チート能力【九尾の力】が、異世界でどこまで通用するのか試してみる ~ナインテール・アタッカー~

スィグトーネ

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40.劣勢時の戦い方

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 これほどの霊力を持つユニコーンを味方にできれば、僕たちフォセット隊の戦力も大幅強化されるだろう。
 だけどもし勧誘に失敗して、まかり間違ってライバルのグループCのどこかに引き抜かれれば、来年の昇格も危うくなる。何せ冒険者ギルドのリーグ戦は、2チームしか昇格できない狭き門だからだ。
「…………」
 ならば、別ギルドに行けばいいと思う人もいるかもしれないが、僕はフォセット達と一緒に冒険するのが好きだ。
 彼女たちが、このサファイアランスで頑張りたいというのなら、手を貸してあげるのが僕らしいやり方だと思う。
『そろそろはじめるとしようか……』
「そうだね」
 僕と一角獣ラピッドトリガーの力量差は、相当なものだ。
 戦力差は、管狐の分を含めても3対7……いや、相手の固有特殊能力によっては、2対8になってしまうかもしれない。
 僕はすぐに大盾を構えると、オーラの尻尾を一つ握った。
 とは言っても、握ったのは一番小さく、中途半端なやつだ。盾の影に隠しながら管狐に変換し、盾を構えたままタックルを見舞うことにした。
『どうした、その程……!?』
 アタックと同時に、僕は普通サイズの管狐3匹にターゲット指示をした。狙いはもちろん、一角獣ラピッドトリガーだ。
『ギュイ!』
『ギィーーーー!』
『ガァァァァッ!』
 1匹目はトリガー号の耳を狙い、2匹目はトリガーの下腹、3匹目はトリガー号の後ろ脚の太ももに狙いを定めていく。僕もその攻撃に便乗し、少し距離を取ってから再びタワーシールドによるシールドアタックを行った。
 すると、ラピッドトリガー号は周囲を見回すと、まず僕を睨んだ。
「これは……さっきの!?」
『このまま退場するといい!』
 声の直後、目の見えない何かは、僕の放った3匹の管狐たちを次々と殴り消していった。
 これは、先ほどジルーやラックドナに対して行った見えない手……確かマジックハンドという名前だったか。
 同じ技で3人もやられたら、さすがに冒険者ギルド【サファイアランス】の名前に傷がつく。何とかしてこの技を攻略しないと。

 僕は固有特殊能力【ステータス看破】のターゲットを指定した。
 狙いはラピッドトリガー号だ。能力を僕自身が受けている今ならきっと、固有特殊能力が詳しく表示されているはず。
『……! させるかっ!!』
 ラピッドトリガー号が目を光らせると、もう1つマジックハンドの気配が現れた。
 それはまっすぐに僕のアゴに向かってくる。ダメだ、この体勢では避けられない。思わず歯を食いしばったとき、3匹いた管狐の1匹が僕の前に入り、身代わりとなって攻撃を受けた。
『ギュアイッ!?』
 管狐が消えると同時に、僕の能力が発動。

―――――――――――――――――――――――
【ラピッドトリガー ユニコーン 年齢不明 牡】
固有特殊能力A:ユニコーン(レア度A:★★★☆☆):ウマから一角獣にクラスチェンジできる
固有特殊能力B:マジックハンド(レア度B:★★★☆):オーラの手で物を掴んだり持ち上げる
固有特殊能力C:不明
実戦経験    B ★★★★★★
作戦・判断   B ★★★★★★
勇猛さ     A ★★★★★★★★
近接戦闘力   A ★★★★★★★★
魔法戦闘力   A ★★★★★★★
投射戦闘力   B ★★★☆☆☆
防御力     A ★★★★★★☆
機動力     A ★★★★★★★
索敵能力    A ★★★★★★★★
―――――――――――――――――――――――
 そのステータスを見て、思わず唸っていた。
 注目すべき点は【オーラの手】と記されていることだ。
「…………」
 手と聞けば普通は、2本あるモノと錯覚してしまうところだが、オーラで作り出すのなら僕の尻尾のように3本目や4本目があったとしても、何ら不思議ではない。
 このまま空高く上げられれば、一方的に叩き落されて勝負ありにもなりかねない。一か八か攻めに転じることにした。
 僕はオーラの尻尾を振りかざすと、思い切りラピッドトリガー号の頭に叩きつけた。
『ぐう……やるじゃないか』
 ラピッドトリガー号は、鼻血を流しながら睨みつけてくる。
『これならどうだ!?』
 叫び声と同時に、ラピッドトリガー号はマジックハンドによる攻撃を繰り出してきた。
 1発、2発、4発、7発、いや9発!

 すべて防ぎきれるはずがない。僕が無意識的に取ったのはノーガード戦法だった。
 尻尾にいる、12匹の管狐すべてに攻撃指示を出し、彼らは一斉に様々な角度からラピッドトリガー号へと突き進んでいく。
 するとラピッドトリガー号は、攻撃に使っていた全てのマジックハンドを守備に転用し、次々と管狐たちを殴り倒しはじめた。
 合わせて9匹の管狐がマジックハンドの一撃を受けて倒されていくが、攻撃をかい潜った3匹がラピッドトリガー号へと向かっていく。
 トリガー号は、最初の1匹を蹴り倒し、次の1匹を歯でかみちぎって見せたが、最後の1匹が肩に食いつき、その真っ黒な馬体に傷を負わせた。
『……なるほど、容易く敗れ去ってしまうほど弱くはないようだな』
 彼はそういうと、僕を見た。
『とりあえず、結論は保留……ということにしておこう』

 その言葉を聞いて、僕はホッとしたような、少し残念なような気分になった。
 まだチャンスが残されているのはいいが、ここでラピッドトリガー号を仲間に入れておかないと、誰かに取られてしまうのではないかという不安が残る。
「そうか……それなら僕も、もっと努力しないとな」
『君のような戦士がいるから、吾も修業に身が入るというもの……』
『なんだか、楽しそうなことやってるね』
 声と共に、ガサガサと低木が揺れ、その先からは白い毛並みをしたウマが姿を現した。
 毛並みこそ違うが、その顔立ちや霊力の放ち方は、ラピッドトリガー号にそっくりだった。現れた白馬は微笑を浮かべながら言う。
『お父さん』
 そう言われると、ラピッドトリガー号は困り顔を見せた。
『まさか見られていたとはな……』

 若い牡馬は、ゆっくりと僕の前にやってくると爽やかに微笑んだ。
『初めまして強い冒険者。小生の名前はサニートリガーというんだ』
「そ、そうなのか……僕の名前はソラ」
 そう答えると、サニートリガー号は左前膝を上げる仕草をしてきた。
 これは……握手を求めているのだろうか。
「…………」
 僕も左手で握手を交わすと、サニートリガーは満足そうに頷いた。
『小生でよかったら、君のパーティーに入れてくれないかい? 役に立ってみせるよ』
『おい、お父さんが先に見つけたんだぞ?』
 ラピッドトリガー号がくぎを刺すように言うと、サニートリガー号は笑いながら答えた。
『お父さん、世の中には早い者勝ちって言葉があってだね……』
 その言葉を聞いたラピッドトリガー号は、ため息交じりに『好きにしなさい』とだけ言って立ち去った。



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