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16.運命の中堅戦
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Bグループ第18戦。
僕たちサファイアランスは先鋒戦、次鋒戦を立て続けに落とし、崖っぷちの状態で中堅戦に挑むこととなった。
対戦相手ウルフアローズの戦力は、ヒューマンの弓使い、まだ幼い獣使い、そして魔獣オルトロスだ。オルトロスはイヌを巨大化させたような魔獣で、Bグループ戦では1頭で2・5人分の働きをすると言われている。
試合開始と同時に、エルフの弓使いフォセットは、ヒューマンの弓使いと弓矢の打ち合いをはじめた。
フォセットは回復の片手間に弓で戦うという、いわば補助的な戦士だ。生粋のハンターである対戦相手と組み合うと、その力は劣勢という感じだった。
そして、それ以上に危険なのが、ウシ族の重戦士ムキムだ。彼の防御力は人魚ギルドのサファイアランスの中でも随一だろう。だけど、今回ばかりは魔獣なので相手が悪い。単独で戦わせていたら、あっという間にやられてしまう。
「……よし!」
僕は両手に霊力を集中すると、左手をムキムに向けた。
差し向ける管狐は、少し大きい管狐1匹、普通サイズの管狐1匹だ。それだけでなく、僕自身も近づいて、予め拾っておいた石を、魔獣に乗っている魔獣使い少女や魔獣オルトロスにぶつけた。
「この、いた……うざいよ!」
「それそれ!」
魔獣オルトロスがこちらを睨むと、今度は尻を普通サイズの管狐が噛みついた。魔獣は迷惑そうに後ろ脚と尻尾で追い払おうとするも、次は大きめ管狐が下腹に噛みついている。
魔獣使いの女の子は、管狐の存在に気づいたらしく、鞭で追い払おうとしたが、僕は石を女の子の肩にぶつけてブロック。
「ああ、もう! 嫌い、アンタ大っ嫌い!」
「誉め言葉と受け取っておくよ。それ!」
「ひどーい!」
僕が魔獣使いの女の子にちょっかいを出すあいだ、ムキムも正面からメイスで魔獣を殴りつけていた。魔獣ももちろん反撃しようとしたが、すかさず普通サイズの管狐が尻に噛みつきを見舞う。
「がああああああ!」
魔獣は尻尾を使って普通サイズの管狐を叩き消したが、僕はすかさず新しい普通サイズの管狐を出した。それを見ていた魔獣使いの少女は、苛立った様子で魔獣オルトロスに命令を出した。
「ワンちゃん、あのムカつくクソヒューマンをやっつけて!」
「ぐおおおおおお!」
「させるかぁ!」
魔獣がよそ見をしたら、ムキムはここぞとばかりにメイスでの一撃を顔面にお見舞いした。
魔獣は血が上った様子でムキムを睨んだが、今度は大きめサイズの管狐の出番だ。太ももにガリッと鋭い歯を突き立てると、魔獣はたまらず叫び声を響かせていく。
「があああああ!」
雄たけびと共に魔獣は、自分の胸下に頭を突っ込んだ。
交戦している当事者たちにとっては、理にかなった行動だが、遠くで戦っているヒューマンの弓使いや、さらに奥にいる観客たちには、どうして魔獣が頭を胸下に突っ込んでいるのか理解不能らしい。
ヒューマンの戦士は叫んだ。
「おい、先からワンは、なにやってるんだ!?」
魔獣使いの女の子は、涙目になりながら叫ぶ。
「変な透明な生き物が邪魔してくる! 助けて!!」
「今そっちに行く!」
ヒューマンの弓使いが近づいてくると、僕は魔獣オルトロスを盾に反対側に移動した。そして3匹目の管狐も放つ。今度のターゲットは魔獣使いの女の子だ。
「よし、行け!」
「!? も、もういや~~~~~!」
右手を噛みつかせると、彼女は大騒ぎして普通サイズの管狐を振り払おうとしている。
「ぎゃあああああああ!」
その様子を正面から見ていたムキムは、全速力で魔獣から離れ、僕もまた退避すると、魔獣使いの女の子が興奮した影響が現れた。
「がああああああああ!」
「ああ、やめてぇ! わんちゃ~~~~~~~ん!!」
「うお……? うわあああああ!」
興奮した魔獣は、一番近くにいたヒューマンの弓使いにタックルを見舞うと、攻撃を受けた弓使いはそのまま場外へと投げ出された。
同時に魔獣オルトロスも闘技場から離脱して、修練場の砂地まで走り抜けると、そこで砂浴びをはじめている。泥に塗れて【変な生き物】から身を守ろうと考えたのだろう。だけどあいにく管狐たちは、落馬ならぬ落獣した少女の首や手首に噛みつくフリをしていた。
「ま、ま、参りました……」
そう言いながら少女が両手を上げると、審判は頷いた。
「中堅戦は、サファイアランスの勝利! 治療スタッフは、ケガ人の手当てを急いでください」
その貴重な1勝をつかみ取ると、僕は牛獣人ムキムとガッツポーズを決めた。
管狐たちも喜びながら、駆け寄ってきたフォセットの手のひらや腕にくっついている。この勝負は、僕、ムキム、フォセット、管狐3匹の誰が欠けても負けていただろう。
勝利したのを見て、今までお通夜状態だったサファイアランスの戦士たちも、一斉に立ち上がって喜んでいた。
「うううううう……グルルルルル……」
僕たちが喜びを分かち合っていると、魔獣使いの女の子は猛スピードで突っ込んできて、僕の腕に思い切り噛みついてきた。
幸いにも、審判やウルフアローズの関係者が引きはがしてくれたので、大事には至らなかったが……見事な歯形が右腕に残ってしまった。
【魔獣使い ウェアウルフ14歳 女性】
固有特殊能力A:ビーストテイマー(レア度B:★★☆☆):特定の魔獣を使役し、意のままに操る
固有特殊能力B:
固有特殊能力C:
実戦経験 C ★★
作戦・判断力 C ★★
勇猛さ C ★★★
近接戦闘力 C ★★
魔法戦闘力 C ★★★
投射戦闘力 E
防御力 D ★
機動力 C ★★★
索敵能力 C ★★★★
ウルフアローズで中堅を担当する少女。実は7歳の時に両親が死んでしまい、その後は魔獣オルトロスに育てられたという経緯がある。
幸いにも読み書きができたので、人間社会に戻ることができたが、そうでなければ大変な生活を送ることになっただろう。
因みに、挿絵はソラに噛み付く瞬間。
僕たちサファイアランスは先鋒戦、次鋒戦を立て続けに落とし、崖っぷちの状態で中堅戦に挑むこととなった。
対戦相手ウルフアローズの戦力は、ヒューマンの弓使い、まだ幼い獣使い、そして魔獣オルトロスだ。オルトロスはイヌを巨大化させたような魔獣で、Bグループ戦では1頭で2・5人分の働きをすると言われている。
試合開始と同時に、エルフの弓使いフォセットは、ヒューマンの弓使いと弓矢の打ち合いをはじめた。
フォセットは回復の片手間に弓で戦うという、いわば補助的な戦士だ。生粋のハンターである対戦相手と組み合うと、その力は劣勢という感じだった。
そして、それ以上に危険なのが、ウシ族の重戦士ムキムだ。彼の防御力は人魚ギルドのサファイアランスの中でも随一だろう。だけど、今回ばかりは魔獣なので相手が悪い。単独で戦わせていたら、あっという間にやられてしまう。
「……よし!」
僕は両手に霊力を集中すると、左手をムキムに向けた。
差し向ける管狐は、少し大きい管狐1匹、普通サイズの管狐1匹だ。それだけでなく、僕自身も近づいて、予め拾っておいた石を、魔獣に乗っている魔獣使い少女や魔獣オルトロスにぶつけた。
「この、いた……うざいよ!」
「それそれ!」
魔獣オルトロスがこちらを睨むと、今度は尻を普通サイズの管狐が噛みついた。魔獣は迷惑そうに後ろ脚と尻尾で追い払おうとするも、次は大きめ管狐が下腹に噛みついている。
魔獣使いの女の子は、管狐の存在に気づいたらしく、鞭で追い払おうとしたが、僕は石を女の子の肩にぶつけてブロック。
「ああ、もう! 嫌い、アンタ大っ嫌い!」
「誉め言葉と受け取っておくよ。それ!」
「ひどーい!」
僕が魔獣使いの女の子にちょっかいを出すあいだ、ムキムも正面からメイスで魔獣を殴りつけていた。魔獣ももちろん反撃しようとしたが、すかさず普通サイズの管狐が尻に噛みつきを見舞う。
