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34.エディンペガ沖海戦
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僕が号令を出すと、すぐにオフィーリアもゴーレムたちを動かした。
ゴーレムはまるで屈強の男たちのようにオールを漕ぎながら、この船を動かしていく。
一角獣ミホノシュヴァルツ号も、渡り鳥たちを睨んでいた。
『どういうことだ……? 吾の索敵に敵船団が引っかからなかった……?』
彼はすぐに表情を引きしめる。
『いや、そんなことを気にしている場合じゃないな』
間もなく、甲板ではニッパー、ヤーシッチ、ベンジャミンの3人がそれぞれの要所に立ち、彼らを補佐するようにマーチル、エリン、ハルフリーダも武器を構えた。
僕もまた、船内の出入り口の前に立って、船の要であるオフィーリアと非戦闘員であるリーゼを守る。
あえて逃げようとしている船を演じてみることで、敵の海賊船2隻がこちらへと向かって進んできた。正直に言えばこのまま逃げてしまってもいいのだが、敵船に有翼人がいるのなら早めに襲ってきて欲しいものだ。
オフィーリアがこちらを見た。
「速度を上げましょうか?」
「もう少し敵2隻を、この船に括り付けておきたい」
そう伝えると、彼女は満足そうに微笑んだ。
「わかりました!」
敵から言わせれば、僕たちの船は届きそうで届かない位置にいる嫌な相手だったのだろう。
堕天使船の船長は怒号を響かせて、オール漕ぎたちに加速を指示している。その様子を見ているオフィーリアもゴーレムのオールのスピードやパワーを調節して、一進一退の追いかけっこが続いた。
恐らく傍から見ていると、僕と相手の船2隻は何をワケの分からないことをしているんだと思うかもしれない。
だけど、弱い駒であるはずのエッケハルト海賊団が、2隻の敵海賊船を引きつけるのは大きな意味があるのだ。今回襲ってきた堕天使の船団は合計で7隻。
そのうちの2隻がいなくなっているわけだから、連中は5隻で港の守備隊などを相手に戦わないといけない。
「ええい、いつまでも時間はかけられん……有翼人隊! 奴らの動きを止めろ!」
敵海賊船から号令が響き渡ると、敵有翼人が2隻の船から飛び立って襲い掛かってきた。その数は合わせて10人だ。
「よし、頼んだよ!」
僕もまた号令をかけると、まずヤーシッチがアビリティを発動させた。
ヤーシッチの特殊能力は、目が合った相手の動きを止めるモノだ。これは上空の相手にも有効……いや、上空の相手にこそ真価を発揮する能力である。
最初に目が合ったのは、有翼人隊の小隊長だったようだ。
有翼人は風の気を纏いながら、翼で調節しながら飛行するため、ヤーシッチに動きを封じられたら堕ちるしかない。小隊長を失って敵有翼人たちは早くも混乱していた。
次の攻撃を仕掛けたのはニッパーだ。
彼はクロスボウを持ちだすと、有翼人に向けて放った。有翼人は高速で飛び回ると言っても、ニッパー特製クロスボウは、強力なバネで矢を打ち出すのだから、その速さは相当なもの。
遂に翼の付け根に攻撃が命中して1人が海に落ちた。
ベンジャミンも、この前の礼と言わんばかりに長弓を放っている。
彼の攻撃は当たらないまでも、有翼人たちの行動をけん制するには十分だ。5発目を放った時は有翼人1人に命中させ、その有翼人も水の中へと落ちた。
敵有翼人も反撃と言わんばかりに、こちらの有翼人ハルフリーダをさらおうと抵抗飛行をして船の上空に突入してきた。すると、物陰からマーチルが飛びかかって、そのままもみくちゃになりながら敵有翼人は船のマストにぶつかっていた。
そのまま2人は甲板で取っ組み合いのケンカをしはじめている。
すでに3人を撃墜され、1人が場外乱闘となったため、敵有翼人隊は統制を失っていた。
ある者はニッパーと矢を射かけ合い、またある者はベンジャミンと戦い、別の者はハルフリーダを相変わらずさらおうとしている。
そんな状況のなか、いままで沈黙を続けていた一角獣ミホノシュヴァルツ号が遂に角を光らせた。
彼は上空をたまたま飛んでいた、敵有翼人1人を風魔法で叩き落すと、そのまま甲板を滑走して飛び立ち、ハルフリーダに背後から襲い掛かろうとしていた有翼人を蹴り落とした。
敵有翼人4人は、体勢を立て直すと4人で協力してシュヴァルツ号を倒そうと襲い掛かってきた。
しかし、ヤーシッチのアビリティが再びトリガー可能となり、彼は有翼人1人の行動を麻痺させて海に落とし、更にニッパーはクロスボウで1人を仕留めて数を2人まで減らした。
敵が動揺している間にミホノシュヴァルツ号は突進し、1人は風魔法で仕留め、最後の1人は逃げようとしたが服の襟を噛まれたまま捕縛された。
「ば、バカな……我らの有翼人隊が!?」
敵船長たちは明らかに動揺していたので、僕は船の最後尾に立って相手を睨みつけた。
すると、敵の船は少しずつ減速していき、やがて進路を変えて僕たちの前から立ち去っていく。どうやら上陸戦まで行うような度胸はないようだ。
