8 / 10
すれ違い
週末は二人きりで過ごせるかと期待していたが、いつもと同じく俊光様の携帯電話は鳴りっぱなしで、俊光様は仕事の電話ばかりしていた。
結局土日のどちらも会社に行ってしまい、私は一人で佐久間さんの用意した食事をとった。
俊光様が帰ってきたあとも、休みなく働いている俊光様が一段と疲れているように見えて、こちらから誘うことはできず、この週末は鞭でお仕置きされただけのお泊りになってしまった。
月曜日の朝、いつもは俊光様が起こしに来るまで起きないのに、ふと目が覚めとなりを見たが、もうベッドに俊光様の姿はなかった。私が寝間着のままふらふらと廊下に歩いて出ると、リビングから俊光様と佐久間さんの声が聞こえてきた。
リビングの扉を開けようとして、ふと自分の名前が聞こえてきてその場に固まる。
「俊光様は…いつまで渡辺さんで遊ばれるおつもりですか?」
「遊ぶ、というのはどういう意味だ」
「俊光様が渡辺さんをどう思われているのかは分かりませんが、大勢いる社員ひとりを贔屓するのはどうかと。社内の士気に関わるのではないでしょうか」
俊光様に対しているというのに佐久間さんは、ズバズバといつもの冷静な声で話している。私はそれ以上聞くのがこわくなって、寝室に駆け戻り頭から布団をかぶった。
結局それからもう一度眠ってしまった私を起こしにきた俊光様は、その時は、いつもと変わらないように見えた。
けれど…。
会社に着いた途端、なぜだか急によそよそしく感じる。私の気のせい、かとも思ったが、朝礼のときも、仕事の用事があるときにも、どこか態度が淡々としているような気がした。
私が仕事でミスをしていないから、当たり前なのだが「終業後に社長室に来い」と、言われることもない日が続く。前はお仕置き無しにも、泊まりに誘われていたのに、それもない。
まるで、俊光様の前に並んだ、大勢の中のひとりになってしまったみたいだ。
木曜日のお昼、私は我慢できなくなって、非常階段に通じる扉の前、廊下のはじっこでコータに電話をかけてしまった。会社にいながら、コータに電話したのは初めてだった。
「もしもーし。ちぃちゃーん、こんな時間にどしたの?」
コータにはここ最近、全然会いに行けてなかった。俊光様とのことは、ちょくちょくメールで話していたが、声を聞くのは久しぶりだ。
「コータぁ…」
思わず気が緩んで、涙がでそうになる。
「なになに、どうしたの?だいじょーぶ?社長さんと、喧嘩でもしちゃったの?」
「そ、そういうじゃなくて…っ…な、なんか理由がわかんないのに、なんか…辛くて……っ」
「どうした、どうした」
「もう、どうしたらいいか…わ、私の、勘違いなのかなんなのか…っ」
自分でもよくわからないことをしゃべる私に、コータが優しく相ずちをうつ。
「じゃあさ、アタシが今日の夜、ちぃちゃんが辛い理由を一緒に考えてあげる。今まだ、お昼休憩の時間なんだよね?」
「うん…もう、戻らないと……」
「そうね。ちぃちゃん、あと数時間のファイトよ!頑張って、午後のお仕事乗りきって」
コータに励まされ、私は気持ちを落ち着かせる。夜、コータに会えると考えれば…まだ、頑張れる気がする。
「ありがとう、コータ…」
「いーのいーの。それじゃ、もう切るよ。すぐお仕事、戻りなさいね!」
電話が切れて、ふっと息を吐き出したとき、こちらにやってくる足音が聞こえて、私は慌ててポケットに携帯をしまう。
「もう、昼休憩の時間は終わってるぞ」
足音は俊光様のもので、私は顔をおとし「申し訳ございません」と、つぶやく。
「すぐに秘書室に戻れ」
なにか。なにか、他に言われることを私は期待していた。それでも、俊光様はそれ以上、なにも言わずに去っていく。
私は、一刻も早くコータに会って、洗いざらい話してしまいたい、と思った。
「それが、そのお泊まりの週末から今日までのぜんぶ?」
コータに会った瞬間、私は息をつく間もなく話し続けた。コータは黙って頷きながら聞いていたが、やっと私が口をつぐんだときに、そう口を挟む。
