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24.ラング村の異変
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フロンティアトリトンズでは、付近の住民が一斉に舟を注文したため、マーフォークたちは嬉しい悲鳴を上げていた。
「ジルーちゃん! 追加で木材お願い!」
「はーい!」
そして、木材の注文を円滑にするために、ボレアスウインドの有翼人たちにもお呼びがかかり、彼らも忙しそうに小切手や必要書類を手に飛び回っていた。
有翼人アピゲイルは着地するとトリトンズの事務所に入り、書類をギルド長フェリシティーに手渡した。
「わかりました……今度はこの注文書を……」
そんなギルド員たちの動きを見ていると、事務所の隅などにゴミが目立ちはじめていることに気が付いた。
普段はギルド長のフェリシティーが率先して掃除しているが、最近は忙しい日が続いているから、こういう雑事をする暇がないということか。
僕はホウキを手に取ると掃除をしたり、窓を拭いたりすると、だいぶ事務所が綺麗になったので何だかテンションが上がった。
「せっかくだし……あそこも掃除するか」
フロンティアトリトンズには、トイレはあるが男女共用だ。
川に直接流す構造になっているから、肥しのような臭気はしないが、それでも掃除は疎かになっていたと見え、ボロ布を雑巾代わりに壁などを拭いてみると、埃がしっかりとついた。
掃除がだいぶ進んだとき、ギルド長が入ってきた。
「カイトさん、事務所や廊下がきれいになっていると思ったら……」
「他にやることもなかったので……」
そうあいまいな言葉を返すと、フェリシティーは微笑んで言った。
「代わりに掃除して下さってありがとうございます。わずかですがギルドから謝礼を出します」
「え? そんな……いいですよ……」
「まあ、そう言わずに……」
フェリシティーは、小銀貨を5枚くれた。
何だかこの程度の掃除で貰ってしまうのも申し訳ないなと思っていたら、アピゲイルがやってきた。
「ギルド長……ラング村に行ってきたのですが……」
「どうでしたか?」
「洞窟からゾンビの群れが現れたので、応援と治療をできる人を援軍として寄越して欲しいと!」
ゾンビに対抗できそうと言えば、一角獣スティレットになるが、体重が520キログラムもある彼を運ぶとなれば、それなりに大きな船を使わなければならないだろう。
フェリシティーも困り顔で言った。
「ラング村はギルド発足から支援して下さった村……見捨てることはできません。すぐにアイラ、オリヴィア、ジルーを呼んでください」
「わかりました」
「僕も出番でしょうか?」
そう聞くとフェリシティーは当然と言いたそうに頷いた。
「はい。アイラやジルーを助けてあげてください。それからなるべく早くスティレットをはじめとする、第2陣も派遣したいと思います」
ギルド長の妹であるアイラ、そしてオリヴィアとジルーの3人は、ギルドからの火急の依頼を承諾した。
「わかりました。では先遣隊として……ラング村の援軍に向かいます」
「相手は亡者です。住民の安全を最優先に任務に就いてください」
「承知いたしました!」
間もなく、アイラをはじめとする4人は桟橋から小舟へと乗り込んだ。
『小生も、動物経由で情報を集めてみるよ』
「わかった。僕たちも被害が大きくならないように最善を尽くすよ」
「では、行って参ります!」
間もなくジルーは、オールを操りながら舟を誘導していった。
どうやらラング村という場所は、この前にゴブリン退治をした村の更に下流に位置しているようだ。
僕たちは、舟に揺られながら下流に向かって進んでいき、30分もするとだいぶ舟も目的地に近づいているように思えた。
「そろそろかな……?」
「そうだね。ちょうどアピゲイルも来たし」
ジルーの視線を追うと、ちょうど偵察に行っていたアピゲイルが戻ってきた。
彼女はゆっくりと高度を下げながら、舟の側まで降りてきて空中で静止している。
「……どうだった?」
ジルーが話しかけると、アピゲイルは舟の上にゆっくりと着地して言った。
「ぜぇ……ぜぇ……」
アイラは心配そうに言った。
「急がせてしまったか、申し訳ない。ゆっくりで構わない」
「あ、ありがとう……じゃあ、結論から言うとね……」
その直後にアピゲイルは、アイラの腕に噛みついた。
「……!?」
一同はアピゲイルの思わぬ行動に唖然としていたが、アピゲイルの口から伸びた犬歯がある。
これは要するに……
そう思ったとき、オリヴィアは慌てて僕を突き飛ばして、川に落とした。
ジルーもまた、オールを振り上げてアピゲイルに攻撃を仕掛けようとしたが、水中から飛び出したマーフォークに噛みつかれ、オールを水中へと落としてしまった。
オリヴィアは険しい顔をして、アピゲイル、ジルー、アイラなどを眺めた。
「…………」
そして黙って両手を上げると、アピゲイルは言った。
「とっさにカイトを逃がしたのは良い判断だけど、貴女に勝ち目などないわよ」
「まさか、吸血鬼……」
オリヴィアが悔しそうに言うと、アピゲイルは笑った。
「吸血鬼は昼間は飛べないという、妙な噂のおかげで……このアピゲイルという娘も簡単に捕らえることができたわね」
そこまで言うと、そのアピゲイルの身体を乗っ取った何かは、オリヴィアを睨んだ。
「ヒーラーで更に炎の魔法使い……これは念入りに拘束しないとね」
間もなくオリヴィアは、操られたジルーやアイラに取り押さえられた。
「まあ、こういう娘こそ……強いヴァンパイアになるんだけど……」
【その後……】
「ジルーちゃん! 追加で木材お願い!」
「はーい!」
そして、木材の注文を円滑にするために、ボレアスウインドの有翼人たちにもお呼びがかかり、彼らも忙しそうに小切手や必要書類を手に飛び回っていた。
有翼人アピゲイルは着地するとトリトンズの事務所に入り、書類をギルド長フェリシティーに手渡した。
「わかりました……今度はこの注文書を……」
そんなギルド員たちの動きを見ていると、事務所の隅などにゴミが目立ちはじめていることに気が付いた。
普段はギルド長のフェリシティーが率先して掃除しているが、最近は忙しい日が続いているから、こういう雑事をする暇がないということか。
僕はホウキを手に取ると掃除をしたり、窓を拭いたりすると、だいぶ事務所が綺麗になったので何だかテンションが上がった。
「せっかくだし……あそこも掃除するか」
フロンティアトリトンズには、トイレはあるが男女共用だ。
川に直接流す構造になっているから、肥しのような臭気はしないが、それでも掃除は疎かになっていたと見え、ボロ布を雑巾代わりに壁などを拭いてみると、埃がしっかりとついた。
掃除がだいぶ進んだとき、ギルド長が入ってきた。
「カイトさん、事務所や廊下がきれいになっていると思ったら……」
「他にやることもなかったので……」
そうあいまいな言葉を返すと、フェリシティーは微笑んで言った。
「代わりに掃除して下さってありがとうございます。わずかですがギルドから謝礼を出します」
「え? そんな……いいですよ……」
「まあ、そう言わずに……」
フェリシティーは、小銀貨を5枚くれた。
何だかこの程度の掃除で貰ってしまうのも申し訳ないなと思っていたら、アピゲイルがやってきた。
「ギルド長……ラング村に行ってきたのですが……」
「どうでしたか?」
「洞窟からゾンビの群れが現れたので、応援と治療をできる人を援軍として寄越して欲しいと!」
ゾンビに対抗できそうと言えば、一角獣スティレットになるが、体重が520キログラムもある彼を運ぶとなれば、それなりに大きな船を使わなければならないだろう。
フェリシティーも困り顔で言った。
「ラング村はギルド発足から支援して下さった村……見捨てることはできません。すぐにアイラ、オリヴィア、ジルーを呼んでください」
「わかりました」
「僕も出番でしょうか?」
そう聞くとフェリシティーは当然と言いたそうに頷いた。
「はい。アイラやジルーを助けてあげてください。それからなるべく早くスティレットをはじめとする、第2陣も派遣したいと思います」
ギルド長の妹であるアイラ、そしてオリヴィアとジルーの3人は、ギルドからの火急の依頼を承諾した。
「わかりました。では先遣隊として……ラング村の援軍に向かいます」
「相手は亡者です。住民の安全を最優先に任務に就いてください」
「承知いたしました!」
間もなく、アイラをはじめとする4人は桟橋から小舟へと乗り込んだ。
『小生も、動物経由で情報を集めてみるよ』
「わかった。僕たちも被害が大きくならないように最善を尽くすよ」
「では、行って参ります!」
間もなくジルーは、オールを操りながら舟を誘導していった。
どうやらラング村という場所は、この前にゴブリン退治をした村の更に下流に位置しているようだ。
僕たちは、舟に揺られながら下流に向かって進んでいき、30分もするとだいぶ舟も目的地に近づいているように思えた。
「そろそろかな……?」
「そうだね。ちょうどアピゲイルも来たし」
ジルーの視線を追うと、ちょうど偵察に行っていたアピゲイルが戻ってきた。
彼女はゆっくりと高度を下げながら、舟の側まで降りてきて空中で静止している。
「……どうだった?」
ジルーが話しかけると、アピゲイルは舟の上にゆっくりと着地して言った。
「ぜぇ……ぜぇ……」
アイラは心配そうに言った。
「急がせてしまったか、申し訳ない。ゆっくりで構わない」
「あ、ありがとう……じゃあ、結論から言うとね……」
その直後にアピゲイルは、アイラの腕に噛みついた。
「……!?」
一同はアピゲイルの思わぬ行動に唖然としていたが、アピゲイルの口から伸びた犬歯がある。
これは要するに……
そう思ったとき、オリヴィアは慌てて僕を突き飛ばして、川に落とした。
ジルーもまた、オールを振り上げてアピゲイルに攻撃を仕掛けようとしたが、水中から飛び出したマーフォークに噛みつかれ、オールを水中へと落としてしまった。
オリヴィアは険しい顔をして、アピゲイル、ジルー、アイラなどを眺めた。
「…………」
そして黙って両手を上げると、アピゲイルは言った。
「とっさにカイトを逃がしたのは良い判断だけど、貴女に勝ち目などないわよ」
「まさか、吸血鬼……」
オリヴィアが悔しそうに言うと、アピゲイルは笑った。
「吸血鬼は昼間は飛べないという、妙な噂のおかげで……このアピゲイルという娘も簡単に捕らえることができたわね」
そこまで言うと、そのアピゲイルの身体を乗っ取った何かは、オリヴィアを睨んだ。
「ヒーラーで更に炎の魔法使い……これは念入りに拘束しないとね」
間もなくオリヴィアは、操られたジルーやアイラに取り押さえられた。
「まあ、こういう娘こそ……強いヴァンパイアになるんだけど……」
【その後……】
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