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第一章 教会潜入編
15 秘密の部屋
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夕食が出来上がると、食堂に神父とシスター、そして少年たちが席に着く。
「新入りの作ったカレーは美味しいな」
少年の一人が寛太の作ったカレーを褒めた。
「ありがとうございます。唯一の得意料理なんです」
寛太がぺこりと頭を下げると、少年たちはニヤニヤと笑う。
「……毎回カレーなんて、僕たちを飽きさせないでくれよ」
リーダー格の少年がそう言ったので、他の少年たちはゲラゲラと笑った。
「カレーにもバリエーションがあるんで、飽きることはないと思いますよ。スープカレーにしたり、魚介を入れたりして」
寛太が言うと、リーダー格の少年はバカにするように鼻で笑った。
「ああ、お前は料理が得意だもんな」とリーダー格の少年は言った。
「得意料理はカレーだけだろ? だって他の料理はからっきしだからな」
そこでまた少年たちは笑い声を上げる。周りの神父とシスターたちは苦々しい顔をして見ていたけれど、なにも言わなかった。少年たちを叱ったところで素直に言うことを聞きはしないのだから仕方がない。
寛太は少年たちをチラリと見て、黙々と食事を始めた。いちいち相手にせず、聞き流すことに決めたのだろう。健太は頭が良いから、それが賢い選択だ。
食事が終わった人から食器を洗い場まで持っていき、水に浸けておく。
私もさっさと食べ終えると、シスターと食器を洗ってから水切りかごに伏せた。
自室に戻ろうと食堂を出ると、物陰に寛太の後ろ姿が見えた。
どうやら神父の書斎の扉を開けようとしているようだ。ひっそりとして隠れる秘密の部屋は、彼の探偵としての興味を誘うものだったらしい。
御名答。そこに怪盗ヴェールのターゲットの絵がある。
でも、そんな貴重な情報は渡すわけにはいかない。
私は寛太に近づくと、彼の肩に手を置いた。
「その中は入ったらダメだよ」
声をかけると、彼はビクリと体を震わせた。それから恐る恐るといった様子で振り返る。
「あ……景吾くん」と彼は強張っていた表情を緩めた。
「すみません。案内されなかった部屋だったので、つい気になって」
寛太は気まずそうに笑った。
「その扉はパンドラの箱のようで、開けちゃいけない扉なんだ。……もし開けてしまうと、この教会では暮らしていけなくなるよ」
この忠告は、ルームメイトの智哉から言われたことの受け売りだけどね。
ここだけの話、と私は声をひそめてささやく。
「僕も昔、この部屋の中を覗いて、神父から厳しく叱られたんだ。寛太くんも気をつけて」
「そんなことが……。わかりました」
寛太は神妙な顔をして頷いた。
「どうしたんだ」
神父の声が食堂に反響した。振り返ると笑みを浮かべた神父がいた。私たちの声を聞きつけて様子を見に来たのだろう。
「寛太がこの部屋に入りたがったので、止めていました」
「……そうか」
私の説明を聞いた神父は顔を曇らせた。そして静かに首を振る。
「その部屋はこの教会の信仰の象徴とも言える部屋です。迂闊に中を見られたら困るんですよ」
神父の目は笑っていなかった。
そんな態度に、寛太は怯えたように身を震わせる。
それが演技だとしたら、名演技だ。
「あの……ごめんなさい……」
寛太は頭を下げる。すると神父の優しげな顔はすぐに笑みに変わった。
「いいんだ。私も注意を怠っていたからね」と神父は苦笑した。
「さあ、もう夜も遅いから、君たちは部屋に戻って寝なさい」
神父がそう促すと、私たちは食堂を後にした。
「新入りの作ったカレーは美味しいな」
少年の一人が寛太の作ったカレーを褒めた。
「ありがとうございます。唯一の得意料理なんです」
寛太がぺこりと頭を下げると、少年たちはニヤニヤと笑う。
「……毎回カレーなんて、僕たちを飽きさせないでくれよ」
リーダー格の少年がそう言ったので、他の少年たちはゲラゲラと笑った。
「カレーにもバリエーションがあるんで、飽きることはないと思いますよ。スープカレーにしたり、魚介を入れたりして」
寛太が言うと、リーダー格の少年はバカにするように鼻で笑った。
「ああ、お前は料理が得意だもんな」とリーダー格の少年は言った。
「得意料理はカレーだけだろ? だって他の料理はからっきしだからな」
そこでまた少年たちは笑い声を上げる。周りの神父とシスターたちは苦々しい顔をして見ていたけれど、なにも言わなかった。少年たちを叱ったところで素直に言うことを聞きはしないのだから仕方がない。
寛太は少年たちをチラリと見て、黙々と食事を始めた。いちいち相手にせず、聞き流すことに決めたのだろう。健太は頭が良いから、それが賢い選択だ。
食事が終わった人から食器を洗い場まで持っていき、水に浸けておく。
私もさっさと食べ終えると、シスターと食器を洗ってから水切りかごに伏せた。
自室に戻ろうと食堂を出ると、物陰に寛太の後ろ姿が見えた。
どうやら神父の書斎の扉を開けようとしているようだ。ひっそりとして隠れる秘密の部屋は、彼の探偵としての興味を誘うものだったらしい。
御名答。そこに怪盗ヴェールのターゲットの絵がある。
でも、そんな貴重な情報は渡すわけにはいかない。
私は寛太に近づくと、彼の肩に手を置いた。
「その中は入ったらダメだよ」
声をかけると、彼はビクリと体を震わせた。それから恐る恐るといった様子で振り返る。
「あ……景吾くん」と彼は強張っていた表情を緩めた。
「すみません。案内されなかった部屋だったので、つい気になって」
寛太は気まずそうに笑った。
「その扉はパンドラの箱のようで、開けちゃいけない扉なんだ。……もし開けてしまうと、この教会では暮らしていけなくなるよ」
この忠告は、ルームメイトの智哉から言われたことの受け売りだけどね。
ここだけの話、と私は声をひそめてささやく。
「僕も昔、この部屋の中を覗いて、神父から厳しく叱られたんだ。寛太くんも気をつけて」
「そんなことが……。わかりました」
寛太は神妙な顔をして頷いた。
「どうしたんだ」
神父の声が食堂に反響した。振り返ると笑みを浮かべた神父がいた。私たちの声を聞きつけて様子を見に来たのだろう。
「寛太がこの部屋に入りたがったので、止めていました」
「……そうか」
私の説明を聞いた神父は顔を曇らせた。そして静かに首を振る。
「その部屋はこの教会の信仰の象徴とも言える部屋です。迂闊に中を見られたら困るんですよ」
神父の目は笑っていなかった。
そんな態度に、寛太は怯えたように身を震わせる。
それが演技だとしたら、名演技だ。
「あの……ごめんなさい……」
寛太は頭を下げる。すると神父の優しげな顔はすぐに笑みに変わった。
「いいんだ。私も注意を怠っていたからね」と神父は苦笑した。
「さあ、もう夜も遅いから、君たちは部屋に戻って寝なさい」
神父がそう促すと、私たちは食堂を後にした。
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