「う、ん…。最初はね、気のせいかなとも思ったけど、でもやっぱりよそよそしい気もするし…現に今日のお昼は…」
「つまりつまり」
コータは私の言葉を、両手をだして遮る。
「ちぃちゃんは、今日のお昼は注意されるだけじゃなくて、社長さんにお仕置きしてもらいたかったってことだよね?」
そう問われ、一瞬否定しかけて、それからどう答えていいかわからなくなって固まる。コータはそんな私のテーブルの上で組んだ手に優しく触れる。
「ちぃちゃんは、痛いのは嫌いなんだよね?」
「うん。痛いのも…は、恥ずかしいのも、嫌」
おなじMでも、痛いのが気持ちいい、といえる人は尊敬する。どんなに経験をしても、慣れなんてものはなく痛いものは痛い。恥ずかしいのは、もっと嫌だった。
「そう、痛いのも、恥ずかしいのも嫌なんだよね。でも、叱られて萌えるのは、なんで?打たれた鞭の跡でぞくぞくするのはなんで?」
「それは…。愛されている、って思うから」
「そう!そうだよね。つまり、ちぃちゃんは、その社長さんに本当に愛されてるか知りたくなった、ってことだよね?そのためには、ちぃちゃんにとってはお仕置きをされないと、ダメなんだよね?」
私は問いただされるままに、ゆっくりと頷く。愛されてるか知りたい、とはなんて贅沢な思いなんだろう。
「それじゃあ、ちぃちゃんが愛されるか確かめる方法は、一つだけよ」
コータは私の耳元へ口を寄せる。
「わざと、社長さんが1番怒るようなことをすればいいの。それで、ちぃちゃんの中で愛が確かめられたら、それでいい。なかったら……そのときは、すっぱり忘れちゃいましょ!」
こんなこと、してはいけない。無断欠勤なんて…秘書の皆にも迷惑をかけるし、午後の来客対応予定のお客様にも失礼だ…。そんな思いもありつつ私はいつものようにスーツに、鞄を持って会社の最寄り駅まではやってきていた。でも、そこには思いきって休んでしまえという自分もいて、自然と足は遅くなる。
どうすればいいのか、踏んぎりがつかなくなったとき、あのコーヒーショップが目に入った。
俊光様に出会う前、毎日のように通っていたコーヒーショップ。私は吸い込まれるように、店の扉を開けた。記憶の中と全く変わっていない店の内装に、ほっと息をつく。そしてレジには、あの若いお兄さんが立っていた。
「いらっしゃいませ。あれ…渡辺さん?」
「え、あ。はぃ…っ」
まさかまだ名前を覚えて貰えてるとは思わず、動揺して口ごもる。お兄さんは爽やかな満面の笑顔を浮かべる。
「えーっと、ブラックコーヒー、テイクアウトでしたよね?」
ずいぶんと記憶力のいい人だ。
「いや。えっと、今日はテイクアウトじゃなくて、店内で…」
「かしこまりました。お会計は、340円になります」
私は千円札をだし、お兄さんにお釣りを手渡される。
「なんか、お久しぶりですね。お元気でしたか?」
「はい。まぁ、大体は」
「大体、ですか」
お兄さんは半分迷いながらも、軽い笑い声をあげる。店内用のトレーに乗ったコーヒーはすぐに出来上がってきてお兄さんは笑うのをやめ「お待たせしました」と、私に手渡したあとまたニッコリ笑顔をつくった。
「また、朝の時間待ってますよ。ぜひ、来てくださいね」
「ありがとう」
前の自分なら飛び上がって喜んだであろうそんな言葉をかけられ、私はトレーを持ちお店の中でなるべく静かなところを探して、窓際の陽の直接当たる席についた。
コーヒーを飲み始めたとき、今日は一度もお兄さんの手の指を見ずにいたことに、気がついた。
私はすっかり冷えきったコーヒーカップのふちを何度も指でなぞる。一人で考えれば考えるほど、また自分の気持ちがよくわからなくなっていった。
私は、私の方は…俊光様のことをどう思っているのだろう。
ただ愛されたいと、それだけを思って、私は俊光様になにを与えられるんだろう。
チリンチリン、とお店の扉の鈴が勢いよく鳴り響いて、思わず顔をあげると、そこには灰色のスーツを来た、佐久間さんの姿があった。
「渡辺、さん…っ!!!!!こんなところで、なにしてるんですか?!」
息を切らした佐久間さんは、足音をたてながら歩み寄ってくると、ぐっと私の腕を掴む。
「自分がなにをしているか分かっているんですか?!こんなところでサボるなんて!!!早く、会社に行きますよ!!」
「い、いやです……っ」
わ、私が手を引っ張られたいのは…。
「渡辺さんっ。こんな状況で、俊光様じゃないと嫌だなんて、言わないでくださいね?」
「嫌です…っ。俊光様じゃないと嫌ですっ!」
佐久間さんは、はぁあっと息を吐き出し、それから長い前髪をかきあげジャケットの内ポケットをまさぐる。それからズボンのポケットにも両手を差し入れたあと、大きく目を回してもう一度息をつく。
「慌てて出てきたので、携帯電話を忘れてきてしまいました。渡辺さんのを…」
「携帯なら…持っていたらどうしても着信が気になってしまうので、家に…置いてきました………」
佐久間さんが両目をぎゅっと、つむって眉間に皺を寄せる。佐久間さんが何かを言いたげに口を開いたとき、その後ろからレジのお兄さんがひょっこりと姿を見せた。
「渡辺さん、えっと大丈夫ですか?なにか、お困り、ですか?」
お兄さんの厚意で、佐久間さんはお店の電話を借りた。電話から戻ってきた佐久間さんは明らかに怒った様子で、私の目の前の席に黙って座った。私もなにも口にすることができずに、じっと唇を噛んでいた。
そして…
「千尋。私が迎えに来なければ、会社には行かないと随分な我が儘を言っているらしいじゃないか」
俊光様は私の目の前までやってくると、私の腕を掴んだ。
「さっさと、会社に行くぞ」
結局土日のどちらも会社に行ってしまい、私は一人で佐久間さんの用意した食事をとった。
俊光様が帰ってきたあとも、休みなく働いている俊光様が一段と疲れているように見えて、こちらから誘うことはできず、この週末は鞭でお仕置きされただけのお泊りになってしまった。
月曜日の朝、いつもは俊光様が起こしに来るまで起きないのに、ふと目が覚めとなりを見たが、もうベッドに俊光様の姿はなかった。私が寝間着のままふらふらと廊下に歩いて出ると、リビングから俊光様と佐久間さんの声が聞こえてきた。
リビングの扉を開けようとして、ふと自分の名前が聞こえてきてその場に固まる。
「俊光様は…いつまで渡辺さんで遊ばれるおつもりですか?」
「遊ぶ、というのはどういう意味だ」
「俊光様が渡辺さんをどう思われているのかは分かりませんが、大勢いる社員ひとりを贔屓するのはどうかと。社内の士気に関わるのではないでしょうか」
俊光様に対しているというのに佐久間さんは、ズバズバといつもの冷静な声で話している。私はそれ以上聞くのがこわくなって、寝室に駆け戻り頭から布団をかぶった。
結局それからもう一度眠ってしまった私を起こしにきた俊光様は、その時は、いつもと変わらないように見えた。
けれど…。
会社に着いた途端、なぜだか急によそよそしく感じる。私の気のせい、かとも思ったが、朝礼のときも、仕事の用事があるときにも、どこか態度が淡々としているような気がした。
私が仕事でミスをしていないから、当たり前なのだが「終業後に社長室に来い」と、言われることもない日が続く。前はお仕置き無しにも、泊まりに誘われていたのに、それもない。
まるで、俊光様の前に並んだ、大勢の中のひとりになってしまったみたいだ。
木曜日のお昼、私は我慢できなくなって、非常階段に通じる扉の前、廊下のはじっこでコータに電話をかけてしまった。会社にいながら、コータに電話したのは初めてだった。
「もしもーし。ちぃちゃーん、こんな時間にどしたの?」
コータにはここ最近、全然会いに行けてなかった。俊光様とのことは、ちょくちょくメールで話していたが、声を聞くのは久しぶりだ。
「コータぁ…」
