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第七章 孤独な鳶は月に抱かれて眠る
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カイトが目覚めてから、ユエは片時も側を離れなかった。
アルケーで眠っていた時よりも、ベッドに横たわる今の姿の方がいかにも病人らしく見えて、不安で仕方がなかったからだ。
長期間の仮死状態が続いたことで、カイトの肉体は弱っていた。
一週間経ってもまだベッドから起き上がることさえできず、食事中でも会話の途中でも、うつらうつらと眠ってしまうことも多い。
カイトが目覚めた直後は、『黒い鍵』が上手く機能したのだと安心したけれど、今になってユエの中には不安が舞い戻ってきた。
本当に上手くいったのだろうか……?
これでもう、カイトは大丈夫なの……?
目を閉じているカイトの頬に指を滑らせる。
伝わってくる体温のおかげで何とか落ち着きを取り戻して、無理矢理カイトを揺り起こす事態だけは避けられた。
コンコン、とノックの音がして、クレインが顔をのぞかせた。
「ユエ、あんまり根を詰めると、カイトが元気になる前にユエが倒れちゃうよ」
「……うん」
「妖精たちだって、封印から目覚めた直後はボーッとしてたでしょ。それとおんなじだよ。だから時間が経てば自然と元気になるって」
「うん……わかってる、けど」
それでも頑として動く気配のないユエに、クレインは諦め顔でため息をついて、「わかった、そんなに心配なら、ユエもそこで一緒に寝ちゃいなよ」
「え、でも……」
「カイトは文句言わないでしょ。ベッドも広いし、ユエひとりくらいジャマにはならないし」
カイトをゆっくり寝かせてあげたいとこれまでは遠慮していたユエも、クレインから提案されたのをいいことにいそいそとカイトの隣に潜り込むことにした。
ベレン卿の館の無駄に大きなベッドは、それでもまだ大きな余白がある。
「見舞客には待ってもらうから、ゆっくり眠りなよ」
クレインが気を利かせてくれて、しばらくこの部屋を訪ねてくる人はいなさそうだ。
カイトの静かな寝息だけを聞きながら、ユエは久しぶりに──本当に、本当に久しぶりに、カイトの体温に包まれて眠った。
アルケー越しの冷たい感触ではなく、どくん、どくんと脈打つからだに直接触れていると、泣きたいほど幸せで──意識を手放した後に本当につつ……と涙が一筋頬を伝ったことを、ユエ本人は知らない。
***
その涙を見つけたのは、カイトだった。
寄り添って赤ん坊のように無防備に眠る姿を微笑ましく思ったすぐ後、頬に涙の跡が残っていることに気づき、いじらしさにたまらなくなる。
ゴシゴシと指の腹で跡を消していると、ユエは「んん……」とうなってから、寝ながらにしてわずかに口角を上げる。どうやら、見ている夢はそう悪いものではないらしい。
ユエの腰を抱き寄せようと、カイトは腕にぐっと力を入れたが、そんなささいな動きにすら筋肉はギシギシと軋む。
これはカイトにとっても初めての感覚だった。
衰弱しているとか、筋肉が衰えているとか、そんな簡単なことではない。
『仮死状態』という言葉通り、カイトの肉体と魂はほとんど離れてしまっていたのかもしれない。そして再びひとつになったはいいけれど、まだ肉体に魂が馴染んでいないような、そんな違和感がある。
筋肉痛に似ているけれど、それよりも鈍い痛みが全身を襲い、腕を動かすこともやっと──いや、それどころか、多量の血液を失った時のようなめまいと倦怠感によって、意識を保つことも難しいような状態が続いていた。
そのため当然ながら、目覚めてから一週間、ユエとの触れ合いは軽い口づけと抱擁のみ。
これは自分よりもユエの方が辛いだろうと、カイトは眠るユエの髪を撫でる手に詫びる気持ちを乗せる。
腰まで伸びた蒼い髪は、二人が離れていた時間の長さを象徴している。
体感的には一瞬だったカイトとは違い、ユエは触れ合えなかった時間を一日、一日と数えてきたはず。性的快感を覚えたばかりの若いユエにとって、それは肉体的にも辛かったことだろう。
それなのに、やっと抱き合えるかと思いきや、また『待て』だ。
現状はもしかしたら、封印の最中よりも辛いものかもしれない。最高に飢えていたところに大好物を見せびらかされて、それでも食べてはいけないなんて。
カイトは一日も早く体調を戻すことを、改めて決意した。
少しでも早く、ユエを思いっきり甘やかしてやるために。
******
さらに一週間経って、カイトはようやくからだを起こせるようになった。
まだベッドからは立ち上がれないが、指や腕には力が戻ってきて、自力で食器やスプーンが持てるようになっている。
今まで手ずから食べさせてくれていたユエに、カイトは「面倒かけたな」と申し訳なさそうだったけれど、ユエの本音はむしろ(カイトに「あーん」ってするの、けっこう楽しかったんだけど……)というもの。
けれど、握力を確かめるように拳をグッパーするカイトには、その本音は黙っておくことにした。
一日中眠っているようなこともなくなって、朝と夜の区分も戻ってきた。
ユエの寝る場所は相変わらずカイトの隣だったが、一瞬たりとも目を離さないというような切迫感は薄れている。
カイトはちゃんと良くなっている、という実感が湧いてきたからだ。
時々、仲間たちが様子を見に来る以外は、昼間も二人きりで過ごす日々が続いた。
ベッドに上半身を起こしたカイトの横に、ユエも同じように座って、離れていた間の出来事を語る。話すのはほとんどユエで、カイトは相槌の代わりにユエの髪や手を撫でたり、肩をぎゅっと抱き寄せたり、口づけをくれたりして、優しい顔で聞いていた。
***
その日の午後になって、覚醒後初めてカイトがお風呂に入ることになった。
それまでは温めたタオルでユエがからだを拭くだけだったのだが、そろそろいいだろうという許可が医者から下りたのだ。
できるならユエが支えて浴場まで連れて行ってあげたかったけれど、ここはフェザントに任せることにする。
ほとんど抱え上げられるようにしてカイトは運ばれ、同じ建物内の大浴場に着いただけで息が切れている。
予定では服を脱がせるところからはユエの仕事だったのだけれど、脱衣所から浴室までの数歩でさえ、ユエだけではとても支えて歩けそうにない。
結局、ユエがカイトの服を脱がせるまで、フェザントは気まずそうに目を逸らして待つことになり、浴室のイスにカイトを座らせた後、「出る時にまた呼んでくれ」と言い置いてそそくさと出て行った。
「……自分のからだがままならないというのは、なんというか……歯痒いな」
周りに面倒をかけて悪いという気持ちと、自分自身への苛立ちもあってか、カイトの声は沈んでいる。
ユエはもちろんのこと、きっと仲間たちも面倒などとは思っていないだろうけれど、カイトもそれをわかった上で、それでも思わずこぼれた愚痴という気がした。
