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32.捕虜を治療して、更にお金儲け
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デュッセ村の攻防戦は、僕たち一角獣側の大勝という結果に終わった。
具体的には、こちらの被害はけが人が5人出ただけで、攻めてきたマーズヴァン帝国のウェアウルフたちは、死亡12、捕虜23という具合だ。
70人ほどで攻めてきていたので、実に半数くらいの戦力を敵は失ったことになる。
そして、いま僕が何をしているのかと言えば、捕虜にした敵ウェアウルフたちの治療だ。敵なのだから、この場で処断してしまえばいいのではという仲間もいたが、僕はこう見えても捕虜を無暗に傷つける趣味はないし……
ここでもうまく立ち回れば、またお金儲けができるんだよね。
「お兄ちゃん、その表情……悪魔みたいだからやめた方がいいよ」
こうして捕虜たちを治療したら、逃げられないように村の独房に押し込めておいた。
あとは、使者が来るのを待つばかりである。
今回の戦いで、空き瓶が幾つか出たので、使った分の聖水や薬を作っていると、ウェアウルフの1人がやってきた。
「一角獣様、モーズブ村から使者が来ました」
『会おう、ここに』
「ははっ!」
モーズブ村とは、先ほど僕たちに攻撃を仕掛けてきた連中の住む村である。
その使者は、前に僕が人魚の隠れ里にいるときに来た、あの無礼な態度を取っていたウェアウルフだったが、今回は遠慮がちに話を切り出した。
「一角獣殿……我が村の戦士たちを返してくれぬだろうか?」
やはり捕虜を変換して欲しいという要望か。
いきなり襲ってきたワケだし、ちょっとばかり吹っかけてみるか。
『そうだな……貴殿らがマーズヴァン帝国と手を切るのなら……考えてもいいぞ』
「そ、それはいくらなんでも!」
ふむ。さすがに吹っかけ過ぎただろうか。
『ふむ。そちらにも何やら事情がありそうだな』
「我々は動物の毛皮を保管している。それで……交換とはいかぬだろうか?」
僕は少し鼻を引くつかせた。よく考えればこの使者の体からペガサスのにおいがする。
『前に会ったときにはしなかったが、今度はペガサスの匂いがするな』
その言葉を聞いた使者はビクッと肩を震わせた。どうやら、僕に会う少し前にペガサスに触れていたようだ。
軽く水浴びをしていたようだが、僕にだってわかるぞ。
『決めたぞ。メスペガサス1頭につき4人、オスペガサス1頭につき5人の捕虜を返還する』
「さ、さすがに……」
『嫌なら交渉は打ち切りだ』
そう席を立つ行動をすると「待ってください!」と使者は声を上げた。
「わ、わかりました……それで手を打ちましょう」
『ペガサスはそちらが連れてきてくれ。こちらに捕虜は23人いる』
「わ、わかった……」
2日後。使者はお供たちを連れながら、オスペガサス3頭、メスペガサスを2頭をつれてやってきた。
正直言って面白くなさそうな顔をしていたが、僕は約束通り捕虜を23人を解放することにした。
『確かにペガサスは受け取った。捕虜を』
「ははっ」
捕虜たちは解放されると、つまらなそうな顔をしながら立ち去って行った。さすがに丸腰で勝負を挑んでくるほど連中もマヌケではないようだ。
「これほど鮮やかに天馬を5頭も入手なさるとは……このアルフレート感服いたしました!」
『今からにおいを確認し、王国の生産した天馬は王国に返して報奨金を貰い、帝国のモノはこのまま我々で使おうと思う』
「では、においの調査なら我らにお任せください!」
実はウェアウルフたちは僕よりも鼻が良いため、どちらの国の牧場が生産した天馬かはすぐにわかるようだ。
「3頭の牡馬のうち1頭が王国の出身。残りは全て帝国産のモノです」
『わかった。では牡馬は王国の関係者が来たときに、交渉してみるとしよう』
ブリジット隊長が、デュッセ村を訪れたのは捕虜返還の3日後だった。
ちなみに今回、彼女は最初からオスペガサス回収の報奨金である銀貨700枚を持ってきたが、これは前もってウェアウルフの村から伝書鳩を送って知らせていたためである。
「この銀貨はいったい、何に使っているのだ?」
父エドモンも尤もな質問をしてきたので、僕は当然のように答えた。
『残らず、指示通りに動いてくれたウェアウルフやマーメイドたちに分配します』
「なるほど……他にも引き取って欲しいペガサスがいたら、相談してくれと守備隊長や中隊長が言っていたぞ」
『考えておきましょう』
その話を横で聞いていた、エルフのルドヴィーカは思い出したように言った。
「そういえば一角獣様は御存じでしょうか……?」
『何の話だ、ルドヴィーカ?』
「この森には、人魚やウェアウルフたち以外にも、エルフの隠れ里もあるそうなのです」
彼女は微笑を浮かべながら言った。
「もしかしたら、貴方様のすぐそばに……その入り口があるかもしれませんよ?」
本当に彼女はおもしろい話をしてくれるものだ。
僕は思わず微笑を浮かべながら頷く。
『興味深い話を教えてくれてありがとう!』
【牧場で放牧中のペガサス】
帝国や王国では、放牧させるとペガサスは逃げてしまうため、常に納屋に入れていて、乗り手が来たときだけ外に出すが、リュドはユニコーンなので放し飼いにしていてもペガサスは必ず戻ってくる。
ペガサスは頭がよく、自分がケガや病気を患っても、ユニコーンがいれば治療してくれることを知っているからだ。