「がああああああ!」
魔獣は尻尾を使って普通サイズの管狐を叩き消したが、僕はすかさず新しい普通サイズの管狐を出した。それを見ていた魔獣使いの少女は、苛立った様子で魔獣オルトロスに命令を出した。
「ワンちゃん、あのムカつくクソヒューマンをやっつけて!」
「ぐおおおおおお!」
「させるかぁ!」
魔獣がよそ見をしたら、ムキムはここぞとばかりにメイスでの一撃を顔面にお見舞いした。
魔獣は血が上った様子でムキムを睨んだが、今度は大きめサイズの管狐の出番だ。太ももにガリッと鋭い歯を突き立てると、魔獣はたまらず叫び声を響かせていく。
「があああああ!」
雄たけびと共に魔獣は、自分の胸下に頭を突っ込んだ。
交戦している当事者たちにとっては、理にかなった行動だが、遠くで戦っているヒューマンの弓使いや、さらに奥にいる観客たちには、どうして魔獣が頭を胸下に突っ込んでいるのか理解不能らしい。
ヒューマンの戦士は叫んだ。
「おい、先からワンは、なにやってるんだ!?」
魔獣使いの女の子は、涙目になりながら叫ぶ。
「変な透明な生き物が邪魔してくる! 助けて!!」
「今そっちに行く!」
ヒューマンの弓使いが近づいてくると、僕は魔獣オルトロスを盾に反対側に移動した。そして3匹目の管狐も放つ。今度のターゲットは魔獣使いの女の子だ。
「よし、行け!」
「!? も、もういや~~~~~!」
右手を噛みつかせると、彼女は大騒ぎして普通サイズの管狐を振り払おうとしている。
「ぎゃあああああああ!」
その様子を正面から見ていたムキムは、全速力で魔獣から離れ、僕もまた退避すると、魔獣使いの女の子が興奮した影響が現れた。
「がああああああああ!」
「ああ、やめてぇ! わんちゃ~~~~~~~ん!!」
「うお……? うわあああああ!」
興奮した魔獣は、一番近くにいたヒューマンの弓使いにタックルを見舞うと、攻撃を受けた弓使いはそのまま場外へと投げ出された。
同時に魔獣オルトロスも闘技場から離脱して、修練場の砂地まで走り抜けると、そこで砂浴びをはじめている。泥に塗れて【変な生き物】から身を守ろうと考えたのだろう。だけどあいにく管狐たちは、落馬ならぬ落獣した少女の首や手首に噛みつくフリをしていた。
「ま、ま、参りました……」
そう言いながら少女が両手を上げると、審判は頷いた。
「中堅戦は、サファイアランスの勝利! 治療スタッフは、ケガ人の手当てを急いでください」
その貴重な1勝をつかみ取ると、僕は牛獣人ムキムとガッツポーズを決めた。
管狐たちも喜びながら、駆け寄ってきたフォセットの手のひらや腕にくっついている。この勝負は、僕、ムキム、フォセット、管狐3匹の誰が欠けても負けていただろう。
勝利したのを見て、今までお通夜状態だったサファイアランスの戦士たちも、一斉に立ち上がって喜んでいた。
「うううううう……グルルルルル……」
僕たちが喜びを分かち合っていると、魔獣使いの女の子は猛スピードで突っ込んできて、僕の腕に思い切り噛みついてきた。
幸いにも、審判やウルフアローズの関係者が引きはがしてくれたので、大事には至らなかったが……見事な歯形が右腕に残ってしまった。
【魔獣使い ウェアウルフ14歳 女性】
固有特殊能力A:ビーストテイマー(レア度B:★★☆☆):特定の魔獣を使役し、意のままに操る
固有特殊能力B:
固有特殊能力C:
実戦経験 C ★★
作戦・判断力 C ★★
勇猛さ C ★★★
近接戦闘力 C ★★
魔法戦闘力 C ★★★
投射戦闘力 E
防御力 D ★
機動力 C ★★★
索敵能力 C ★★★★
ウルフアローズで中堅を担当する少女。実は7歳の時に両親が死んでしまい、その後は魔獣オルトロスに育てられたという経緯がある。
幸いにも読み書きができたので、人間社会に戻ることができたが、そうでなければ大変な生活を送ることになっただろう。
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