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早川静玖は戸惑っていた
告白
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早川静玖は戸惑っていた。
それもそのはず、先輩に誘われて久しぶりにサークル棟に顔を出したら、件の先輩しかおらず、その先輩から告白をされたからだ。
先輩の名前は蘇我佑。三年でこのサークルのサブリーダーのような人だ。巨大なサークルで末端な自分などが佑の頭にかすかに残っていただけでも驚きなのに、それがまさかの告白。
戸惑わないわけがなかった。
静玖は地方からこの都内にある私立大学へ進学を機に大学デビューを果たした。
癖の強い黒髪は茶色に染めることでふんわりとした印象に、服も雑誌を研究して似合うものを揃えるようにした。
高校時代存在感が薄く、友人もいなかった静玖。
性格は簡単には変えられないが、見た目や雰囲気を変えて他人から認めてもらいたかった。
入学当初、わけも分からず勧誘されるがままに加入したこのサークルだったが、元来、真面目で奥手な静玖には水が合わなかった。自分でも無理をしているのが分かった静玖は、夏休みのイベントをほとんど欠席し、秋になって講義が始まれば退会しよう。
そう思っていた矢先、キャンパス内で佑に声を掛けられこうして出向いたのだが。
「突然のことでごめんね。でも僕、早川くんのこと、新歓コンパのころからかわいいなぁって思ってて。だから仲良くなれればいいなって思ってたのにイベントにはぜんぜん来ないし」
「あの、本当に僕のことを?」
静玖はゲイではない。
偏見もないが自分がそういう対象になるとは思ってなかった。
佑だってゲイだなんて噂は一切なかった。
しかし、高身長でとある大企業の社長の息子、甘いルックスで爽やかな好青年を絵に描いたような佑だが、彼女がいるという噂も聞かなかった。
だからといってゲイとは誰が思うだろか。
静玖の戸惑いが伝わったのか、佑は悲しげな表情でつぶやいた。
「そうだよね、いきなり言われても困るよね。だからさ、せめて友達から始めてみないか?」
こちらに出てきたばかりでやっと同学年の友人が出来たばかりの静玖は、年上の友人というものに興味を持った。
それも佑のような誰もが憧れる男と友達になれば、自分も少しはそちら側に行けるのではないかと思ったのだ。
告白のことを忘れたわけではないが、静玖は佑の申し入れに首を縦に振った。
「友達なら……」
「そっか、良かった」
その時の佑の顔は心底嬉しそうな顔をしていて、静玖は少し照れくさくなった。自分にそんな価値があるとは思えないが、佑に認められたことは少しばかり誇りに思えてならなかった。
「それじゃあ僕のことはユウって呼んで? 本当の読みはタスクなんだけど、みんな僕のことユウって呼ぶんだ」
「ユウ先輩?」
「そのうち、先輩が取れるといいな」
そう言って佑は静玖の頭を撫でた。茶色いふわふわとした髪を撫でられて静玖は少しどきりとした。ゲイではない。けれど、こうして構われるのは嫌な気分じゃないなと、そう思った。
それもそのはず、先輩に誘われて久しぶりにサークル棟に顔を出したら、件の先輩しかおらず、その先輩から告白をされたからだ。
先輩の名前は蘇我佑。三年でこのサークルのサブリーダーのような人だ。巨大なサークルで末端な自分などが佑の頭にかすかに残っていただけでも驚きなのに、それがまさかの告白。
戸惑わないわけがなかった。
静玖は地方からこの都内にある私立大学へ進学を機に大学デビューを果たした。
癖の強い黒髪は茶色に染めることでふんわりとした印象に、服も雑誌を研究して似合うものを揃えるようにした。
高校時代存在感が薄く、友人もいなかった静玖。
性格は簡単には変えられないが、見た目や雰囲気を変えて他人から認めてもらいたかった。
入学当初、わけも分からず勧誘されるがままに加入したこのサークルだったが、元来、真面目で奥手な静玖には水が合わなかった。自分でも無理をしているのが分かった静玖は、夏休みのイベントをほとんど欠席し、秋になって講義が始まれば退会しよう。
そう思っていた矢先、キャンパス内で佑に声を掛けられこうして出向いたのだが。
「突然のことでごめんね。でも僕、早川くんのこと、新歓コンパのころからかわいいなぁって思ってて。だから仲良くなれればいいなって思ってたのにイベントにはぜんぜん来ないし」
「あの、本当に僕のことを?」
静玖はゲイではない。
偏見もないが自分がそういう対象になるとは思ってなかった。
佑だってゲイだなんて噂は一切なかった。
しかし、高身長でとある大企業の社長の息子、甘いルックスで爽やかな好青年を絵に描いたような佑だが、彼女がいるという噂も聞かなかった。
だからといってゲイとは誰が思うだろか。
静玖の戸惑いが伝わったのか、佑は悲しげな表情でつぶやいた。
「そうだよね、いきなり言われても困るよね。だからさ、せめて友達から始めてみないか?」
こちらに出てきたばかりでやっと同学年の友人が出来たばかりの静玖は、年上の友人というものに興味を持った。
それも佑のような誰もが憧れる男と友達になれば、自分も少しはそちら側に行けるのではないかと思ったのだ。
告白のことを忘れたわけではないが、静玖は佑の申し入れに首を縦に振った。
「友達なら……」
「そっか、良かった」
その時の佑の顔は心底嬉しそうな顔をしていて、静玖は少し照れくさくなった。自分にそんな価値があるとは思えないが、佑に認められたことは少しばかり誇りに思えてならなかった。
「それじゃあ僕のことはユウって呼んで? 本当の読みはタスクなんだけど、みんな僕のことユウって呼ぶんだ」
「ユウ先輩?」
「そのうち、先輩が取れるといいな」
そう言って佑は静玖の頭を撫でた。茶色いふわふわとした髪を撫でられて静玖は少しどきりとした。ゲイではない。けれど、こうして構われるのは嫌な気分じゃないなと、そう思った。
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