「エリン、ハルフリーダ、一応……回収可能な有翼人は引き上げておこう」
「はい!」
「わかりました!」
ゴーレムはまるで屈強の男たちのようにオールを漕ぎながら、この船を動かしていく。
一角獣ミホノシュヴァルツ号も、渡り鳥たちを睨んでいた。
『どういうことだ……? 吾の索敵に敵船団が引っかからなかった……?』
彼はすぐに表情を引きしめる。
『いや、そんなことを気にしている場合じゃないな』
間もなく、甲板ではニッパー、ヤーシッチ、ベンジャミンの3人がそれぞれの要所に立ち、彼らを補佐するようにマーチル、エリン、ハルフリーダも武器を構えた。
僕もまた、船内の出入り口の前に立って、船の要であるオフィーリアと非戦闘員であるリーゼを守る。
あえて逃げようとしている船を演じてみることで、敵の海賊船2隻がこちらへと向かって進んできた。正直に言えばこのまま逃げてしまってもいいのだが、敵船に有翼人がいるのなら早めに襲ってきて欲しいものだ。
オフィーリアがこちらを見た。
「速度を上げましょうか?」
「もう少し敵2隻を、この船に括り付けておきたい」
そう伝えると、彼女は満足そうに微笑んだ。
「わかりました!」
敵から言わせれば、僕たちの船は届きそうで届かない位置にいる嫌な相手だったのだろう。
堕天使船の船長は怒号を響かせて、オール漕ぎたちに加速を指示している。その様子を見ているオフィーリアもゴーレムのオールのスピードやパワーを調節して、一進一退の追いかけっこが続いた。
恐らく傍から見ていると、僕と相手の船2隻は何をワケの分からないことをしているんだと思うかもしれない。
だけど、弱い駒であるはずのエッケハルト海賊団が、2隻の敵海賊船を引きつけるのは大きな意味があるのだ。今回襲ってきた堕天使の船団は合計で7隻。
そのうちの2隻がいなくなっているわけだから、連中は5隻で港の守備隊などを相手に戦わないといけない。
「ええい、いつまでも時間はかけられん……有翼人隊! 奴らの動きを止めろ!」
敵海賊船から号令が響き渡ると、敵有翼人が2隻の船から飛び立って襲い掛かってきた。その数は合わせて10人だ。
「よし、頼んだよ!」
僕もまた号令をかけると、まずヤーシッチがアビリティを発動させた。
ヤーシッチの特殊能力は、目が合った相手の動きを止めるモノだ。これは上空の相手にも有効……いや、上空の相手にこそ真価を発揮する能力である。
最初に目が合ったのは、有翼人隊の小隊長だったようだ。
有翼人は風の気を纏いながら、翼で調節しながら飛行するため、ヤーシッチに動きを封じられたら堕ちるしかない。小隊長を失って敵有翼人たちは早くも混乱していた。
次の攻撃を仕掛けたのはニッパーだ。
彼はクロスボウを持ちだすと、有翼人に向けて放った。有翼人は高速で飛び回ると言っても、ニッパー特製クロスボウは、強力なバネで矢を打ち出すのだから、その速さは相当なもの。
遂に翼の付け根に攻撃が命中して1人が海に落ちた。
ベンジャミンも、この前の礼と言わんばかりに長弓を放っている。
彼の攻撃は当たらないまでも、有翼人たちの行動をけん制するには十分だ。5発目を放った時は有翼人1人に命中させ、その有翼人も水の中へと落ちた。
敵有翼人も反撃と言わんばかりに、こちらの有翼人ハルフリーダをさらおうと抵抗飛行をして船の上空に突入してきた。すると、物陰からマーチルが飛びかかって、そのままもみくちゃになりながら敵有翼人は船のマストにぶつかっていた。
そのまま2人は甲板で取っ組み合いのケンカをしはじめている。
すでに3人を撃墜され、1人が場外乱闘となったため、敵有翼人隊は統制を失っていた。
ある者はニッパーと矢を射かけ合い、またある者はベンジャミンと戦い、別の者はハルフリーダを相変わらずさらおうとしている。
そんな状況のなか、いままで沈黙を続けていた一角獣ミホノシュヴァルツ号が遂に角を光らせた。
彼は上空をたまたま飛んでいた、敵有翼人1人を風魔法で叩き落すと、そのまま甲板を滑走して飛び立ち、ハルフリーダに背後から襲い掛かろうとしていた有翼人を蹴り落とした。
敵有翼人4人は、体勢を立て直すと4人で協力してシュヴァルツ号を倒そうと襲い掛かってきた。
しかし、ヤーシッチのアビリティが再びトリガー可能となり、彼は有翼人1人の行動を麻痺させて海に落とし、更にニッパーはクロスボウで1人を仕留めて数を2人まで減らした。
敵が動揺している間にミホノシュヴァルツ号は突進し、1人は風魔法で仕留め、最後の1人は逃げようとしたが服の襟を噛まれたまま捕縛された。
「ば、バカな……我らの有翼人隊が!?」
敵船長たちは明らかに動揺していたので、僕は船の最後尾に立って相手を睨みつけた。
すると、敵の船は少しずつ減速していき、やがて進路を変えて僕たちの前から立ち去っていく。どうやら上陸戦まで行うような度胸はないようだ。
「エリン、ハルフリーダ、一応……回収可能な有翼人は引き上げておこう」
「はい!」
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