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2.命知らずのソラ
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そっと目を開けると、そこは見知らぬ洞窟だった。
だけど懐かしい感じがする。そう思いながら一歩後ろへと下がると、そこには倒れた人間いた。
「……これ、もしかして」
普通なら不気味がって離れるところだろうけど、なぜか、興味を引かれたので顔を確かめてみると、僕は驚きのあまり身を引いてしまった。
目の前にいるのは、あくまで別人……それも西洋風の人物なのだけど、その顔立ちや髪型、更には着ている服の選び方や、持っている武器や防具まで自分そのものである。
僕はあくまで令和時代の日本人なのだが、自分が異世界の現地人として生まれた場合の見本のような存在だ。
「…………」
そっと触れてみると、倒れている青年は幻のように消えていき、僕の体へと入り込んでくる。まるで失っていた何かを取り戻したかのような感覚だ。
いや、実際に倒れていた青年の衣服や、武器防具が僕の体についているのだから、青年に成り代わったと言った方がいいだろう。
「……そうだった。僕はフリーの冒険者だった」
フリーと言えば聞こえはいいが、戦士としても魔法使いとしても中途半端で、誰からもお呼びがかからなかったボッチ冒険者というのが実態である。
それでも、一旗揚げて成り上がろうとダンジョンに乗り込んだが、間が悪く強力なモンスターと遭遇し、逃げることもできないうちに命を落とした。死の間際のセリフは、もっと才能があれば、もっと素晴らしい指導者に恵まれれば、僕の人生はこんな終わり方じゃなかった。クソ……くそったれ。という感じだ。
自分の黒歴史を思い出したところで、僕はゆっくりと周囲の確認をすることにした。とりあえず、ここがどんな場所なのか調べるところからだ。
「……暗いな」
探索を開始するものの、洞窟はとても薄暗く周りはよく見えなかった。
体から流れ出る白いモヤを、目の辺りに集中すると大分見え方はマシになったが、それでも岩の割れ目から差し込んでくる僅かな光だけというのは、さすがにつらい。
それでもめげずに歩き続けると、何やら人の気配を感じた。反応はヒトに近いが、僕よりも白い光のようなモノを強く感じる。この反応は……エルフと呼ばれる種族かもしれない。
「……!」
まるで引き寄せられるように近づいていくと、まだ少し幼さは残るが、美しい緑髪を持ち、緑色のローブを着た女性の姿があった。彼女は背中にロングボウを背負い、それとは別に腰に杖を下げていたが、何かを警戒した様子で構えている。
いったい、その視線の先には何がいるのだろう。目で追うと、何と犬型モンスターが牙を剥きながら若いエルフに襲い掛かろうとしている。
僕の体は、即座に反応した。
「助太刀するよ!」
声が響くと同時に走り出し、僕は抜刀した状態でエルフの女性の前に立った。
しっかりとシールドも構えると、犬型モンスターは眉間にしわを寄せ、固くて厄介そうなやつが増えたと不機嫌そうに唸り声を上げていた。
エルフ女性は、ホッとした様子で言う。
「加勢、感謝します! 一緒に魔物を討伐しましょう」
「うん!」
犬型モンスターは、ウマくらいの大きさがあったが、僕の中に沸き上がった感情は、面倒だなというモノだった。普通なら命の危険とか恐怖感を覚えるところだろうが、不思議と頭の中は静まり返っていて怖いくらいだ。
もしかしたら、前世の命を落とした感覚と、僕自身の人生で2度も死に際に立ち会っているから、死というものに慣れたのかもしれない。
「がああああああああっ!」
犬型モンスターが威嚇してきた。だけど、僕はまだ恐怖を感じない。次に犬型モンスターが実際に攻撃をしてきたが、僕は極めて普通に剣を突き出して鼻先に一撃を見舞った。
するとモンスターは勢いよく突っ込んで、僕を突き飛ばし、後ろで弓を構えていたエルフ女性を巻き込んで、岩壁に叩きつけた。
「うぐ……!」