だからユエは言葉での慰めはやめて、行動に出る。
介助役のつもりでユエは服を着たままだったのだが、それを脱いでしまって一緒に裸になると、ふわりと背中からカイトに抱きつく。
これで、介助という立場ではなく、恋人としてただ一緒にお風呂に入るという意思を示したつもりだ。
「おれが洗ってあげるから、カイトは動かないで」
たっぷり泡立てた石けんを、いつもより重く湿っている黒髪へと乗せる。
カイトは最初くすぐったそうにからだをよじったが、わしゃわしゃと指を立てて洗い始めると、気持ちよさそうに目を閉じて委ねてくる。
髪の次は、手で広い背中へ泡を塗り広げ、それから肩から腕にかけてを筋肉をほぐすように念入りに洗う。
そこにある、たくさんの傷痕──そのひとつひとつをユエは鮮明に覚えている。
突発的に、ユエは発情した。
ずくん、と下腹に集まる熱に、戸惑うよりも陶酔する。
当たり前だと思ったのだ。いや、むしろ──誇らしくすら思った。だってこの反応は、カイトに対する愛情の証明だ。
ユエは負ぶさるようにして、カイトの背中に自分の胸を擦りつける。芯を持った乳首が擦れて「ん……」と声が出た。
「ユエ?」泡が目に入らないようにと、カイトは目をつむったままだ。
ユエは今度はもっとあからさまに、腰を擦りつける。ゆるく勃ち上がったものを、知らしめるように。
「……泡、洗い流してくれ」
察したカイトがそう頼んだが、ユエは「……まだ、だめ。まだぜんぶ洗えてないもの」と、前に回した手で割れた腹筋に泡を塗りたくる。
けれどそれは、洗うという目的からはどう見ても外れた手つき。
太もも、脛、足の指の間──そこまではカイトも耐えたが、艶かしい手つきで下生えをかき分けられたところで、「ユエ……!」勘弁してくれと音を上げる。
ユエも今度は聞き分けて、湯船からすくったお湯で頭から泡を洗い流した。
視界が戻ったカイトの目に飛び込んできたものは──脚の間にうずくまったユエが陰茎に頬擦りする姿。
その光景に、ぐぐっと一気に芯を持ったそれがユエの頬を弾く。
「あっ……」
暴れた屹立をユエは大事そうに両手で挟んで抱え込み、硬度を確かめるように唇の表面に当てる。
ちゅ、と先端を吸い上げ、ちろ、と舌で割れ目をなぞる。そのまま上目遣いで見上げると、口を半開きにしたカイトと目が合った。
カイトはギシギシと聞こえてきそうなぎこちない動きで手を伸ばすと、湿気で重くなった長い髪をゆっくり撫でてくれる。
それで精一杯なカイトに、記憶の中のような器用な手淫を望めないことはわかるから、ユエは自分で自分をもっと昂らせるべく、意識して匂いを鼻の奥へと取り込む。
濃く煮詰まったカイトの匂いは鼻から頭へと直通し、痺れにも似た興奮が脳から全身へと広がっていく。
じわ、と目尻に涙が溜まり、だらしなく開いた口許からとろりと唾液が零れ落ちたことについては自覚があったけれど、ぴゅく、と押し出された体液については「ユエ、」とカイトに指摘されるまで気づかなかった。
「あ……すこし、でちゃったみたい」
「触ってないのに、な」
「う、ん……カイトの匂いだけで、すごくいっぱいになっちゃって」
「悪いな、ユエ。ちゃんと触ってやりたいが……」
謝罪の言葉は聞きたくないと、ユエはキスで口を塞ぐ。
それからカイトの片膝に腰かけて、「おれが触るから、いいよ」と言ってカイトのものに手を伸ばしたが、やんわり止められてしまう。
「どうして、カイト──」「せっかくなら一緒にイきたい」「でも……」「まだ挿入は無理だが、だからと言ってなにもできないわけじゃない」
意味深に微笑んだカイトは、だから早く風呂を出ようと急かす。
ユエが先走ってここで始めてしまったけれど、カイトも湯浴みをした後にそろそろ、と算段をつけていたのだ。
それからはユエもカイトも本来の目的に集中できたが、いざ出る時になって、中途半端に煽って煽られたからだをどうやってフェザントに隠すか、という難題が待ち受けていたのだった。
***
何とか鎮めた昂りは部屋に二人きりになると一気に再燃して、着たばかりの服をすぐに脱ぎ捨てる。
「カイト……カイト……っ」
遮二無二に覆いかぶさってきたユエは、長いキスではカイトが息切れしてしまうことに気づいて、息継ぎの時間を確保するために短いキスに切り替える。
けれど短くなった分、繰り返し、繰り返し──何度も角度を変えるから、何度も鼻がぶつかった。
カイトは広いベッドにたくさんのクッションを置いて、それを背もたれにして上半身を起こしている。
「ユエ、そのまま俺のに擦りつけてみろ」
上にまたがったユエはそう言われて、ぎこちなく腰をくん、と前後させる。
もう、とろとろと蜜を溢れさせているユエのモノと、反り上がったカイトのモノが触れるけれど、体重をかけないように気を使ったユエの動きでは大きな刺激にならない。
「もっと体重かけていいぞ」
「え、でも」
「大丈夫だから」
今度はもう少し強く、ぐりっと擦れる。「んっ」次はもっと強く、ごりっと。「んんっ!」
互いの下生えが絡み合う頃にはユエの動きもこなれてきて、腰を回してみたり、かくかくと細かく動いたと思いきや、ぐっぐっと押しつけたり、長さを確かめるように大きく動いて──カイトのモノがユエの双丘の狭間を通り道のようにすり抜ける。
「っ……!」
ユエは切なそうに眉根を寄せた。繋がれる場所があるのに、今はすれ違うことしかできない。
「ユエ、そのままそこで……挟むようにして腰を動かせ。で、手はこっち──」
カイトはユエの手を取って陰茎へと導くと、自慰を促した。
ユエは両方の要求を従順に受け入れ、自分とカイト双方を同時に高めていく。
「んっ、んンぅ……っ」
「うまくできそうか?」
「うー……わかんない」
ユエの手の動きは愚直で、技巧も何もあったものではない。
カイトは手助けするべく、親指をぐりっと亀頭に押しつける。と、同時に、反対の手を目一杯広げて両方の乳首をぐにっと押しつぶした。
「あっん……!」
ユエは天を仰ぐようにして達する。
「あ、あ……あァ……」
噛み締めるように絶頂から降りてくると、へたりと力を失ってカイトの上にのしかかった。
「っと、ユエ?大丈夫か」
「……ふ、ぅんん、へいき」
返事は舌足らずで、瞳は潤み、表情は恍惚として、まだ小さく腰を震わせて──少し感じ過ぎなんじゃないかと、カイトは心配になる。
それと、さっきのユエのおぼつかない手の動きも相まって、カイトは下世話な想像をしてしまう。
「もしかしてユエ、お前、俺が眠っている間……ひとりでうまくできなかったんじゃないか」
もちろんカイトの頭の中に、ユエが浮気をした──という可能性は微塵もないから、その間ユエは自ら慰めていたはず、という前提で話をしている。
けれどもともと性に奥手だった上に、わりとすぐにカイトと(肉体的に)結ばれたため、ユエはほとんど自慰の経験がない。
しまったな、とカイトは反省する。
封印の前に、ユエにやり方を教えておくべきだった、と。
ところが、ユエは想像の上を行く。