思わず気が緩んで、涙がでそうになる。
「なになに、どうしたの?だいじょーぶ?社長さんと、喧嘩でもしちゃったの?」
「そ、そういうじゃなくて…っ…な、なんか理由がわかんないのに、なんか…辛くて……っ」
「どうした、どうした」
「もう、どうしたらいいか…わ、私の、勘違いなのかなんなのか…っ」
自分でもよくわからないことをしゃべる私に、コータが優しく相ずちをうつ。
「じゃあさ、アタシが今日の夜、ちぃちゃんが辛い理由を一緒に考えてあげる。今まだ、お昼休憩の時間なんだよね?」
「うん…もう、戻らないと……」
「そうね。ちぃちゃん、あと数時間のファイトよ!頑張って、午後のお仕事乗りきって」
コータに励まされ、私は気持ちを落ち着かせる。夜、コータに会えると考えれば…まだ、頑張れる気がする。
「ありがとう、コータ…」
「いーのいーの。それじゃ、もう切るよ。すぐお仕事、戻りなさいね!」
電話が切れて、ふっと息を吐き出したとき、こちらにやってくる足音が聞こえて、私は慌ててポケットに携帯をしまう。
「もう、昼休憩の時間は終わってるぞ」
足音は俊光様のもので、私は顔をおとし「申し訳ございません」と、つぶやく。
「すぐに秘書室に戻れ」
なにか。なにか、他に言われることを私は期待していた。それでも、俊光様はそれ以上、なにも言わずに去っていく。
私は、一刻も早くコータに会って、洗いざらい話してしまいたい、と思った。
「それが、そのお泊まりの週末から今日までのぜんぶ?」
コータに会った瞬間、私は息をつく間もなく話し続けた。コータは黙って頷きながら聞いていたが、やっと私が口をつぐんだときに、そう口を挟む。
「う、ん…。最初はね、気のせいかなとも思ったけど、でもやっぱりよそよそしい気もするし…現に今日のお昼は…」
「つまりつまり」
コータは私の言葉を、両手をだして遮る。
「ちぃちゃんは、今日のお昼は注意されるだけじゃなくて、社長さんにお仕置きしてもらいたかったってことだよね?」
そう問われ、一瞬否定しかけて、それからどう答えていいかわからなくなって固まる。コータはそんな私のテーブルの上で組んだ手に優しく触れる。
「ちぃちゃんは、痛いのは嫌いなんだよね?」
「うん。痛いのも…は、恥ずかしいのも、嫌」
おなじMでも、痛いのが気持ちいい、といえる人は尊敬する。どんなに経験をしても、慣れなんてものはなく痛いものは痛い。恥ずかしいのは、もっと嫌だった。
「そう、痛いのも、恥ずかしいのも嫌なんだよね。でも、叱られて萌えるのは、なんで?打たれた鞭の跡でぞくぞくするのはなんで?」
「それは…。愛されている、って思うから」
「そう!そうだよね。つまり、ちぃちゃんは、その社長さんに本当に愛されてるか知りたくなった、ってことだよね?そのためには、ちぃちゃんにとってはお仕置きをされないと、ダメなんだよね?」
私は問いただされるままに、ゆっくりと頷く。愛されてるか知りたい、とはなんて贅沢な思いなんだろう。
「それじゃあ、ちぃちゃんが愛されるか確かめる方法は、一つだけよ」
コータは私の耳元へ口を寄せる。
「わざと、社長さんが1番怒るようなことをすればいいの。それで、ちぃちゃんの中で愛が確かめられたら、それでいい。なかったら……そのときは、すっぱり忘れちゃいましょ!」
こんなこと、してはいけない。無断欠勤なんて…秘書の皆にも迷惑をかけるし、午後の来客対応予定のお客様にも失礼だ…。そんな思いもありつつ私はいつものようにスーツに、鞄を持って会社の最寄り駅まではやってきていた。でも、そこには思いきって休んでしまえという自分もいて、自然と足は遅くなる。
どうすればいいのか、踏んぎりがつかなくなったとき、あのコーヒーショップが目に入った。
俊光様に出会う前、毎日のように通っていたコーヒーショップ。私は吸い込まれるように、店の扉を開けた。記憶の中と全く変わっていない店の内装に、ほっと息をつく。そしてレジには、あの若いお兄さんが立っていた。