転倒した状態で見上げると、まさに犬型モンスターが、僕やエルフの女性に牙を振り下ろそうと歯をむき出しにした。それでも僕は恐怖を感じない。
冷めた頭のまま、このままじゃ死ぬよなと考えていたら、先ほど逸れ稲荷が僕に特殊能力を押し付けてきたことを思い出した。
確かに、痛い思いをするのは嫌だし、使ってみようかと思いながら能力を発動すると、僕の腕から、キツネのような頭とヘビのような胴体を持つエネルギー体が飛び出した。しかも1匹ではなく3匹だ。
直径30センチメートルほどのそれは、犬型モンスターの首筋に食いつくと、また別の場所から現れた別の生き物は、犬型モンスターの横っ腹に、自分の腹部と尾を叩きつけ、3匹目は犬型モンスターの耳に食いついていた。
犬型モンスターは、近くを飛んでいた生き物に爪での薙ぎ払いを見舞うも、その生き物は軽々と避けて、他の2匹が前脚に噛みついたり、後ろ脚の膝部分に胴体と尻尾を叩きつけたりしている。
僕もまた、犬型モンスターに剣を振り下ろすと、モンスターも錯乱した様子で逃げ出した。
「ふう……」
僕自身が気を落ち着かせると、そのキツネの頭を持つ蛇のようなエネルギー体は、僕の中へと戻ってきた。
わずかに精神的な疲れを感じた気はするが、これくらいならすぐに回復するだろう。
「!」
そうだ、先ほど突進に巻き込まれたんだけど、エルフの女の人は大丈夫だろうか。慌てて駆け寄ると彼女はぐったりとしたまま横倒しになって倒れていた。
「大丈夫かな? 肋骨とか折れてないかな?」
心配になって手を伸ばそうとしたとき、駆け足と共に声が響いてきた。
「フォセット! 今の音……なに!?」
手を伸ばしたまま視線を向けると、僕の目の前にはイヌミミ女戦士が走ってきていた。彼女は怒りを露わにして、僕を睨みつけてくる。
「フォセットから離れろ……この変態冒険者ぁッ!」
【異世界人】
何らかの理由で異世界転移・転生してしまった現代人。
個性的な特殊能力や、未来の技術・知識を用いて大活躍をすることもあるが、中には人里離れた樹海や、ダンジョンの中に投げ出されて短い生涯を終えることも……。
基本的には、その土地の人類に協力することは多いが、中には悪の道に走ったり魔王となる者もいる。
だけど懐かしい感じがする。そう思いながら一歩後ろへと下がると、そこには倒れた人間いた。
「……これ、もしかして」
普通なら不気味がって離れるところだろうけど、なぜか、興味を引かれたので顔を確かめてみると、僕は驚きのあまり身を引いてしまった。
目の前にいるのは、あくまで別人……それも西洋風の人物なのだけど、その顔立ちや髪型、更には着ている服の選び方や、持っている武器や防具まで自分そのものである。
僕はあくまで令和時代の日本人なのだが、自分が異世界の現地人として生まれた場合の見本のような存在だ。
「…………」
そっと触れてみると、倒れている青年は幻のように消えていき、僕の体へと入り込んでくる。まるで失っていた何かを取り戻したかのような感覚だ。
いや、実際に倒れていた青年の衣服や、武器防具が僕の体についているのだから、青年に成り代わったと言った方がいいだろう。
「……そうだった。僕はフリーの冒険者だった」
フリーと言えば聞こえはいいが、戦士としても魔法使いとしても中途半端で、誰からもお呼びがかからなかったボッチ冒険者というのが実態である。
それでも、一旗揚げて成り上がろうとダンジョンに乗り込んだが、間が悪く強力なモンスターと遭遇し、逃げることもできないうちに命を落とした。死の間際のセリフは、もっと才能があれば、もっと素晴らしい指導者に恵まれれば、僕の人生はこんな終わり方じゃなかった。クソ……くそったれ。という感じだ。
自分の黒歴史を思い出したところで、僕はゆっくりと周囲の確認をすることにした。とりあえず、ここがどんな場所なのか調べるところからだ。
「……暗いな」
探索を開始するものの、洞窟はとても薄暗く周りはよく見えなかった。
体から流れ出る白いモヤを、目の辺りに集中すると大分見え方はマシになったが、それでも岩の割れ目から差し込んでくる僅かな光だけというのは、さすがにつらい。