「……ひとりでって、どういう意味?」
「だから、自慰を……自分でここを触ったけど、うまく出せなかったんじゃないか?そうだったなら、からだ、辛かっただろう」
「……ひとりでなんて、してない」
「……は?」
ぽかんと口を開けたカイトに、ユエは不満そうにもう一度「しないよ。なんでカイトがいないのに、ひとりでしなきゃいけないの」
さも当然のように言われて、カイトは混乱する。数日や数週間ならともかく、年単位でそれはあり得るのか、と。
「……一度もしてない、のか?」
「してないってば」
「じゃあ、ずっと夢精で……?」
「むせい……ってなに?」
「いや、だから、朝起きた時に……」
ユエは説明を聞く前に、さっさと種明かしする。
「だってなるべくずっと、人魚の姿でいるようにしたから」
「人魚の……?っ、そうか、なるほど、そんな手が」
すぐに理解したカイトは、それならあり得ると納得する。
純血の人魚──すなわち性を持たない無性の姿でいたことで、性的な衝動は抑えられたのだ。
「中と外の人魚の仲裁に駆り出されてたってこともあるけど……」当時を思い出したのか、ユエの眉が下がる。「海で泳いでたら、少しだけ……寂しさを紛らわすことができたから」
そう聞くと、人魚化の目的は精神的な慰めで、肉体的な効果は結果論だったのかもしれない。
「ユエ……」
カイトは方針を改める。
今日は自分のことよりも、ユエの欲求不満解消を優先するつもりだったけれど、肉体的だけでなく精神的にも充すためにはそれでは足りない。
きっとユエは、自分だけが気持ちよくても嬉しくないだろう。繋がれないからこそ、一緒に──。
「ユエ、今度は俺も……」
風呂場の続きを、と唇を撫でたカイトに、ユエは場違いなほどのキラキラした笑顔を見せる。カイトの方針転換は間違っていなかったようだ。
けれどせっかくだから一緒にとカイトが提案した体位には、さすがのユエも「う……ちょっと、恥ずかしいんだけど」と及び腰になる。
陰茎だけでなく後ろの蕾までカイトの目の前にさらすという羞恥ももちろんのこと、他人の顔をまたぐことは行儀が悪いという認識があるからだろう。
「これなら一緒にできるし、俺も寝転がっていればいいから楽なんだが」
そうカイトに言われてもまだユエは躊躇している。
待ち切れなくなったカイトは、少し強引にユエの腰を下げさせて、「えっ、待って……!」の声も聞かず咥えてしまう。
カイトが先陣を切ったことで、ユエもおずおずと唇を寄せていく。
ユエはまったく意図していなかっただろうが、さっきの告白はカイトを浮かれさせるに十分な爆弾だった。
下手したらユエは、自慰どころか射精すらほとんどしていなかったのかもしれない。
カイト以外は自分の手でも嫌だと、疼くからだを誤魔化し誤魔化し、ずっとこの日を待っていたのだ。
そこまで待ち望まれて、張り切らない男はいないだろう。
口淫にも熱が入る。
つられて、ユエも大胆になっていく。
カイトはもっと感じさせてやりたいという気持ちが強くなって、とうとう──「ぅ、やっ……カイト、そんなとこ……っ」後ろの蕾にまでキスをされて、ユエから驚きと羞恥が入り混じった声が上がる。
止めようと伸びてきた手を無視して舌を這わせると、ひくついたところを中まで侵入する。
「やっ……だ!カイト、やだ、しないで……っ」
泣き声寸前の懇願に返すのは、「ここ、閉じてるな」という妙に冷静な状況判断。
「ぅ、え?」
「前も触ってないお前が、ここを自分で触るはずもないか。当たり前だな」
「え、え?」
「最初の時みたいに、固く、閉じてる」
身を守るようにきつく窄まるそこを、ふやけさせて、解さなければ、という思考回路に操られて、カイトはまた舌を伸ばす。
そのうち、「やだ」「やだ」言っていたユエも「あァ……っ」「あ、っんん……!」と喘ぎに変わる。
「っ……!!っ!」
最後は後ろを指でかき混ぜられながら喉で締められて、ユエは声も出せずに絶頂した。
ほとんど同時にカイトも達する。ユエは精液を口と顔に受けてまた小さく達し、口の中のモノを飲んで、また──終わりなどないかのように、何度も。
ようやく戻ってきた時には、イキ疲れてぐったりしているような有様だった。
「……こんな、の……ど、しよう……」
「ユエ?」
「いまので、こんなにきもちいのに、カイトのがはいったら……」
ユエの表情は不安と期待が半々で揺れている。
一方のカイトは至極真面目に考えて、答える。
「……ずっと快楽を遠ざけていたから、からだがびっくりしたんだろう。敏感になり過ぎているな」
「んん、そう、なの?」
「俺もだが、ユエにも慣らしが必要だな。ほら──」
「ひっ……んん!」カイトの指が背中を掠めただけで、ユエは背筋を反らす。まるで禁断症状だ。禁じられた後にいきなり多量に与えられた肉体は、快楽を毒のように感じているのかもしれない。
これは毒ではなく『いいもの』だと思い出してもらうには、少量ずつ時間をかけて与えて、慣らしていくことだ。
「ちょうどいいから、一緒に慣らしていこうか。俺が全快する頃に、ちょうどユエのからだの準備も整うように」
******
その宣言通りカイトは、時間をかけてユエのからだに快楽を思い出させていった。
手を握るだけから始めて、服を着たままの抱擁、触れ合うだけのキス、舌を絡めるキスをするまでに一ヶ月かけた。
そんなスロウ調整でまどろっこしいとか、焦れったいとなるかと思いきや、意外とそんなこともなく。
色々すっ飛ばしてカラダの関係を持ってしまった二人にとって、こうして段階を踏んでいくことは思いのほか新鮮だったのだ。まるで思春期の付き合いたてのような甘酸っぱい気持ちになる。
双方のからだに負担をかけないためということが最大の目的であったが、ユエを待たせて悪い、というカイトの罪悪感も薄れさせる効果があった。
おかげで二人は、楽しみという気持ちだけを持ってその日を迎えることができた。
******
「あっ……あ、あ……」
ユエのからだはとても自然にカイトを受け入れる。
過剰に反応して訳がわからなくなることもなく、かと言って刺激がぬるいということもない。
正常位で繋がって、二人は満たされた表情で見つめ合う。
余計な言葉はいらない。軽いキスで呼吸を整えた後、カイトが抽送を開始する。
ゆっくりと抜けていく感覚、道をかき分けて入ってくる感覚。絡みついて、引き留めて、惜しむ。けれどすぐに、空白を埋めるように充ちる。
カイトは欲しいところにきてくれる。そしてユエも好きなだけ欲しがれる。
「あ、あっ、あっ……」
ああ、これだ──ユエはからだの内側を濡らされる感覚に、うっとりする。これが、欲しかった。
間髪入れずに、二回目が始まる。
今度は座位。上になったユエが走り出そうとするのを、カイトがその度になだめる。呼吸を合わせて、抽送を合わせると、一番奥までカイトが届いた。
さっき出されたものがかき混ぜられる音がする。二人の交点に溜まった液体が、ユエのものなのかカイトのものなのかわからないほど。
