16 / 46
15.Bグループの難敵
しおりを挟む
Bグループ第18試合(最終戦)。
すでに脱落が決まっているサファイアランスとは違い、7位タイで降格の恐れがあるウルフアローズの緊張感は本物だ。ギルドバッジを付けた人だけでなく、サポーターさえ応援旗を振り、頭にはウルフアローズの鉢巻きを付けて声援を送っている。
ジルーやTランラも、苦々しい顔をしたまま呟いた。
「なにこれ……うちがホームだというのに、まるでアウェイじゃない……」
「脱落したことで、俺たちはサポーターにも呆れられちまったからな」
どうやら、サファイアランスの主力が一気に抜けたことは、他のギルドやサポーターたちにも伝わっていたようだ。マーチルも何とか近くの石に腰を落ち着けてから言った。
「近所の冒険者瓦版を見たんだけど、もはやサファイアランスの戦力はグループC以下だって……書かれてた」
「言われたい放題だな……くそっ!」
間もなく冒険者街審判団がやってくると、サファイアランスとウルフアローズの試合が行われた。
「各チーム先鋒……前へ!」
サファイアランスからは、予定通りTランラが前に出ると、ウルフアローズからは闘犬タイプの獣人が出てきた。筋肉が引き締まっているのは当たり前で、さらに体の芯から力強い霊力が流れ出ている。
サファイアランスを去った主力組でも、これほど強い霊力を出せる人がいただろうか。
「では、はじめ!」
Tランラは、トラ獣人の脚力を生かして果敢に攻めたが、ウルフアローズの先鋒はしっかりと守りながら攻め、安定感のある試合運びを披露した。次々とクリーンヒットをTランラに浴びせるたびに、観客たちは湧いて拍手を送り、戦況が向こう側に傾くたびに、サファイアランスの修練場は相手サポーターの声援で満たされていく。
「そこまで! 先鋒戦……ウルフアローズの勝利!」
試合内容は、誰が見ても明らかなほど一方的なモノだった。
これほどまでに実力差があると、むしろノックアウトされなかったことを褒めたくなるほどだ。先鋒戦を制したウルフアローズは、次も強そうな戦士2人を次鋒戦に送り込んできた。
「両チームとも、準備はいいですか?」
すでにこの時点で、勝敗は決しているのは僕の目から見ても明らかだった。
まず、サファイアランスの選手2人と、相手チームでは筋肉量や体格に大きな違いがある。その上に、纏っている霊力の差が倍という感じだった。この差をひっくり返すとしたら……サファイアランス側のどちらかが、凄い固有特殊能力を持っていなければならないが、もしそのような力があれば先鋒に選ばれているだろう。
「始めてください!」
この試合は、想像していた以上に一方的だった。
相手方は、個々の能力はもちろん、2対2という試合方式にも慣れていたため、開始早々にこちら側の1人が集中攻撃を受けることになった。
15秒ほどで手早く1人がノックアウトされると、相手チームは数的有利を落ち着いて生かし、開始25秒で2人ともノックアウトという戦績を残した。
「お、追い込まれたね……」
ジルーが低い声で唸るように言うと、マーチルは涙目になりながらガタガタと震えていた。ここまで怯えてしまっていては、立つことさえままならないだろう。
こうなったら、ジルーに来てもらうしかない。そう思いながらリーダーのロランスに視線を向けると、彼女の傍にいたフォセットが動いた。
「姉さん」
「どうしたのフォセット?」
「中堅戦……マーチルは戦えるコンディションじゃありません。私に行かせてください」
その言葉を聞いたロランスは、険しい表情をした。
「……確かに、ムキムさんや、ソラさんばかりに危険な役目を押し付けて、私たちだけ安全な場所にいるわけにはいきませんね……お願いします」
「はい!」
審判も僕たちの様子を見ていたらしく、声をかけてきた。
「サファイアランスの皆さん、話がまとまりましたか?」
僕が足元に落ちている石を拾うなか、フォセットが頷いて答えた。
「はい、今いきます!」
そう挨拶すると、僕ことソラ、エルフのフォセット、そして牛獣人のムキムの3人が闘技場へと上がった。すると、観客たちや相手チームのサポーターは、僕を指さして笑いはじめている。
「おい見ろ! あんな村人Aのような奴がいるぞ!」
「全然、筋肉がねーぞ! 雑用係でも連れてきたのか?」
「この勝負もらったぁ! 3勝確定だ!!」
盛り上がる相手サポーターとは対照的に、サファイアランスを応援してくれている僅かなサポーターたちは、声援ではなくブーイングを僕たちに浴びせてきた。重要な試合に素人を出すなと言いたいようである。
審判団だけは、冷静に言った。
「では、中堅戦……はじめてください!」
すでに脱落が決まっているサファイアランスとは違い、7位タイで降格の恐れがあるウルフアローズの緊張感は本物だ。ギルドバッジを付けた人だけでなく、サポーターさえ応援旗を振り、頭にはウルフアローズの鉢巻きを付けて声援を送っている。
ジルーやTランラも、苦々しい顔をしたまま呟いた。
「なにこれ……うちがホームだというのに、まるでアウェイじゃない……」
「脱落したことで、俺たちはサポーターにも呆れられちまったからな」
どうやら、サファイアランスの主力が一気に抜けたことは、他のギルドやサポーターたちにも伝わっていたようだ。マーチルも何とか近くの石に腰を落ち着けてから言った。
「近所の冒険者瓦版を見たんだけど、もはやサファイアランスの戦力はグループC以下だって……書かれてた」
「言われたい放題だな……くそっ!」
間もなく冒険者街審判団がやってくると、サファイアランスとウルフアローズの試合が行われた。
「各チーム先鋒……前へ!」
サファイアランスからは、予定通りTランラが前に出ると、ウルフアローズからは闘犬タイプの獣人が出てきた。筋肉が引き締まっているのは当たり前で、さらに体の芯から力強い霊力が流れ出ている。
サファイアランスを去った主力組でも、これほど強い霊力を出せる人がいただろうか。
「では、はじめ!」
Tランラは、トラ獣人の脚力を生かして果敢に攻めたが、ウルフアローズの先鋒はしっかりと守りながら攻め、安定感のある試合運びを披露した。次々とクリーンヒットをTランラに浴びせるたびに、観客たちは湧いて拍手を送り、戦況が向こう側に傾くたびに、サファイアランスの修練場は相手サポーターの声援で満たされていく。
「そこまで! 先鋒戦……ウルフアローズの勝利!」
試合内容は、誰が見ても明らかなほど一方的なモノだった。
これほどまでに実力差があると、むしろノックアウトされなかったことを褒めたくなるほどだ。先鋒戦を制したウルフアローズは、次も強そうな戦士2人を次鋒戦に送り込んできた。
「両チームとも、準備はいいですか?」
すでにこの時点で、勝敗は決しているのは僕の目から見ても明らかだった。
まず、サファイアランスの選手2人と、相手チームでは筋肉量や体格に大きな違いがある。その上に、纏っている霊力の差が倍という感じだった。この差をひっくり返すとしたら……サファイアランス側のどちらかが、凄い固有特殊能力を持っていなければならないが、もしそのような力があれば先鋒に選ばれているだろう。
「始めてください!」
この試合は、想像していた以上に一方的だった。
相手方は、個々の能力はもちろん、2対2という試合方式にも慣れていたため、開始早々にこちら側の1人が集中攻撃を受けることになった。
15秒ほどで手早く1人がノックアウトされると、相手チームは数的有利を落ち着いて生かし、開始25秒で2人ともノックアウトという戦績を残した。
「お、追い込まれたね……」
ジルーが低い声で唸るように言うと、マーチルは涙目になりながらガタガタと震えていた。ここまで怯えてしまっていては、立つことさえままならないだろう。
こうなったら、ジルーに来てもらうしかない。そう思いながらリーダーのロランスに視線を向けると、彼女の傍にいたフォセットが動いた。
「姉さん」
「どうしたのフォセット?」
「中堅戦……マーチルは戦えるコンディションじゃありません。私に行かせてください」
その言葉を聞いたロランスは、険しい表情をした。
「……確かに、ムキムさんや、ソラさんばかりに危険な役目を押し付けて、私たちだけ安全な場所にいるわけにはいきませんね……お願いします」
「はい!」
審判も僕たちの様子を見ていたらしく、声をかけてきた。
「サファイアランスの皆さん、話がまとまりましたか?」
僕が足元に落ちている石を拾うなか、フォセットが頷いて答えた。
「はい、今いきます!」
そう挨拶すると、僕ことソラ、エルフのフォセット、そして牛獣人のムキムの3人が闘技場へと上がった。すると、観客たちや相手チームのサポーターは、僕を指さして笑いはじめている。
「おい見ろ! あんな村人Aのような奴がいるぞ!」
「全然、筋肉がねーぞ! 雑用係でも連れてきたのか?」
「この勝負もらったぁ! 3勝確定だ!!」
盛り上がる相手サポーターとは対照的に、サファイアランスを応援してくれている僅かなサポーターたちは、声援ではなくブーイングを僕たちに浴びせてきた。重要な試合に素人を出すなと言いたいようである。
審判団だけは、冷静に言った。
「では、中堅戦……はじめてください!」
20
あなたにおすすめの小説
ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~
スィグトーネ
ファンタジー
年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。
それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。
そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。
異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。
彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。
どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。
※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。
※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる