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30.勇者軍団の重臣たち

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 スィグワロス号の見つけてきた玉だが、次にこんなデータを映し出した。

農業12 商業14 野戦58 籠城39 智謀23 忠誠53 義理32 野心43

 まあ、扱う人間次第な気もするが……何とも微妙な能力だ。
 次を見てみよう。

農業21 商業6 野戦41 籠城30 智謀35 忠誠48 義理40 野心53

 何か希少な能力を持っているのかもしれないから、ここでは何も言わないでおこう。
 次だ。

農業7 商業2 野戦71 籠城28 智謀31 忠誠35 義理31 野心75

 うーん……何というか、野戦限定でしか頼りにならないし、その割に野心が高すぎることが問題だ。
 文官の護衛役にさせるにしても、文官の功績を褒めていると、逆恨みをしたり文官に危害を加えて来そうな恐ろしさもある。


農業41 商業12 野戦23 籠城31 智謀7 忠誠50 義理31 野心40

 農場開拓要員だろうか。いや……能力が低すぎてちょっとな。
 次。

農業12 商業11 野戦21 籠城17 智謀8 忠誠40 義理9 野心71

 …………
 …………
 何を思って勇者は、この浪人を重臣として迎え入れたのだろう。何か凄い特殊能力でもあるのだろうか。
 次行こう。

農業17 商業31 野戦18 籠城40 智謀21 忠誠30 義理31 野心60


 この人を最後に、玉自体はそれ以上のデータを映してはくれなかった。
 映し出す人数に制限があるのか、それとも地域によって区切られているのかはわからないが、時間を置いてから試してみるしかないか。

 リットーヴィント号へと視線を向けると、彼は少しして言った。
『何というか、巷にいる人間を……適当に入れた感じの家臣団だな』
 その言葉を聞くと、アデルハイトも頷いた。
「そうですね。中にはうちに士官を求めてきて、お断りさせて頂いた方もいます」


 僕の知らない間に、そんな話もあったのか。
 魔王軍に士官しようとしたなんて、どう考えても自分に不利なことだから勇者に言ったりはしないだろうが、変なアビリティを持っていて勇者に伝わったら困る。一応は聞いてみることにした。
「ちなみにアデル、この中のどの人だったんだい? アビリティとかも確認しているでしょう?」

 そう質問すると、アデルハイトは僕を見て答える。
「野心53の方と、40の方です」

 ああ、上から2番目の人と3番目の人か。
「ちなみに53の方のアビリティは、敵対地域で略奪をする。40の方は主君に断りなく徴税・追加課税するというアビリティでした」
「……そういうアビリティ……あるんだ」

 ちなみに略奪アビリティを持っている武将は珍しくないようで、これを持っていると略奪を指示した時に回収できるアイテムやお金が増えるのだそうだ。
『短期的にはお金にはなるかもしれませんが、略奪をすれば自分が統治する時に苦労しますな』
「そうだね。僕は……遠慮したいかな」
『そう仰ると思い、略奪持ちの浪人は、たとえ高い能力を持っていたとしても誘いをかけないようにしています』

 それが正解だと僕自身も思っていた。
 僕の意に反して略奪でもされれば、その地域の住民と不仲になる原因にもなるし、もしかしたらだけど……そういう手癖の悪いアビリティは、他の仲間も覚えてしまう危険性もある。
「正解だよ。今後もその調子でお願いする!」
『畏まりました』


 そういえば、僕が職場で働いていたとき、仕事のできない社員がいたが、自分は出来る奴だと思い込んで、変な行動をしては職場をかき回していたヤツがいた。
 しかも、不平不満だけは多く、ことあるごとに他の社員やパート、アルバイトの悪口を言っていたが……できない武将ほど、分不相応な領地を求めてくることもあるのだろうか。
「ねえ、そういえばさ……」
『なんでしょう?』
「出来ない武将ほど、自分が出来る奴だと思って不相応な待遇を求めてくることもあるのかな?」

 質問をすると、アデルハイトとリットーヴィント号は苦笑しながら答えた。
『結論から申し上げますと、その通りにございます』
「確か、53の方は城主にするように言ってきましたし、40の方も好待遇はもちろん国の中で最も美しい女を嫁に……と言ってきたのでお断りさせて頂いたのです」

 僕はとんでもないと思いながら首を横に振った。
 たとえこれがゲームの世界の出来事だったとしても、そんな自分を客観的に見れないような人間を城主にすれば領内は滅茶苦茶になってしまうだろう。
 ましては、実際に多くの人が生活しているのだから、まかり間違ってもそんないい加減な人間を城主になんてするわけにはいかない。


 ん、待てよ……
 勇者はそんなことも気づかずに、このメンバーを重臣に迎え入れたのか。
 普通に考えれば、国内がヤバいことになりそうだけど、こいつって智謀が80近くあるからな。僕が思いつかないような有用な使い方があると考えた方がいいかもしれない。
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