キスに溺れながら、再びの絶頂。
はぁ、はぁ、はぁ、という呼吸音が二重奏する。
むわっと立ち込めるのは二人分の濃厚な芳香。吸い込むと鼻の奥が重たくなる。
ユエを大事にベッドに預けて、カイトは全身の汗を舐めとる勢いで舌を這わせていく。もちろん、まだ繋がったままだ。
されるがまま、ユエは脚を広げたり、腕を上げたり、腰をひねったり。広げた舌全体で脇を味われ、足の指の間にまでねじ込まれる。
そして愛撫と並行して、カイトはユエをうつ伏せになるように導いていく。もちろん、繋がったまま。
後背位になって、ユエの背中にカイトの重みがのしかかる。背中や肩に好き勝手張りついていた長い髪を、カイトの手がひとつにまとめて前へと垂らすと、汗びっしょりの肌はぺたりとくっつき、境目がなくなる。
ひとつになっている、という実感が、ユエを悦びで満たしていく。
ぐりぐり、と押し込むような動きで、カイトが繋がりを深くする。もう、奥まで届いているのに、もっと先を目指すかのよう。
怖い、とユエは思った。貪欲な自分の後ろが、カイトを丸ごと全部飲み込んでしまいそうなのが、怖い。
そんなおかしな想像が伝わったからではないだろうが、カイトはふっ、と力を抜いた。
それで油断したところを──「うっ……あァっ!!」ガツンと突き上げられる。
カイトはユエの腰を引き上げて自分が一番動きやすい体勢を取らせると、腰を打ちつけるようにして叩き込んでくる。
パン!パン!と肌と肌がぶつかる音と、ぐちゅ、ぶちゅ、と粘液が空気を含む音、それからユエの声にならない声が三重奏。
またおかしな想像が──カイトがお腹を突き破って出てくるんじゃないか、とからだがこわばる。
こわばりはすぐカイトに伝わって、ピタリと動きが止まる。
「……わるい、乱暴にしたな」
労るようにお腹を撫でられて、緊張は解けていく。
「ううん、いいの。なんかね、変なこと──おなかが破れちゃうんじゃないか、なんて変なこと考えちゃって……」
首をひねって後ろを向いたユエは、こんな切迫した状況に似つかわしくないポカンとしたカイトと目が合う。
「やぶ……れるって、どうやって」
「カイトのがかたくておおきいから、おれのおなかなんて、突き破っちゃうような気がして……」
「そんなバカなことあるわけない」──とカイトは笑い飛ばすことなく、「大丈夫だ。ヒトの腹はそう簡単に破れない」と不自然なほど真面目に答える。
「うん、おれもわかってるけど……こんなに強いの、はじめてだから……」
「……怖かったか?」
「こわかった……けど──」言葉と一緒に漏れる吐息は熱くて、甘い。けれどユエ本人にその自覚はなく、くいっと続きを誘った腰でカイトを煽ったことにも気づかずに、決定打を押してしまう。
「きもちよかっ──あァんっ!!」
言い終わる前に、脳まで揺らぐような衝撃が襲う。
ユエの腰を思いっきり引き寄せると同時に、カイトが自分の腰を思いっきり打ちつけたのだ。
「やっん!あっ、んぅぅ……っひっ……あっ!」
二度、三度と続き、あまりの烈しさに息が詰まったユエは、空気を求めて口が開く。それを待っていたように唇が寄せられて、カイトは無慈悲にそこへと居座った。
「んンっ、んぅ、んっんっんー……っ」
苦しくて、最初は絡まってくる舌を跳ね除けようとしていたはずなのに、いつの間にかそれこそが命綱のように、ユエの方からカイトの舌を追いかけている。
首をひねった体勢でのキスは、いつものように上手く噛み合わない。だから目いっぱい舌を伸ばしているのに、捕まえたと思ったら、「く、ぅぅ……ン!」抽送の振動で離れてしまう。
今もしカイトの支えを失ったら、ユエはへなへなと崩れ落ちてしまうだろう。体勢を保つとか、太ももが限界とか、首が痛いとか、そんなことを忘れてしまうほどに、悦楽に耽溺しているのだ。
「はっ、んむぅ……」カイトの頭を手で無理やり引き寄せて、唇同士が外れないように固定する。するとユエの後頭部も、カイトの大きな手でがっちり捕まえられる。指が髪に絡まって引っ張られたけれど、ちっとも痛みは感じない。
二箇所で隙間なく繋がった二人は、まるでそれでひとつの生き物のように感覚や感情を全て共有しているかの錯覚に陥った。
ユエが『今』と思った瞬間に、カイトが寸分違わず届き──二人同時に絶頂に至る。
ユエは薄れゆく意識の中で、またおかしな想像をする。
──こんなにたくさん出されたら、お腹が破裂しちゃうかも。
さっきと同じような想像。
けれどさっきとは違い、少しも怖くは思わない。
小さな痛みも、苦しさも、そして怖い想像さえ、カイトというフィルターを通せば、全て快楽に変えられると教えられたから。
***
満ち足りた顔で眠るユエを起こさないよう、カイトはそっと後始末に取り掛かる。
中に出した自分のものを掻き出していると「ンんぅ」とユエが身じろぎして、はらっと髪がシーツに広がった。
真っ白なシーツに、眩しいばかりの蒼。
──「カイトが眠ってる間、おれ、絶対に髪切らないからね。伸ばし続けるんだ。それで、カイトが起きたら、カイトに切ってもらう」
封印前に掛けた願いは、無事に叶えられた。
カイトは指に絡めた髪に口づけて、感謝の意を示す。
「……待たせたな」
そろそろハサミを持っても危なくはないだろう、と思いつつも、もうしばらくの間、髪の長いユエを堪能したいという欲も無視できない。
優柔不断な自分を笑い、カイトは(まあ、いい。ユエに決めてもらおう)と丸投げする。
(どうせ、これから先はずっと一緒なんだから、長い髪のユエが見たくなったらまた伸ばしてもらえばいいさ)
有限な時間を、ユエとどう楽しみ尽くそうか──今までカイトは、未来を想像することがこんなに楽しいことだとは知らなかった。
それを教えてくれた存在に、感謝を込めてもう一度キスを。
「ユエ、ありがとうな」
「んー……ううん」
ちょうどいいタイミングで放たれたユエの寝言がまるで返事のようで、カイトは思わず「ははっ」と笑ってしまう。
「ユエ、聞こえてるのか?」
「んー……」
「ユエ?」
「うーん……」
「……愛してる、ユエ」
舌の上でとろけるように甘くささやくと、「んフ」ユエの寝顔はフニャリとほころぶ。
それを見ているうちに、自分の頬もゆるゆると緩んでいることに気づいたカイトは、(ああ……幸せだな)と思う。
カイトにとっての『幸福』は、金でも名誉でも地位でも不死の肉体でもなく──ユエの寝顔なのだ。
アルケーで眠っていた時よりも、ベッドに横たわる今の姿の方がいかにも病人らしく見えて、不安で仕方がなかったからだ。
長期間の仮死状態が続いたことで、カイトの肉体は弱っていた。
一週間経ってもまだベッドから起き上がることさえできず、食事中でも会話の途中でも、うつらうつらと眠ってしまうことも多い。
カイトが目覚めた直後は、『黒い鍵』が上手く機能したのだと安心したけれど、今になってユエの中には不安が舞い戻ってきた。
本当に上手くいったのだろうか……?
