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65.4人の現役勇者の登場
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4次試験では209名が通過したわけだが、そんな僕たちの前に次の試験官と思われる人々が来た。
なぜ人々と言ったかといえば、次の試験官はなんと3人と1頭もいたからである。
僕は、彼らがどんな人物かはわからなかったが、オリヴィア、アイラ、ジルー、そしてスティレットまで驚いている。
「あ、あの人たち……現役勇者じゃない!」
「ほ、本当だ……おウマ様までいる!」
「おウマ様?」
そう聞き返すと、オリヴィアは頷いた。
「はい。あの黒毛馬こそ……フロンティアの聖獣の異名を持つウマの勇者です」
「……そんな勇者までいるんだ」
会場はざわつくなか、現れた勇者たちは静かに受験者たちを眺めており、そして1人が言った。
「では、次の試験の内容を説明したい」
そう言うと、3人と1頭の試験官は、ゆっくりと1人ずつにばらけた。
「次の5次試験は、最初から合格人数が決まっている。1人の試験官につき最大で10人までだ。君たちは相性が最も良いと思う試験官を選び……その試験に挑戦するがいい」
つまり、この試験を合格できる人数の上限は40人か。どの試験官を選んでも狭き門となりそうだ。
最初の試験官は言った。
「まず、私の試験だが……ずばり、じゃんけん大会だ!」
その言葉を聞いて、僕はポカンとしていた。
いや、僕だけじゃなくて、同じようにあっけにとられていた人間も多いだろう。一番最初に救済策なのか罠なのかがわからないお題を提示してくるとは……。いやでも、じゃんけんなら運次第で誰でも合格できるので、これは人気が出そうだ。
次の筋肉質な試験官は、当然のように個人のトーナメント戦を提示。4次試験ではハズレと見せて実は正解だったので、こちらも人気が出そうだ。
3番目の試験官は……何と女性だった。
彼女はどうやら、筆記試験を行って10人まで絞るようだ。もちろんだが、どのような問題が出題されるのかはわからない。
そして最後の4人目……というかウマは、前の3人よりも、より癖のある試験官だった。
『吾は……ここでは言わん。どれも気に入らない者が来るといい』
そう言うと最後の試験官は、鼻を鳴らしてその場で座り込んだ。
当然のことながら、会場に集まった受験者はざわついていた。
僕たちフロンティアトリトンズの面々も、そしてリック隊のメンバーにとっても、これは判断に困る内容の試験である。
『カイトはどう思う?』
「……ここは、変にギルド内で意見を統一しようとか思わずに、自分の得意な分野を選ぶべきだと思う」
そう伝えると、オリヴィアやアイラも頷いた。
「そうですね……それがいいと思います」
「ああ、個々で得意なモノも違うしな」
リック隊も話し合いを行っていたが、どうやら僕らと同じ結論が出たらしく、やがて僕たちはバラけて、それぞれが自分の得意な分野の試験官へと向かった。
例えば、リック、ゴワス、エドワード、アイラなどの自分の腕に自信があるメンバーは、2番目に紹介していた筋肉質な勇者の元に向かった。
他にも、オリヴィア、アリーシャと言った切れ者少女2人は、3番目の女性勇者の元に向かい、ジルーやカールと言った、新人で実力も一戦級メンバーよりも劣る者たちは、じゃんけん大会に参加。
そして、僕とスティレットの2人はお互いを見合った。
「おい、どうしてお前がこっち来るんだよ?」
『いや……どんな試験をするのか気になってさ。そういうカイトは?』
僕はそう聞き返されると、困り顔のまま答えを返した。
「僕は……ほら、能力があまりに中途半端だし、頭もよくなければ運もイマイチだから……」
『まあ、小生のようにどっちつかずなら、ここに賭けるのもひとつの選択ではあるよね』
いや、お前はどんな場面でも強いだろうとツッコミを入れたくなったが、試験官のおウマさんが立ち上がったので、僕たちは私語をやめた。
『さて、ここで最後に警告しておくが……毎年、我が王国で死者が出ているが、その半数は吾の試験で出ている』
そこまで言うと、そのウマは鋭い目で僕たちを眺めた。
『命をわざわざ粗末にするな。他の試験官の所に行け』
忠告を聞き入れたのか、2・3人の受験者が別の場所へと移った。
これで残りは、35人前後と言ったところか。
ウマは残った受験者を睨むように眺めると、やがて言った。
『一応、警告はしたぞ……では、吾のお題を発表する』
一同が頷くと、ウマは言った。
『密林サバイバルだ。もちろん……ただの密林じゃない』
「どういう密林です?」
恐る恐るという感じに、ひとりの青年が質問するとウマは言った。
『ゾンビやゴーストはもちろん、たまにワイトのような下級悪魔も出没する死の森だ。参加は自己責任で行ってもらう』
その言葉を聞いた受験者のうち、10人くらいは一斉に別の試験官の場所へと移った。恐らくゾンビと聞いて嫌になったか、割に合わないと感じたのだろう。
だけど、僕は……ぐっと手を握りしめていた。
相手がアンデッドなら、レフトナイフが役に立つ!