特にメスペガサスは、ユニコーンを慕うため、メスを欲しがるオスも自然とユニコーンの周りに集まってくる。
具体的には、こちらの被害はけが人が5人出ただけで、攻めてきたマーズヴァン帝国のウェアウルフたちは、死亡12、捕虜23という具合だ。
70人ほどで攻めてきていたので、実に半数くらいの戦力を敵は失ったことになる。
そして、いま僕が何をしているのかと言えば、捕虜にした敵ウェアウルフたちの治療だ。敵なのだから、この場で処断してしまえばいいのではという仲間もいたが、僕はこう見えても捕虜を無暗に傷つける趣味はないし……
ここでもうまく立ち回れば、またお金儲けができるんだよね。
「お兄ちゃん、その表情……悪魔みたいだからやめた方がいいよ」
こうして捕虜たちを治療したら、逃げられないように村の独房に押し込めておいた。
あとは、使者が来るのを待つばかりである。
今回の戦いで、空き瓶が幾つか出たので、使った分の聖水や薬を作っていると、ウェアウルフの1人がやってきた。
「一角獣様、モーズブ村から使者が来ました」
『会おう、ここに』
「ははっ!」
モーズブ村とは、先ほど僕たちに攻撃を仕掛けてきた連中の住む村である。
その使者は、前に僕が人魚の隠れ里にいるときに来た、あの無礼な態度を取っていたウェアウルフだったが、今回は遠慮がちに話を切り出した。
「一角獣殿……我が村の戦士たちを返してくれぬだろうか?」
やはり捕虜を変換して欲しいという要望か。
いきなり襲ってきたワケだし、ちょっとばかり吹っかけてみるか。
『そうだな……貴殿らがマーズヴァン帝国と手を切るのなら……考えてもいいぞ』
「そ、それはいくらなんでも!」
ふむ。さすがに吹っかけ過ぎただろうか。
『ふむ。そちらにも何やら事情がありそうだな』
「我々は動物の毛皮を保管している。それで……交換とはいかぬだろうか?」
僕は少し鼻を引くつかせた。よく考えればこの使者の体からペガサスのにおいがする。
『前に会ったときにはしなかったが、今度はペガサスの匂いがするな』
その言葉を聞いた使者はビクッと肩を震わせた。どうやら、僕に会う少し前にペガサスに触れていたようだ。
軽く水浴びをしていたようだが、僕にだってわかるぞ。
『決めたぞ。メスペガサス1頭につき4人、オスペガサス1頭につき5人の捕虜を返還する』
「さ、さすがに……」
『嫌なら交渉は打ち切りだ』
そう席を立つ行動をすると「待ってください!」と使者は声を上げた。
「わ、わかりました……それで手を打ちましょう」
『ペガサスはそちらが連れてきてくれ。こちらに捕虜は23人いる』
「わ、わかった……」
2日後。使者はお供たちを連れながら、オスペガサス3頭、メスペガサスを2頭をつれてやってきた。
正直言って面白くなさそうな顔をしていたが、僕は約束通り捕虜を23人を解放することにした。
『確かにペガサスは受け取った。捕虜を』
「ははっ」
捕虜たちは解放されると、つまらなそうな顔をしながら立ち去って行った。さすがに丸腰で勝負を挑んでくるほど連中もマヌケではないようだ。
「これほど鮮やかに天馬を5頭も入手なさるとは……このアルフレート感服いたしました!」
『今からにおいを確認し、王国の生産した天馬は王国に返して報奨金を貰い、帝国のモノはこのまま我々で使おうと思う』
「では、においの調査なら我らにお任せください!」
実はウェアウルフたちは僕よりも鼻が良いため、どちらの国の牧場が生産した天馬かはすぐにわかるようだ。
「3頭の牡馬のうち1頭が王国の出身。残りは全て帝国産のモノです」
『わかった。では牡馬は王国の関係者が来たときに、交渉してみるとしよう』
ブリジット隊長が、デュッセ村を訪れたのは捕虜返還の3日後だった。
ちなみに今回、彼女は最初からオスペガサス回収の報奨金である銀貨700枚を持ってきたが、これは前もってウェアウルフの村から伝書鳩を送って知らせていたためである。
「この銀貨はいったい、何に使っているのだ?」
父エドモンも尤もな質問をしてきたので、僕は当然のように答えた。
『残らず、指示通りに動いてくれたウェアウルフやマーメイドたちに分配します』
「なるほど……他にも引き取って欲しいペガサスがいたら、相談してくれと守備隊長や中隊長が言っていたぞ」
『考えておきましょう』
その話を横で聞いていた、エルフのルドヴィーカは思い出したように言った。
「そういえば一角獣様は御存じでしょうか……?」
『何の話だ、ルドヴィーカ?』
「この森には、人魚やウェアウルフたち以外にも、エルフの隠れ里もあるそうなのです」
彼女は微笑を浮かべながら言った。
「もしかしたら、貴方様のすぐそばに……その入り口があるかもしれませんよ?」
本当に彼女はおもしろい話をしてくれるものだ。
僕は思わず微笑を浮かべながら頷く。
『興味深い話を教えてくれてありがとう!』
【牧場で放牧中のペガサス】
帝国や王国では、放牧させるとペガサスは逃げてしまうため、常に納屋に入れていて、乗り手が来たときだけ外に出すが、リュドはユニコーンなので放し飼いにしていてもペガサスは必ず戻ってくる。
ペガサスは頭がよく、自分がケガや病気を患っても、ユニコーンがいれば治療してくれることを知っているからだ。
特にメスペガサスは、ユニコーンを慕うため、メスを欲しがるオスも自然とユニコーンの周りに集まってくる。
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