これでもう、カイトは大丈夫なの……?
目を閉じているカイトの頬に指を滑らせる。
伝わってくる体温のおかげで何とか落ち着きを取り戻して、無理矢理カイトを揺り起こす事態だけは避けられた。
コンコン、とノックの音がして、クレインが顔をのぞかせた。
「ユエ、あんまり根を詰めると、カイトが元気になる前にユエが倒れちゃうよ」
「……うん」
「妖精たちだって、封印から目覚めた直後はボーッとしてたでしょ。それとおんなじだよ。だから時間が経てば自然と元気になるって」
「うん……わかってる、けど」
それでも頑として動く気配のないユエに、クレインは諦め顔でため息をついて、「わかった、そんなに心配なら、ユエもそこで一緒に寝ちゃいなよ」
「え、でも……」
「カイトは文句言わないでしょ。ベッドも広いし、ユエひとりくらいジャマにはならないし」
カイトをゆっくり寝かせてあげたいとこれまでは遠慮していたユエも、クレインから提案されたのをいいことにいそいそとカイトの隣に潜り込むことにした。
ベレン卿の館の無駄に大きなベッドは、それでもまだ大きな余白がある。
「見舞客には待ってもらうから、ゆっくり眠りなよ」
クレインが気を利かせてくれて、しばらくこの部屋を訪ねてくる人はいなさそうだ。
カイトの静かな寝息だけを聞きながら、ユエは久しぶりに──本当に、本当に久しぶりに、カイトの体温に包まれて眠った。
アルケー越しの冷たい感触ではなく、どくん、どくんと脈打つからだに直接触れていると、泣きたいほど幸せで──意識を手放した後に本当につつ……と涙が一筋頬を伝ったことを、ユエ本人は知らない。
***
その涙を見つけたのは、カイトだった。
寄り添って赤ん坊のように無防備に眠る姿を微笑ましく思ったすぐ後、頬に涙の跡が残っていることに気づき、いじらしさにたまらなくなる。
ゴシゴシと指の腹で跡を消していると、ユエは「んん……」とうなってから、寝ながらにしてわずかに口角を上げる。どうやら、見ている夢はそう悪いものではないらしい。
ユエの腰を抱き寄せようと、カイトは腕にぐっと力を入れたが、そんなささいな動きにすら筋肉はギシギシと軋む。
これはカイトにとっても初めての感覚だった。
衰弱しているとか、筋肉が衰えているとか、そんな簡単なことではない。
『仮死状態』という言葉通り、カイトの肉体と魂はほとんど離れてしまっていたのかもしれない。そして再びひとつになったはいいけれど、まだ肉体に魂が馴染んでいないような、そんな違和感がある。
筋肉痛に似ているけれど、それよりも鈍い痛みが全身を襲い、腕を動かすこともやっと──いや、それどころか、多量の血液を失った時のようなめまいと倦怠感によって、意識を保つことも難しいような状態が続いていた。
そのため当然ながら、目覚めてから一週間、ユエとの触れ合いは軽い口づけと抱擁のみ。
これは自分よりもユエの方が辛いだろうと、カイトは眠るユエの髪を撫でる手に詫びる気持ちを乗せる。
腰まで伸びた蒼い髪は、二人が離れていた時間の長さを象徴している。
体感的には一瞬だったカイトとは違い、ユエは触れ合えなかった時間を一日、一日と数えてきたはず。性的快感を覚えたばかりの若いユエにとって、それは肉体的にも辛かったことだろう。
それなのに、やっと抱き合えるかと思いきや、また『待て』だ。
現状はもしかしたら、封印の最中よりも辛いものかもしれない。最高に飢えていたところに大好物を見せびらかされて、それでも食べてはいけないなんて。
カイトは一日も早く体調を戻すことを、改めて決意した。
少しでも早く、ユエを思いっきり甘やかしてやるために。
******
さらに一週間経って、カイトはようやくからだを起こせるようになった。
まだベッドからは立ち上がれないが、指や腕には力が戻ってきて、自力で食器やスプーンが持てるようになっている。
今まで手ずから食べさせてくれていたユエに、カイトは「面倒かけたな」と申し訳なさそうだったけれど、ユエの本音はむしろ(カイトに「あーん」ってするの、けっこう楽しかったんだけど……)というもの。
けれど、握力を確かめるように拳をグッパーするカイトには、その本音は黙っておくことにした。
一日中眠っているようなこともなくなって、朝と夜の区分も戻ってきた。
ユエの寝る場所は相変わらずカイトの隣だったが、一瞬たりとも目を離さないというような切迫感は薄れている。
カイトはちゃんと良くなっている、という実感が湧いてきたからだ。
時々、仲間たちが様子を見に来る以外は、昼間も二人きりで過ごす日々が続いた。
ベッドに上半身を起こしたカイトの横に、ユエも同じように座って、離れていた間の出来事を語る。話すのはほとんどユエで、カイトは相槌の代わりにユエの髪や手を撫でたり、肩をぎゅっと抱き寄せたり、口づけをくれたりして、優しい顔で聞いていた。
***
その日の午後になって、覚醒後初めてカイトがお風呂に入ることになった。
それまでは温めたタオルでユエがからだを拭くだけだったのだが、そろそろいいだろうという許可が医者から下りたのだ。
できるならユエが支えて浴場まで連れて行ってあげたかったけれど、ここはフェザントに任せることにする。
ほとんど抱え上げられるようにしてカイトは運ばれ、同じ建物内の大浴場に着いただけで息が切れている。
予定では服を脱がせるところからはユエの仕事だったのだけれど、脱衣所から浴室までの数歩でさえ、ユエだけではとても支えて歩けそうにない。
結局、ユエがカイトの服を脱がせるまで、フェザントは気まずそうに目を逸らして待つことになり、浴室のイスにカイトを座らせた後、「出る時にまた呼んでくれ」と言い置いてそそくさと出て行った。
「……自分のからだがままならないというのは、なんというか……歯痒いな」
周りに面倒をかけて悪いという気持ちと、自分自身への苛立ちもあってか、カイトの声は沈んでいる。
ユエはもちろんのこと、きっと仲間たちも面倒などとは思っていないだろうけれど、カイトもそれをわかった上で、それでも思わずこぼれた愚痴という気がした。
だからユエは言葉での慰めはやめて、行動に出る。
介助役のつもりでユエは服を着たままだったのだが、それを脱いでしまって一緒に裸になると、ふわりと背中からカイトに抱きつく。
これで、介助という立場ではなく、恋人としてただ一緒にお風呂に入るという意思を示したつもりだ。
「おれが洗ってあげるから、カイトは動かないで」
たっぷり泡立てた石けんを、いつもより重く湿っている黒髪へと乗せる。
カイトは最初くすぐったそうにからだをよじったが、わしゃわしゃと指を立てて洗い始めると、気持ちよさそうに目を閉じて委ねてくる。
髪の次は、手で広い背中へ泡を塗り広げ、それから肩から腕にかけてを筋肉をほぐすように念入りに洗う。
そこにある、たくさんの傷痕──そのひとつひとつをユエは鮮明に覚えている。
突発的に、ユエは発情した。
ずくん、と下腹に集まる熱に、戸惑うよりも陶酔する。
当たり前だと思ったのだ。いや、むしろ──誇らしくすら思った。だってこの反応は、カイトに対する愛情の証明だ。
ユエは負ぶさるようにして、カイトの背中に自分の胸を擦りつける。芯を持った乳首が擦れて「ん……」と声が出た。
「ユエ?」泡が目に入らないようにと、カイトは目をつむったままだ。
ユエは今度はもっとあからさまに、腰を擦りつける。ゆるく勃ち上がったものを、知らしめるように。
「……泡、洗い流してくれ」
察したカイトがそう頼んだが、ユエは「……まだ、だめ。まだぜんぶ洗えてないもの」と、前に回した手で割れた腹筋に泡を塗りたくる。
けれどそれは、洗うという目的からはどう見ても外れた手つき。
太もも、脛、足の指の間──そこまではカイトも耐えたが、艶かしい手つきで下生えをかき分けられたところで、「ユエ……!」勘弁してくれと音を上げる。
ユエも今度は聞き分けて、湯船からすくったお湯で頭から泡を洗い流した。
視界が戻ったカイトの目に飛び込んできたものは──脚の間にうずくまったユエが陰茎に頬擦りする姿。
その光景に、ぐぐっと一気に芯を持ったそれがユエの頬を弾く。
「あっ……」
暴れた屹立をユエは大事そうに両手で挟んで抱え込み、硬度を確かめるように唇の表面に当てる。
ちゅ、と先端を吸い上げ、ちろ、と舌で割れ目をなぞる。そのまま上目遣いで見上げると、口を半開きにしたカイトと目が合った。
カイトはギシギシと聞こえてきそうなぎこちない動きで手を伸ばすと、湿気で重くなった長い髪をゆっくり撫でてくれる。
それで精一杯なカイトに、記憶の中のような器用な手淫を望めないことはわかるから、ユエは自分で自分をもっと昂らせるべく、意識して匂いを鼻の奥へと取り込む。
濃く煮詰まったカイトの匂いは鼻から頭へと直通し、痺れにも似た興奮が脳から全身へと広がっていく。
じわ、と目尻に涙が溜まり、だらしなく開いた口許からとろりと唾液が零れ落ちたことについては自覚があったけれど、ぴゅく、と押し出された体液については「ユエ、」とカイトに指摘されるまで気づかなかった。
「あ……すこし、でちゃったみたい」
「触ってないのに、な」
「う、ん……カイトの匂いだけで、すごくいっぱいになっちゃって」
「悪いな、ユエ。ちゃんと触ってやりたいが……」
謝罪の言葉は聞きたくないと、ユエはキスで口を塞ぐ。
それからカイトの片膝に腰かけて、「おれが触るから、いいよ」と言ってカイトのものに手を伸ばしたが、やんわり止められてしまう。
「どうして、カイト──」「せっかくなら一緒にイきたい」「でも……」「まだ挿入は無理だが、だからと言ってなにもできないわけじゃない」
意味深に微笑んだカイトは、だから早く風呂を出ようと急かす。
ユエが先走ってここで始めてしまったけれど、カイトも湯浴みをした後にそろそろ、と算段をつけていたのだ。
それからはユエもカイトも本来の目的に集中できたが、いざ出る時になって、中途半端に煽って煽られたからだをどうやってフェザントに隠すか、という難題が待ち受けていたのだった。
***
何とか鎮めた昂りは部屋に二人きりになると一気に再燃して、着たばかりの服をすぐに脱ぎ捨てる。
「カイト……カイト……っ」
遮二無二に覆いかぶさってきたユエは、長いキスではカイトが息切れしてしまうことに気づいて、息継ぎの時間を確保するために短いキスに切り替える。
けれど短くなった分、繰り返し、繰り返し──何度も角度を変えるから、何度も鼻がぶつかった。
カイトは広いベッドにたくさんのクッションを置いて、それを背もたれにして上半身を起こしている。
「ユエ、そのまま俺のに擦りつけてみろ」
上にまたがったユエはそう言われて、ぎこちなく腰をくん、と前後させる。
もう、とろとろと蜜を溢れさせているユエのモノと、反り上がったカイトのモノが触れるけれど、体重をかけないように気を使ったユエの動きでは大きな刺激にならない。
「もっと体重かけていいぞ」
「え、でも」
「大丈夫だから」
今度はもう少し強く、ぐりっと擦れる。「んっ」次はもっと強く、ごりっと。「んんっ!」
互いの下生えが絡み合う頃にはユエの動きもこなれてきて、腰を回してみたり、かくかくと細かく動いたと思いきや、ぐっぐっと押しつけたり、長さを確かめるように大きく動いて──カイトのモノがユエの双丘の狭間を通り道のようにすり抜ける。
「っ……!」
ユエは切なそうに眉根を寄せた。繋がれる場所があるのに、今はすれ違うことしかできない。
「ユエ、そのままそこで……挟むようにして腰を動かせ。で、手はこっち──」
カイトはユエの手を取って陰茎へと導くと、自慰を促した。
ユエは両方の要求を従順に受け入れ、自分とカイト双方を同時に高めていく。
「んっ、んンぅ……っ」
「うまくできそうか?」
「うー……わかんない」
ユエの手の動きは愚直で、技巧も何もあったものではない。
カイトは手助けするべく、親指をぐりっと亀頭に押しつける。と、同時に、反対の手を目一杯広げて両方の乳首をぐにっと押しつぶした。
「あっん……!」
ユエは天を仰ぐようにして達する。
「あ、あ……あァ……」
噛み締めるように絶頂から降りてくると、へたりと力を失ってカイトの上にのしかかった。
「っと、ユエ?大丈夫か」
「……ふ、ぅんん、へいき」
返事は舌足らずで、瞳は潤み、表情は恍惚として、まだ小さく腰を震わせて──少し感じ過ぎなんじゃないかと、カイトは心配になる。
それと、さっきのユエのおぼつかない手の動きも相まって、カイトは下世話な想像をしてしまう。
「もしかしてユエ、お前、俺が眠っている間……ひとりでうまくできなかったんじゃないか」
もちろんカイトの頭の中に、ユエが浮気をした──という可能性は微塵もないから、その間ユエは自ら慰めていたはず、という前提で話をしている。
けれどもともと性に奥手だった上に、わりとすぐにカイトと(肉体的に)結ばれたため、ユエはほとんど自慰の経験がない。
しまったな、とカイトは反省する。
封印の前に、ユエにやり方を教えておくべきだった、と。
ところが、ユエは想像の上を行く。
「……ひとりでって、どういう意味?」
「だから、自慰を……自分でここを触ったけど、うまく出せなかったんじゃないか?そうだったなら、からだ、辛かっただろう」
「……ひとりでなんて、してない」
「……は?」
ぽかんと口を開けたカイトに、ユエは不満そうにもう一度「しないよ。なんでカイトがいないのに、ひとりでしなきゃいけないの」
さも当然のように言われて、カイトは混乱する。数日や数週間ならともかく、年単位でそれはあり得るのか、と。
「……一度もしてない、のか?」
「してないってば」
