティーの頭だ。ガンスーンの名前くらいは聞いたことがあるだろ?」
その言葉を聞いて、手下たちは驚いていた。
「が、ガンスーンって……あの荒くれガンスーン!?」
「そうだ! 俺様について来れば、金でも女でも好きなだけくれてやる!」
その思い切りのいい言葉に、手下たちは歓声を上げていた。なんて豪快な言葉だろうと思う。
俺のようなコモノじゃ、未来のこととか考えちまって、こんな約束なんてできないからな。
ガンスーンがオオモノなのか、オオバカなのかわかるのはここからだろう。
ちょっと前まで、Bランク冒険者チームの軽戦士をしていたモンだ。
その時のリーダーがパーティーの稼ぎを独り占めしているから、ちょいと拝借しようとしたら、それがバレちまってな。今ではこうやって追いはぎをしながら細々と生活しているというワケだ。
さて、今日も誰かの身ぐるみを這いでやろうと思っていたら、見覚えのあるやつが歩いてるじゃねえか。
「ガンスーン! お前……こんなところで何してるんだ?」
「おお、筋肉バカのコーモノじゃねえか!」
「ご挨拶だな!」
ガンスーンは今でこそAランク冒険者パーティーのリーダーだが、少し前までは俺の飲み友達だったんだ。コイツは確か、ハーレムパーティーを率いていたはずだけどな。
「おい、取り巻き連中はどうした?」
「あ? あいつらか、使えない連中だから全員クビにした」
強がっているが、コイツが追い出されたのは明白だ。
まあ、そういう協調性のないところも俺と気が合うんだけどな。
「なるほど。じゃあアレか。新パーティーを作るための人集めと言ったところか?」
「まあそんなところだが、少しだけ違うな」
「違うって、じゃあ何してんだ?」
「俺は冒険者なんてチンケな仕事はやめて、海賊になることにしたんだ」
昔はナンバーワンの冒険者になるってほざいてたが、コイツは飽きるのも速いんだよな。
まあ、海賊の方が確かに……コイツには似合っているかもしれん。
「ほう……じゃあ、アレか。赤ひげとか堕天使みたいな大海賊を目指すってやつか?」
そう聞くと、ガンスーンは不敵に笑ってやがった。
「その通りだ。で、いま……クルーを集めてるんだが、お前も一枚かまねえか?」
俺様も海賊か。悪い話じゃねえと思った。
なにせ最近は追いはぎをし過ぎて冒険者がうろつくようになったんだ。今はまだ身を隠してごまかしているけど、ベテランのCランクパーティーか、Bランク辺りに来られたらヤバそうだ。
「ほほう……じゃあ、何人か手下がいるからそいつらも連れて来よう。元船乗りのヤツもいるからな」
元船乗りという言葉を聞いて、ガンスーンは表情を変えた。
さすがのガンスーンから見ても海というモノは別世界だ。そういう畑違いの仕事をするとなれば、経験のあるやつを斡旋できる人間は重用される。
ガンスーンは笑いながら言った。
「テメエを誘った甲斐があったぜ。ちょっと案内しろよ」
「こっちだ」
俺はガンスーンを隠れ家へと案内した。
ちなみに手下は4人。弱い者虐めしかしないクズに、チビのコソ泥に、女襲い専門のバカに、船長をぶっ飛ばした暴力船乗り。俺が言うのも何だが、どいつもこいつもさっさとくたばった方がいいゴミばかりだ。
さすがのガンスーンも苦笑いしていた。
「なんつーか……すげー奴らだな」
「だろ?」
俺は小声でささやいた。
「こんな連中だから、死んだところで良心は痛まねえ」
「……お前がそれを言うか?」
洒落を言い合ったところで、俺はこいつらに言った。
「お前ら、よく聞け!」
そう言うと、こいつらはだるそうにこちらを見てくる。
「はぁ? なんスかボス?」
「このまま、このチンケな隠れ家に居てもじり貧だ。だから俺たちはこれから海賊になることにする!」
海賊という言葉を聞いた手下どもは、一斉に表情を変えた。
「マジすか?」
「なんかよくわかんねーけど、おもしろそう!」
「海にも女っていますかね?」
「乗客はいるかもしれねーが、それよりも人魚の方に興味があるねぇ」
人魚と言うパワーワードを出すと、スケベを中心に手下どもは大喜びした。
海沿いの酒場とかに行くと、美しい女の姿をしたマーメイドの絵とかが飾られているからな。俺様もああいうのが人魚なら、一度はお目にかかってみたいもんだ。
「おお、いいじゃんいいじゃん……とっ捕まえて嫁にしてえ!」
「いや、金になるモンは売っちまえよ。世の中金だ!」
「旨いモンも食いたいよな。世界を股にかける海賊だろ~」
そこまで様子を見ていたガンスーンは言った。
「海賊になりたいんなら、俺様に続け。俺は元Aランク冒険者パーティーの頭だ。ガンスーンの名前くらいは聞いたことがあるだろ?」
その言葉を聞いて、手下たちは驚いていた。
「が、ガンスーンって……あの荒くれガンスーン!?」
「そうだ! 俺様について来れば、金でも女でも好きなだけくれてやる!」
その思い切りのいい言葉に、手下たちは歓声を上げていた。なんて豪快な言葉だろうと思う。
俺のようなコモノじゃ、未来のこととか考えちまって、こんな約束なんてできないからな。
ガンスーンがオオモノなのか、オオバカなのかわかるのはここからだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる