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37.尾花栗毛の一角獣
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負ければ命を奪われる。
そんなホースレースがいま、幕を開けた。
先頭から7番手までを瘴気から生まれた魔馬が走り、最下位にホワイトスティレットという状況だ。
ホワイトスティレットの手綱を握っているのは、体重50キログラムの天使娘アピゲイル。彼女は天馬乗りというとても一般的な乗り方で手綱を握っていた。
スティレットは、このラング村に現れた即席のレースコースを【フクッシマ】とか言っていたが、福島競馬場とどんな関係があるのかはよくわからない。
ただ、一つはっきりしていることは、338メートルを越え、先頭のライバルウマが第1コーナーへと入ったときも、スティレットは最下位ということだ。
先頭から最後尾までの長さは馬10頭分くらい。だいたい24~5メートルと言った感じか。
ペースが速いのか遅いのかはわからないが、先頭のライバルウマは第2コーナーへと入った。ウマの順番も馬群の広さも変化はない。
隣で観戦していたマーフォーク族のビルや仲間たちは、真っ青な顔をしながらつぶやいた。
「お、おい……どうなってるんだよ。ずっと最下位じゃないか」
「ま、まさか……思った以上に、ヤミウマどもが速くて……ついて行くのさえやっととかじゃないよな?」
「だ、だとしたら終わりだぞ……いろんな意味で!」
「お前たち、黙って見れないのか!」
自警団のリーダーに怒鳴られて、とりあえず黙ったビルたちだが表情は不安そのものだった。まあ、気持ちはわかる。
僕だって不安で仕方ない。だって、スティレットは弟のような奴だ。それが今日いなくなってしまうなんて、そんなことが起こったらどれだけショックだろう。
先頭のライバルウマが向こう正面に入った。そして1000メートルも通過。
どうやらタイムは速くもなく遅くもなくという感じらしい。順位は変わらないが馬群は先頭と最後尾が少し伸びている。
不安と焦燥に支配された僕たち観客とは違い、スティレットは淡々と前を睨んだまま懸命に脚を動かしていた。
ライバルウマが第3コーナーに入った。スティレットは未だに最下位。
ライバルウマが残り600メートルの地点に到達。スティレットは未だに最下位。
ライバルウマが第4コーナーに入った。スティレットは未だに最下位。
ここまで来ると、もはやマーフォークの若者たちは頭を抱えていた。このままでは故郷を失うだけでなく、更にスティレットまで消えてしまう。
ビルや隣にいる若者は絶叫し、オリヴィアやジルーさえ顔色が真っ青だった。
ただ、そんな絶望的な雰囲気の中……ギルド長のフェリシティーだけは違った。
「……動いた!」
変化が起こったのは、先頭を走っていたライバルウマが最後の直線コースに入ったところだった。そこから遥か25メートル後方を走っていたスティレットは、ゆっくりと何かを狙うように目を細めていく。
間もなく次々と、ライバルウマたちが最後の直線になだれ込んでいくと、そのどさくさに紛れてスティレットは角を光らせた。
「な、あ、なぁ、なあんだあれえええ!」
ビルの叫び声と共に、スティレットがこめかみに青筋を走らせた。
――アビリティ発動……ペネトレーション!
なぜか僕の目には、スティレットの表情が鮮明に映っていた。
まるでゲームやアニメのカットインのようなモノを錯覚している間に、ホワイトスティレットの真っ白なたてがみが白い光を放ち、汗が粒子のように飛び散り、力強いラストランが繰りだされた。
残り270メートル。1頭を抜きスティレットは7番手。
残り235メートル。もう1頭を抜きスティレットは6番手。
残り212メートル。3頭目を抜きスティレットは5番手。
残り198メートル。4頭目を抜きスティレットは4番手。
その鋭い末脚を目の当たりにしたビルたちは、一斉に立ち上がると歓声をあげはじめた!
残り178メートル。5頭目を抜きスティレットは3番手。
残り153メートル。6頭目を抜きスティレットは2番手。
残り132メートル。先頭を走っていたライバルウマの半身後ろにスティレット。
先頭を走っていた魔馬は、負けじとペースを上げてきたが、スティレットは表情ひとつ変えることはなかった。その態度はまるで、お前と小生では積んでいるエンジンが違うとさえ言いそうだ。
残り117メートル。スティレットは2番手に身体1つ分の差。
残り98メートル。スティレットは2番手に身体2つ分の差。
残り71メートル。スティレットは2番手に身体3つ分の差。
その圧倒的な力を目の当たりにしたビルは、興奮のあまり鼻血を出して、なお喜んでいた。周りのマーフォークたちも抱き合ったまま歓声をあげ、自警団長まで喜びの声を張り上げている。
しかし、スティレットのダメ押しはまだまだ終わらない!
残り49メートル。スティレットは2番手に身体4つ分の差。
残り29メートル。スティレットは2番手に身体5つ分の差。
残り7メートル。スティレットは2番手に身体6つ分の差。
いま……ホワイトスティレットはゴールした。着差は2番手と6馬身と少し……メートルに直して14メートル以上を突き放しての快勝だった。
つーか、お前はディープイ○パクトか!