「じゃあ、ずっと夢精で……?」
「むせい……ってなに?」
「いや、だから、朝起きた時に……」
ユエは説明を聞く前に、さっさと種明かしする。
「だってなるべくずっと、人魚の姿でいるようにしたから」
「人魚の……?っ、そうか、なるほど、そんな手が」
すぐに理解したカイトは、それならあり得ると納得する。
純血の人魚──すなわち性を持たない無性の姿でいたことで、性的な衝動は抑えられたのだ。
「中と外の人魚の仲裁に駆り出されてたってこともあるけど……」当時を思い出したのか、ユエの眉が下がる。「海で泳いでたら、少しだけ……寂しさを紛らわすことができたから」
そう聞くと、人魚化の目的は精神的な慰めで、肉体的な効果は結果論だったのかもしれない。
「ユエ……」
カイトは方針を改める。
今日は自分のことよりも、ユエの欲求不満解消を優先するつもりだったけれど、肉体的だけでなく精神的にも充すためにはそれでは足りない。
きっとユエは、自分だけが気持ちよくても嬉しくないだろう。繋がれないからこそ、一緒に──。
「ユエ、今度は俺も……」
風呂場の続きを、と唇を撫でたカイトに、ユエは場違いなほどのキラキラした笑顔を見せる。カイトの方針転換は間違っていなかったようだ。
けれどせっかくだから一緒にとカイトが提案した体位には、さすがのユエも「う……ちょっと、恥ずかしいんだけど」と及び腰になる。
陰茎だけでなく後ろの蕾までカイトの目の前にさらすという羞恥ももちろんのこと、他人の顔をまたぐことは行儀が悪いという認識があるからだろう。
「これなら一緒にできるし、俺も寝転がっていればいいから楽なんだが」
そうカイトに言われてもまだユエは躊躇している。
待ち切れなくなったカイトは、少し強引にユエの腰を下げさせて、「えっ、待って……!」の声も聞かず咥えてしまう。
カイトが先陣を切ったことで、ユエもおずおずと唇を寄せていく。
ユエはまったく意図していなかっただろうが、さっきの告白はカイトを浮かれさせるに十分な爆弾だった。
下手したらユエは、自慰どころか射精すらほとんどしていなかったのかもしれない。
カイト以外は自分の手でも嫌だと、疼くからだを誤魔化し誤魔化し、ずっとこの日を待っていたのだ。
そこまで待ち望まれて、張り切らない男はいないだろう。
口淫にも熱が入る。
つられて、ユエも大胆になっていく。
カイトはもっと感じさせてやりたいという気持ちが強くなって、とうとう──「ぅ、やっ……カイト、そんなとこ……っ」後ろの蕾にまでキスをされて、ユエから驚きと羞恥が入り混じった声が上がる。
止めようと伸びてきた手を無視して舌を這わせると、ひくついたところを中まで侵入する。
「やっ……だ!カイト、やだ、しないで……っ」
泣き声寸前の懇願に返すのは、「ここ、閉じてるな」という妙に冷静な状況判断。
「ぅ、え?」
「前も触ってないお前が、ここを自分で触るはずもないか。当たり前だな」
「え、え?」
「最初の時みたいに、固く、閉じてる」
身を守るようにきつく窄まるそこを、ふやけさせて、解さなければ、という思考回路に操られて、カイトはまた舌を伸ばす。
そのうち、「やだ」「やだ」言っていたユエも「あァ……っ」「あ、っんん……!」と喘ぎに変わる。
「っ……!!っ!」
最後は後ろを指でかき混ぜられながら喉で締められて、ユエは声も出せずに絶頂した。
ほとんど同時にカイトも達する。ユエは精液を口と顔に受けてまた小さく達し、口の中のモノを飲んで、また──終わりなどないかのように、何度も。
ようやく戻ってきた時には、イキ疲れてぐったりしているような有様だった。
「……こんな、の……ど、しよう……」
「ユエ?」
「いまので、こんなにきもちいのに、カイトのがはいったら……」
ユエの表情は不安と期待が半々で揺れている。
一方のカイトは至極真面目に考えて、答える。
「……ずっと快楽を遠ざけていたから、からだがびっくりしたんだろう。敏感になり過ぎているな」
「んん、そう、なの?」
「俺もだが、ユエにも慣らしが必要だな。ほら──」
「ひっ……んん!」カイトの指が背中を掠めただけで、ユエは背筋を反らす。まるで禁断症状だ。禁じられた後にいきなり多量に与えられた肉体は、快楽を毒のように感じているのかもしれない。
これは毒ではなく『いいもの』だと思い出してもらうには、少量ずつ時間をかけて与えて、慣らしていくことだ。
「ちょうどいいから、一緒に慣らしていこうか。俺が全快する頃に、ちょうどユエのからだの準備も整うように」
******
その宣言通りカイトは、時間をかけてユエのからだに快楽を思い出させていった。
手を握るだけから始めて、服を着たままの抱擁、触れ合うだけのキス、舌を絡めるキスをするまでに一ヶ月かけた。
そんなスロウ調整でまどろっこしいとか、焦れったいとなるかと思いきや、意外とそんなこともなく。
色々すっ飛ばしてカラダの関係を持ってしまった二人にとって、こうして段階を踏んでいくことは思いのほか新鮮だったのだ。まるで思春期の付き合いたてのような甘酸っぱい気持ちになる。
双方のからだに負担をかけないためということが最大の目的であったが、ユエを待たせて悪い、というカイトの罪悪感も薄れさせる効果があった。
おかげで二人は、楽しみという気持ちだけを持ってその日を迎えることができた。
******
「あっ……あ、あ……」
ユエのからだはとても自然にカイトを受け入れる。
過剰に反応して訳がわからなくなることもなく、かと言って刺激がぬるいということもない。
正常位で繋がって、二人は満たされた表情で見つめ合う。
余計な言葉はいらない。軽いキスで呼吸を整えた後、カイトが抽送を開始する。
ゆっくりと抜けていく感覚、道をかき分けて入ってくる感覚。絡みついて、引き留めて、惜しむ。けれどすぐに、空白を埋めるように充ちる。
カイトは欲しいところにきてくれる。そしてユエも好きなだけ欲しがれる。
「あ、あっ、あっ……」
ああ、これだ──ユエはからだの内側を濡らされる感覚に、うっとりする。これが、欲しかった。
間髪入れずに、二回目が始まる。
今度は座位。上になったユエが走り出そうとするのを、カイトがその度になだめる。呼吸を合わせて、抽送を合わせると、一番奥までカイトが届いた。
さっき出されたものがかき混ぜられる音がする。二人の交点に溜まった液体が、ユエのものなのかカイトのものなのかわからないほど。
キスに溺れながら、再びの絶頂。
はぁ、はぁ、はぁ、という呼吸音が二重奏する。
むわっと立ち込めるのは二人分の濃厚な芳香。吸い込むと鼻の奥が重たくなる。
ユエを大事にベッドに預けて、カイトは全身の汗を舐めとる勢いで舌を這わせていく。もちろん、まだ繋がったままだ。
されるがまま、ユエは脚を広げたり、腕を上げたり、腰をひねったり。広げた舌全体で脇を味われ、足の指の間にまでねじ込まれる。
