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30.コボルドキラー
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その日の夜。
背中にいるフォセットは、人差し指を立てて風の流れを確認していた。彼女はしっかりと頷くと、僕は長弓とホルダーを持つ。
お互いにスライム拘束で離れられないのだから、ここは協力してコボルド問題に対処するしかない。
「そろそろかい?」
「ええ、お願いします」
なるべく音を立てないように歩き出すと、フォセットは両手でしっかりと僕にしがみついてきた。
進むこと20メートル。そこにはコボルド小隊が、辺りを見回しながら獣道を進んでいた。
武装は剣、短剣、槍、斧と、管狐の報告通り接近戦オンリーの編成だ。僕は密かに管狐たちを呼び出す。今回は普通サイズ4体による攻撃。
「よし、いけ」
アタック指示を出すと、管狐たちは闇のなか樹木を縫うように進んでいき、無警戒に進んでいたコボルド4匹に襲い掛かった。突然の攻撃にコボルドたちは驚いたらしく、不用意に槍を突き出して木に突き刺したり、斧を足元に落としてしまったりと、混乱具合がこちらまで伝わってくる。
リーダーと思しきコボルドが何かを言おうとしたとき、その体に矢が突き刺さった。
「うぐ……ナンダ、やカァ……」
その直後にコボルドは白目を剥き、泡を吹きだしながら卒倒した。
すると興味深いことが起こった。なんと同行していた部下のコボルドたちは、管狐との戦いを突然やめたり、フリーズでもしたかのように動かなくなった。
「……え?」
次の矢を構えようとしていたフォセットも、矢を手にしたまま呆然としていたが、部下のコボルドたちが倒れたことで、何が起こったのか理解できたようだ。
「やっぱりあの女、頭数を揃えるのを優先して、細かい指示は小隊長に丸投げしているのかもしれない」
「だから、ボスコボルドが倒れると、あのように消滅してしまうのですね」
コボルド小隊のあった場所に目を向けると、すっかり固有特殊能力で作られたコボルドたちはいなくなり、武器だけが残されていた。
「……あの短剣くらいは回収しておこうかな」
「そうですね。使えるモノは使うべきです」
短剣2本を腰に差すと、僕たちはすぐに次の獲物を探すことにした。
場所を少しずつ移動しながら管狐に索敵をしてもらうと、彼らは足跡を発見。フォセットに残存マナの様子を確認してもらうと、コボルド小隊が最近付けたモノで間違いはないようだ。
「足跡の形状からして……進行方向はこちらでしょう」
フォセットの示した方向へと進んでみると、コボルド小隊は焚火を囲んでキャンプしていた。僕だったら目を凝らさなければ、誰がコボルドで、誰が量産品なのかはわからないが、絶対マナ感覚を持っているフォセットは、すぐに本物を見抜いた。
「コンヤノ、ミハリハ、オマエ、オマエ、ソシテ、オマエェ」
ふんぞり返って命令をしていた本物のコボルドは、背中に矢を受けると白目を剥いて、そのまま炎の中へと倒れ込んで焚火を消した。
他のコボルドたちは、ただ目を白黒させるだけで、動くこともできないまま体が崩れて消え去っていく。
「そろそろだね」
全てのコボルドが消えると、僕はまず焚火が消えたことを確認し、すぐに物色した。
「フォセット、ショートボウとホルダーがあったよ」
「ありがたく使わせて頂きます」
こうして僕たちは、リーダー狙いでコボルド小隊を次々と潰していった。
そして明け方に5小隊目を潰すと、僕の腰には右側に3本、左側にも3本のナイフが下がっていた。それ以外にも銀貨や銅貨の入った袋や、矢のホルダーもあるため、重量的に限界が来た。
「さすがに、これ以上は持てないな」
「これだけ敵の戦力を削れば、増援部隊もやり易くなると思います。少し待機しませんか?」
「うん、また身を隠そう」
女ヒューマンが、コボルド小隊の全滅に気が付いたのは、翌朝に目を覚ました時だった。