「いらっしゃいませ。あれ…渡辺さん?」
「え、あ。はぃ…っ」
まさかまだ名前を覚えて貰えてるとは思わず、動揺して口ごもる。お兄さんは爽やかな満面の笑顔を浮かべる。
「えーっと、ブラックコーヒー、テイクアウトでしたよね?」
ずいぶんと記憶力のいい人だ。
「いや。えっと、今日はテイクアウトじゃなくて、店内で…」
「かしこまりました。お会計は、340円になります」
私は千円札をだし、お兄さんにお釣りを手渡される。
「なんか、お久しぶりですね。お元気でしたか?」
「はい。まぁ、大体は」
「大体、ですか」
お兄さんは半分迷いながらも、軽い笑い声をあげる。店内用のトレーに乗ったコーヒーはすぐに出来上がってきてお兄さんは笑うのをやめ「お待たせしました」と、私に手渡したあとまたニッコリ笑顔をつくった。
「また、朝の時間待ってますよ。ぜひ、来てくださいね」
「ありがとう」
前の自分なら飛び上がって喜んだであろうそんな言葉をかけられ、私はトレーを持ちお店の中でなるべく静かなところを探して、窓際の陽の直接当たる席についた。
コーヒーを飲み始めたとき、今日は一度もお兄さんの手の指を見ずにいたことに、気がついた。
私はすっかり冷えきったコーヒーカップのふちを何度も指でなぞる。一人で考えれば考えるほど、また自分の気持ちがよくわからなくなっていった。
私は、私の方は…俊光様のことをどう思っているのだろう。
ただ愛されたいと、それだけを思って、私は俊光様になにを与えられるんだろう。
チリンチリン、とお店の扉の鈴が勢いよく鳴り響いて、思わず顔をあげると、そこには灰色のスーツを来た、佐久間さんの姿があった。
「渡辺、さん…っ!!!!!こんなところで、なにしてるんですか?!」
息を切らした佐久間さんは、足音をたてながら歩み寄ってくると、ぐっと私の腕を掴む。
「自分がなにをしているか分かっているんですか?!こんなところでサボるなんて!!!早く、会社に行きますよ!!」
「い、いやです……っ」
わ、私が手を引っ張られたいのは…。
「渡辺さんっ。こんな状況で、俊光様じゃないと嫌だなんて、言わないでくださいね?」
「嫌です…っ。俊光様じゃないと嫌ですっ!」
佐久間さんは、はぁあっと息を吐き出し、それから長い前髪をかきあげジャケットの内ポケットをまさぐる。それからズボンのポケットにも両手を差し入れたあと、大きく目を回してもう一度息をつく。
「慌てて出てきたので、携帯電話を忘れてきてしまいました。渡辺さんのを…」
「携帯なら…持っていたらどうしても着信が気になってしまうので、家に…置いてきました………」
佐久間さんが両目をぎゅっと、つむって眉間に皺を寄せる。佐久間さんが何かを言いたげに口を開いたとき、その後ろからレジのお兄さんがひょっこりと姿を見せた。
「渡辺さん、えっと大丈夫ですか?なにか、お困り、ですか?」
お兄さんの厚意で、佐久間さんはお店の電話を借りた。電話から戻ってきた佐久間さんは明らかに怒った様子で、私の目の前の席に黙って座った。私もなにも口にすることができずに、じっと唇を噛んでいた。
そして…
「千尋。私が迎えに来なければ、会社には行かないと随分な我が儘を言っているらしいじゃないか」
俊光様は私の目の前までやってくると、私の腕を掴んだ。
「さっさと、会社に行くぞ」
あなたにおすすめの小説
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
ばぶばぶ保育園 連載版
雫@23日更新予定
BL
性癖全開注意で書いていたばぶばぶ保育園を連載で書くことにしました。内容としては子供から大人までが集まるばぶばぶ保育園。この園ではみんなが赤ちゃんになれる不思議な場所。赤ちゃん時代に戻ろう。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー