エッケハルトのザマァ海賊団 〜金と仲間を求めてゆっくり成り上がる〜

スィグトーネ

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31.動き始めた海賊たち

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 食料などを買い込んでから船に戻ると、ミホノシュヴァルツ号が険しい顔をしていた。
「どうしたんだ?」
『先ほど、渡り鳥から連絡があってな……赤ひげ海賊団と堕天使海賊団が、我らと争った仲間たちの調査をはじめたようだ』

 なるほど。どうやら海賊団も僕たちを襲った2隻の海賊たちが捕まったことに気付いたというわけか。
「懸賞金を受け取っていたら、バレるところだったね」
『ああ、欲張らなくてよかった』


 良かったと胸を撫で下ろした反面、あまり好ましくない状況でもあった。
 このまま、ポーライナ地域の港町まで行けば、このシルク服などが高く売れただろうが、海賊たちと1週間も追いかけっこをしたら、ゴーレムだって壊れるだろうし、何より身がもたない。

「だけど、商売チャンスは失ってしまったな……木綿、どこで売ろうか?」
 そう呟いたとき、話を聞いていたニッパーは答えた。
「そうだなぁ……ダダダンスクがダメなら、ツノテン王国の北部……ウマドニア地域の都市エディンペガ辺りが無難かもしれん」

 ツノテン王国か。確かにツーノッパ王国よりも北に位置する国だし、北の方に向かえば寒いのでニッパーの言う通り高値で売れるかもしれない。
「わかった。ツノテン王国の北部に向かおう!」
「ああ!」


 こうして僕たちは、ツノテン王国の北部を目指した。
 ツーノッパでは早くも短い夏が終わりを迎え、秋が徐々に深まろうとしている。ツノテン王国の海域に来ると、曇り空が多くなり、なんだか違う地域に来たということを実感してしまう。
『いま渡り鳥が知らせてくれたが、近くの海域にヴァイキングがいるぞ』
「迂回しよう」

 このようなやり取りも何度かあり、僕たちは6日ほどでツノテン王国の北部へとやってきた。
「いよいよウマドニア地域だね」
 そう話しかけると、隣にいたオフィーリアも頷く。
「ここには、エディンペガという港湾都市があるのでしたね」

 エディンペガは、円卓の騎士の1人が治める都市だから治安もいいと聞いている。
 さて……その御尊顔を……

 …………
 …………
 あれ……?

 僕だけでなく、ミホノシュヴァルツ号も、オフィーリアも、ヤーシッチも、ニッパーも、マーチルも、ハルフリーダも、エリンも、リーゼも、全員が唖然としていた。

 港町の多くの建物が損傷し、町の人々が復興作業をしていた。何だか敵対勢力の攻撃を受けた感じがする。
 寄港すると近くの港湾スタッフたちに聞いてみることにした。
「あの……何があったんですか?」
「堕天使どもの攻撃を受けたんだ」
「奴らめ……好き放題やりやがって……!」

 堕天使海賊団は、3大海賊の一角と呼ばれるだけあり、リーダーが動員すればかなりの軍船が集まると聞くし、こいつらの厄介なところは、死を恐れないところだ。
 船を停泊させて港町に降り立つと、隣にいたニッパーは言った。
「しっかし、恐ろしい連中だな……ツーノッパの主要都市の1つをこんなにしちまうなんて」
「ああ、僕たちももう少し警戒を強めないといけない」

 そんな話をしながら歩いていくと、荷物を背負っていたミホノシュヴァルツ号は脚を止めている。
 なんだろうと思ってシュヴァルツ号の視線を追うと、何だか張り紙がしてあることに気が付いた。
【円卓の騎士に告ぐ 今度こそ、トリスタン卿の娘をもらい受けに行く! 大天使キャンサーより】

「な、なんだこれ……?」
 思わずそう声を漏らすと、隣にいたオフィーリアも困惑した様子のまま僕を見てきた。どうリアクションを取ったらいいのかわからないのだろう。
 マーチルやヤーシッチとも、ナニコレ的な会話をしていると、近くにいた騎士風の男性が近づいてきた。


「旅の方。それは、堕天使の戯言だ。真に受けなくていい」
「そ、そうなんですね……」
 そう言いながら、説明してくれた騎士を見ると、高価な甲冑に身を包んでいた。立っているだけにも関わらず、どことなく気品に満ちた感じがするし、身体から流れ出てくる雰囲気にも凄みがある。
 ひょっとしてと思いながら、僕は聞いてみることにした。
「つかぬことを伺いますが……貴方は、円卓の騎士様でしょうか?」

 そう質問をすると、その凄みのある騎士は恥ずかしそうに答えた。
「ま、まあそうだが……血縁関係だけで受け継いだだけの七光り騎士だよ。警備を任されていた町もご覧の有り様だしな」
「ということはアンタ、エクター卿か!?」

 エクターと言う言葉を聞いて、僕たちは驚きを隠せなかった。
 彼の先祖は、あの有名なランスロット卿の弟にあたる血筋で、命の聖杯を探し求めることに生涯を費やしたと言われる人物だ。
「ああ、ベンジャミン・エクター……円卓の騎士とは言っても、この失態だ。私はじきにお役御免となるだろう」


【ベンジャミン・エクター】


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