チート能力【九尾の力】が、異世界でどこまで通用するのか試してみる ~ナインテール・アタッカー~

スィグトーネ

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26.新たにもたらされる情報

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 その日の夕方になると、僕とマーチルはコボルドの森付近まで移動していた。
 川辺の辺りまでは、ありふれた森という感じだったが、森の中に一歩足を踏み入れると、今までに感じたことのない独特の空気が皮膚の周りまで漂ってくる。
「ここが、ラックドナの言っていた……」
「ええ、エルフの力を削ぐという……曰くつきの森だね」
 僕の管狐は大丈夫だろうか。念のため確認のために普通サイズを1匹出してみると、それなりの影響を受けていることがわかった。
「僕の周りなら、動けるみたいだけど……150メートルとか偵察をさせるのは無理だね」
「クダギツネも影響を受けたということは、ここって精霊の力が凄く弱るということなのかな?」
「恐らくね……」
 マーチルが言った直後、茂みの中から声が聞こえてきた。
「ソラ君、マーチル……こんなに早く来てくれたんだね」
「その声はラックドナ?」
 ラックドナが姿を現すと、まるで突然ワープしてきたかのように彼女の霊力を感じた。これが噂に聞く隠密系固有特殊能力のステルス。味方にいると凄く心強い。
 彼女は、深刻な表情で報告してきた。
「あれからも幾つか情報を得ましたが、まず……ジルーは既に敵の手駒となってしまったかも……」
 彼女から【操りの首輪】の話を聞き、僕は思わず生唾を呑んだ。
 ラックドナが前情報を渡してくれたから、ジルーが操られているかもしれないと判断できたが、何も知らずに感動の再開を果たしたら、僕かマーチルが寝首を掻かれることも充分にあり得る話だ。
「貴重な情報をありがとう! 他には何かあったかい?」

 彼女は他にも、フォセットは魔法強化されたスライムに拘束され、自力での脱出が困難なことや、今回の事件の黒幕であるヒューマンの女に関する情報までもたらしてくれた。
「一番厄介なのは、もしかしたらだけど……ヒューマンの女は、無尽蔵にコボルドを作り出すことができるかもしれない」
「な、なんですって!?」
「……なるほど」
 そのことは、僕もうすうす感じていたことだ。
 僕の管狐が自動的に動く使い魔なので、同じような能力を持った敵がいるというのも当然の話。もし相手も僕タイプの使い手だったとしたら、お互いに使い魔を捨て駒にできるので、不毛な戦いになるだろう。
「ねえ、ラックドナ?」
「なんでしょう?」
「敵陣の中に、本物のコボルドも混じっているのかい?」
 そう質問したら、マーチルもラックドナも即座に頷いた。
「いるよ。最初にフォセット隊を攻撃してきたのは、本物の連中だった」
「あれは……手強かったよね。一歩間違えれば、私やマーチルも捕まっていたかも……」
 その話を聞いて、僕は考えを巡らせていた。
 恐らく敵側は油断しているだろう。こちら側にも戦力は揃っているから、一か八か奇襲をかければ敵陣に大ダメージを与えたうえで、フォセットを救い出すことすら可能かもしれない。
 だけどジルーがどう動くのか読めないし、一歩間違えば、ジャンプ力と脚力のマーチルや、有能な諜報員であるラックドナを失うリスクも無視できない。
「…………」
 僕の管狐アタックだけで大打撃を与えられるのなら問題ないが、それほど簡単な相手ではないだろう。千載一遇のチャンスかもしれないが、失敗したときのリスクが大きすぎる。
 奇襲は無しと言おうとしたら、マーチルが僕を見てきた。
「ねえ、ソラ君……クダギツネって、ソラ君以外の人の霊力は食べないの?」
「それは……確かめてみないとわからないな」


 僕たちが森の中でミーティングをしているとき、ヒューマンの女は懐いているジルーの頭を撫でながら、スライムに拘束されたフォセットの様子を眺めていた。
 長時間スライムに拘束されたフォセットは、ぐったりとした様子で床に頬を付いており、もはや目も閉じている。
 それを見ていたヒューマンの女は、ゆっくりと近づくと、フォセットのアゴを掬い上げた。
「ずっと同じ態勢でいるから、筋肉が固まってしまったのね」
「…………」
「つらいでしょうけど、もうしばらく辛抱しなさい。貴女はたった1日の苦しみで済むのだから運が良いわ」
「どういう……こと?」
 フォセットが力なく聞き返すと、ヒューマンの女はフォセットの髪を手櫛で整えながら答えた。
「今宵は満月」
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