チート能力【九尾の力】が、異世界でどこまで通用するのか試してみる ~ナインテール・アタッカー~

スィグトーネ

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29.劣勢の中での一手

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 休憩を終えて森の中を歩き出すと、背中に乗っているフォセットが僕の肩から手を伸ばし、ある一点を指さした。
「ソラさん、この先の獣道ですが……コボルドたちが通ったようです」
「どうしてわかるんだい?」
「人間サイズの生き物が通ると、独特のマナの乱れになります。この乱れ方は獣人系……それも4・5人でしょう」
「なるほど……ところで、先からスライムが動いてない?」
 そう質問してみると、フォセットは言いづらそうにボソボソと答えはじめた。
「どうやらスライムは、貴方の体も支配したいらしく……私の体を引っ張っています」
 当初は、ただ背中に乗せていただけだったが、少しずつフォセットの姿勢が変わり、今は背負う格好になっている。おかげで走りやすくはなったが、これ……終わったらきちんと剥がせるのだろうか?
「剥がせなかったら……どうする?」
 恐る恐る聞いてみると、フォセットは「そうですね……」と呟くと、自分の腕を僕に見せてきた。
 そこには縄の跡が残っていて痛々しかった。日にちが経過すれば、傷自体は治っていくだろうが……心のケアは大丈夫なのだろうか。
「こういう女ですが、ソラさんが貰って下さるのなら助かります。今ならスライムもセットですよ」
「…………」
 フォセットの言葉を聞いて安心した。
 やはりこれくらい図太い方がフォセットらしいし、スライムまで勝手に自分のモノにしているところも冒険者っぽくって良い。
「前向きに検討したいな……お値段は幾らだい?」
「御代は、両者の生存です。一緒に頑張りましょう」
「わかった、せっかくだしジルーたちも取り返すよ!」
 そう答えると、フォセットは安心した様子で、僕の肩や首筋を抱きしめてきた。今までは中途半端な関係だったから遠慮してくれていたのだろう。
 僕も、彼女の匂いや柔らかさに包み込まれて幸せな気分になったが、今は危険地帯にいることを思い出し、気を引き締め直した。

 さて、管狐は普通サイズを1匹貸し出しているので、いま使えるのは普通サイズなら4匹、大サイズなら2匹だ。
 今の僕とフォセットのコンディションだと、コボルドの森から脱出することを目指すのがセオリーだが、ラックドナも脱出する可能性があることを考えると、なるべく敵の戦力を削っておきたい気もする。
「フォセット?」
「いかがなさいましたか?」
「弓矢が手に入れば、君も戦えるかい?」
「もちろんです」
 僕は頷くと、普通サイズの管狐3匹を出して、周囲を偵察させることにした。
 コボルドの森では、管狐の行動も制限されてしまうので、偵察範囲や距離は限られるが、それでも偵察をしないよりはよほどいい。
 周囲を見回ると、すぐに管狐たちは戻ってきた。
「2時半の方角、約55メートルに、コボルドの一団あり。数は4匹。うち1匹は長弓武装か」
 どう攻略しようかと考えていたら、管狐はそっと耳元に寄ってきた。
「……え? そのコボルドたちは、索敵をさぼって就寝してる?」
 管狐は、コクンと頷いた。
「……就寝か」
 罠という可能性も無くはないが、わざわざ自分たちが優勢な状況で手駒を減らし兼ねない行動をするとは、ちょっと思えなかった。
 ここは乗ってみようと思った僕は、他の2匹の管狐の片方を消し、大き目の管狐1匹を出した。
「よし、ターゲットは2時半の方角のコボルド一団。ただし、気づかれないようにね?」
『キュイ!』
 管狐たちは指示を出すと飛び立ち、最初に発見した管狐が後の2匹を誘導した。
 彼らは、今の僕の索敵範囲である30メートルを超えた。果たしてどのような結果になるだろう。
「クリーチャーが、与えられた命令をサボることなんて、果たしてあるのでしょうか?」
「罠でなければ、そうだねぇ……弱点を作ることで召喚コストを下げたり、臨機応変に就寝する命令が悪さをしていたり、幾つも命令を与えたから不具合が起こっている……ということもあるかも」
「ああ、なるほど!」
 そんな話をしているうちに、管狐たちが30メートル圏内に戻ってきた。
 数はきちんと3匹おり、敵が後を付けているということもないようだ。彼らは僕たちの前まで無事に戻ってきた。
「お疲れ様……きちんと長弓を持ってきて……ん、これは!?」
『ピュイ!』
 なんと彼らは長弓だけでなく、矢のホルダーや護身用ナイフまで盗み出すことに成功していた。
 ホルダーの中にある矢の本数を数えると、何と12本きっちりと入っている。フォセットも1本出して、矢じりを見たり匂いを嗅いでいたが、満足そうに頷いた。
「毒も塗られていませんし、無難に使うことができそうですね」
 彼女は他にも、長弓のチェックを進めていく。
「ソラ……いえ、あなた。オオカミ殺しの粉を少し下さい」
「はい」
 粉を渡すと、彼女は矢じりの先に仕込みはじめた。
 少し鼻に入っただけでも、コボルドの嗅覚はおかしくなってしまう代物なのだから、矢じりの先にでもつければ、アレルギー反応が起こってもおかしくない。
 フォセットは矢をホルダーに戻すと、こちらを見た。
「今まで足を引っ張った分、ここから働かせていただきます」
「あ、ああ……無理はしない程度にね?」


【ソラの管狐】


 ソラの出す普通サイズの管狐。
 見た目はとても大きそうに見えるが、敵にダメージを与えられる部位は光っている場所だけで、白い煙のような場所はただの残像に過ぎない。
 なお、噛みつかれると、本物のキツネに噛まれるレベルのダメージを受ける。
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