チート能力【九尾の力】が、異世界でどこまで通用するのか試してみる ~ナインテール・アタッカー~

スィグトーネ

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1.過ちを犯した主人公(後編)

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 キツネ耳の女性は、僕の口の中に舌を絡ませてくる。僕もお返しに彼女の口の中に舌を入れると、どちらともなくかき回しはじめた。すると、キツネ耳の女性が纏う、白いエネルギーが僕の体に流れ込みはじめた。
「…………」
『ん……』
 最初はただエネルギーを受け取っているだけだったが、徐々に僕の体も適応しはじめたのか、肩や腕などから白いモヤのようなモノを纏いはじめている。その量が増えると、まるで何かに守られているかのようだった。
『久しぶりに、その気になってきたぞ……もう少し相手をせよ』
 彼女は、体重をかけて僕を倒してきた。
 口づけをしているのは相変わらずだが、女性は何と両足でしっかりと僕の体を捕まえ、妖艶な瞳をこちらに向けてくる。
 視線に射抜かれた僕は、なんと一線を越えていた。

――――――――
――――
――


 それから小一時間後。キツネ耳の女性は帯を戻しながら言った。
『礼を言うぞ。久しぶりに童も夢のようなひと時を過ごせた』
「いや、それはお互い様だよ……僕もこれで、後悔なく地獄にだって行ける」
 彼女には、心からお礼を伝えていた。
 キツネ耳の女性は、自分のことを神の偽者と言っていたが、死に逝くものに、最期まで付き合ってくれたのだから、僕にとっての彼女は本物の女神だ。
 僕の地獄にだって行ける発言を聞いた彼女は、思い出したように言った。
『ああ、そうそう……1つだけ、はぐれ稲荷について言っていなかったことがある』
「なんだい?」
『…………』
 僕は背筋に寒気を感じた。彼女はとつぜん嫌らしい笑みを浮かべたからである。
「え……?」
『はぐれ稲荷と関わった状態であの世に行こうとすれば、どうなると思う』
 どこか、勿体付けた言い方だ。
「いや、わからない」
『クフフフフフ……』
「な、なに?」
『化け狐の姿になって死後……畜生道で苦しむことになる』
「……!?」
 その言葉を聞いたとたん、僕の全身の血がざわついた。
 間もなく、僕が纏っていた霊力が体からあふれ出していく。まず変化したのは指先だった。僕のひ弱な人間の指は、見る見る肉食獣のカギ爪に変わっていき、次に犬歯が伸びはじめた。
『おお、楽しいショーの始まりじゃな』
「僕の体に……何を……うぐ!?」
『ふふ……』
 僕のセリフが頭痛で遮られると、逸れ稲荷は、僕の首筋を撫でながら言う。
『お主は真面目そうじゃからな。同じように真面目な神を演じたまでのこと』
「う、うわあああああ…!?」
 直後に、ズボンを突き破って尻尾が生えてきた。
『おお、立派な尻尾じゃな。男らしくて素敵じゃぞ』
 尻尾の次に生えてきたのはキツネ耳だった。それだけでなく、体の節々も痛みはじめている。どうやら僕は、完全に人間から遠ざかろうとしているようだ。
『素晴らしい霊力じゃ』
 僕は心の中で、無念さを噛み締めた。
 こんなところで終わるだけじゃない。畜生道ということは二度と人間には戻れないということだろう。まだまだ、僕にはやるべきことはたくさんあったはず。なんて僕は浅はかなのだろう。なんて愚かなのだろう。もっと力が、もっと賢く生き残る知恵があったら、もっと違った未来があったはず。
 キツネに変わっていく中で、そんなことを考えていたら、不思議な既視感に囚われた。

――そういえば、前にもこんなことがあった
 どこだったのか気になった僕は、記憶のページをさかのぼることにした。
 凄く早く脳内の手帳をめくっていくと、3歳児の時の記憶を通り抜け、見覚えのない記憶へと行きついた。

 あり得ない正解を引き当てると、僕の体のキツネ化は中断された。
 得意満面な笑みを浮かべていた逸れ稲荷も表情を曇らせ、口元を抑えている。
『お……お主、畜生落ちしないと思ったら……前世で、ひと悶着あったようじゃな』
「どういうことだ?!」
『童の霊力を得たことと、前世のおぞましいほどの生への執着によって、異世界転移ができるようになっておる』
「異世界転移!?」
 そんなことが本当に起こるのかと思いながら聞き返すと、逸れ稲荷は、犬歯を見せながら不敵な笑みを浮かべた。
『お主の肉体と魂……実に美味そうじゃ。もっと強くなってから喰いたい!』
 逸れ稲荷の言葉を聞き、僕に沸き上がった感情は怒りだった。
 馬鹿にしたように笑う逸れ稲荷が憎かったが、それ以上に自ら罠に突っ込みに行った僕自身に腹が立つ。自分で原因を作っておきながら、騙されたと叫ぶことほど愚かなことはない。
『もっと強くなれ! 異世界で強者たちと戦い、もっと美味な魂となって童の贄となれ!!』
「…………」
 気分が悪くなるほど、込み上げてくる怒りを何とか飲み込むと、僕は逸れ稲荷を睨んだ。
「わかった……強くなって君の前に現れるよ。誰よりもねぇッッ!」
『粋がいいいのう……はなむけとして、これをくれてやる!』
 逸れ稲荷は、手元から紫色で直径4センチほどの勾玉を出すと、僕の額に押し付けてきた。頭が……今にも割れそうなほどの痛みだ。
 思わず絶叫していた。
「うわああああああああ!」
『くふふふふふ……童をその世界に連れていけ!』
 じりじりと勾玉が入り込んでくると、僕の意識は徐々にフワフワとしたものになり、やがて消えていった。

【逸れ稲荷「粋がいいのう……」】
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