【4勇者のひとり】
なぜ人々と言ったかといえば、次の試験官はなんと3人と1頭もいたからである。
僕は、彼らがどんな人物かはわからなかったが、オリヴィア、アイラ、ジルー、そしてスティレットまで驚いている。
「あ、あの人たち……現役勇者じゃない!」
「ほ、本当だ……おウマ様までいる!」
「おウマ様?」
そう聞き返すと、オリヴィアは頷いた。
「はい。あの黒毛馬こそ……フロンティアの聖獣の異名を持つウマの勇者です」
「……そんな勇者までいるんだ」
会場はざわつくなか、現れた勇者たちは静かに受験者たちを眺めており、そして1人が言った。
「では、次の試験の内容を説明したい」
そう言うと、3人と1頭の試験官は、ゆっくりと1人ずつにばらけた。
「次の5次試験は、最初から合格人数が決まっている。1人の試験官につき最大で10人までだ。君たちは相性が最も良いと思う試験官を選び……その試験に挑戦するがいい」
つまり、この試験を合格できる人数の上限は40人か。どの試験官を選んでも狭き門となりそうだ。
最初の試験官は言った。
「まず、私の試験だが……ずばり、じゃんけん大会だ!」
その言葉を聞いて、僕はポカンとしていた。
いや、僕だけじゃなくて、同じようにあっけにとられていた人間も多いだろう。一番最初に救済策なのか罠なのかがわからないお題を提示してくるとは……。いやでも、じゃんけんなら運次第で誰でも合格できるので、これは人気が出そうだ。
次の筋肉質な試験官は、当然のように個人のトーナメント戦を提示。4次試験ではハズレと見せて実は正解だったので、こちらも人気が出そうだ。
3番目の試験官は……何と女性だった。
彼女はどうやら、筆記試験を行って10人まで絞るようだ。もちろんだが、どのような問題が出題されるのかはわからない。
そして最後の4人目……というかウマは、前の3人よりも、より癖のある試験官だった。
『吾は……ここでは言わん。どれも気に入らない者が来るといい』
そう言うと最後の試験官は、鼻を鳴らしてその場で座り込んだ。
当然のことながら、会場に集まった受験者はざわついていた。
僕たちフロンティアトリトンズの面々も、そしてリック隊のメンバーにとっても、これは判断に困る内容の試験である。
『カイトはどう思う?』
「……ここは、変にギルド内で意見を統一しようとか思わずに、自分の得意な分野を選ぶべきだと思う」
そう伝えると、オリヴィアやアイラも頷いた。
「そうですね……それがいいと思います」
「ああ、個々で得意なモノも違うしな」
リック隊も話し合いを行っていたが、どうやら僕らと同じ結論が出たらしく、やがて僕たちはバラけて、それぞれが自分の得意な分野の試験官へと向かった。
例えば、リック、ゴワス、エドワード、アイラなどの自分の腕に自信があるメンバーは、2番目に紹介していた筋肉質な勇者の元に向かった。
他にも、オリヴィア、アリーシャと言った切れ者少女2人は、3番目の女性勇者の元に向かい、ジルーやカールと言った、新人で実力も一戦級メンバーよりも劣る者たちは、じゃんけん大会に参加。
そして、僕とスティレットの2人はお互いを見合った。
「おい、どうしてお前がこっち来るんだよ?」
『いや……どんな試験をするのか気になってさ。そういうカイトは?』
僕はそう聞き返されると、困り顔のまま答えを返した。
「僕は……ほら、能力があまりに中途半端だし、頭もよくなければ運もイマイチだから……」
『まあ、小生のようにどっちつかずなら、ここに賭けるのもひとつの選択ではあるよね』
いや、お前はどんな場面でも強いだろうとツッコミを入れたくなったが、試験官のおウマさんが立ち上がったので、僕たちは私語をやめた。
『さて、ここで最後に警告しておくが……毎年、我が王国で死者が出ているが、その半数は吾の試験で出ている』
そこまで言うと、そのウマは鋭い目で僕たちを眺めた。
『命をわざわざ粗末にするな。他の試験官の所に行け』
忠告を聞き入れたのか、2・3人の受験者が別の場所へと移った。
これで残りは、35人前後と言ったところか。
ウマは残った受験者を睨むように眺めると、やがて言った。
『一応、警告はしたぞ……では、吾のお題を発表する』
一同が頷くと、ウマは言った。
『密林サバイバルだ。もちろん……ただの密林じゃない』
「どういう密林です?」
恐る恐るという感じに、ひとりの青年が質問するとウマは言った。
『ゾンビやゴーストはもちろん、たまにワイトのような下級悪魔も出没する死の森だ。参加は自己責任で行ってもらう』
その言葉を聞いた受験者のうち、10人くらいは一斉に別の試験官の場所へと移った。恐らくゾンビと聞いて嫌になったか、割に合わないと感じたのだろう。
だけど、僕は……ぐっと手を握りしめていた。
相手がアンデッドなら、レフトナイフが役に立つ!
【4勇者のひとり】
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