チート能力【九尾の力】が、異世界でどこまで通用するのか試してみる ~ナインテール・アタッカー~

スィグトーネ

文字の大きさ
28 / 46

27.ソラチームvsコボルド団

しおりを挟む
 ミーティングの1時間後。
 僕は、マーチルやラックドナと共に、コボルドたちの住処の裏手に待機していた。
「最後にもう一度だけ確認しておくけど、2人とも……本当にいいんだね?」
 マーチルもラックドナも、真剣な眼差しで頷いた。
「わかった。各自……健闘を祈るよ」
 僕はそういうと、普通サイズの管狐を5匹出した。
 1匹は乱戦の最中にマーチルと合流し、彼女がマスターだと誤認させる。残る4匹はかく乱&特攻要員だ。力の限りコボルドたちを引っ搔き回して、洞窟内に突入後に潜入するラックドナと、アタッカーのマーチルの負担を減らすために戦う。
「行け」
 攻撃指示を出すと、5匹の管狐たちは裏口から3匹、少し離れた隙間から1匹ずつ、コボルドの塒へと突入した。続いてマーチルが突入して、少し遅れてからラックドナがステルスを発動。予定していた通りのスタートを切ることができた。
「ナ、ナンダ、コノ、イキモノ!?」
「ブッツブセ!」
 僕は目を瞑ると、5匹の管狐たちの戦いぶりが、おぼろげながら見えてきた。
 彼らはマーチルやラックドナのために、コボルドたちの耳元を飛び回ったり、足に噛みついたり、わざとモノに体当たりして、落下物でダメージを与えたりしている。
 そのため突入したマーチルに、攻撃を仕掛けるコボルドは1体しかおらず、他の連中は部屋の中で『バカ踊り』を舞う状況になっていた。
「コノォ!」
 さっそく1匹目がやられた。
 戦力が減ると、コボルド側も狙いを定めるのが容易になるらしく、次から次へと逃げ回る管狐たちに攻撃を仕掛けてくる。

 2匹目。3匹目と倒されると、僕は再び管狐を出すことにした。
「よし……」
 次に出したのは大き目の管狐だ。彼らには裏口正面から乗り込んでもらったため、マーチルの周囲を守っているように見えるだろう。
 よし、このまましんがり役を管狐に任せ、マーチルは撤退だ。
「……!」
 そう思ったとき、何とジルーだけでなく、ヒューマンの女が乗り込んできたではないか。ラックドナの話を聞く限り、玉座にふんぞり返っているタイプだと思っていたが、このフットワークの軽さは想定外だった。
 この状況を打開するには、頃合いを見計らって管狐第3陣を送り込むべきだろうか。彼らに暴れさせればマーチルの俊足なら逃げることも可能。
 左手をグッと握りしめたとき、洞窟の中から一瞬だけ光が見えた。
「…………」
 今のはラックドナの合図。鏡をこちらに向けたのは、フォセットを取り返すには今しかないというメッセージだ。
「無事でいてくれよ……マーチル」

 僕は用意していた管狐第3陣をストップさせ、そのまま草むらの中を進みはじめた。
 ラックドナの話によると、この辺りに内部へと入れる穴があったはず。
「……あった!」
 僕はタワーシールドをその場に置くと、洞窟の中へと飛び降りた。
 暗闇ばかりでよく見えないが、管狐の力を借りればマシになる。すでに見張り役のコボルドは倒れていて、スライムに拘束されたフォセットがこちらを見ていた。
「……ソラさん」
 思った以上にスライムは大きかった。これを僕の力だけでフォセットから引き剝がすのは不可能だろう。ならばどうする。グズグズしていると、例の恐怖の女ヒューマンが戻ってきてしまう。
「こうなったら、破れかぶれだな」
 一か八か、フォセットごとスライムを持ち上げると、かなり重かったが持ち上がらないこともなかった。さすがのスライムも、フォセットを拘束するのにエネルギーを使い、地面で足を踏ん張るだけの余裕はなかったようだ。

 ちょうどその時、恐怖の女ヒューマンと、マーチルを背負ったジルーが戻ってきた。
「!? ちょ……え、はぁ!?」
 恐怖の女ヒューマンは、驚きのあまり口をパクパクとさせていた。ジルーもすぐにマーチルを下ろそうとしたが、マーチルはここで大暴れ。ジルーの追撃をブロックしてくれた。
 更にマーチルは叫んだ。
「クダギツネ、フォセット隊長を守れ!」
 僕はマーチルの声に合わせて、普通サイズの管狐3と、大き目サイズ1を差し向けた。彼らはジルーや、女ヒューマン、更に駆け付けたコボルドと一戦を交えている。
 彼らが作り出してくれた僅かな時間で、僕は力の限り走り、コボルドの洞窟を抜けた。だけどまだだ。この距離だとすぐに追手が来る。
「管狐……ここで足止めを」
『キュイ!』

 間もなく追撃してきたコボルドは、管狐による待ち伏せでダメージを受けることになった。僕はその間にもフォセットを背負ったまま森の中へと退避。
 間もなく、身を隠すことに成功した。
「……しばらく……休憩」
 フォセット自身は僕よりも軽いが、スライム付きともなればだいたい僕くらいの体重になるだろう。それを背負って全力疾走したのだから、僕の体力はすっかりなくなっていた。

 フォセットは、僕の背中から弱々しい声をかけてきた。
「お恥ずかしいところを見せました……。これほど、メンバーを危険に晒すとは……リーダー失格です」
「何を……言うんだ……君の、仲間は、的確に、動い……てるし、誰も、まだ、死んでない」
 そう伝えると、僕の背に水滴が落ちてきた。フォセットの手の震えが僕の肩に伝わってくる。きっと、相当怖かったのだろう。
 パーティーメンバーは、フォセットのことをリーダーとして見ているだろうが、彼女もまた華奢な女の子なんだ。
「とにかく、今は体を休めよう……落ち着いたら、捕まっている仲間をどう助けるか考えればいい」
「……はい」

【その頃のマーチル】
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~

スィグトーネ
ファンタジー
 年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。  それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。  そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。  異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。  彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。  どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。 ※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。 ※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...