そんなホースレースがいま、幕を開けた。
先頭から7番手までを瘴気から生まれた魔馬が走り、最下位にホワイトスティレットという状況だ。
ホワイトスティレットの手綱を握っているのは、体重50キログラムの天使娘アピゲイル。彼女は天馬乗りというとても一般的な乗り方で手綱を握っていた。
スティレットは、このラング村に現れた即席のレースコースを【フクッシマ】とか言っていたが、福島競馬場とどんな関係があるのかはよくわからない。
ただ、一つはっきりしていることは、338メートルを越え、先頭のライバルウマが第1コーナーへと入ったときも、スティレットは最下位ということだ。
先頭から最後尾までの長さは馬10頭分くらい。だいたい24~5メートルと言った感じか。
ペースが速いのか遅いのかはわからないが、先頭のライバルウマは第2コーナーへと入った。ウマの順番も馬群の広さも変化はない。
隣で観戦していたマーフォーク族のビルや仲間たちは、真っ青な顔をしながらつぶやいた。
「お、おい……どうなってるんだよ。ずっと最下位じゃないか」
「ま、まさか……思った以上に、ヤミウマどもが速くて……ついて行くのさえやっととかじゃないよな?」
「だ、だとしたら終わりだぞ……いろんな意味で!」
「お前たち、黙って見れないのか!」
自警団のリーダーに怒鳴られて、とりあえず黙ったビルたちだが表情は不安そのものだった。まあ、気持ちはわかる。
僕だって不安で仕方ない。だって、スティレットは弟のような奴だ。それが今日いなくなってしまうなんて、そんなことが起こったらどれだけショックだろう。
先頭のライバルウマが向こう正面に入った。そして1000メートルも通過。
どうやらタイムは速くもなく遅くもなくという感じらしい。順位は変わらないが馬群は先頭と最後尾が少し伸びている。
不安と焦燥に支配された僕たち観客とは違い、スティレットは淡々と前を睨んだまま懸命に脚を動かしていた。
ライバルウマが第3コーナーに入った。スティレットは未だに最下位。
ライバルウマが残り600メートルの地点に到達。スティレットは未だに最下位。
ライバルウマが第4コーナーに入った。スティレットは未だに最下位。
ここまで来ると、もはやマーフォークの若者たちは頭を抱えていた。このままでは故郷を失うだけでなく、更にスティレットまで消えてしまう。
ビルや隣にいる若者は絶叫し、オリヴィアやジルーさえ顔色が真っ青だった。
ただ、そんな絶望的な雰囲気の中……ギルド長のフェリシティーだけは違った。
「……動いた!」
変化が起こったのは、先頭を走っていたライバルウマが最後の直線コースに入ったところだった。そこから遥か25メートル後方を走っていたスティレットは、ゆっくりと何かを狙うように目を細めていく。
間もなく次々と、ライバルウマたちが最後の直線になだれ込んでいくと、そのどさくさに紛れてスティレットは角を光らせた。
「な、あ、なぁ、なあんだあれえええ!」
ビルの叫び声と共に、スティレットがこめかみに青筋を走らせた。
――アビリティ発動……ペネトレーション!
なぜか僕の目には、スティレットの表情が鮮明に映っていた。
まるでゲームやアニメのカットインのようなモノを錯覚している間に、ホワイトスティレットの真っ白なたてがみが白い光を放ち、汗が粒子のように飛び散り、力強いラストランが繰りだされた。
残り270メートル。1頭を抜きスティレットは7番手。
残り235メートル。もう1頭を抜きスティレットは6番手。
残り212メートル。3頭目を抜きスティレットは5番手。
残り198メートル。4頭目を抜きスティレットは4番手。
その鋭い末脚を目の当たりにしたビルたちは、一斉に立ち上がると歓声をあげはじめた!
残り178メートル。5頭目を抜きスティレットは3番手。
残り153メートル。6頭目を抜きスティレットは2番手。
残り132メートル。先頭を走っていたライバルウマの半身後ろにスティレット。
先頭を走っていた魔馬は、負けじとペースを上げてきたが、スティレットは表情ひとつ変えることはなかった。その態度はまるで、お前と小生では積んでいるエンジンが違うとさえ言いそうだ。
残り117メートル。スティレットは2番手に身体1つ分の差。
残り98メートル。スティレットは2番手に身体2つ分の差。
残り71メートル。スティレットは2番手に身体3つ分の差。
その圧倒的な力を目の当たりにしたビルは、興奮のあまり鼻血を出して、なお喜んでいた。周りのマーフォークたちも抱き合ったまま歓声をあげ、自警団長まで喜びの声を張り上げている。
しかし、スティレットのダメ押しはまだまだ終わらない!
残り49メートル。スティレットは2番手に身体4つ分の差。
残り29メートル。スティレットは2番手に身体5つ分の差。
残り7メートル。スティレットは2番手に身体6つ分の差。
いま……ホワイトスティレットはゴールした。着差は2番手と6馬身と少し……メートルに直して14メートル以上を突き放しての快勝だった。
つーか、お前はディープイ○パクトか!
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