37 / 41
37.フリーダの低空飛行戦
しおりを挟む
武術大会決勝戦。
ここまで2勝2敗で進む、遂にこの一戦で全てが決まる。
対戦相手であるエルフの女性ソフィアはレイピアを構え、僕たちの有翼人ツィルフリーダはダガーを構えた。
そして、ソフィアが走り出すと、フリーダもふわりと身体を浮かせながら低空飛行し、ソフィアはレイピアを突き出してきたが、フリーダは足でレイピアを踏み越え、蹴りを見舞うがソフィアも紙一重で避けた。
ソフィアは水系の投射魔法を放ち、フリーダも風系の投射魔法を放ってお互いをけん制すると、お互いに側面を取ろうと走り出した。
彼女たちは走りながら、再び投射魔法を放って相手をけん制。
開始わずか5秒ほどで、これほどスピーディーな戦いを繰り広げたので、観客たちは一斉に盛り上がった。
ソフィアはフリーダの放った風魔法をレイピアで切り払い、フリーダもまた飛んできた魔法を空中でバク転しながら避け、そのままレイピアとダガーがぶつかり合う。
すると、レイピアの刃先とダガーの刃先が折れてしまった。
「……くっ!?」
「それなら!」
彼女たちはお互いに武器を捨てると、今度は肉弾戦と至近距離の魔法戦へと切り替えたようだ。
ソフィアもフリーダも、蹴りを見舞いながら、手には魔法を纏っている。先にフリーダの蹴りが決まると、ソフィアは苦しんだが、すぐに彼女の足を掴んで至近距離から魔法を撃ち込んだ。
するとフリーダも至近距離から風魔法でやり返す。
ソフィアの手が緩むと、フリーダはソフィアに固め技をかけた。
それを見た審判は声を上げる。
「カウントを取ります! 1……2……3……」
そのカウントが進むごとに、ソフィアは足を延ばしてフリーダの固め技を解こうとした。そして7カウントのところでソフィアはフリーダの翼を掴んだ。
「はぁっ!」
「ぎゃあああ!」
今度は体勢が変わり、ソフィアがフリーダに固め技をかけた。
「今度は、リッカシデン隊にカウントを取ります! 1……2……3……」
フリーダもまた固め技を解こうと足を延ばすも、ソフィアの方が一枚上手でしっかりと駆け引きされてしまっている。
6カウントまで進んだとき、フリーダは不敵に笑うと翼をばたつかせ、そのままソフィアの身体を持ち上げると、背中から彼女を叩きつけた。
今の一撃で、ソフィアは固め技を解き、フリーダは再びソフィアに固め技をかけ返した。
ソフィアは胸に体重をかけられているらしく、抵抗らしい抵抗もできないようだ。審判は再び1からカウントしていき、今度は10までしっかりとカウントした。
「そこまで! 大将戦……リッカシデン隊の勝利。よって、今大会の優勝はリッカシデン隊に決定しました!」
審判の声が響くと、観客席からは大きな声援が響いてきた。
そして僕は、身震いを感じるほど喜んでいる自分がいることに気が付いた。この大会に参加したのは、はっきり言って【例のコンパス】が欲しかっただけである。
普通なら、僕自身が勇者だと名乗り出て、今回の大将戦は僕自身が勝ち取りに行かなければいけなかった試合だ。
だけど最後まで頑張ってくれたのはフリーダだし、ロドルフォやアルマン……つまり仲間たちである。
控え席まで戻ってきたフリーダは、すっかり疲れた様子だったが、その表情には達成感があった。
そこにマーチルや妹のベルタが抱き着いて喜びを分かち合っている。
僕の胸中にも、様々な思いがあったが、こうしてフリーダと向き合うと、困ったな……何から言ったらいいのかわからない。
「ありがとうフリーダ……それにみんな!」
そう声をかけると、エルフのシャーロットが答えた。
「何言ってるの!? アンタが一番頑張ったじゃない、先鋒戦のエースさん!」
その言葉を聞いて、ロドルフォは頷き、アルマンもしっかりと僕を見た。
「その通りです。マスターの活躍がなければ……ここまでの快挙はなかったでしょう」
「うむ……しかも、全ての試合で取りこぼさず、最後は相手チームに試合敬遠までされている」
こうして僕たちは表彰式に立ち、優勝チームへの景品として魔法のコンパスを授与された。
因みに、準優勝である聖剣持ちの勇者パーティーには、コンパスの複製品が贈られた。これはどうやら、僕たちの勇者仲間の1人である、コピー品を作る勇者の作ったシロモノらしい。