まず起き上がると「あら……?」と言いながら表情を曇らせ、寝ぐせを立てたまま鏡を覗き込んだ。
「え!? なんで、どうして……あたしの戦士団が全滅しているの!?」
その言葉を聞いたマーチルは、驚いた様子で体や両耳をヒューマンの女に向けた。
「どういうこと? まさか昨晩のうちに、纏まった増援でも来たっていうの?」
女ヒューマンは、すぐにジルーに視線を向けた。
「ワン?」
「ねえジルー、こんな短時間で、サファイアランスの増援は到着するものなの?」
彼女はすぐに首を横に振ると、女ヒューマンはマーチルを睨んだ。
「マーチルと言ったわね。フォセット隊で、いまここにいるのって何人!?」
「……5人だよ。私たちを含めてね」
女ヒューマンがジルーを見ると、ジルーは頷く。
「ならば、まだあたしに勝ち目はあるわね。残り3人……絶対に捕まえてコレクションにしてやる!」
低い声でそう言うと、女はジルーに視線を向けた。
「ジルー命令よ……残った3人を見つけ出しなさい。あんたのその鼻ならできるでしょう?」
「…………」
命令されたジルーは、辺りを見渡すと歩き出した。
彼女が持ってきたのは何と布。それを自分の首に巻いて、まずは操りの首輪を見えないようにした。
「そ、そうすれば……首輪は見えなくなるわね……」
ジルーは頷くと、次に縄を手に取った。
彼女はそのまま左手首に巻き付けて結び付け、自分の手首に巡らせていくと縄端を拘束具に巻き付けて、ぶら下げられているようなジェスチャーをしたのである。
「そ、それ……」
女は少し考えてから眉間にしわを寄せていく。
「それってアンタを餌に、連中をおびき寄せろってこと?」
ジルーは頷くと、ニッと笑った。
「ソラ君が、そんな見え透いた手に引っかかるかなぁ……?」
マーチルは首を傾げたが、ジルーはどこか自信ありげな様子だった。
女ヒューマンもしばらくアゴに手を当てて考え込んでいたが、やがて視線を戻した。
「マーチルと2人でぶら下げれば面白いかもしれないわね」
その瞳が、洞窟の奥を映した。
「……昨晩のうちに、ちょっとした捕り物もあったわけだし」
【洞窟の奥では……】
背中にいるフォセットは、人差し指を立てて風の流れを確認していた。彼女はしっかりと頷くと、僕は長弓とホルダーを持つ。
お互いにスライム拘束で離れられないのだから、ここは協力してコボルド問題に対処するしかない。
「そろそろかい?」
「ええ、お願いします」
なるべく音を立てないように歩き出すと、フォセットは両手でしっかりと僕にしがみついてきた。
進むこと20メートル。そこにはコボルド小隊が、辺りを見回しながら獣道を進んでいた。
武装は剣、短剣、槍、斧と、管狐の報告通り接近戦オンリーの編成だ。僕は密かに管狐たちを呼び出す。今回は普通サイズ4体による攻撃。
「よし、いけ」
アタック指示を出すと、管狐たちは闇のなか樹木を縫うように進んでいき、無警戒に進んでいたコボルド4匹に襲い掛かった。突然の攻撃にコボルドたちは驚いたらしく、不用意に槍を突き出して木に突き刺したり、斧を足元に落としてしまったりと、混乱具合がこちらまで伝わってくる。
リーダーと思しきコボルドが何かを言おうとしたとき、その体に矢が突き刺さった。
「うぐ……ナンダ、やカァ……」
その直後にコボルドは白目を剥き、泡を吹きだしながら卒倒した。
すると興味深いことが起こった。なんと同行していた部下のコボルドたちは、管狐との戦いを突然やめたり、フリーズでもしたかのように動かなくなった。
「……え?」
次の矢を構えようとしていたフォセットも、矢を手にしたまま呆然としていたが、部下のコボルドたちが倒れたことで、何が起こったのか理解できたようだ。
「やっぱりあの女、頭数を揃えるのを優先して、細かい指示は小隊長に丸投げしているのかもしれない」
「だから、ボスコボルドが倒れると、あのように消滅してしまうのですね」
コボルド小隊のあった場所に目を向けると、すっかり固有特殊能力で作られたコボルドたちはいなくなり、武器だけが残されていた。
「……あの短剣くらいは回収しておこうかな」