そして愛撫と並行して、カイトはユエをうつ伏せになるように導いていく。もちろん、繋がったまま。
後背位になって、ユエの背中にカイトの重みがのしかかる。背中や肩に好き勝手張りついていた長い髪を、カイトの手がひとつにまとめて前へと垂らすと、汗びっしょりの肌はぺたりとくっつき、境目がなくなる。
ひとつになっている、という実感が、ユエを悦びで満たしていく。
ぐりぐり、と押し込むような動きで、カイトが繋がりを深くする。もう、奥まで届いているのに、もっと先を目指すかのよう。
怖い、とユエは思った。貪欲な自分の後ろが、カイトを丸ごと全部飲み込んでしまいそうなのが、怖い。
そんなおかしな想像が伝わったからではないだろうが、カイトはふっ、と力を抜いた。
それで油断したところを──「うっ……あァっ!!」ガツンと突き上げられる。
カイトはユエの腰を引き上げて自分が一番動きやすい体勢を取らせると、腰を打ちつけるようにして叩き込んでくる。
パン!パン!と肌と肌がぶつかる音と、ぐちゅ、ぶちゅ、と粘液が空気を含む音、それからユエの声にならない声が三重奏。
またおかしな想像が──カイトがお腹を突き破って出てくるんじゃないか、とからだがこわばる。
こわばりはすぐカイトに伝わって、ピタリと動きが止まる。
「……わるい、乱暴にしたな」
労るようにお腹を撫でられて、緊張は解けていく。
「ううん、いいの。なんかね、変なこと──おなかが破れちゃうんじゃないか、なんて変なこと考えちゃって……」
首をひねって後ろを向いたユエは、こんな切迫した状況に似つかわしくないポカンとしたカイトと目が合う。
「やぶ……れるって、どうやって」
「カイトのがかたくておおきいから、おれのおなかなんて、突き破っちゃうような気がして……」
「そんなバカなことあるわけない」──とカイトは笑い飛ばすことなく、「大丈夫だ。ヒトの腹はそう簡単に破れない」と不自然なほど真面目に答える。
「うん、おれもわかってるけど……こんなに強いの、はじめてだから……」
「……怖かったか?」
「こわかった……けど──」言葉と一緒に漏れる吐息は熱くて、甘い。けれどユエ本人にその自覚はなく、くいっと続きを誘った腰でカイトを煽ったことにも気づかずに、決定打を押してしまう。
「きもちよかっ──あァんっ!!」
言い終わる前に、脳まで揺らぐような衝撃が襲う。
ユエの腰を思いっきり引き寄せると同時に、カイトが自分の腰を思いっきり打ちつけたのだ。
「やっん!あっ、んぅぅ……っひっ……あっ!」
二度、三度と続き、あまりの烈しさに息が詰まったユエは、空気を求めて口が開く。それを待っていたように唇が寄せられて、カイトは無慈悲にそこへと居座った。
「んンっ、んぅ、んっんっんー……っ」
苦しくて、最初は絡まってくる舌を跳ね除けようとしていたはずなのに、いつの間にかそれこそが命綱のように、ユエの方からカイトの舌を追いかけている。
首をひねった体勢でのキスは、いつものように上手く噛み合わない。だから目いっぱい舌を伸ばしているのに、捕まえたと思ったら、「く、ぅぅ……ン!」抽送の振動で離れてしまう。
今もしカイトの支えを失ったら、ユエはへなへなと崩れ落ちてしまうだろう。体勢を保つとか、太ももが限界とか、首が痛いとか、そんなことを忘れてしまうほどに、悦楽に耽溺しているのだ。
「はっ、んむぅ……」カイトの頭を手で無理やり引き寄せて、唇同士が外れないように固定する。するとユエの後頭部も、カイトの大きな手でがっちり捕まえられる。指が髪に絡まって引っ張られたけれど、ちっとも痛みは感じない。
二箇所で隙間なく繋がった二人は、まるでそれでひとつの生き物のように感覚や感情を全て共有しているかの錯覚に陥った。
ユエが『今』と思った瞬間に、カイトが寸分違わず届き──二人同時に絶頂に至る。
ユエは薄れゆく意識の中で、またおかしな想像をする。
──こんなにたくさん出されたら、お腹が破裂しちゃうかも。
さっきと同じような想像。
けれどさっきとは違い、少しも怖くは思わない。
小さな痛みも、苦しさも、そして怖い想像さえ、カイトというフィルターを通せば、全て快楽に変えられると教えられたから。
***
満ち足りた顔で眠るユエを起こさないよう、カイトはそっと後始末に取り掛かる。
中に出した自分のものを掻き出していると「ンんぅ」とユエが身じろぎして、はらっと髪がシーツに広がった。
真っ白なシーツに、眩しいばかりの蒼。
──「カイトが眠ってる間、おれ、絶対に髪切らないからね。伸ばし続けるんだ。それで、カイトが起きたら、カイトに切ってもらう」
封印前に掛けた願いは、無事に叶えられた。
カイトは指に絡めた髪に口づけて、感謝の意を示す。
「……待たせたな」
そろそろハサミを持っても危なくはないだろう、と思いつつも、もうしばらくの間、髪の長いユエを堪能したいという欲も無視できない。
優柔不断な自分を笑い、カイトは(まあ、いい。ユエに決めてもらおう)と丸投げする。
(どうせ、これから先はずっと一緒なんだから、長い髪のユエが見たくなったらまた伸ばしてもらえばいいさ)
有限な時間を、ユエとどう楽しみ尽くそうか──今までカイトは、未来を想像することがこんなに楽しいことだとは知らなかった。
それを教えてくれた存在に、感謝を込めてもう一度キスを。
「ユエ、ありがとうな」
「んー……ううん」
ちょうどいいタイミングで放たれたユエの寝言がまるで返事のようで、カイトは思わず「ははっ」と笑ってしまう。
「ユエ、聞こえてるのか?」
「んー……」
「ユエ?」
「うーん……」
「……愛してる、ユエ」
舌の上でとろけるように甘くささやくと、「んフ」ユエの寝顔はフニャリとほころぶ。
それを見ているうちに、自分の頬もゆるゆると緩んでいることに気づいたカイトは、(ああ……幸せだな)と思う。
カイトにとっての『幸福』は、金でも名誉でも地位でも不死の肉体でもなく──ユエの寝顔なのだ。
応援ありがとうございます!
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(Este comentário está escrito em português para mostrar admiração internacional)
Isso aqui é muito bom!!! Infelizmente é um trabalho subestimado, mais pessoas deviam ler isso. Ótimo autor, gostaria ler mais desses trabalhos.
とてもとても面白かったです!
文章が分かりやすくて、スムーズでした。
番外編はないのかな…。。ずっと待ってます!