ここまで2勝2敗で進む、遂にこの一戦で全てが決まる。
対戦相手であるエルフの女性ソフィアはレイピアを構え、僕たちの有翼人ツィルフリーダはダガーを構えた。
そして、ソフィアが走り出すと、フリーダもふわりと身体を浮かせながら低空飛行し、ソフィアはレイピアを突き出してきたが、フリーダは足でレイピアを踏み越え、蹴りを見舞うがソフィアも紙一重で避けた。
ソフィアは水系の投射魔法を放ち、フリーダも風系の投射魔法を放ってお互いをけん制すると、お互いに側面を取ろうと走り出した。
彼女たちは走りながら、再び投射魔法を放って相手をけん制。
開始わずか5秒ほどで、これほどスピーディーな戦いを繰り広げたので、観客たちは一斉に盛り上がった。
ソフィアはフリーダの放った風魔法をレイピアで切り払い、フリーダもまた飛んできた魔法を空中でバク転しながら避け、そのままレイピアとダガーがぶつかり合う。
すると、レイピアの刃先とダガーの刃先が折れてしまった。
「……くっ!?」
「それなら!」
彼女たちはお互いに武器を捨てると、今度は肉弾戦と至近距離の魔法戦へと切り替えたようだ。
ソフィアもフリーダも、蹴りを見舞いながら、手には魔法を纏っている。先にフリーダの蹴りが決まると、ソフィアは苦しんだが、すぐに彼女の足を掴んで至近距離から魔法を撃ち込んだ。
するとフリーダも至近距離から風魔法でやり返す。
ソフィアの手が緩むと、フリーダはソフィアに固め技をかけた。
それを見た審判は声を上げる。
「カウントを取ります! 1……2……3……」
そのカウントが進むごとに、ソフィアは足を延ばしてフリーダの固め技を解こうとした。そして7カウントのところでソフィアはフリーダの翼を掴んだ。
「はぁっ!」
「ぎゃあああ!」
今度は体勢が変わり、ソフィアがフリーダに固め技をかけた。
「今度は、リッカシデン隊にカウントを取ります! 1……2……3……」
フリーダもまた固め技を解こうと足を延ばすも、ソフィアの方が一枚上手でしっかりと駆け引きされてしまっている。
6カウントまで進んだとき、フリーダは不敵に笑うと翼をばたつかせ、そのままソフィアの身体を持ち上げると、背中から彼女を叩きつけた。
今の一撃で、ソフィアは固め技を解き、フリーダは再びソフィアに固め技をかけ返した。
ソフィアは胸に体重をかけられているらしく、抵抗らしい抵抗もできないようだ。審判は再び1からカウントしていき、今度は10までしっかりとカウントした。
「そこまで! 大将戦……リッカシデン隊の勝利。よって、今大会の優勝はリッカシデン隊に決定しました!」
審判の声が響くと、観客席からは大きな声援が響いてきた。
そして僕は、身震いを感じるほど喜んでいる自分がいることに気が付いた。この大会に参加したのは、はっきり言って【例のコンパス】が欲しかっただけである。
普通なら、僕自身が勇者だと名乗り出て、今回の大将戦は僕自身が勝ち取りに行かなければいけなかった試合だ。
だけど最後まで頑張ってくれたのはフリーダだし、ロドルフォやアルマン……つまり仲間たちである。
控え席まで戻ってきたフリーダは、すっかり疲れた様子だったが、その表情には達成感があった。
そこにマーチルや妹のベルタが抱き着いて喜びを分かち合っている。
僕の胸中にも、様々な思いがあったが、こうしてフリーダと向き合うと、困ったな……何から言ったらいいのかわからない。
「ありがとうフリーダ……それにみんな!」
そう声をかけると、エルフのシャーロットが答えた。
「何言ってるの!? アンタが一番頑張ったじゃない、先鋒戦のエースさん!」
その言葉を聞いて、ロドルフォは頷き、アルマンもしっかりと僕を見た。
「その通りです。マスターの活躍がなければ……ここまでの快挙はなかったでしょう」
「うむ……しかも、全ての試合で取りこぼさず、最後は相手チームに試合敬遠までされている」
こうして僕たちは表彰式に立ち、優勝チームへの景品として魔法のコンパスを授与された。
因みに、準優勝である聖剣持ちの勇者パーティーには、コンパスの複製品が贈られた。これはどうやら、僕たちの勇者仲間の1人である、コピー品を作る勇者の作ったシロモノらしい。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる