エッケハルトのザマァ海賊団 〜金と仲間を求めてゆっくり成り上がる〜

スィグトーネ

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漁村に逆戻りしたガンスーン

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 俺様はガンスーン。
 そっと目を開けると、砂浜に打ち上げられていた。

 それだけじゃなく、周りには漁村の民草どもがいて、俺だけじゃなくて手下の不良どもも捕まっている。これって……かなりのピンチじゃねーか、おい!?
「おい、ガキども……おいらたちの舟はどうした!?」
「答え次第によっては、このまま炭鉱に売り飛ばすぞ!」

 この不良どもは「ひいっ!」という情けない声を出すと、俺を指さしてきやがった。
「ぼ、僕たちは、コイツに脅されてやっただけなんです!」
「そうです、コイツが首謀者です!!」
「はぁ、ちょっと待てお前ら!?」


 俺様は愕然としながら、手下どもを眺めていた。
 漁村の民草どもも、怒り狂った様子で俺を睨んでいるし、やべえ……どうすればいいんだこれ!?
「コイツが頭か……」
「いい度胸だなぁ……若造!」
「い、いや……これには、海よりも深い事情が……」
「海という言葉を軽々しく言い訳にすんなボケェ!」
「ほぶご!」

 民草にぶん殴られると、俺は背中を砂浜に叩きつけられてむせかえった。すると、漁村の民草どもも表情を変えて俺を睨んで来た。
「おい、今……コインの音しなかったか!?」
「コイツの持ち物を調べるぞ!」
「や、やめろぉ!」


 民草どもは俺の鎧や衣服を脱がすと、俺様が今まで稼いできた金貨なんかを奪いやがった。
「コイツ……大金貨なんて持ってやがる!」
「ちょうどいい。舟の弁償代とさせてもらおう。ただ……これだけじゃ足りねえな!」

 こいつらはそう言うと、俺の鎧だけでなく衣服まで奪って、文字通り俺は下着1枚になるまではぎ取られてしまった。くそ。テメーらは手下どもの荷物で満足してろよ!
「手下どもの持ち物も合わせれば、何とか足りそうだな」
「ああ、これに懲りたら……二度と俺たちの持ち物に手出しするんじゃねえ!」

 民草どもは、俺たちのことを散々に殴ると、ゴミのように村はずれに放り投げて帰っていきやがった。
 クソ……覚えていろよ。この貧乏人ども。

 そう思いながら振り返ると、今度は手下どもが俺を睨んできやがった。
「おい、テメーの口車に乗ったから、えらい目に遭わされたじゃねーか!」
「はぁ? それはテメーらがグズだったからだろ!」
「うるせー! この疫病神が!」
「やっちまえ!」

「ごべはとのふぉbがほhうぇ!」
 いくら俺がAランク冒険者でも、丸腰の状態で10人もの相手に襲い掛かられたらたまらない。次々と不良に襲い掛かられると、遂に顔面に攻撃を食らい、この不良共は俺を殴るだけ殴ったら、唾を吐きかけてきた。
「行こうぜ」
「ああ、あばよクソキャプテン」
「せいぜい頑張りなよ、轟沈船長さんよ!」


「い、いてえ……」
 俺は何とか立ち上がると、口から流れ出る血を拭いながら水面に自分の顔を映してみた。
 顔中が腫れ上がっていて見るも無残な顔立ちだ。とても元Aランク冒険者とは思えない。なんてこった。どうしてこうなった。

 過去を振り返ってみても、やっぱりソフィアが離反したせいだ。
 俺が落ちぶれた元凶はどう見てもアイツだ。あのクソ女さえいなければ、この偉大なガンスーン様がこんな目に遭うことはなかった。
「くそ……こんな程度のことで俺様は諦めたりしねーぞ。必ず大海賊になって……バカにした奴らをひれ伏させてやる」

 自分のハラワタが煮えくり返っているのを感じて、この程度では済まないと感じる。思わず一人ことを口にしていた。
「いや、そんなもんじゃ済まねえ。こんな目に遭わせた奴らをひれ伏させて、頭を踏みつけてやらなきゃだめだ……崇高な俺様をこんな目に遭わせた罪はそれほどまでに重い!」


 そう呟いていたら、飛んできたカラスが鳴き声を上げながら俺様の頭に糞を落としやがった。くそっ……どいつもこいつも俺様をバカにしやがって。
 俺様はすんごいんだ! 冒険者をさせればSランク冒険者に、海賊をさせれば泣く子も黙る大海賊になる男なんだ。


 こんな程度のことでは、俺様の鉄のハートは崩れない。
 見ていろよ。必ず成り上がってやる。

 そう思いながら砂浜を歩いていると、何やら変なビンが打ち上げられていた。黒く汚れていて中身はわからないが、栓がしてある。
 中に何か入っているのか。

 試しに開けてみると、そこからは妖精のような生き物が姿を現しやがった。
「人の子よ……私をビンから出してくれて感謝いたします」
「あ……ああ……」
「お礼に1つ、貴方の望みを叶えることにしましょう」

 何だか妙な展開になったが、これはラッキーかもしれない。
「じゃあ……俺が指パッチンをしたら大金貨が1枚出てくるようにしろ」
「畏まりました」

 妖精は、俺の頭の周りを飛び回ると、俺は試しに指パッチンをしてみた。
 すると、本当に親指の先から金貨が回転しながら飛び出し、俺の手元へと入り込んで来た。
「こ、これ……ホンモノか!?」
「はい。形状、材質、金属の化合率……共に、ツーノッパ金貨とそん色ないモノです。それでは!」

 俺様はAランク冒険者だ。今まで何度も金貨を得てきたからわかる。この大きさや重さ、光沢は間違いなく本者だろう。
 俄然……楽しくなってきた!

【ビンから現れた妖精】
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