それでもめげずに歩き続けると、何やら人の気配を感じた。反応はヒトに近いが、僕よりも白い光のようなモノを強く感じる。この反応は……エルフと呼ばれる種族かもしれない。
「……!」
まるで引き寄せられるように近づいていくと、まだ少し幼さは残るが、美しい緑髪を持ち、緑色のローブを着た女性の姿があった。彼女は背中にロングボウを背負い、それとは別に腰に杖を下げていたが、何かを警戒した様子で構えている。
いったい、その視線の先には何がいるのだろう。目で追うと、何と犬型モンスターが牙を剥きながら若いエルフに襲い掛かろうとしている。
僕の体は、即座に反応した。
「助太刀するよ!」
声が響くと同時に走り出し、僕は抜刀した状態でエルフの女性の前に立った。
しっかりとシールドも構えると、犬型モンスターは眉間にしわを寄せ、固くて厄介そうなやつが増えたと不機嫌そうに唸り声を上げていた。
エルフ女性は、ホッとした様子で言う。
「加勢、感謝します! 一緒に魔物を討伐しましょう」
「うん!」
犬型モンスターは、ウマくらいの大きさがあったが、僕の中に沸き上がった感情は、面倒だなというモノだった。普通なら命の危険とか恐怖感を覚えるところだろうが、不思議と頭の中は静まり返っていて怖いくらいだ。
もしかしたら、前世の命を落とした感覚と、僕自身の人生で2度も死に際に立ち会っているから、死というものに慣れたのかもしれない。
「がああああああああっ!」
犬型モンスターが威嚇してきた。だけど、僕はまだ恐怖を感じない。次に犬型モンスターが実際に攻撃をしてきたが、僕は極めて普通に剣を突き出して鼻先に一撃を見舞った。
するとモンスターは勢いよく突っ込んで、僕を突き飛ばし、後ろで弓を構えていたエルフ女性を巻き込んで、岩壁に叩きつけた。
「うぐ……!」
転倒した状態で見上げると、まさに犬型モンスターが、僕やエルフの女性に牙を振り下ろそうと歯をむき出しにした。それでも僕は恐怖を感じない。
冷めた頭のまま、このままじゃ死ぬよなと考えていたら、先ほど逸れ稲荷が僕に特殊能力を押し付けてきたことを思い出した。
確かに、痛い思いをするのは嫌だし、使ってみようかと思いながら能力を発動すると、僕の腕から、キツネのような頭とヘビのような胴体を持つエネルギー体が飛び出した。しかも1匹ではなく3匹だ。
直径30センチメートルほどのそれは、犬型モンスターの首筋に食いつくと、また別の場所から現れた別の生き物は、犬型モンスターの横っ腹に、自分の腹部と尾を叩きつけ、3匹目は犬型モンスターの耳に食いついていた。
犬型モンスターは、近くを飛んでいた生き物に爪での薙ぎ払いを見舞うも、その生き物は軽々と避けて、他の2匹が前脚に噛みついたり、後ろ脚の膝部分に胴体と尻尾を叩きつけたりしている。
僕もまた、犬型モンスターに剣を振り下ろすと、モンスターも錯乱した様子で逃げ出した。
「ふう……」
僕自身が気を落ち着かせると、そのキツネの頭を持つ蛇のようなエネルギー体は、僕の中へと戻ってきた。
わずかに精神的な疲れを感じた気はするが、これくらいならすぐに回復するだろう。
「!」
そうだ、先ほど突進に巻き込まれたんだけど、エルフの女の人は大丈夫だろうか。慌てて駆け寄ると彼女はぐったりとしたまま横倒しになって倒れていた。
「大丈夫かな? 肋骨とか折れてないかな?」
心配になって手を伸ばそうとしたとき、駆け足と共に声が響いてきた。
「フォセット! 今の音……なに!?」
手を伸ばしたまま視線を向けると、僕の目の前にはイヌミミ女戦士が走ってきていた。彼女は怒りを露わにして、僕を睨みつけてくる。
「フォセットから離れろ……この変態冒険者ぁッ!」
【異世界人】
何らかの理由で異世界転移・転生してしまった現代人。
個性的な特殊能力や、未来の技術・知識を用いて大活躍をすることもあるが、中には人里離れた樹海や、ダンジョンの中に投げ出されて短い生涯を終えることも……。
基本的には、その土地の人類に協力することは多いが、中には悪の道に走ったり魔王となる者もいる。
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