飛べない妹有翼人と目指すペガサスマスターへの道 ~努力家イネスの夢を叶えるため、転生ニート兄貴は本気出す~

スィグトーネ

文字の大きさ
32 / 43

32.捕虜を治療して、更にお金儲け

しおりを挟む
 デュッセ村の攻防戦は、僕たち一角獣側の大勝という結果に終わった。
 具体的には、こちらの被害はけが人が5人出ただけで、攻めてきたマーズヴァン帝国のウェアウルフたちは、死亡12、捕虜23という具合だ。

 70人ほどで攻めてきていたので、実に半数くらいの戦力を敵は失ったことになる。

 そして、いま僕が何をしているのかと言えば、捕虜にした敵ウェアウルフたちの治療だ。敵なのだから、この場で処断してしまえばいいのではという仲間もいたが、僕はこう見えても捕虜を無暗に傷つける趣味はないし……
 ここでもうまく立ち回れば、またお金儲けができるんだよね。
「お兄ちゃん、その表情……悪魔みたいだからやめた方がいいよ」


 こうして捕虜たちを治療したら、逃げられないように村の独房に押し込めておいた。
 あとは、使者が来るのを待つばかりである。

 今回の戦いで、空き瓶が幾つか出たので、使った分の聖水や薬を作っていると、ウェアウルフの1人がやってきた。
「一角獣様、モーズブ村から使者が来ました」
『会おう、ここに』
「ははっ!」


 モーズブ村とは、先ほど僕たちに攻撃を仕掛けてきた連中の住む村である。
 その使者は、前に僕が人魚の隠れ里にいるときに来た、あの無礼な態度を取っていたウェアウルフだったが、今回は遠慮がちに話を切り出した。
「一角獣殿……我が村の戦士たちを返してくれぬだろうか?」

 やはり捕虜を変換して欲しいという要望か。
 いきなり襲ってきたワケだし、ちょっとばかり吹っかけてみるか。
『そうだな……貴殿らがマーズヴァン帝国と手を切るのなら……考えてもいいぞ』
「そ、それはいくらなんでも!」

 ふむ。さすがに吹っかけ過ぎただろうか。
『ふむ。そちらにも何やら事情がありそうだな』
「我々は動物の毛皮を保管している。それで……交換とはいかぬだろうか?」

 僕は少し鼻を引くつかせた。よく考えればこの使者の体からペガサスのにおいがする。
『前に会ったときにはしなかったが、今度はペガサスの匂いがするな』
 その言葉を聞いた使者はビクッと肩を震わせた。どうやら、僕に会う少し前にペガサスに触れていたようだ。
 軽く水浴びをしていたようだが、僕にだってわかるぞ。
『決めたぞ。メスペガサス1頭につき4人、オスペガサス1頭につき5人の捕虜を返還する』
「さ、さすがに……」
『嫌なら交渉は打ち切りだ』

 そう席を立つ行動をすると「待ってください!」と使者は声を上げた。
「わ、わかりました……それで手を打ちましょう」
『ペガサスはそちらが連れてきてくれ。こちらに捕虜は23人いる』
「わ、わかった……」


 2日後。使者はお供たちを連れながら、オスペガサス3頭、メスペガサスを2頭をつれてやってきた。
 正直言って面白くなさそうな顔をしていたが、僕は約束通り捕虜を23人を解放することにした。
『確かにペガサスは受け取った。捕虜を』
「ははっ」

 捕虜たちは解放されると、つまらなそうな顔をしながら立ち去って行った。さすがに丸腰で勝負を挑んでくるほど連中もマヌケではないようだ。


「これほど鮮やかに天馬を5頭も入手なさるとは……このアルフレート感服いたしました!」
『今からにおいを確認し、王国の生産した天馬は王国に返して報奨金を貰い、帝国のモノはこのまま我々で使おうと思う』
「では、においの調査なら我らにお任せください!」

 実はウェアウルフたちは僕よりも鼻が良いため、どちらの国の牧場が生産した天馬かはすぐにわかるようだ。


「3頭の牡馬のうち1頭が王国の出身。残りは全て帝国産のモノです」
『わかった。では牡馬は王国の関係者が来たときに、交渉してみるとしよう』

 ブリジット隊長が、デュッセ村を訪れたのは捕虜返還の3日後だった。
 ちなみに今回、彼女は最初からオスペガサス回収の報奨金である銀貨700枚を持ってきたが、これは前もってウェアウルフの村から伝書鳩を送って知らせていたためである。

「この銀貨はいったい、何に使っているのだ?」
 父エドモンも尤もな質問をしてきたので、僕は当然のように答えた。
『残らず、指示通りに動いてくれたウェアウルフやマーメイドたちに分配します』
「なるほど……他にも引き取って欲しいペガサスがいたら、相談してくれと守備隊長や中隊長が言っていたぞ」
『考えておきましょう』


 その話を横で聞いていた、エルフのルドヴィーカは思い出したように言った。
「そういえば一角獣様は御存じでしょうか……?」
『何の話だ、ルドヴィーカ?』
「この森には、人魚やウェアウルフたち以外にも、エルフの隠れ里もあるそうなのです」
 彼女は微笑を浮かべながら言った。
「もしかしたら、貴方様のすぐそばに……その入り口があるかもしれませんよ?」

 本当に彼女はおもしろい話をしてくれるものだ。
 僕は思わず微笑を浮かべながら頷く。
『興味深い話を教えてくれてありがとう!』


【牧場で放牧中のペガサス】


 帝国や王国では、放牧させるとペガサスは逃げてしまうため、常に納屋に入れていて、乗り手が来たときだけ外に出すが、リュドはユニコーンなので放し飼いにしていてもペガサスは必ず戻ってくる。

 ペガサスは頭がよく、自分がケガや病気を患っても、ユニコーンがいれば治療してくれることを知っているからだ。
 特にメスペガサスは、ユニコーンを慕うため、メスを欲しがるオスも自然とユニコーンの周りに集まってくる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...