「そうですね。使えるモノは使うべきです」
短剣2本を腰に差すと、僕たちはすぐに次の獲物を探すことにした。
場所を少しずつ移動しながら管狐に索敵をしてもらうと、彼らは足跡を発見。フォセットに残存マナの様子を確認してもらうと、コボルド小隊が最近付けたモノで間違いはないようだ。
「足跡の形状からして……進行方向はこちらでしょう」
フォセットの示した方向へと進んでみると、コボルド小隊は焚火を囲んでキャンプしていた。僕だったら目を凝らさなければ、誰がコボルドで、誰が量産品なのかはわからないが、絶対マナ感覚を持っているフォセットは、すぐに本物を見抜いた。
「コンヤノ、ミハリハ、オマエ、オマエ、ソシテ、オマエェ」
ふんぞり返って命令をしていた本物のコボルドは、背中に矢を受けると白目を剥いて、そのまま炎の中へと倒れ込んで焚火を消した。
他のコボルドたちは、ただ目を白黒させるだけで、動くこともできないまま体が崩れて消え去っていく。
「そろそろだね」
全てのコボルドが消えると、僕はまず焚火が消えたことを確認し、すぐに物色した。
「フォセット、ショートボウとホルダーがあったよ」
「ありがたく使わせて頂きます」
こうして僕たちは、リーダー狙いでコボルド小隊を次々と潰していった。
そして明け方に5小隊目を潰すと、僕の腰には右側に3本、左側にも3本のナイフが下がっていた。それ以外にも銀貨や銅貨の入った袋や、矢のホルダーもあるため、重量的に限界が来た。
「さすがに、これ以上は持てないな」
「これだけ敵の戦力を削れば、増援部隊もやり易くなると思います。少し待機しませんか?」
「うん、また身を隠そう」
女ヒューマンが、コボルド小隊の全滅に気が付いたのは、翌朝に目を覚ました時だった。
まず起き上がると「あら……?」と言いながら表情を曇らせ、寝ぐせを立てたまま鏡を覗き込んだ。
「え!? なんで、どうして……あたしの戦士団が全滅しているの!?」
その言葉を聞いたマーチルは、驚いた様子で体や両耳をヒューマンの女に向けた。
「どういうこと? まさか昨晩のうちに、纏まった増援でも来たっていうの?」
女ヒューマンは、すぐにジルーに視線を向けた。
「ワン?」
「ねえジルー、こんな短時間で、サファイアランスの増援は到着するものなの?」
彼女はすぐに首を横に振ると、女ヒューマンはマーチルを睨んだ。
「マーチルと言ったわね。フォセット隊で、いまここにいるのって何人!?」
「……5人だよ。私たちを含めてね」
女ヒューマンがジルーを見ると、ジルーは頷く。
「ならば、まだあたしに勝ち目はあるわね。残り3人……絶対に捕まえてコレクションにしてやる!」
低い声でそう言うと、女はジルーに視線を向けた。
「ジルー命令よ……残った3人を見つけ出しなさい。あんたのその鼻ならできるでしょう?」
「…………」
命令されたジルーは、辺りを見渡すと歩き出した。
彼女が持ってきたのは何と布。それを自分の首に巻いて、まずは操りの首輪を見えないようにした。
「そ、そうすれば……首輪は見えなくなるわね……」
ジルーは頷くと、次に縄を手に取った。
彼女はそのまま左手首に巻き付けて結び付け、自分の手首に巡らせていくと縄端を拘束具に巻き付けて、ぶら下げられているようなジェスチャーをしたのである。
「そ、それ……」
女は少し考えてから眉間にしわを寄せていく。
「それってアンタを餌に、連中をおびき寄せろってこと?」
ジルーは頷くと、ニッと笑った。
「ソラ君が、そんな見え透いた手に引っかかるかなぁ……?」
マーチルは首を傾げたが、ジルーはどこか自信ありげな様子だった。
女ヒューマンもしばらくアゴに手を当てて考え込んでいたが、やがて視線を戻した。
「マーチルと2人でぶら下げれば面白いかもしれないわね」
その瞳が、洞窟の奥を映した。
「……昨晩のうちに、ちょっとした捕り物もあったわけだし」
【洞窟の奥では……】
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