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31.敵対ウェアウルフの登場
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この人魚の隠れ里に来て2週間が立った時、人魚カロルが僕の前にやってきた。
「一角獣様……敵対部族が使者を送ってきました。いかがさないますか?」
『一応、会ってみようか』
「かなり無礼な者なのでご注意……」
「退け!」
その使者は、カロルと突き飛ばすと僕に敵意を向けてきた。
「おい、ウマヤロー! マーズヴァン帝国の天馬を今すぐに返せ!」
無礼千万と言ってもいい言葉を聞いた途端に、側にいた人魚やウェアウルフたちは一斉に槍を突きつけた。
特に強い怒気を放ったのが隣にいたイネスだ。彼女に至っては弓を構えている。
「いっ……」
さすがの敵対ウェアウルフも、命の危険を感じたのかひきつった表情をしている。どうやら根は臆病な人物のようだ。
『侵略者に天馬は不要だ。下らんことをいちいち言いに来るな』
「この、後悔することになるぞ!」
『それで脅しをかけているつもりか? おい、このチンピラをつまみ出せ』
「はっ!」
近くにいたウェアウルフは無礼な使者を殴りつけると、子猫のように掴み上げて人魚の拠点の外に放り投げた。
『……そろそろ敵対部族が戦いを仕掛けてくるかもしれん。人魚全員と、デュッセ地域のウェアウルフたちに警戒するように呼び掛けてくれ』
「畏まりました」
カロルをはじめとした複数の人魚は一礼すると、すぐに動いた。
さて、そろそろきな臭い情勢になりそうだが、僕ももちろん聖水を作っていただけではない。
実は水を扱う過程で、ちょっとした防御魔法を思い付いたのである。どんなシロモノかと言えば体の周りに水の渦のようなモノを出現させて、敵の放った矢や石を遮るというモノだ。
もちろん、ただ水を浮かせているだけなので、そんなに防御力はない。
しかし、高速で飛んでくる物体の進路を変えるには水でも十分。要は当たらなければいいという考え方である。
まあ、この技も使わずに済むのなら、それに越したことはないのだが……さすがにそうはいかないようだ。
翌日も薬を作っていたら、ペガサスで空を飛んでいたイネスが戻ってきた。
「お兄ちゃん……大変だよ!」
『どうしたイネス?』
「空を飛んでいたら、武装したウェアウルフたちが、デュッセ村に向かっていたの!」
僕はすぐに立ち上がった。
『カロル、少しデュッセ村に行ってくる』
「は、はい……お気を付けて!」
デュッセ村は、人魚の隠れ里から徒歩だと20分はかかるが、上空なら7分もあれば到着する距離にある。
僕はイネスを背に乗せると、彼女はアビリティを発動して空から急行することにした。
どうやらデュッセ村のウェアウルフたちも、敵の接近に気付いているらしく、大急ぎで戦闘準備を整えているようだ。
「こ、これは一角獣様!」
『敵対部族が来ているようだな。援軍に来た』
「こ、これはありがたい!」
「一角獣様には是非、けが人の治療をお願いいたします!」
『わかった』
配置が完了して5分もしないうちに、敵対部族が攻撃を仕掛けてきた。
「このサカナとウマの犬ども!」
「今日こそ、テメーらのそっ首を叩き落して、奴らの巣穴の前に並べてやるぜ!!」
なるほど。我々を攻略するにはまずは外堀から。
同盟軍とも言える、デュッセ村のウェアウルフたちを滅ぼせば、脅しになると考えて連中を攻撃を仕掛けてきたというワケか。
間もなく敵は、複数の弓矢と石を放ってくると、僕は自分の周囲20メートルに大小様々な水の渦を出現させた。
それらをウェアウルフの正面や頭上に出現させると、飛んできた矢や石とぶつかり合って、その威力を削いだり、軌道を大きく変えた。
「よし、反撃開始!」
アルフレートが指示を出すと、デュッセ村のウェアウルフたちは一斉に長弓を放った。
身を守るモノの多いデュッセ村側とは違い、敵ウェアウルフたちは次々と矢の雨を受けてダメージを受けていく。
互いに弓矢の応酬を行った結果、デュッセ村のウェアウルフは3人が負傷し、敵側は15人くらいが戦闘不能の状態に陥っている。
それでも敵は抵抗を続け、遂に破城槌のような丸太のようなモノを持ち込んで、デュッセ村の城門を壊そうとしてきた。
『イネス……行こうか』
「はい!」
僕はイネスを背中に乗せると、助走をつけてから空中へと飛び立ち、空から敵ウェアウルフたちに空襲を仕掛けた。
普通、大弓を装備した亜人の軍隊の上空など飛ぶなんて自殺行為だろう。
だけど、相手はデュッセ村の戦士たちと弓矢を射かけあっており、矢の本数も減ったうえに負傷者も多く出ている。
更に破城槌のような丸太は、何人もの人数で動かさないと意味がないので、僕が上空から襲い掛かっても応戦できる人間がほとんどいないのだ。
わずかに弓矢を射かけてくる敵もいたが、そのほとんどは僕のスピードには付いてこれないうえに、狙いが正確な矢も、僕が作り出した水の渦によって狙いも外れていき、次々とイネスの矢を受けては、敵の負傷者も増えていく。
敵が破城槌を放棄して僕を攻撃しようと弓を構えると、門が開け放たれてデュッセ村の戦士たちが反転攻勢を仕掛けていった。
敵が弓矢から剣に持ち替えるよりも先に、デュッセ村の戦士たちは次々と敵を倒していき、やがて敵のウェアウルフたちは次々と逃げ出していく。
『よし、慎重に追撃をするぞ』
「はい!」
僕やイネスも、更に追い打ちを仕掛けて、ウェアウルフを7人ほど倒した。
【敵対部族の使者】
「一角獣様……敵対部族が使者を送ってきました。いかがさないますか?」
『一応、会ってみようか』
「かなり無礼な者なのでご注意……」
「退け!」
その使者は、カロルと突き飛ばすと僕に敵意を向けてきた。
「おい、ウマヤロー! マーズヴァン帝国の天馬を今すぐに返せ!」
無礼千万と言ってもいい言葉を聞いた途端に、側にいた人魚やウェアウルフたちは一斉に槍を突きつけた。
特に強い怒気を放ったのが隣にいたイネスだ。彼女に至っては弓を構えている。
「いっ……」
さすがの敵対ウェアウルフも、命の危険を感じたのかひきつった表情をしている。どうやら根は臆病な人物のようだ。
『侵略者に天馬は不要だ。下らんことをいちいち言いに来るな』
「この、後悔することになるぞ!」
『それで脅しをかけているつもりか? おい、このチンピラをつまみ出せ』
「はっ!」
近くにいたウェアウルフは無礼な使者を殴りつけると、子猫のように掴み上げて人魚の拠点の外に放り投げた。
『……そろそろ敵対部族が戦いを仕掛けてくるかもしれん。人魚全員と、デュッセ地域のウェアウルフたちに警戒するように呼び掛けてくれ』
「畏まりました」
カロルをはじめとした複数の人魚は一礼すると、すぐに動いた。
さて、そろそろきな臭い情勢になりそうだが、僕ももちろん聖水を作っていただけではない。
実は水を扱う過程で、ちょっとした防御魔法を思い付いたのである。どんなシロモノかと言えば体の周りに水の渦のようなモノを出現させて、敵の放った矢や石を遮るというモノだ。
もちろん、ただ水を浮かせているだけなので、そんなに防御力はない。
しかし、高速で飛んでくる物体の進路を変えるには水でも十分。要は当たらなければいいという考え方である。
まあ、この技も使わずに済むのなら、それに越したことはないのだが……さすがにそうはいかないようだ。
翌日も薬を作っていたら、ペガサスで空を飛んでいたイネスが戻ってきた。
「お兄ちゃん……大変だよ!」
『どうしたイネス?』
「空を飛んでいたら、武装したウェアウルフたちが、デュッセ村に向かっていたの!」
僕はすぐに立ち上がった。
『カロル、少しデュッセ村に行ってくる』
「は、はい……お気を付けて!」
デュッセ村は、人魚の隠れ里から徒歩だと20分はかかるが、上空なら7分もあれば到着する距離にある。
僕はイネスを背に乗せると、彼女はアビリティを発動して空から急行することにした。
どうやらデュッセ村のウェアウルフたちも、敵の接近に気付いているらしく、大急ぎで戦闘準備を整えているようだ。
「こ、これは一角獣様!」
『敵対部族が来ているようだな。援軍に来た』
「こ、これはありがたい!」
「一角獣様には是非、けが人の治療をお願いいたします!」
『わかった』
配置が完了して5分もしないうちに、敵対部族が攻撃を仕掛けてきた。
「このサカナとウマの犬ども!」
「今日こそ、テメーらのそっ首を叩き落して、奴らの巣穴の前に並べてやるぜ!!」
なるほど。我々を攻略するにはまずは外堀から。
同盟軍とも言える、デュッセ村のウェアウルフたちを滅ぼせば、脅しになると考えて連中を攻撃を仕掛けてきたというワケか。
間もなく敵は、複数の弓矢と石を放ってくると、僕は自分の周囲20メートルに大小様々な水の渦を出現させた。
それらをウェアウルフの正面や頭上に出現させると、飛んできた矢や石とぶつかり合って、その威力を削いだり、軌道を大きく変えた。
「よし、反撃開始!」
アルフレートが指示を出すと、デュッセ村のウェアウルフたちは一斉に長弓を放った。
身を守るモノの多いデュッセ村側とは違い、敵ウェアウルフたちは次々と矢の雨を受けてダメージを受けていく。
互いに弓矢の応酬を行った結果、デュッセ村のウェアウルフは3人が負傷し、敵側は15人くらいが戦闘不能の状態に陥っている。
それでも敵は抵抗を続け、遂に破城槌のような丸太のようなモノを持ち込んで、デュッセ村の城門を壊そうとしてきた。
『イネス……行こうか』
「はい!」
僕はイネスを背中に乗せると、助走をつけてから空中へと飛び立ち、空から敵ウェアウルフたちに空襲を仕掛けた。
普通、大弓を装備した亜人の軍隊の上空など飛ぶなんて自殺行為だろう。
だけど、相手はデュッセ村の戦士たちと弓矢を射かけあっており、矢の本数も減ったうえに負傷者も多く出ている。
更に破城槌のような丸太は、何人もの人数で動かさないと意味がないので、僕が上空から襲い掛かっても応戦できる人間がほとんどいないのだ。
わずかに弓矢を射かけてくる敵もいたが、そのほとんどは僕のスピードには付いてこれないうえに、狙いが正確な矢も、僕が作り出した水の渦によって狙いも外れていき、次々とイネスの矢を受けては、敵の負傷者も増えていく。
敵が破城槌を放棄して僕を攻撃しようと弓を構えると、門が開け放たれてデュッセ村の戦士たちが反転攻勢を仕掛けていった。
敵が弓矢から剣に持ち替えるよりも先に、デュッセ村の戦士たちは次々と敵を倒していき、やがて敵のウェアウルフたちは次々と逃げ出していく。
『よし、慎重に追撃をするぞ』
「はい!」
僕やイネスも、更に追い打ちを仕掛けて、ウェアウルフを7人ほど倒した。
【敵対部族の使者】
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